母とレース編み
相談があるんだけど…
ある日母が言って来た。一日中やることがないので、いろんな番組をザッピングしているなかで、テレビショッピングもよく見ているので、また何か欲しいものがあるんだなと予測して話を聞いた。
また、レース編み始めようと思うんだけど…
私が一番待っていた言葉。退院してから暇だという母に何回か進めてはいたものの、納得のいく作品ができないのは嫌だと針を持っては、やめを繰り返していた。
ちょうど前の日にいつもの診察で病院を訪れた時に、先生から数値が戻って来てるから、これまで通り好きなもの食べて好きなように過ごして良いと合格点をもらってきたばかりで、おそらく母自身も体調の良さを実感したのだろう。
脳梗塞によって残された後遺症は、言葉の出にくさと食べ物の飲み込みにくさだけで、幸いなことに手指の麻痺もないし、感覚が鈍っている様子もない。
入院した時そのままになっていたレース編みの道具を母に渡したところ、早速手を動かしている。
在宅で仕事をしながら、そんな光景を眺めている私は、これが求めていた生活なんだなと実感した。もちろん、先のことを考えれば、色々悩みは尽きないが、今はこの穏やかな生活を大事にしたいと思っている。
できることからすこしづつ。焦らずゆっくり。