オンライン上のいじめによる児童の自殺リスク研究
SNSなどのオンライン上での避難、中傷によりメンタルヘルス上の問題、あるいは場合によって自殺にいたってしまうケースがあることが話題となることが多くなりました。SNSでのいじめは児童のでも少なからずあり、メンタルヘルス上、大きな影響を与えていると考えられます。日本では未成年の自殺者数が高く、以前として上昇傾向にあります。自死の要因は複合的かつ潜在的なものが多くあり、自死SNSでのいじめによる自殺の影響についての研究では、シェイ・アーノンらのアメリカでの研究が知られています。この研究では10歳から13歳の米国の児童10,414人のコホート研究です。この研究では、オンラインでのいじめが自殺傾向にどのくらいの影響を与えているかを調査しています。結果としては、オンラインでのいじめは自殺傾向と関連していることがわかりました(オッズ比4.2)。また、家庭の要因や学校環境、民族、人種の問題を排除しても、オンラインでのいじめは自殺傾向と関連していました(オッズ比2.5)。さらに精神病理の問題を排除しても関連がありました(オッズ比1.8)。このことから、オンラインでのいじめだけでも自殺傾向と関連していることがわかりました(詳細はAssociation of Cyberbullying Experiences and Perpetration With Suicidality in Early Adolescence)。
基礎的なデータをみてみると、自殺企図に関してはオンラインでのいじめの被害・加害の体験のない群では1%にすぎないのに対して、いじめを受けた群で5.7%と高い値になっています。また自殺企図・および自殺念慮双方とももっとも高くなっているのは、オンラインでいじめを受けかつ加害者でもあった群となっています。このようなデータからすると、いじめの被害者だけではなく、加害者側にもなんらかの配慮を必要とすることが考えられます。
議論
この論文では、オンライン上でのいじめの問題として、加害者側がいじめをしているという認識が少ないことをあげています。オンラインではいじめを受けている側のダメージを認識しにくいということや、罰を受けにくいことに要因あるとしています。
またオンライン上のグループではインスタントメッセージで発信されること多く、自分の責任を十分に理解せず衝動的な行動をとってしまうことも指摘しています。
私としては、こうしたオンライン上のいじめは容易に取り消せないことや、反芻を生じやすいこと、また、いじめが顕在化せず、長期化してしまうことも要因として考えられます。子どもの自殺予防において、日常でのいじめの把握も必要ですが、オンライン上で生じているいじめも留意していくことが必要と考えられます。学校ではいじめアンケートなどを実施しているところも多いでしょうが、オンライン上でのいじめを早期に把握することが必要なようです。