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本で出会った忘れられないことばたち
5月18日は「ことばの日」。「ことばの日」のオリジナルお題企画「#忘れられないことば」にちなんで、本で出会った「忘れられないことば」、思い出したくなることばを選びました。
詩のことば
幸せについて (谷川俊太郎)
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ココロには気持ちの山谷があるでしょ、訳も分からず悲しくなったり、いきなり理由もなくはしゃぎたくなったり。(中略)いつも穏やかな気分でいられれば、それこそ幸せってもんだと思うけど。
なんだかやたらと気分の沈んだ去年の夏。自分の気持ちの山谷(やまたに)に振り回されていた時に出会った詩人の谷川俊太郎さんのことば。ああ本当に、いつも穏やかな気分でいられたらいいのに。
「幸せ」をテーマに、短いことばと手書きの文字で書かれた本。カバーが全部で3種類あることを後から知った。詩人の綴ることばはすべて詩の一節のようです。
真っ白でいるよりも (谷川俊太郎)
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一時期、友人に詩集や写真集を贈っていた。誕生日のプレゼントや結婚のお祝いに。この詩集は、確か結婚する友人に贈ったことがある。
知ってた?
気持ちにはいろんな色がある
私あなたの色とまざってもいい
真っ白でいるよりも
きらいな花の色になる方がまし
でしょ?
「真っ白でいるよりも」より
20代のころに出会った愛を語る詩。この詩集には、谷川さんが結婚のお祝いに書いた詩もいくつか収められている。
ちなみにこの文章を書くために本を引っ張り出してきたら、手についたインクが本の帯についてしまい、白い帯が黒くなってしまった。真っ白でいたのに……。
小説のことば
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ノルウェイの森 (村上春樹)
昨年、NHKでこの小説を取り上げる特集番組「『ノルウェイの森』 “世界のハルキ”はこうして生まれた」(2022年2月)があり、録画して二度も見た。懐かしくなってまた読み返した。番組を見るまで、小説の中に、太字で書かれた一文があったことを忘れていた。
死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
主人公のワタナベ君が大学の同級生・緑に向かって語ることばは、私が最も好きな愛のことば。
「君が大好きだよ、ミドリ」
「どれくらい好き?」
「春の熊くらい好きだよ」
(中略)
「春の野原を君が一人で歩いているとね、向こうからビロードみたいな毛並みの目のくりっとした可愛い子熊がやってくるんだ。そして君にこう言うんだよ。(中略)そういうのって素敵だろ?」
本当に「すごく素敵」。ぜひ続きを読んでみてください。こんなことばを言ってくれる人が現れる日をずっと待っているのだけれど。
日記のことば
言葉と歩く日記 (多和田葉子)
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企画を学ぶオンライン講座で出会った仲間2人が立ち上げた「図書係 山と川」というユニット。その最初の利用者となった私に、2人が選んでくれた本が、ドイツに住む作家・多和田葉子さんの『言葉と歩く日記』。
分かってきたことは、旅はその旅について書き終わるまで、完結しないということだ。
「心の中の世界地図」という表現も印象的だった。この本については、以前も記事を書いている。
「山と川」さんの記事
「ことばの日」につながることば
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5月18日の「ことばの日」という記念日が生まれたのは、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座『言葉の企画2019』がきっかけだ。私はその2年後、オンラインで開催された阿部さん主宰の『企画でメシを食っていく2021』を受講した。その縁で、今年の「ことばの日」の関連イベントの運営に加わっている。
阿部さんのことばは、やさしく強く、心に届く。
待っていても、はじまらない。潔く前に進め (阿部広太郎)
タイトルのことばから、励まされる。潔く前に進め。ページをめくるごとに、ことばに背中を押される。
時間は待ってくれない。けど、自分の時間を、自分の生き方で行けば、それが自分の道になる。(中略)
潔く前に進め。
コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術 (阿部広太郎)
私は本に書かれる前に、阿部さんの講座のレポート記事でこのことばを目にした。
何者かになりたい、と人は口々に語りたがる。けれど、なれない。なる必要もない。(中略)
あなたはあなたになっていく。
(阿部広太郎/ダイヤモンド社)
「あなたはあなたになっていく」。何度も思い返すことばだ。
それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習 (阿部広太郎)
世の中が大きく変わり、家に閉じこもりがちになっていた頃、世に出た本。俯きがちだった気持ちにやさしく寄り添う言葉が続く。
今のあなたのままでいい。
無理に変わろうとしなくていい。
代わりに時代が変わってくれるから。
(阿部広太郎/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
🔽この本の魅力と「ことばの日」について、熱く語っています。
あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ (阿部広太郎)
今年2023年春、出版されたばかりの本は、「選ばれない」ことがテーマ。
僕たちは後悔をする。
過ぎ去ったあの時に。取り返せないあのことに。もう会えないあの人に。
それでも前を向く。まだ遅くない、そう信じている。
(阿部広太郎/ダイヤモンド社)
阿部さんの本には、心に書き留めておきたいことばが並ぶ。自分にとっての「お守りのようなことば」といくつも出会えた。
eliaの本棚×ことばの日
「ことばの日」に合わせて、共同書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」に借りている本棚にも、ことばにまつわる本を入荷しています。
5月13日(土)には初めてパートタイム店長に挑戦します(Shoko担当、12:00~15:00頃予定)。そこで、記念にMihoko撮影の写真を使ったポストカードを用意しました。今までのnoteの記事を彩った写真たちです。来てくださった方にお好きなものを1枚差し上げます。(なくなり次第終了しますが、余ったら棚に置いておきます)
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本棚はオンラインでもご覧いただけます。
ことばの日イベント「ことばの縁日」
5月18日は「ことばの日」。
5月14日(日)高円寺で開催されるリアルイベント「ことばの縁日」にもスタッフとして参加します(Shoko)。
オリジナルお題企画「#忘れられないことば」
「ことばの日」では、オリジナルお題企画として、「忘れられないことば」をテーマに、noteで記事を募集しています。この記事も企画に合わせて書きました。ぜひ投稿もお待ちしています!
(text & photos:Shoko) ©️elia ※タイトル写真はMihoko撮影
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