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しんみりドイツ一人旅
ビールが大好きなので、いつか本場ドイツで様々な銘柄を飲んでみたいと思っていた。そしてビアホールに、ぜひとも行きたい。
人生初の海外一人旅だったオーストリアに続いて、ドイツ一人旅を思い立った。オーストリアでは出会いに恵まれたので、ドイツも楽しみだ。(旅の記事はこちら「夢のような一人旅・オーストリア」)
関西国際空港から、成田、ロンドンを経てフランクフルトに入った。
ドイツには学生時代の友人が住んでいる。彼女はベルリン在住で、会うことは叶わなかったのだが、フランクフルトのホテルに到着すると、なんとその彼女から、5枚に渡るFAXが届いていた。
フランクフルト名物料理、おすすめのお店とそこで一押しのメニュー。添えられた彼女の手書き文字が、懐かしくてたまらなかった。久々に彼女としゃべったような、温かい気持ちになった。
翌日は丸一日、フランクフルトを歩いてまわった。
ランチはもちろん、友人がすすめてくれた店へ。昔ながらのドイツ料理を出すようだ。
(当時のメモ↓)
せっかくなので「フランクフルト」ソーセージなどを食べる。そして19世紀にここフランクフルトの醸造所で生まれたという「BINDING」を飲んだ。
(お土産に持ち帰ったコースター↓)
今夜はビアホール、と意気込んでいたが、フロントでおすすめビアホールを尋ねたところ、「女性一人ではやめたほうがいい」と言われてしまう。
あまり無茶をしない質なので、あきらめる。まだ帰国までには時間があるから、どこかで誰かと行けるかもしれない。仕方なくルームサービスで頼んだ「インディアンチキン」なるものが大層おいしく、ドイツなのにインド風、と思う。
その次の日からは、1泊2日でバスツアーに申し込んでいた。短い滞在期間(4泊6日)で効率的にあちこち行きたかったのと、前回オーストリア旅行でのツアーで、参加者との交流が思い出に残ったこと。これらが理由なのだが、集合場所に着いて愕然とした。
参加者36人中、単身参加は私だけ。さらに言うと新婚旅行カップルだらけ。
「あちゃー」と思った。
最初に到着したのはハイデルベルグ。
お城とか橋とか、どこを切り取っても美しい景色の中を散策する。
そしてお楽しみは何はともあれビール。ツアーガイドさんに紹介してもらった、老舗風の店に入る。
ここでは「Strongest Beer 」、「アルコール度数が世界一高い」という黒ビールを頼むが、ギネスビールを甘くしたようなちょっとびっくりする味で、残念ながら飲み干すことができなかった。(↓当時のアルバムより。コースターもお土産に。)
(↓つい気になるマクドナルド。今回は入店せず。世界のマクドナルドに関する記事はこちら「世界の町に黄色のM」)
続いてローテンブルグへ。中世の雰囲気がそのまま残る、おとぎの国のような街だ。石畳に三角屋根のかわいらしい家々。(↓当時のアルバムより)
ホテルに到着したあと一人で夕飯を食べに出掛けた。7月のドイツは、いつまでも明るい。初めて小麦ビールを飲み、この時期の名物という白くて太いアスパラガス、そして細長いソーセージを食べた。白アスパラを美味しいと思ったのは生まれて初めてだった。それまで缶詰のものしか食べたことがなかったからだろうか。
ところで、どう頑張っても、このツアーでは、誰とも仲良くなることができなかった。それはそうだ、新婚旅行カップルは他者との出会いを必要としないだろう。また頼みの綱のツアーガイドさんも、なんだか取り付く島がなくて事務的な会話しかできない。なので、食事は毎回1人。あれこれ感動を分かち合いたい海外で、ずっと誰ともおしゃべりしない、というのはさすがにこたえた。
ちなみにローテンブルグについては、「人間臭いものが何もなくてつまらない」と当時の日記には書いているが、冷めてたなあと思う。この街は、俗っぽくないところがウリなのに。
とはいえ、新婚旅行カップルをこっそり観察して楽しんだりもした。
(旅の間に険悪なムードになるカップルが結構いるな、ハネムーンだからといって始終アツアツな訳じゃないんだな、というのはこのとき知った。まあそりゃそうだろう)
ミュンヘンでツアーは終わった。
さてドイツ最後の1日、ミュンヘンでどこに行こうかと思ったとき、ガイドブックにあった「ダッハウ強制収容所記念館」が気になった。ナチス・ドイツの強制収容所跡だ。ドイツで最初に造られた強制収容所とのこと。
鉄道の最寄り駅からのアクセスがガイドブックにはなかったが、いざとなったらタクシーで、と思い列車に乗る。その駅で降りた乗客のほとんどが、ぞろぞろと同じ路線バスの停留所に並んだ。みな観光客のようだが、誰もはしゃいでおらず、静かな雰囲気だ。彼らも記念館に行くに違いないとふんで、同じバスに乗り同じ停留所で降りた。正解だった。
結果的に、このドイツ旅行でもっとも印象に残ったのが、この記念館だった。まず、とにかく面積が広い。この広さに圧倒された。
こんなにも広い収容所が存在したという歴史的事実の重み。そして、ミュンヘンという大都市の近郊に、この広大な施設をそのまま残した、ということに、ドイツという国の、平和への決意のようなものを感じた。
人々が暮らした小屋が、2棟だけ再建されている。蚕棚のような板で組んだベッドが印象的だ。かつてみた映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出す。収容者はぎゅうぎゅうに押し込まれていたのだろう。
広島の原爆ドームのような生々しいマネキンによる展示はない。しかし目を背けたくなるような写真が、パネル展示されている。じっくりと、ひとつひとつ見て回った。
結局この旅では、誰かと親しくなってビアホールに行く、という目論見は外れた。誰とも会話らしい会話もせず、孤独を深めて帰国してしまった。最後に見学したのが強制収容所跡だったということもあり、いまでもあの時の旅はしんみりしていたなあと思う。
まあ、色んな旅がある。人生と一緒だ。
(text,photo ;Noriko)©elia
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