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旧約聖書物語 9

新たな預言者サムエルの登場
王を求めるイスラエルの民
サムエルの後継者サウル
そしてダビデの出現

谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi

目次
1 神の箱(アーク)の帰還 (サムエル記3~7)
2 サムエルとサウル (サムエル記7~10)
3 サムエルとサウル その2 (サムエル記7~10)
4 烈王サウル (サムエル記11~15)
5 ダビデの出現 (サムエル記16~17)
6 サウルの敵意 (サムエル記17~18)
7 ダビデの避難 (サムエル記18~19)
8 サウルの追撃 (サムエル記22~27)
9 サウルの追撃 その2 (サムエル記22~27)
10 ペリシテ陣営のダビデとサウルの死 
  (サムエル記29~31)

1 神の箱(アーク)の帰還

  (サムエル記3~7)

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シロの街の司祭エリのもとで
主に仕えたサムエルが
自らの主の声を聞いて後
民を導く新たな預言者として
イスラエル全土に
その名が知れ渡り始めたその頃
イスラエルが宿敵ペリシテに
攻撃を仕掛けた。
ペリシテもまた戦闘体勢を整え
両者は一線を交えたが
戦いはペリシテの勝利に終わった。
長老達は為す術もなく、遂に
神の加護を得るべくシロに安置した
主との契約を納めた神の箱を担ぎ出し
隊列の先頭にたてた。
ペリシテ軍はヘブライ人達の神を怖れて
一瞬たじろいだが、全軍
一丸となって戦いに臨んだので
イスラエル軍は壊滅的な打撃を受け
神の箱も奪われた。
報せを受けた司祭エリは
驚愕と絶望の余り転倒し
首の骨を折って息絶えた。

一方ペリシテ人に奪われた神の箱は
かの地に次から次へと
不思議な災いをもたらし始めた。
神の箱は、まず始めに
運び込まれたダゴンの神殿で
ダゴン神の像を壊し
場所を移される度、その街の住人に
腫れ物の災いと死をもたらした。
神の箱を恐れたペリシテ人は
災いを被った五つの領土の領主達が
賠償の捧げ物としてそれぞれ金の鼠と
腫れ物を形どった像を造って
神の箱に供え、新たに造った車に乗せ
雄牛二頭に引かせて放した。
雄牛はまっすぐイスラエルに向かい
やがてベト・シェメシュの
ヨシュアの畑で止まった。
こうして神の箱は七ヶ月ぶりに
自らイスラエルの民のもとに
帰還したのだった。

サムエルはエフライムの産地に住むエルカナの息子で、彼の妻であり不妊であったハンナが、もしも息子を授かることができるなら、その子を神に捧げ、ナジル人として育てることを誓って得た子ども。そのためサムエルは祭司エリのもとで、ナジル人として育てられた。

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