旧約聖書物語 3
民族の誕生 ヤコブ一族
目次
1 ヤコブとラケル
2 故郷に向かうヤコブ
3 天使と格闘するヤコブ
4 ヤコブとエサウの再会
5 ヤコブと息子たち
6 その後のヨセフ
7 その後のヨセフ その2
8 ファラオの夢を解くヨセフ
9 ファラオの夢を解くヨセフ その2
10 ヨセフとその兄弟
1 ヤコブとラケル(創世記 29~30)
ヤコブは自ら石を奉り
神の家、と名付けたその場所で
神が言葉通り自分を護り
おそらく苛酷なものとなるであろう
この旅を無事に終わらせ
再び故郷に戻らせてくれるならば
自分が記念として建てた
この神の家の石に賭けて
自分が得るものの
10分の1を神に捧げることを誓った。
さてこうしてヤコブはハランに着き
母の兄ラバンの許に寄宿し
義父の仕事を手伝うことになった。
およそ一月が過ぎた頃
ラバンはヤコブに
いくら身内と言えど
いつまでもただで
働いて貰おうとは思わない。
どんな報酬をすれば良いかと尋ねた。
するとヤコブは即座に
あなたの娘レアとラケルの姉妹のうち
ラケルを嫁に下さい。
7年間そのために働きますから
と答えた。
ラバンはヤコブの申し出を認め
ヤコブは愛するラケルを得るためにと
7年間働いた。
時は、想いの強さの前に
矢のように早く流れた。
7年が経ってヤコブが婚礼を促すと
ラバンは直ちに一同を集め
祝宴を開いたが
初夜の床に密かに長女のレアを入れた。
ヤコブは朝になって
花嫁がレアであることを知り
ラバンを責めたところ、ラバンは
この地では次女が長女より
先に嫁ぐことは許されないのだと言い
一週間の式さえつつがなく済ませれば
その後、望み通りラケルをやろう。
ただしその代わり
もう7年働いてもらわなければ
とヤコブに迫った。
ヤコブは愛するラケルを得るためにと
条件をのみ、ラケルを娶り
更に7年間、ラバンの許で働いた。
兄や父を騙して一族の権利を奪い取り、それに対して怒った兄のエサウを恐れ、父と同じように遠く離れたハランで妻を探すという理由をつけて ベエル・シェバを逃れたヤコブですが、例によって神は、そんなヤコブを民族の始祖として護ると告げます。そのかわりヤコブは、自分が得たものの10分の1を神に捧げることを誓います。この数字あるいは仕組みは、やがて形を変えて、今日の税金や印税のような仕組みに受け継がれていきます。
何かとそつのないヤコブは、天にまで届く階段の夢を見た場所の枕にした石に油を注いで神に感謝し、その場所を、神の家、と名付けます。
ハランでは、母親サラの兄のラバンのもとで二人姉妹のラケルを嫁にもらうために7年間無償で働きますが、その働きぶりが気に入ったのか、ラバンは姉のレアを強引に娶らせ、その上で、もう7年働けばラケルも嫁として良いといいます。
結局14年間も働くわけで、ずいぶん忍耐強いともいえますが、単にそれだけではなく、そこにはやはり狡賢いヤコブならではの計算が働いていました。ヤコブの神はどうやら、そういうヤコブのしたたかさを評価しているのかもしれません。
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