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旧約聖書物語 6

新たな指導者ヨシュアに率いられた
ヤコブ・イスラエルの民の領土の獲得

谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi

目次
1 民を率いる者ヨシュア (ヨシュア記 1~5)
2 エリコ攻撃 (ヨシュア記 6)
3 遊女ラハブ (ヨシュア記 6)
4 神との約束を民に伝えるモーセ その2(出エジプト記 19~24)
5 アイの街の滅亡 (ヨシュア記 8)
6 五人の王の征服 (ヨシュア記 9)
7 アロンの死と青銅の蛇(民数記 17~21)
8 五人の王の征服 その3 (ヨシュア記 9)


1 民を率いる者ヨシュア 

 (ヨシュア記 1~5)

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モーセの死後、神はヨシュアに
モーセに代わって民を率いる者よ
既にモーセに告げたように
南の砂漠から北はレバノンの山を超え
大いなる河ユーフラテスいまで
そして西は陽の沈む大海に至る地域が
私がお前達に与えた領土である。
大いなる力と勇気をもって進む限り
全ての戒めと掟を守り尽くす限り
お前の道は何処までも続く。
お前の神が何処までも
お前と共に行くのだから、と言った。

こうして神の声を聞き
民を率いる者となったヨシュアは
早速、全軍、とりわけ先鋒である
ルベン、ガド、マセナの4方の部隊に
攻撃の準備をさせ、同時に
エリコの街に斥候を出した。
斥候は、民の軍の多さと勢いを前に
敵が既に脅えきっていることを告げた。

さて、ヨルダン河を渡るにあたって
神はヨシュアに
奇跡を起こすことを告げ
ヨシュアは主の言葉通り
まず全軍に先立ってレビ族の祭司達に
神の契約の箱を担がせ
ヨルダン河を渡らせることにした。
すると箱を担いだ祭司達が
河に足を踏み入れた途端
河はその流れを止め
水は遥か上流で壁のように立ち
民が渡り終えるまで流れを止めた。
神はこの奇跡を以て、ヨシュアこそが
かつて葦の海を割ったモーセと同じく
民を率いる神の僕であることを
すべての民に知らしめたのだった。
こうしてイスラエルの民は全員
ヨルダン河を渡り終え
ヨシュアはこれを記念し
十二部族の長に
それぞれ一個ずつ河の石を拾わせ
それを建立し奉った。

ここでもモーセの後継者であるヨシュアが、モーセと同じ様に水の流れを断つ奇跡を起こすことによって彼が神の祝福を受けた者であることが示されます。こうしてヨルダン川を越えた民は、川の石を神に捧げて感謝します。つまりこの神は、何かを民に与え、そして民がそれに対する感謝を形に表すという、対話によって成立する神です。この関係は、掟を重視するユダヤ教や、神への献身(それを表す行い)を重視するイスラム教に強く受け継がれています。


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