私の好きな本

「あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう」
そう訊かれたとき、私はいつもこう答えることにしている、「暗い海の底や、遠い空の彼方の宇宙を照らし出す必要があるからだ」と。


今日は私の大好きな本、辻村深月さんの『凍りのくじら』を紹介します。中学生の時に出会って、今でも時々読み返すくらい大好きな本です。辻村深月といえば、近々彼女の代表作『かがみの孤城』がアニメ映画化されるみたいです。小説の時点でめちゃくちゃ泣けるので、映画館では号泣間違いなしですね。ぜひ映画館に足を運んでみてください^_^
せっかちババアすぎたかな…

〈あらすじ〉
藤子・F・不二雄を敬愛するフォトグラファーの父を持つ高校生の理帆子の趣味は、藤子の創るSFの世界「少し・不思議」を真似て、自分を取り巻く個性に名前を付けること。Sukosi・Fuzoroi(少し・不揃い)な友人と遊び、Sukosi・Fukou(少し・不幸)な病床の母親の見舞いに行く毎日に、理帆子は息苦しさ、居場所のなさを感じていた。そんな彼女の個性は「少し・不在」。
ある時、理帆子は別所あきらという青年と、郁也という言葉を話せない少年と出会う。理帆子は彼らとの関わりの中で少しずつ心を開き、変化していく。


 この本は、本当に大切なものがなくなるとはどういうことなのかを教えてくれる。思春期の少女特有の繊細さやアンバランスな心理が細かく描写されている点と、作者の仕掛けた叙述トリックが非常に面白い一冊だ。はじめは理帆子の人にレッテルを貼るところや、家族や友人を見下しているところが好きになれないかもしれない。しかし、自分の傲慢さや甘えを自覚しながらどうにもできずにきた理帆子が、時折逃げながらも少しずつ大切な人を見つめ、人の助けられながら「生きている自分」を見つけていく過程、彼女の人間臭い部分を見ていくうちに、少なからず理帆子に共感できるところがあるのではないだろうか。
冒頭の文は、大人になり、父を継いでフォトグラファーになった理帆子の言葉だ。かつて凍りのなかに閉じ込められたくじらのように孤独感を感じていた理帆子に光を与えてくれた人たちのように、自分も誰かに光を与えられるようになりたいというのが、彼女がフォトグラファーの道を選んだ理由である。母の死と父の不在を乗り越え、遺志を継いでフォトグラファーとして大成した理帆子を見ると前向きな気持ちになることができる。
 また、章の題名がドラえもんの秘密道具になっている点も魅力の一つで、誰もが一度は見たことがあるドラえもんが物語と絡んでくるのが面白い。

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