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台北プライベートアイ/紀 蔚然

 劇作家で大学教授でもある呉誠(ウ―チェン)は若い頃からパニック障害と鬱に悩まされてきた。ある日、日頃の鬱憤が爆発して酒席で出席者全員を辛辣に罵倒してしまう。恥じ入った呉誠は芝居も教職もなげうって台北の裏路地・臥龍街に隠棲し、私立探偵の看板を掲げることに。
 にわか仕立ての素人探偵は、やがて台北中を震撼させる六張犂(リョウチャンリ)連続殺人事件に巻き込まれる。呉誠は己の冤罪をはらすため、自分の力で真犯人を見つけ出すことを誓う。
監視カメラが路地の隅々まで設置された台北で次々と殺人を行う謎のシリアルキラー〈六張犂の殺人鬼〉の正体は?

探偵VS犯人のスリリングなストーリー展開と、ハードボイルド小説から受け継いだシニカルなモノローグ、台湾らしい丁々発止の会話。
台湾を代表する劇作家が満を持して放った初めての小説は台湾で話題を呼び、台北国際ブックフェア大賞などを受賞。フランス、イタリア、トルコ、韓国、タイ、中国語簡体字版が刊行された。
2021年に邦訳が刊行されると日本でも話題を呼び、2022年には第13回翻訳ミステリー大賞とファルコン賞(マルタの鷹協会日本支部主催)のダブル受賞を果たした。

【相関図】

台北プライベートアイ/紀 蔚然 P253
『日本人というのは,実に奇妙な民族だ。彼らは生きている間に死の境地に憧れ,生命のこちら側の岸から,冥土の川の彼岸を眺めている。
中国人とインド人は長い間,三食まともに食べられず,外国人に侵犯されてきたから,もちろん,そんな暇はない。
 中国では,列に並ぶ文化はまだ始まったばかりで,人の命も安く扱われているから,連続殺人犯がきわめて少ないのも当たり前だ。新興大国である中国は今,とにかく無我夢中で前に突進しており,ちょっとでも歩みの遅い物はすぐに現代の列車に乗り遅れる。
 それに加えて,法治の概念も社会福祉も未発達だから,金持ちは贅沢三昧の生活をし,貧乏人は路頭に迷っている。』

【感想】
最近話題の華文ミステリー。台湾の街案内みたいなところもあって面白い。主人公は大学教授,演出家だったが,辞めて私立探偵を始める。半分は作者本人が投影されているらしい。殺人事件の犯人と疑われるが,捜査に加えろと強引に犯人捜しに。全編冗談みたいな話だが,元々日記を物語にしたらしく,作者の哲学思想,仏教思想も書かれて。台湾ではその国民性から連続殺人などは起こらないのだと。ほとんどが金と怨恨。大陸中国人の気質も描いてあって,軽く読めるものの結構深く社会性が書かれていており,ここが評判がよいところなのだろう。

日本人評はなるほどと。
中国人の気質が分析されているが,これが移民されたら日本は勝ち目はないなと。日本はどうなるのか?

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