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荊の城/サラ・ウオーターズ
CWAヒストリカル・ダガー受賞&第1位
「このミステリーがすごい! 2005年版」海外編ベスト10
19世紀半ばのロンドン。17歳になる孤児スウは、下町の故買屋の家に暮らしていた。ある冬の晩、彼女のもとに顔見知りの詐欺師がやってくる。さる貴族の息子というふれこみで、〈紳士〉とあだ名されている、以前スウの掏摸の腕前を借りにきたこともあった男だ。彼はスウにある計画を持ちかける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その巨額の財産をそっくりいただこうというのだ。スウの役割は、令嬢の新しい侍女。スウはためらいながらも、話にのることにするのだが……。
相関図
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【感想】
いわゆるゴシックミステリというやつでしょうか。大人たちが策略し,スリの女性とお城のお嬢さんが絡むという設定はなかなか面白いが,割と話は進まない。が,第1部の終盤になるとこうなるか,という展開に。女性作家らしいきめ細かい描写がいい。百合的展開も妖しい。下巻へ。
スリの女性スーザンと,お嬢様モード。第2部は精神病院に閉じ込められたスーザンの側から書かれる。長きにわたる策略と,思い通りに動いたかどうかわからないが,その策略の中に放り込まれた女性たちの翻弄される姿がよく描かれている。やたら「本」(エロ本)にこだわり続ける異常なじいさんが出てくるが,「本好きな読者」への当てつけなのか?やはり19世紀という設定がよく,妖しさも十分,ディケンズが意識されているらしい。評判通りできのいい小説だと思う。