脳アパ公開立ち合いで「箔押し」の可能性にワクワクした話【備忘録】
この度ありがたくもご縁をいただきまして、S_D様主催のもと、コスモテック様にて開催された『 脳内アパルトマン 』 箔押し公開立ち会いにお邪魔して参りました!
普段は趣味で同人誌を出す傍ら、副業で細々と装丁デザインをしていますが、箔押しの『立ち合い』は初めてで貴重な機会だったため、自身の備忘録としてここに感想を纏めておきます。
(初めてのnote記事につき、至らぬ点も多いかもしれませんがご了承ください)
▼いざ、コスモテックさんへ!
2024年2月17日、初めての体験に緊張と高揚を抱えながら向かった現地。
公開立ち合いには事前に選出された20名のみが参加出来るとのことで、恐らく知り合いも居ないだろうと緊張がピークの私(※人見知り)
早く着きすぎて周辺をうろついていたところ、同じく立ち合いにいらっしゃっただろう参加者の方にお声掛けをいただいたことで少しづつ緊張もほぐれ、大変有難かったです……!
中に入ると、S_D様、並びにコスモテック前田様、青木様があたたかく出迎えて下さいました。
お名刺と名札、紙のサンプルをいただいてから席に着くと、箔押し機の前にずらりと並ぶ箔サンプルや箔のロールが!
その種類の多さにまず驚きました。
前田様と青木様、そして今回『脳内アパルトマン』の発刊を予定されているS_D様より最初のご挨拶。
そして前田様より、箔押し機の説明をいただきました。
▼知っているようで知らなかった「箔押し」のこと
「箔押し」と一言で言っても全てのデザインが同条件で押せるわけではなく、デザインによって版の材質を変えたり、実際に押す際に様々な調整をすることで細かさの再現を実現しているのだとか。
「圧の強弱」「押さえるスピード」「温度」など、箔の特性に合わせた丁寧な調整により作品が作られていることを知りました。
う~~ん!なるほどまさに職人技……!
調整次第では、箔を「ヴィンテージ風に、あえてかすれさせる」といった表現も可能とのことで、実際に押されたサンプルを見ながら表現の相談に乗ってもらえるのも立ち会いの利点だと感じました。
個人的に、説明を聞きながら特に驚いたのは「高さの微調整」について。
版を押す際、箔ののらない部分に薄紙を敷いて高さが均一になるよう調整をするそうなのですが、薄紙を重ねて平にするこの微調整、全て手作業でやられているそうで……!
今回の調整にかかった時間は二時間程とのことでしたが、デザインによってはこの微調整に半日を費やすこともあると聞いて驚きました。
ひゃ~……やっぱり職人技……!
箔押し機の説明をいただいた後は、実際にS_D様デザインの『脳内アパルトマン』カバー&帯デザインでの箔押し作業を見せていただきました。
箔押し機が実際に動くところを見るのは勿論初めて。
上部に取り付けた版を確認しやすいよう、紙を設置するための土台が鏡面になっていることや、箔の種類によってロール幅や厚み等にも違いがあること、箔を無駄にしないためには面付けに工夫がいることなど、実際に機械や作業工程を見ながら話を聞けたことで理解が深まった気がします。
使う箔の種類に合わせて前田様がリアルタイムに各種数値の微調整をされる様子などを見せていただく間、参加者の皆様から積極的に質問が上がっていたのも印象的でした。
どの質問にも気さくに答えて下さる青木様の様子から、実際に立ち合いを依頼した場合もこうして密にコミュニケーションを取りながらすすめてくださるんだろうなぁとイメージが出来たのも嬉しかったです!
サンプルとして並べて下さっていた箔のロールには、普段あまりラインナップでは見かけないような珍しいものも。
日本の箔メーカーさんは『売れるもの』を分析して出している印象があるが、海外の箔メーカーさんは使いどころが難しいトリッキーな柄物を出してくることも多いとのこと。
なお私もポーラライト箔の廃版を悲しんでいる勢ですが、まだかろうじて在庫があるうちに一度使ってみたい箔のひとつ。
実物が見れて嬉しかったです……!
(ちなみに箔のお値段は、メタリック<顔料<ホロ<透明ホロ らしい)
▼組み合わせで見えた「可能性」
まずは、あらかじめS_D様が決めていらした紙5色×箔の組み合わせでサンプルが作られていくのを見学。
どれも綺麗なのは勿論ですが、紙と箔の組み合わせ次第で同じデザインでもガラッと印象が変わる驚きをリアルに実感しました……!
>S_D様チョイスの組み合わせ、個人的に印象に残っているものメモ
◆タント黒×顔料箔の黒箔(つやあり)
◆タント黒×メタリック黒箔
└同じ黒箔ですが、ギラつきが違う組み合わせ。
マットな紙の材質と、つやありの対比が綺麗でした。
紙と同系色の箔押し、見づらくなったらどうしよう……と、個人的には避けてしまいがちな組み合わせだったのですが、実際に見てみるとなんとも贅沢な箔の使い方……!
実際に手に取る紙の本だからこそ、反射で浮き出るデザインが凄く格好よかったです!(同じ黒系統の箔でも、肉眼で見た印象がそれぞれ違ったのも面白かった)
◆タント白×ホロシルバー箔
◆タント白×トラストカラー箔
└ホロシルバーは、THE箔押し!という感じでギラつきが最高に好みでした……私はひかりものが好き……
└トラストカラー箔は偏光がある箔で、角度によって薄ピンク~若草色に変わるのですが、これがまた!綺麗で!!!
青木様曰く、エンボスを追加して意図的に湾曲部分を作ると、より一層光の反射が綺麗に出るそう。現状でも十分綺麗なのに……さらに綺麗に……!? と思わずそわついてしまいました。
◆タントクラフト×顔料箔の白(マット)
◆タントクラフト×メタリックピンク箔
└マットとメタリックの対比は黒い紙でも見たのですが、クラフト紙になるとまた印象が変わる~!
ちなみに顔料箔は他の箔と比べて柔らかく、細かすぎるデザインには不向きなのだとか。
サンプルで押していただいたものを他と見比べると、確かにバーコード部分などの細い線が潰れかけているのがよくわかりました。
実際、ベタが多い&細かい線が組み合わさったようなデザインの場合は再現の難易度が高く、ベタ部分と線部分を分けて押したりすることもあるそう。
数々の箔押しを手掛けてきたコスモテック様だからこそ、どうしたら元デザインを最大限綺麗に再現出来るか、常に試行錯誤されているのを感じ、大変心強かったです……!
◆タント紺×NT70レインボー
└虹色の反射が入った箔。普通に押されたものも勿論綺麗だったのですが、通常だと反射が横向きの線で入るのを「斜めにしたり出来るんですか?」の一声で、反射向きを変えたものもその場で押していただきました!
角度をつけて箔を敷くことで反射の向きを変えるのは、手差しだからこそ出来る調整とのこと。
確かに斜め向きの反射にしたものの方がパッと見て動きがついた印象でした!
やっぱり実際に「○○だとどうなるんだろう?」という疑問にその場で答えがいただけるのは、立ち会いの強いメリットですね。
◆タント赤×ホロゴールド
└ホロゴールド、赤い紙に乗せるとおめでたさもマシマシ&THE箔押し!という感じでやっぱりギラつきが好みでした……私はひかりものが好き……(2度目)
赤い紙に組み合わせる箔はS_D様の中でもまだ「これだ!」というものが見つかっていなかったようで、この日、参加者様の試した組み合わせからぴったりなものが見つかれば採用されるかも!という嬉しいお話もありました。
▼自分だけの『脳アパ』カバー&帯!
S_D様チョイスの箔押しラインナップをひととおり作り終えた後は、各自、自分の好きな紙色×箔の組み合わせで自分だけの『脳アパ』カバー&帯を制作するターンに。
机に広げられた、ありとあらゆる種類の箔サンプルを前に物凄く迷う私……!
実際にコスモテック様側でご用意いただいた紙色×箔のサンプルも圧巻で、これだけでも十分見応えがありました。
組み合わせが決まった方から順番に前田様が箔を押してくださるのですが、参加者様チョイスのサンプルが出来あがる度に「おお~っ!」と声のあがる会場の一体感が心地よかったです^^
そしてどの組み合わせももれなく可愛かった……!
自分が選ばない組み合わせが見られるのが新鮮で、この紙色と箔の組み合わせ思いつかなかったけど自分の本で使ってみたい~!と思いながら、有難く皆様のサンプルに刺激を受けさせていただきました!
他の皆様の組み合わせから刺激を受けること数十分……優柔不断が極まりつつも、ついに心を決めました!
最後まで迷ったのは『白×ホログラムブルー』と『黒×ロイヤルパープル』
光りもの大好き人間なのでギラギラ強めなホロ青は大変心惹かれましたが、最終的に欲望に負けて後者を選択しました(※推しの概念カラー)
濃い紙に濃い色の箔なので埋もれちゃうかな? と思ったのですが、いざ押してみると反射がギラついて格好いい~~!!!!新刊でやりた~~い!と一気に絆されるチョロい私。
「押された箔をめくって剥がす」というのも人生で初めて体験したのですが、めちゃくちゃ気持ちいいですねこれ……クセになりそう
(箔をめくるのが楽しかった動画はこちら↓)
箔の抜け殻(剥がした後の残り)は残念ながら廃棄になるとのこと。
あれだけでも綺麗だから何か有効に活用出来ると良いのにな……と思いながら、記念に抜け殻もいただいて参りました……!
(家にホットスタンプペンがあるので、余白部分で遊ばせてもらう気満々)
色々と試している合間に、封筒への箔押しも見せていただきました!
本は勿論のこと、グッズを作るのも大好きなので個人的に興味津々でサンプルを観察……開いた部分にデボス加工みたいに跡が残るの良いな~!
開く/閉じるでデザインにギミック仕込むのも楽しそう!
▼最後まで熱量たっぷりの質疑応答
思い思いのカバー&帯の箔押しが終わり、最後は全体の質疑応答へ。
皆様から前のめりな質問がぐいぐい飛び交うのを眺めながら、大変刺激を受けました!(私はグッズに関する質問をさせていただいた)
・でこぼこした紙はカスレが出やすい(例:レザックなど)
・最少ロットは一部から受け付けていただける!
・紙の余白を上手く使うとよい
→一回の箔押しで余白が出る部分に、しおりや帯などを面付けするなど
※版代は追加でかかる/細断料金は場合による
→細断を別の印刷所にやってもらう方法もあるため
・立ち合いは追加料金なしでさせてもらえる
→S_D様「立ち合いは絶対したほうが良いです!」
→イメージがふわっとしていても、それを箔でどう表現するか~など方法の相談にものっていただけるとのこと!
・1種類の紙に複数種の箔を重ねることも可能
→展示作品で、最大13回箔押しを重ねたものもあるそう
・入稿から納品までは大体2週間ほど
→コスモテック様には紙を準備してからお願いする必要がある+箔押し納品後に製本をお願いする印刷所様も別で必要なため、全体のスケジュール込みで〆切を逆算する方がよさそう
→本文印刷をお願いする印刷所様を検討する際、表紙持ち込みの可否などを事前に調べておくこと
・毎回上手く版が押せるとは限らないため、紙を持ち込む際にある程度余裕を持った余部の用意が必要
・皮やアクリルなど、紙以外の材質についてはサンプル品を送り、実際に押してみてもらいつつご相談が良さそう
▼さいごに
予定されていた立ち合い時間は15時で終わりだったのですが、希望者はその後も少し残って良いとのことで、S_D様が最終的な表紙の組み合わせを決定する場面にも有難く立ち会わせていただきました……!
同じ箔でものせる紙を変えることで見え方や印象が変わるため最後まで吟味を重ねるS_D様と、その要望にスピーディに応えていく前田様を眺めながら、追加で色々と現場のお写真を撮らせていただく私。
『決め』の作業が終わり、最後にS_D様が各パターンごとに用意していらした『タイトル』の由来についてもお話をうかがう事が出来ました。
タイトルのどういった部分からインスピレーションを受けてその組み合わせが選ばれたのか、意図を知ると「なるほど……!」と思う組み合わせばかりで、デザインには全て理由があるのだと改めて気付かされた気持ちです。
※実際に決定した10パターンは、S_D様発刊の『脳内アパルトマン』実物をお楽しみに!
(この時はまだ帯とカバーの組み合わせが決まっていなかったため、最終版がどうなったのか私も今から楽しみです!)
80名ほどの応募があった中から、有難くも参加の機会をいただけた今回の立ち合い会。
私には分不相応なんじゃないか、知らない人ばかりの中に飛び込んで大丈夫かしらと散々悩み、当日は緊張しすぎて胃痛もあったのですが、実際に参加を終えた今は「勇気出して申込んで良かった~~!! 」と、過去の自分を褒めたい気持ちです。
憧れだったコスモテック様の技術を目の当たりに出来たことや、他の参加者様の熱量に沢山刺激をいただけたこと、そしてS_D様のデザインの考え方に触れられたことも全て、勇気を出して申し込まなければ得られなかったものでした。
自分のやりたいことや、こだわりに好きなだけ熱量を込められるのが同人誌の良いところ。そして今回の立ち合いを経て、コスモテック様はそういった想いに寄り添ってくださる場所なんだと感じました。
電子書籍やWebtoonが流行っている中でも、やっぱり私は『紙の本が好き』だと改めて思えたし、コスモテック様に箔押しを頼めるよう頑張るぞ! と、これからの創作にワクワクしています。
最後になりましたが、企画を実施してくださったS_D様、貴重な体験をさせてくださったコスモテック様、同じ時間を過ごしてくださった他参加者の皆様、本当に有難うございました!!
またお世話になる機会がありましたら、何卒よろしくお願いいたします!
▼コスモテック様のnote