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マジック:ザ・ギャザリングが転売ヤーに狙われにくい、いくつかの理由

最近はトレカブームもあり、転売流行っていますね。マジック:ザ・ギャザリング(MTG)は、「カードの価格ってどんな感じで決まるの?」に書いたように、他のTCGと比べて資産性も高く、世界的に見れば人気も高いため、転売の対象にもなりうるが、中々そうはなっていない。なぜ転売されにくいのか解説していく。

①単価が高い

通常エキスパンションでは、1パック440円。1BOXであれば、14,400円。コレクター向け商品であるコレクターブースターは、1パック2200円。1BOX26400円と高い。

最近の商品での1パックの最高額は、メーカー希望小売価格で『ダブルマスターズ』VIP版で1パック12,000円。1BOXの最高額は、『モダンホライゾン2』のコレクター・ブースターで、47,520円と他TCGと比べてかなり高額。コレクター・ブースターは、一度きりの生産とされているため将来的に狙われる可能性もなくはないが、現時点では品質の問題もありほとんどのカードセットでメーカー希望小売価格を下回って販売されている。

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原文:PROJECT BOOSTER FUN
日本語:プロジェクト・ブースター・ファン
(Unlike Draft Boosters and Theme Boosters, which can be reprinted, the Collector Boosters will be a limited print run. )

単価が高いため、コンビニなどの回転率を優先した店舗にとっては在庫になってしまった場合のリスクが高く扱いが難しい。そのため売られている場所も少なく、単価が高いので「フリマサイトで高額で売れるから私もコンビニで買って転売しよう!」とはなりにくい。高額転売では、PS5は定価約5万で、転売で6~10万で売られるようなので可能性はなくはないが、MTGがPS5並の社会的注目を浴びる商材かというと残念なことに、そうはならないだろう。供給能力も非常に高く、日本で突発的な需要が生まれたとしても、他国の印刷所で日本語版を増産することも技術的には可能だろう。

更に言えば、単価が高いのでフリマサイトで捌くにしても手数料が重くのしかかってくる。最安のドラフト・ブースターでもメーカー希望小売価格14,400円なので、1つ転売で3000円儲けようとするなら、送料を考慮すると、店売りが2万円を超える状態でなければならない。その場合でも利益率は非常に低く、在庫を抱えるリスクと再販のリスクが付きまとう。送料を抑えるためにパック単位の販売をしようとしても、サーチの可能性が出てくるため価値が下るので難しい。ポケモンカードゲームの転売では、1BOX約5000円がメルカリなどで8000円ほどで売られているため、1つあたり2000円程度の利益がでるため利益率が非常に高い。

大人気で海外需要もあった『灯争対戦』でも、最終入荷以外はスタンダードで使用可能な時期(再販される期間)には2万を超えなかったので現実的ではないだろう。では、予約価格で大量に入手して販売すれば良いと考えるかもしれないが、それも中々難しい。値段改定後のドラフトブースターの予約価格は、11,800円なので20%ほど安く購入できるが、捌く際に発生する手数料と送料を加味すると商品が、定価から10%以上高騰しないと利益が得られない。下手すると損することも多く、最近発売された『ゼンディカーの夜明け』は、現在定価から30%ほど低い、1BOX8,400円で売られている。加えて言及すると、PS5のようにソフト販売のため、需要が高まっても普及のためにメーカー希望小売価格で売るということも少なく、予約分と初回生産分以外は、需要によって値段が調整される場合が多い。

販売形式も、1:ショップが情報がほぼない中で問屋に発注 2:予約開始 3:公式からのカード情報の発表 4:予約終了とともに発売 となっている。予約段階では、メーカー希望小売価格から10~20%ほど割り引かれた値段で購入できることが多い。信心深いプレイヤーはカードの情報を見る前から予約する場合も多く、カード情報の発表も数日間に渡るため、内容によってじわじわ予約数が増えたり減ったりする。封入率の厳密な発表もされないため、発売まで情報が完全にはわからないし、計算できる頃には予約期間は終わっている。

予約期間が比較的長く、プレビュー期間中にも予約できるため、予約段階である程度の需要はわかるため、追加の発注がしやすいシステムなのかもしれない。

②需要の硬直性

多少の人気の上下はあるものの、乱高下はあまりない。これは、カードの資産性が高く、インフレも起こりにくいという特徴があるため、固定客が多く、新規参入者は少ないということが関係しているかもしれない。アンケートによるとプレイ歴1年未満は約14%で、約半数は5年以上のプレイ歴であると答えた。(2020年12月~2021年1月)

日本では、トレーディングカードにおいて、可愛さだったり派手さが好まれる傾向があり、MTGは、他カードゲームとイラストやゲーム性が明らかに異なるため、一定の需要が安定した水準で存在しているのかもしれない。(データなし)

日本で生まれたTCGが強すぎるのも一因で、遊戯王やデュエルマスターズは、子どもの頃から親しまれ、最近では大人にも楽しまれるようになっている。ポケモンカードゲームの勢いは物凄く、最新の決算報告書では、過去最高益を出している。

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WotCとしても、日本での新規参入者の獲得は半ば諦めたようで、大会にも参加できる構築済みデッキである、チャレンジャーデッキこそ売られているものの、2パックから遊べる『Jump Start』や、デッキを組みやすいように特定のテーマを中心にしたパックであるTheme Booster、最近では基本土地やストレージとパックなど初心者にはピッタリのBundleさえも英語版のみの発売となり日本語版はなくなった。デッキビルダーセットも『テーロス還魂記』以降は売られていない。以上のことから、インフルエンサーの登場とゲーム性の紹介や、大人のカードゲームといったブランディングによる地位の向上など、外部の要因がない限りは流行るのは難しいと個人的には思っている。

MTGのトレーディングカードゲーム内の立ち位置についてもう少し詳しく説明すると、2019年度(2019年4月~2020年3月末)の売上は、約47億円で6位となっており、ヴァイスシュヴァルツやバトルスピリッツよりも売上は低かった。国内のトレーディングカードゲーム業界情報とされているため、デジタル版の売上やSecret Lairの売上は含まれていない可能性が高い。

最近はやや好調で複数の発表で15~25%規模の成長があるとされているが、それでも、"日本の市場おいて"は、遊戯王・デュエルマスターズ・ポケットモンスターには遠く及ばない。

※「​カードキングダム」の創業者、池っち店長によるデータの公表に疑問を持つ人はいるかもしれないが、池っち店長は、毎年データを公表し、メディアクリエイトの情報を基にしているようなので、"データに関して言えば"、ある程度は信頼できると考えている。コメントについては個人の意見のため触れない。

余談だが、世界規模でのWotCの売上は、240億円規模とされている。読みやすい参考文献はこちら

世界的に見れば日本の市場は活発なようで(コレクターが多いのも要因かもしれないが)、『エルドレインの王権』から発売され始めた特殊仕様のカードを多く封入したコレクターブースターの登場時は英語版と日本語版のみ発売され、その後のエキスパンションからは他の言語でも発売された。『灯争大戦』や『ストリクスヘイヴン:魔法学院』では日本語版のパック限定のカードが封入されたり、PWCSでは、日本オリジナルプログラムが実施されたりとかなり優遇されている印象がある。

※コレクター・ブースターという製品は『ラヴニカの献身』が初で、通常コモンを封入しない変則パックとして日本で実験的に発売されていた。このときには拡張アートやボーダーレス仕様のカードは封入されていない。

ポケモンカードゲームのように、新規参入者が異常なほど増加すれば、転売の対象になる可能性もあるが、現状では難しく、先程も説明したように世界規模での印刷体制をもっているので、数量限定品以外の転売は難しいだろう。

③インフレしにくい。

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マジック:ザ・ギャザリング(MTG)も、TCG共通の悩みである、売上を伸ばすためのカードパワーのインフレが少しずつ進行している。しかし、MTGはインフレしにくい仕組みが複数備わっており(スタンダード・ローテーションや再録禁止というパワーの上限)、加えてカードデザインが非常に優秀で、メカニズムや能力を増やすことによりプレイヤーに新たな体験を与えている。最新弾であればあるほど強い訳でもなく、カード同士の相性によっても強さが変わってくるのがMTGの醍醐味。

ただ、インフレしにくい(させにくい)ため、スタンダードのカード・セットで売上を伸ばすのは、WotCも苦心しているようで、様々な試みを試している。カルドハイムはスタンダードのカードパワーでありながらEDHでもプレイアブルな伝説のクリーチャーを多く封入し、一定の成果を挙げた。

スタンダードと同程度かそれ以上の人気がある非公式フォーマットの統率者戦では、ハイランダー構築という基本各1枚ずつしか同名カードをデッキに入れられない遊び方が人気なのも関係しているだろう。1枚あれば良いので複数のパックを開けるよりもシングル買いの方が経済的だろう。

転売が横行し、入手難や高額になりすぎると、過去の絶版パックから出るより強力なカードを購入する方がコストパフォーマンスが高いのも転売が行いにくい要因になっているだろう。

④言語・テーブルトップ依存性が低い

他の多くのTCGでは、日本語版のみ使用可能としてる場合も多く、更には裏面のデザインが異なる場合も多い。MTGの場合は多くの場合、公式大会であっても英語などの日本語以外のカードの使用が認められている。イラストが同じなので、競技プレイヤーは大体のカードは見ただけでわかるし、わからない場合はジャッジにお願いして確認することができる。

そのため、日本語版が買い占められても英語版を購入するという選択肢があるため、買い占められてもプレイするのに影響が少なく、転売ヤーに高い金額を払って無理して日本語版を買う必然性がほとんどない。

デジタル版でもプレイすることができ、下環境では「Magic Online」、スタンダードに近い環境では、「MTGArena」でプレイできる。そのためテーブルトップの依存性が低く、コレクション目的でもない限り転売が横行した場合には、デジタル版を楽しみながら再販を待つという選択肢もあるだろう。

転売っぽいのなくはなかったね。

『Commander Collection: Green』は、近年人気の統率者で使用されやすいカードのセット。Premium Editionは、WPNプレミアムストア限定製品。通常版はWPNストア限定製品であり、流通数も少なかったため。プレ値がついた。Premium Editionは、販売額10,000円だったが、フリマサイトでは30,000円で取引されていた。

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転売の基本原理は、買い占めて高額で売る。もしくは、列に並べばお金が手に入る。⇒コンビニに行けばお金が手に入るという手軽さが売りで、最近では、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の「ファミリーマートでマジックを買おう! 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』特製デッキケースプレゼントキャンペーン」において、ファミリーマートでドラフト・ブースター3パック(1パック400円)購入で、特製デッキケースが貰えたが、デッキケースがメルカリなどで1つ1000~2000円で取引されるほど人気となったため、販売促進のはずが、店員の特典横領疑惑などの自体に発展した。残念。

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以上の4つの理由からMTGは転売に適していないため、転売ヤーに狙われにくいと考えられる。次回は、MTGで儲けるにはどうしたら良いかをデータとともに紹介するが、甘い話じゃないので期待しないで欲しい。

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