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日本の人口の際立った特徴

Global noteで日本の人口の15歳-65歳人口比率を見てみると、58.46%という数字が出る。これは概ね生産年齢人口と考えて良い。
G20の中で最も低い値であり世界218か国中、176位という順位である。

一番下の青が日本 出典:世銀 データ更新日:2024年7月18日



そして日本より順位が下の国は、シエラオネ、パレスチナ、トーゴ、ザンビア、アフガニスタン、ブルンジなど、所謂ピラミッド型の人口構造を持つ途上国である。唯一の例外はモナコ公国だが、同国は都市国家で、所得税がなく、引退した富裕層が移住する街であり、例外的な国家といえる。
イスラエルは166位だがかの国も非常に特徴的な人口構造を有するがここでは省略する。
いわゆる先進国ではフランスの60.96%(159位)が最も近い順位の国ということになる。
この15歳-64歳人口は、最大82.92%(アラブ首長国連邦)、最小48.84%(ニジェール)と、あまり国による幅がない。

さて、高齢者扶養率という別の数字があって、これは15歳以上65歳未満人口に対する65歳以上人口の比である。
この数字は、カタールの1.95%からモナコの70.26%まで多様な値を取る。

これが何を意味するかというと、従属年齢人口にはある程度の限界があるのではないか、ということだ。

つまり、高齢者が多すぎると、子どもはあまり生まれなくなり、子どもが多すぎると、高齢者を多くできる程度の社会の安定性や社会保障制度が維持できないのではないか、ということだ。

高齢者はしばしば一人で生きていくことが難しい。
収入面の不足を補うために年金が必要で、身体機能の低下を補うために医療・介護保険や家族による介護を要する。

日本で考えてみよう。
年金の2/3は現役世代からの保険料で賄われる。1/10が積立金の取り崩しと運用益で賄われ、その残りは国庫支出になる。
つまり多くが現役世代の給与から天引きされる厚生年金から成り立っているということだ。
また、医療・介護保険料も多くは給与から天引きされており、一部が国庫や都道府県、市町村からの支出になる。

つまり、高齢者は、生存のための資源を現役世代に依存している、ということになる。
介護が家族によって行われることもあるが、これも多くは現役世代である家族によって行われている。85歳の夫を85歳の妻が全面的に介護するのは難しいことが多い。

次に子どもを考えよう。
育児は基本的に両親に依存する。特に乳幼児の場合は片方が育児に専念することで成り立つだろう。
また、小学生以降になっても生活に関する諸費用は両親の収入に依存する。

他者の労働や資金に生活を依存する点は、高齢者も子供も一緒だが、異なっている点がある。

それは、高齢者への拠出金を支払わないことは労働している限り基本的には困難である一方、育児はしないことを選択できる点だ。

つまり、子どもを持たない選択をすることが可能なのだ。
故に高齢者への拠出金が増えれば増えるほど、子どもを持たない選択をする人は増えるだろう。

こうした仕組みがあるからこそ、15歳-64歳人口はある程度の数値の範囲に保たれるのではないかと思う。


高齢者を優遇する今の制度が持続する限り、社会保障費や税負担は増加するだろう。この負担増に対して、所得を維持するための2つの戦略と1つの犯罪がある。

まず、マイクロ法人を設立してフリーランスとなり、経費を使って収入を最小限に抑え、社会保障負担を減らす擬態老人戦略だ。

様々なものを経費化し、実際に使えるお金を増やすため有効な戦略ではあるが、ある程度一人で仕事ができるような職種であり、かつ書類仕事が苦ではないタイプでないと難しいだろう。

この戦略は個人にとっては利益をもたらす半面、国家としては年金や社会保険料を十分得ることができず、こうした戦略が増加すれば社会保障の維持は困難になる。

もう一つは、子どもを作らない、あるいは子供の数を制限することだ。独身を維持する、結婚しても子供を持たないということだ。いずれにせよ子育てにかかるお金の分を節約できる。

これも個人にとっては利益をもたらすが、国家としては将来生まれる子供の数が増えず、20年後の納税者が減ることに繋がる。

最期に、アウトサイダーの世界で生きる方法がある。犯罪行為による収入は、そもそも申告できない。何で稼いでいるかが国に知られた時点で刑事罰のリスクがあるからだ。銀行口座の作成もリスクがあり、収入の多くを現金の形で保有しなければならない。状況によってはブランド品や貴金属など、換金性の高い実態資産で保有することにもなるだろう。恐らくロマの生き方に近い。

ロマの生き方は、「崩壊5段階説: 生き残る者の知恵」に詳しい。

物乞い、窃盗、搾取、詐欺、馬泥棒、密猟などによって収益を得て、これを拡大家族内で分配する。彼らは独自の相互扶助制度を持ち、徹底した秘密主義と居住地へのこだわりのなさを持つ。彼らは資産を銀行などには預けない。彼らから課税するのは困難を極めるだろう。

成功したアウトサイダーの増加は、治安の悪化を引き起こし、ブラックマーケットを拡大させる。当然ながら彼らから社会保障費や税金を徴収するのは困難である。

失敗したアウトサイダーは、刑務所に収監され、前科がつくことになるが、彼らが元の能力を生かして労働市場に復帰することもまた、困難がある。
つまり失敗したアウトサイダーからとれる税金や社会保障費の総額は、彼らがまっとうに社会で働いていた場合より少ない可能性が高そうなのだ。

上記3つの選択肢のどれも、社会保障の維持・継続にとってはマイナスであることがわかる。そして、最も安全で、誰にでもできて、短期的には問題がない方法が、産児制限戦略になる。
そして実際の出生数も、2024年には70万人以下になると推定されている。

今のところ、合計特殊出生率は2024年の低下を例外として、2030年までゆるやかに増加し、1.3程度で推移すると予測されている。

しかし韓国では2012年に48.4万人うまれていた子どもが、2022年には24.9万人と10年で半減した。
中国の出生数は2016年の1786万人から、2023年には902万人と7年で半減している。
つまり、この程度の出生数の減少は別にあり得ない話ではないのだ。
一方台湾の出生数は23年で半減、タイの出生数は38年で半減と比較的ゆるやかなペースである。

何が言いたいかというと、急激な出生数の減少は他国に類をみないものではなく、時折起こりえるが、人口を推定する際には仮定されてこなかった、ということだ。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001093650.pdf

僕は国立社会保障・人口問題研究所が2020年に出したこの予測は、とんでもない外れ方をするのではないかと心配している。
ちなみに実際の出生率は、以下の通りだ。
2021年 1.30
2022年 1.26
2023年 1.20
2024年 1.15以下の見通し

つまり、当初は中位推定でありながら、低位推定へと移行してきているわけだ。
いままでの人口推定もそうだが、合計特殊出生率はどこかで平衡に達すると推定しているようだが、このトレンドはそうではない可能性を示唆している。

ただ、この予測は現状の社会制度が変化しなかった場合、を仮定している。
つまりこの仮定が変化することで、異なる未来を描ける可能性があるのだ。


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