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医療における責任回避のコスト

医療においていちばん大切なのは方針を決めることで、どんな治療をするかはそれによって決まってくる。
命を助けることを目標にするか
苦痛の緩和か
なるべく経済的負担を減らしつつ治療したいか
自宅で過ごす時間を長くしたいか
競技や職業への復帰を目的とするか

目標は様々だが、目標が定まれば検査や治療の方針はかなりやりやすくなる。

特に高齢者の医療はやはり、治療目標の設定が重要になる。並存症の多さや薬剤副作用の出やすさ、そして長期入院に伴う廃用の進行などを考慮しなければならないからだ。

しかし、医師の中には全く違うステージで医療を実施しているプレイヤーがいる。

責任の回避

を目標に診療しているプレイヤーだ。

彼らは決断しない。
意思決定は患者に委ねる。時に家族に。
もしくはコンサルテーションによって他科の医師に委ねる。
画像検査を乱発し、放射線科のレポートを元に診療を行う。
これはすべて、裁判を避け、医師免許を守るために行われる。

当然だが責任回避型の医師が受け持つ患者は方針が決まりづらく、高い医療費と人件費がかかり、診療は複雑化し、入院期間が長引く傾向にある。

患者の自己負担額も増える傾向がある。
そのため、若い患者からの評判は悪く、また患者さんもあまりよくならないので、高齢の認知機能が低下した患者を割り当てられる傾向がある。

高齢の認知機能が低下した患者は、その性質上様々な併存疾患を持つために、入院中に肺炎、不整脈、せん妄、褥瘡などいろいろな問題を起こす。

そのたびに専門家にコンサルテーションが行われるが、彼らも責任を押し付けられようとするのを感じるので、防衛的な対応をする。

その結果医療のコストは膨れ上がる。

明らかに非効率で不経済なこの診療スタイルが維持できるのは日本の後期高齢者自己負担率が低く、高額療養費との組み合わせによって患者自己負担が少なく、長期入院が患者家族にとって負担にならないからだ。

勿論看護師や他の医療スタッフからの評判は悪いし、上司から苦言を呈されることも多い。

しかし、防衛的なスタイルが固まってしまった後でそのスタイルを変えた医師を見たことはない。

今更リスクを取ってちゃんと自分で判断しろ、というわけにもいかない。
防衛医療というのは司法と保険制度を考慮すれば一つの適応の形ではあるのだ。

こういう診療スタイルを減らすためにも、医療費の自己負担額や高額療養費制度は修正が望まれる。




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