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社会保障費は崖が見えないチキンレースで、増額はアクセル、減額はブレーキだ。

社会保障の議論は、チキンレースでアクセルをいつまで踏み、どこまでブレーキを踏むかに例えることができる。

作者: 食べられる前頭葉

社会保障費を増額するのはアクセルだ。
アクセルを踏ませるのは、社会保障の持続性への確信度が強く、社会保障負担のさらなる増額が可能だと考える政治家・政党への投票だ。

社会保障費を減額させるのがブレーキだ。
ブレーキを踏ませるのは、社会保障の持続可能性を疑い、社会保障の減額が必要だと考える政治家・政党への投票だ。

そして崖は、国家財政の窮乏化や、社会保障制度の崩壊、革命、内戦などに由来する国家の崩壊が発生することだ。

通常のチキンレースであれば、崖がどこにあるかが見える。

しかし、このチキンレースは、崖がどこにあるかが見えない。
霧の強い日にチキンレースをやるようなものだ。

さて、このチキンレースは崖がどこにあるか、そもそも存在するかに関して議論があり、アクセル、ブレーキをどこまで踏み込むかについての意思決定が揺らいでいる。


社会保障は長期的には縮小していくと、2010年の時点で多くの若者は考えており、高齢者はそうではなかった。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11/dl/01-04.pdf

ちなみに上記項目は、令和4年度(2022年)の社会保障に関する意識調査では、言及されていない。

だが、上記の2010年のアンケート調査からは
2010年から14年が経過した現在、社会保障費に関しては現在の30代から60代は、現在よりかなり少ない給付しか受けれない、と信じている可能性が推測できる。

一方で、高齢者、特に70歳代以上は、社会保障の継続性に疑問を持っている人は少ないように思う。
上の表をみても、40歳代と60歳代に大きなギャップが存在する。
2010年に40歳代だった層は、1990年頃に就職した層が多い。

つまり、社会人になってまもなく、ないし、社会人になった後でバブルが崩壊し、就職氷河期に入ったことを認識している層が多いはずで、その経験が社会の見方に影響しているのかもしれない。

一方で、2010年の60歳代は、1990年には40歳代だ。概ね団塊世代と言ってよく、この世代の雇用は、かなり守られた。だからひょっとすると就職氷河期の影響は小さいと信じることができたのかもしれない。

さて、社会保障が今の規模で持続すると信じている人、ないし、自分が生きている間は崩壊しないと信じている人は、どのように振舞うだろうか。

恐らく、社会保障制度を最大限に利用しようとするだろう。
つまり、医学的に不要な入院を粘ったり、社会保障の継続性に関する懸念を聞き流したり、頻回に医療機関を受診し、社会保障制度を拡充するような政治家に投票する。

これは社会保障費を増大させ、崩壊の可能性を高める。

一方で、社会保障制度が持続しえないと考える人は、なるべく社会保障費を使わず、健康を維持するような習慣を身に着け、貯蓄を増やし、もしくは高齢になれば堅実に取り崩していくだろう。
また、社会保障制度を適切な規模に抑えようとする政治家に投票するだろう。

このような行為は、社会保障費を縮小させ、崩壊の可能性を下げる。

皮肉な話だが多くの人が社会保障は盤石だと考えているほど、社会保障がある日突然縮小したり崩壊する可能性が、高くなる。

そして、多くの人が社会保障は多くの人の努力でかろうじて成り立っている、崩壊寸前の制度だと信じているほど、社会保障が持続する可能性が高まる。

つまり、社会保障の維持・拡充を主張する政治家や医師、有権者はある種のチキンレースをやっているということだ。
崖から落ちる前に自分たちが亡くなったり引退(これがブレーキにあたる)すれば勝利。

その前に崖から落ちれば敗北だ。

崖から落ちるまでにどこまでアクセルを踏むか(社会保障費を増やすか)
がこの勝負のポイントだ。

アクセルを踏む候補は、支持者として膨大な数を有する高齢者を獲得できる。一方で、アクセルを踏めば踏むほど、突然社会保障制度が崩壊する可能性は高まる。

ブレーキを踏む候補は、支持者として若年層を獲得できるが、人口のボリュームゾーンである高齢者の支持は獲得できない。

https://www.populationpyramid.net/ja/%E6%97%A5%E6%9C%AC/2024/

高齢な有権者の多い、自民党、立憲民主党、公明党、共産党は社会保障がしばらくは壊れないことに賭けている。
チキンレースに例えるなら、まだアクセルは踏めると考えている。

若い有権者が多い、日本維新の会と国民民主党は、社会保障の縮小が必要だと考えている。
チキンレースに例えるなら、崖は近づいており、ブレーキを踏まなければならないと考えている。

人口ピラミッドを見た時に、最もカギになるのは
40-65歳の世代だろう。

それ以上の高齢世代は社会保障の拡大に賭ける合理性がある。自分が生きている間に崩壊する可能性は低いし、逃げ切れる可能性が高いからだ。
また、高齢であれば知識を新しくアップデートしていくの難しいので、20年前、30年前の認識できいるのも不思議はない。

今の10代から30代は社会保障が現状のまま40年以上続くことは信じることができないだろう。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21509.html

このグラフが単調に増加していけば、現役世代の負担が30年後に生存と出産・育児を諦めなければならないレベルに至ると予測することは難しくなはないだろう。

実際、下記のようなグラフがバズったりしている。

40-65歳の世代は、65歳であれば、年金は間違いなく受け取れるが、
男性ならあと20年、女性ならあと24年生きると推定される。
つまり、2040年問題にぶちあたる可能性が結構高い。

そして今の40代、50代は、有権者のボリュームゾーンでもある。

だから、この世代の判断は、社会保障の行く末を大きく左右する。

あなた方の政治活動で、社会保障を早く壊すこともできるし、長持ちさせることもできるのだ。





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