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一過性の少子化対策は無意味で、持続可能性が問題になる。

少子化対策について考えた時に最初に思いつくのは、ルーマニアの独裁者、チャウシェスクが提唱した堕胎禁止、多産奨励、独身税を組み合わせて強力な多子政策だろう。
これは一過性に出生率を二倍にしたが、HIVの流行、孤児の増加、国家財政の窮乏化などをもたらし、出生率も低下した。チャウシェスクが1989年に死亡したことで改められた。

次に思いつくのは、毛沢東による出生奨励だろう。
これも結局大躍進政策、文化大革命による大混乱に引き続いて、一人っ子政策の採用による出生率低下に至った。


資料:GLOBAL NOTE 出典:世銀

なぜ少子化対策が必要なのかといえば、一定の生産年齢人口がいなければ国家が存続できないからだ。
だから一過性の少子化対策はあまり意味がない。
3年間出生率が2倍になるけど、以降0.3倍になる、みたいな政策では意味がないわけだ。

少子化対策を行ったことで生まれた子供が、子供を作ろうとするか?
という観点が少子化対策には重要となる。

例えば婚外子の支援が少ないからそれを支援するべきだ、と考えた時には、シングルマザー・シングルファザーの子供の出生率まで考えることが必要になる。

米国の政治学者、ロバート・パットナムは「われらの子ども」(原書は2015年出版)で、米国においては家族が離婚によって崩壊する事例が、とりわけ貧困層で多い。離婚した中で子育てをするのは、祖父母世代が主体になる。この理由は、この祖父母世代ではまだ家族関係が保たれているからだ、と書かれている。
家族制度が崩壊した両親世代が祖父母になったとき、誰が子育てをするのか、というのが彼の提起したテーマだ。

実際、米国の出生率もまた、低下傾向にある。

英国においては、カウンシル・フラットという公営住宅制度と手厚い社会保障制度によって、親子三代ほとんど働かず、早いうちにシングルマザーになってカウンシルフラットに住み続けるという状況が珍しくはない、ようだが、社会保障費を無限に拡大していくことはできない。
そのためかわからないが、イギリスの出生率も低下傾向にある。

また、フランスにおいては移民は確かに子供を多く生むが、移民の子供の出生率は低い傾向があるようだ。

そして当然ながら、無限に移民を受け入れ続けることはできない。

法律によって賞罰のインセンティブを作っても、少子化の改善は一過性でしかなく、その後に深刻な社会の崩壊をもたらす。(中国、ルーマニア)

離婚のハードルを下げることで実質的な一夫多妻制を実現しても、社会的紐帯が消え去れば子供は生まれなくなる。(米国)

社会保障制度で出生率を高めようとすれば、その継続性が問題になる。(イギリス)

移民の高い出生率に期待しても、移民の子供の出生率が高いわけではない(フランス)

どの方法をとっても、一過性でしかない。
先進国の中で唯一出生率が高いイスラエルは合計特殊出生率が3近いが、常に臨戦状態だ。
また、超正統派ユダヤ教徒が出生率6.9と驚異的に高いことに支えられている。状況があまりに特殊なので一般的ではない。

アフリカ諸国の出生率の高さはまた特殊な事情が絡んでおり、これも日本で適応することは不可能だろう。

僕は少子化は世界が徐々に貧しくなるであろう予測、自分が享受したような生活水準を超えるものを、子供が味わえないだろうという予測に由来するのではないかと考えている。

だからこそ、バブル期に就職し、決して就職状況は悪くなかった団塊ジュニア世代(一部就職氷河期前期世代が入るが、それでも就職状況はそれ以降の世代より悪くなかった)は、出生率が低かった。

就職してから経済状態が悪化するのを眺めて、子供を持とうとすることをやめた、と考えると、納得はできる。

少子化対策にも似たような問題がある。
国家財政が窮乏化して、少子化対策が縮小されると予測された時点で、少子化対策は効果を失ってしまうかもしれないのだ。

では、持続可能な少子化対策とは何だろうか。

それは国民と国家が少しずつ豊かになっていく状況を持続可能な形で維持し続けることであるように思う。

言い換えれば、ハッキングしないでGDPを上昇させていくことだ。




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