日本の少子高齢化が進行する理由について お砂糖・VRチャット・マッチングアプリ・新型コロナウイルス感染症
2023年の合計特殊出生率は1.2で、2024年は1.15以下になる予定である。
これは人口統計の中位推計から低位推計へと急激に移行していることを意味する。
そして2021年の政府推定では、2022年に一過性に低下した後、持ち直すことになっている。
しかし実際には、中位推定から急激に低位推定の方向へと低下しており、この予測はいずれのパターンとも異なっている。
日本の少子高齢化が下がり止まる理由は恐らくない。
まず経済的な利益が結婚に乏しい。
また昭和に比べれば労働時間は短く、職場に拘束される度合いも小さい傾向にあるから、一人で暮らすのが簡単になった。
これには技術やサービス業の発達により家事に要する時間が減ったことも関連する。
ついでに言えば、一人用物件に比べてファミリー用不動産は都市部から遠く、車がなければ不便な傾向にあるが、その車を運用するコストが燃料価格の高騰で向上したことも関連する。
そして新型コロナウイルスの流行は恋愛の機会を奪った。
特に伝統的な職場や学校での恋愛が減り、マッチングアプリに移行した。
しかしマッチングアプリでモテない男性は出会えず、モテない女性は恒久的なパートナーを見つけることが難しい。
つまりモテない男女は結婚至らないし、恋愛に対して良い感情を抱く可能性も低い。
恋愛の代替物としてVRチャットが流行した。
VRチャットで女性アバターを纏い、女性アバター同士で疑似恋愛をすることはお砂糖と呼ばれていて、この場合はマッチングアプリと違って、リアルワールドでのモテは関係がない。
アバターやボイスチェンジャーへの課金は必要かもしれないが、恋愛に対する投資よりはるかに安価で済み、効果は確実だ。
一方ファッションにお金をかけたり、筋トレしたり、美容整形をして自分の容姿を変えるの場合、効果が不確実で、お金がかかる。疑似恋愛をキャバクラやガールズバーで行っても、それが恋人を作るのに役立つかははっきりしない。というか周囲を見る限りむしろ下手になってしまうのではないかと感じる。
実際、町を歩いていてカップルを見ると男女混合、50人のクラスで言えば上位1-5位くらいの容姿の人同士が歩いていることが多い。
平均的な容姿のカップルはその1/3くらいだろうか。
そして容姿が大きく乖離しているカップルを見ることは殆どないように思う。
つまり、平均的な容姿の人間がこぞって恋愛市場から退出している可能性が示唆されるのだ。
実際恋愛経験率は2023年調査で20代男性 46.0%、20代女性29.8%である。
ちなみに2020年時点で30-34歳男性の未婚率は47.4%、女性は35.3%だ。
増税と社会保障費の増加は勿論恋愛・結婚に対する慎重なスタンスに影響を与えている。
つまり、手取りが少ないので恋愛という不確実なものにお金を使うのは賢明ではないのだ。
なんだかんだいって、ある程度余裕があるからこそ彼女を作ろうと思うし、そのための機会を作ろうと思うだろう。
インフレはさらに問題で、大学生にとってみれば、最低賃金は上がったけど、同じお金で買えるものは減っている中で、103万円の壁はインフレ前と変わらないので、アルバイトで稼いだ金を異なる価値に変換する効率が低下している。
文化・制度・科学技術・経済の全てが恋愛や結婚をしないことを促す方向に変化しているのだ。
そして、出生率の低下には恐らく下限はない。
少なくとも韓国の0.72とか、上海の0.6やソウルの0.55という異常に低い合計特殊出生率が示しているのは、ここまでは下がりうるし、下がったこと自体を理由として上昇するような、自動調整作用はないかもしれない、ということだ。
恋愛や結婚からの退出が繰り返された結果、子どもを作りたいという欲望が強い人々が選別された結果として出生率が持ち直す可能性は確かにない話ではない。
しかしドミトリ・ベリャーエフの実験を参照する限り少なくとも人に慣れるキツネが人工的な選択交配によって増えるのは、10から20世代が必要とするようで、僕らが生きている間にそうした形質の変化を目にすることはないだろう。
むしろ文化規範の変化の方があり得る話かもしれない。
昭和の漫画など読むと独身者への差別はえげつなく日常的だったようだ。そしてこうした風潮が広がれば、避けようという気持ちも広がるだろう。しかしそれは差別をなくすこれまでの歴史的な流れを逆向きにするということになる。少なくともそれを老いた政治家や政府が行うことはないだろう。
また、経済的な問題で言えば若い世代の手取りが増えることが肝心だ。
手取りが増えることではじめて色々なことをやってみようと考えることになる。だから減税するのは消費税が最もわかりやすいのではないかと考える。
さらに言えば、若い人からお金を集めて高齢者に送っても子供が増えることはない。つまり、過剰な社会保障は削減されるべきなんだ。
そしてなぜ過剰な社会保障を削減するべきかといえば、20年後、30年後に社会保障を維持するためである。
今の少子化をなんとかしても、その効果が出るのは20年、30年後というのが誰もこれをやりたがらない理由だ。
誰が言うべきなのかといえば、20年後、30年後に社会保障が持続していてほしいと考える人たちで、つまりは現在50代以下のすべての人、ということになる。
なぜいつも社会保障費の話をするかといえば、実際それが金銭的には最大の問題だからだ。