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保険であれば誰かが損をする必要があるけど、国民皆保険で誰が損失を引き受けるのか?

長生きすればするほど人は医療費を使うようになる。
特に医療に対する期待値が実際よりも高く、また自己負担割合が低ければなおのことそうなる。
日本の現状がまさにそうだ。

そして国民皆保険制度とベビーブーム世代=団塊世代の高齢化に伴って、保険料はますます増加していく。

保険料や税金が一定以上に高額になると、貯金や投資が難しくなる。
不動産の購入も難しくなる。
ある程度は産児制限を行うことや趣味を諦めることによって緩和できるが、さらに社会保険料や税金が高額になれば、それすらできなくなる。
社会保障費と重税にために健康を損なう人たちが生まれてくる。
産児制限と貯蓄の少なさ、持ち家率の少なさは現在の氷河期世代に起きていることで、健康を損なうかどうかは、これから明らかになってくるところだろう。

日本の社会保障制度で優遇されるのは、年金がもらえる65歳以上と、医療費自己負担額の減免がある70歳以上、75歳以上だろう。
つまりそれまでに亡くなってしまうと、社会保障のおいしい部分を受け取ることができない。

言い換えると、早死にすると損をする、ということだ。

そして保険というのは、損をする人が一定以上いないと成り立たない。
全員が得をすることはないのだ。

民間保険であれば、基本的には若くて元気な人は安い保険料になり、高齢だったり不健康であれば、保険料は高額になるか、そもそも加入できないだろう。これは個々人の保険料で保険会社が損失を被る確率を下げようとするからこうなる。

一方で国民皆保険制度では、若くて元気な人は保険料が高く、高齢だったり不健康であれば、保険料は安価になる。保険料が支払えないくらい貧しい場合は生活保護になって保険料も医療費も無料になる。

基本的に制度として真逆になっているのは、もともとはそれでも国家全体として帳尻が合っていたこと、日本という国家はたまたま国債を発行する余裕があったこと、そして生命至上主義・敬老のイデオロギーが存在したからだと思われる。

それでも保険制度としてみれば、損をする誰かが生まれなければ持続しようがない。
ここで4つの選択肢があり、日本政府は1つ目以外を少しずつ進めているように思える。

1.保険制度が機能しなくなることで、全員が損をする。


これはある意味、保険会社の破綻に似ている。社会保険制度自体が実質的に機能しなくなる状態だ。医療機関は保険証は気にせず、実費で幾ら払えるかを気にする。保険診療を実施しようにも、健康保険組合からの支払いが滞ったり、保険診療の実施によって赤字が発生したり、そもそも薬剤や医療器具がなくて医療が実施できない、という状況だ。
というかこれは、保険制度の途絶であって、失敗というべきだろう。これより良い選択肢はまだいろいろとありそうである。

2.保険制度を修正し、高齢世代が中心になって損失を引き受ける。


これは要するに年金の減額と医療費自己負担を一律にする、という選択肢だ。これによって医療・年金制度は間違いなく持続可能性を取り戻す。ただ、これを実現するための政治的コストは極めて高い。

3.氷河期世代に損失を引き受けてもらう。


これが恐らく一番ありそうなシナリオで、その対象は氷河期世代になるだろう。この世代は人口が多く、貯蓄が少なく、持ち家率が低い。恐らく健康状態も良くはない。また非正規雇用の割合が高い関係から、国民年金のみの受け取りになる可能性が高く、老後年金が少ない。
つまりこの世代が急性期疾患で入院すると、そのまま仕事と家と健康を失う可能性が高い。

今こうした人が入院すれば入院中に生活保護の手続きを取り、行政に退院後の支援を依頼することになるが、こうした人が爆発的に増えれば行政の手も回らなくなり、生活保護もそう簡単におりなくなるだろう。そうなれば死は免れず、結果として医療費や年金は節約される。

4.女性の社会参加、産児制限と移民による経済成長


つまり生産年齢人口の労働力を可能な限り富の生産に振り向け、社会保障制度を維持しようという方法だ。

現在の日本は社会保障制度が破綻するリスクを軽減するために、2.年金・社会保険制度の改革を非常に緩やかに実施している。3の特定の世代に損をさせる政策は既に進行中で、氷河期世代は多かれ少なかれ犠牲になると思われる。50を過ぎて正社員になるというのはなかなか現実的ではないだろうし、貯蓄も最早増えづらいだろう。また住宅ローンを組むのに適した年齢はもう過ぎ去っている。最後に産児制限と移民による経済成長は勿論現在進行中だ。

個人的には年金・医療制度改革を進行させ、氷河期世代やこれから生まれる世代のダメージを緩和し、移民の流入は一定の範囲で継続し、合計特殊出生率が少し上がるようになれば良いと思っている。

勿論物凄いイノベーションで爆発的に経済成長して何とかなる可能性はあるかもしれないが、それを前提に保険制度を組み立てるべきではない。

なぜより若い世代や子供世代を犠牲にしないのか?という考え方はもちろんあり得る。
就職したらすぐに介護保険料が天引きされるとか、週休1日にして労働力を1.2倍にするとか、児童手当を廃止して増税し出産・育児をしないような制度設計を作って育児コストを節約させて労働力を増やすという方法はあり得る。
また国債の発行もある程度までは若い世代に負担を押し付けることになる。

ただ、保険という制度は本質的に誰かが損をすることで成り立っていて、全員が利益を受け取ることはありえない、ということは理解するべきなんだ。

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