42 教師が吹かせている風
動きのある美しい抽象画に取り組んでいる。
友人に触発されて自分の絵に変化が起きているのは、見ていておもしろい。また、「これ、おもしろいねー」「いい感じだねー」と言って教室をぐるぐるまわっている。その時間もおもしろい。数学授業だと、どうしても僕が上で生徒が下。同じ目線で話すことは、まずない。だけど、美術授業はちがう。「これからどうしようと思ってるの?」「どこが気に入ってるの?」と話すことができる。
最近もっとも気に入ってるのが「大きさを変えたり、場所を変えたりして実験するつもりで、いくつか描いてみてよ。そして、バランスを見ながら自分でいいと思うものを選んでね。」と言える時間だ。
数学授業だと思考停止…という感じで動きが見えないけれど、美術授業だと「じゃあ…」といくつか試作品をつくることができる。「○の数を増やしてみよう」「○の濃さを変えてみよう」「○の大きさを変えてみよう」と。
そういう実験をした後、どれを選ぶのかを見ているのが本当に楽しい。
たったこれだけのことなのに、ここまで心が躍るということは、普段いかにこういう場面を見ていないかが分かる。何もかも決められたことをこなす毎日の中で、彼らにとって美術授業はとても貴重な時間だ。