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失業ゾウ支援チームのこの一年 | ゾウの村ランブル日記 by tomoko

2020年以降、コロナ禍で失業した多数のゾウとゾウ使いがスリン県とブリラム県に戻ってきたことを受けて、失業ゾウ実態調査・支援チームとして約一年半活動をしてきました。また、このnoteで日本の方々へ向けて、失業ゾウのソーシャルメディアのチャンネルやページの紹介を始めてから、約一年が経ちました。

あと少しで、私たちが聞き取り式のアンケート調査を行った際に約束した失業ゾウ(当時)のチャンネルやページの紹介も完了します。

失業ゾウのゾウ使い数名からは、「日本人がライブ配信を見にきてくれた」「タイ在住の日本人がオンラインで果物を購入してくれた」などの報告も受けています。関心を持ってくださる方がいることは、スリン県のゾウを飼育する人々と17年程の付き合いになる私にとってとても嬉しいことです。

これまでに、TBS世界ふしぎ発見!や東京新聞でも、失業ゾウを取り上げて頂きました。ミステリーハンターとして来られたみほとけさんや、記者の安藤さんは、本当に現地の状況を知ろうと多くの質問を投げかけてくださりました。
タイ住みます芸人のあっぱれコイズミさんは、実際に村を訪問して、動画やライブ配信で失業ゾウの現状を紹介してくださいました。いまもコイズミさんとの対話は続けさせて頂いています。

一方で、いまだ失業状態で困窮しているゾウとゾウ使いたちがいること、この地域でのゾウの食料問題はコロナ前から何十年も解決に至ってはいないことなど、いまも問題は数多く残っています。

それぞれのゾウやゾウ使いたちの事情は複雑で、北タイのエレファント・キャンプのように特定のキャンプや団体に寄付金を送ったり、施設を作ったりすれば解決できるというものではありません。そうした中で、個々のゾウたちのチャンネルやページを通じて、支援をしたい人が問題解決に向けて個別のゾウを支援することが可能になったことは、大きな意味があると思っています。

私はそうした支援が広まることを願って、このnoteでの失業ゾウの紹介を行ってきました。

ここで、改めて私たち支援チームは、何をしてきたのかをお伝えしたいと思います。これまでの記事でも紹介してきたことではありますが、いまこのタイミングで改めて振り返ってみたいと思います。

私がこのnoteで「失業ゾウ実態調査・支援チーム」と呼んでいるチームは、元々ある日本人のゾウ支援者の方と私がコロナ禍での失業ゾウの支援を行う前段階として実態調査を行った際の「現地協力者たち」をメンバーとしています。

この支援自体は、調査時に一時支援金の配布を行ったものの、日本人ゾウ支援者の方の事情で実現は叶いませんでした。ですが、実態調査の時点でゾウ使いたちと約束したソーシャルメディアのチャンネルやページの紹介は、その方に代わって私がこのnoteで行なっています。

この実態調査を行なう際に、私が調査先や関係のある人々に声をかけ立ち上げたのが「失業ゾウ実態調査現地チーム」です。このチームで聞き取り式のアンケート調査を行いました。

ゾウ使いや所有者の中には文字の読み書きが出来ない人、文字は読めてもアンケートの回答の仕方がわからない人が多くいます。そのため、私たちは作成したアンケートに添いつつ、失業ゾウについて口頭で話を聞くことにしました。
失業ゾウのゾウ使いや所有者は伝えたいことがたくさんあり、アンケート項目から脱線することが多かったものの、現地協力者の方々には本当に根気強く調査に取り組んでくれました。その中で、私と現地協力者たちは失業ゾウとゾウ使いたちの様々な問題について直接彼らから話を聞き、何もせずにはいられないという気持ちになりました。

実態調査を行う前から、私を含めて何らかの支援を模索してきた現地協力者も複数います。

こうした現地協力者が、実態調査をきっかけとしてゆるやかに協力しながら、失業ゾウやこの地域の問題に対してアプローチするようになりました。そこで、私は立ち上げた「失業ゾウ実態調査現地チーム」を「失業ゾウ実態調査・支援チーム」として、情報交換や協力が生まれやすい環境を作りました。

メンバーはそれぞれの本業があるので、このチームは「寄付金をもらってそれを寄付者の代わりに運用する」スタイルではなく、「それぞれのメンバーが出来ることを出来るタイミングでやる」ことを基本とし、その中でメンバー同士が協力し合う形で活動してきました。ゾウの支援団体が「箱」だとしたら、私たちの支援チームは「アメーバ」のようなものとして私はイメージしています。あえて実体のあるようなないようなネットワーク的なチームの形態をとったのは、メンバーが本業で多忙なときもある中で、どのような形であれば失業ゾウの個別の状況に対して柔軟で継続的な支援を行うことが可能かを模索した結果でした。

実際に、私も本業は研究なので、普段はこの地域の観光開発プロジェクトで参与観察という調査を行なったり、ゾウの行動調査を行っています。そのかたわらで支援活動を行ってきました。

私自身が行なってきた活動の例としては、以下の通りです。

・実態調査で得たデータの集計と分析、及び支援団体やゾウに医療サービスを提供する機関とのそれらの情報の共有
・noteを通じた失業ゾウのソーシャルメディアのチャンネルやページの紹介
・noteを通じてお送りいただいた支援金による失業ゾウ支援
・新聞やテレビなどメディアへの失業ゾウに関する情報提供
・支援チームの活動紹介と渉外
・国内及び国際学会での発表を通じた学術的貢献

このnoteとの関連で言えば、サポート機能を通じた寄付金を用いて入院中の失業ゾウの食費の補助(他の団体などからの支援がないため)や、ネピアグラスの株の購入補助(今後も失業が続くことを見越した食糧自給のための支援)、また有料記事による特に困難な状況にあるゾウの経済支援を行いました。

また以下は支援チームメンバーの主な活動例です。

・失業ゾウと支援団体をつなぐことによる、ほぼ無償での医療サービスの提供
・失業ゾウにための医薬品の貯蓄
・ホームステイによる失業ゾウの雇用機会創出
・イベント等での失業ゾウの収入創出
・失業ゾウの近況確認 などなど

特にホームステイについては、この地域ではコロナ前までは住民主導のホームステイプロジェクトが軌道に乗っており、多くのゲストが来ていたのですが、コロナ以降はゲストが来ることはあまりなくなりました。地域の人々がホームステイから距離を置くようになる中、メンバーはこの地域の暮らしに関心のある人々をターゲットにして、ソーシャルメディアを通じて情報の拡散を行いました。
宿泊者数は徐々に伸びており、欧米からのゲストが増えています。これにより、失業ゾウたちが収入を得る機会も増えました。有難いことに、これまでに芸人のあっぱれコイズミさんを含めて多くの日本の方にも宿泊して頂きました。
私たちメンバーが主に情報発信、予約の受付、手配を行っていますが、ガイドや食事の提供など実際の運営は地域のおじさんおばさんたちに任せており、地域住民の収入創出にもなっています。

それぞれが自分の人脈、知識、技術などを用いて、他のメンバーの手を借りながらこのような活動行なっています。

これが、私たち支援チームが行なってきたことです。

おそらく私たちはこの先も、このようなやり方で「出来ること」を続けていくことと思います。
それぞれのゾウや地域の抱える問題が複雑に絡まり合っており、簡単には解決策を見つけ出すことが出来ない状況ではありますが、このような活動の先に何か希望となるものが見えてくることを私たちは願っています。

現在、失業ゾウの中には再び出稼ぎに出たゾウたちもいますが、コロナ前とは状況が違うという話もよく耳にします。一部の観光地に観光客が集中し、ゾウに十分な給与を払えない観光施設があったり、給与はあってもチップ収入が見込めないこともあるようです。「観光」自体が本来は持続可能なものではないのだ思います。

そんな中、彼らがコロナ禍で紡いだソーシャルメディアを通じた関係によって、これまでとは異なる「観光」のあり方や、観光以外でのクアイの人々とゾウの生きる道が生まれる可能性もなくはないように思います。それが可能かどうかは、いま(元)失業ゾウとソーシャルメディアを通じて関わることが出来る私たちにかかっている言えるのかもしれません。

失業ゾウ支援チームが、この記事を読んでくださっているみなさまも含めて、ゾウやゾウ使いを支える大きなネットワークになっていくことを、私は願っています。

この気持ちを、noteをはじめて約一年タイミングでお伝えしたく思いました。

今後ともクアイのゾウ使いや失業ゾウを含めたゾウたちの応援をどうぞよろしくお願いいたします。

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ゾウの村の住人
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