no.56 実現 ― コラボレート(協働)Ⅱート(協働)Ⅱ
協働のための文化を生み出す環境
やる気のある人材が、有益なものやことを生み出すために必要な環境をまとめてみる。
プロデュースに対する正しい考え方が不可欠であるのと同時に、プロデュースを実践してきた歴史、プロデュースの経験を積むための機会があることが望ましい。
考え方
コネクト(理解する)
コントリビュート(貢献)
クリエイト (創造)
コンポーズ (構築)
コミュニケート(伝える)
コミット(誓約)
コーディネート(調整)
コラボレート(協働)
組織の上位5%から15%に、これらの概念を理解し、プロデューサーとしての基本的な能力を備えたメンバーがいる必要がある。少数精鋭の実力者がアイデアを出し合い、やる気を出せる環境があること。
また、「辛くてもやりたい、歯を食いしばってでもがんばる!」という機能体でなければならない。
つまり、目的を達成しようとすることで幸せになれるという文化がなければならないのだ。
楽しい、ということはほとんどない。機能体は本来、そのような組織ではない。また、75%の平均的な人や、下位10% の人は、楽しくないと熱心にできない―と言っているかもしれない。しかし、彼らは間違っている。
知恵をもって考え、行動し、目的・目標を達成する人に報いる組織であることが重要だ。
このような組織に必要な条件は、大きく分けて2つある。
一つは、プロデュースは成長戦略であり、成長に不可欠な資金調達は絶対必要な要素であるということ。忠臣蔵にとっては、藩から資金を調達すると同時に、瑤泉院から軍事資金を得ることができたのは幸運であった。
つまり、組織は将来にわたって生き残るための準備をしなければならず、常に貯蓄をこまめに行っていなければならない。そういう習慣を身につけることが大事なのだ。
また、貯蓄できるようになるには、組織が利益を上げていなければならないということ。これは企業組織だけに限ったことではない。科学のプロデュースにおいてさえ、プロデュースするのに十分なお金を獲得・維持する必要がある。
つまり、組織はお金を生み出す機関としても機能しなければならないので、顧客やその他の利害関係者に感謝の気持ちをもっていなければならない。
もう一つは、前章で述べた「仕事」「人」「情報」「報酬」「組織」「意思決定」の6要素だ。繰り返しになるが、これらの6つの要素は、仕事、人、組織などの比較的固定されたハード要素と、情報、報酬、意思決定などの比較的変更しやすいソフト要素に分けることができる。協力的な文化を生み出す環境を維持するには、これらのソフト要素を次のように設計する必要がある。
情報
情報がオープンでアクセスしやすい
報酬(補償)の算定基準も公開(誰にでも公平)
報酬
有能な人には、その創造性を活用する公平な機会が与えられる
評価方法は公正で、業績主義にこだわる。
メンバーが何を生み出し、どのような能力やスキルを獲得したかを共有する機会を作る。
意思決定
意思決定自体は合理性にのっとり、そのプロセスを論理的かつ現実的に説明できるものである。
プロデューサー自身を喜ばせるためではなく、目的を達成するために決定を下す必要がある。客観的な判断でなければならない。
重要な決定については、主要メンバーの参加を可能にし、民主的に決めるために彼らの声に耳を傾ける。
しかし、ここで“民主的”の意味について、もう一つ付け加えたいと思う。それは「民主=平等」ではなく、宮崎学という異色の作家が著書「突破者・外伝」 (58)で指摘しているように、それは「対等」つまり一対一の関係の積み重ねだということである。
組織のメンバーは、その能力、動機、および考え方が大きく異なる。バリエーションが多いのも事実だ。そのような違いを持つすべてのメンバーが平等であるとは言えない。
様々な活動の結果において、誰もが「平等」ではありえない。しかし、民主的とは、各メンバーに与えられた貢献と成長の「機会」が平等であることを意味する。
民主主義という言葉は、「個人の過去の歴史に関係なく、現在置かれている環境は平等でなければならない」と誤解される可能性があるが、これは間違っているのだ。
忠臣蔵も、メンバーの環境は「平等」ではないが、「機会は平等に与えられていた」つまり対等だったのだ。
各人の目的には同じ価値を認めるべきであり、創造性と意識に関して、各人は未来に対して同じ重みを持っている。特に組織においては、複数で未来をつくるとき、最終的には一人一人が対等に認められる機会があること。
これが真の民主的認識であり、革新的な組織には不可欠である。
MBOの概念では、組織は、情報、報酬、および意思決定に関して、オープンで、公正で、民主的であることが大切である。このような文化は、メンバーが会社とコネクトし、会社に貢献し、会社 (および自分自身) の価値を生み出すバックグラウンドとして機能する。
このような文化においてこそ、プロデューサーは、メンバーが自分の力で人生を変える自信を持てる環境を作ることができるのだ。
参考文献:
58:「突破者―外伝」宮崎 学著(祥伝社)