no.37 実現 ― コーディネート(適応)
六角堂モデルの詳細
屋根の詳細
GAM とは、目的を達成するための目標とそれらをクリアするための行動戦略であり、達成度を測定する方法である。
次に行動戦略のおのおののアクションの詳細を説明するために、忠臣蔵の吉良邸討伐を再び取り上げ、実行(アクション)戦略(=行動戦略)がどのように作成されるかを説明したいと思う。敵討ちはビジネスではないので、ビジネスプロデュースの完璧な例とは言えないし、ここでは財務的要因は大きなファクターとしてはとりあげないが、以下に説明する実行(アクション)戦略の組み立て方はどのようなプロデュースにも適応できる。
忠臣蔵では当初の目的は
真:社会正義、喧嘩両成敗
幕府は、長矩が正気であったと想定したため、事件と同じ日に長矩に切腹させた。つまり、これは浅野と吉良の喧嘩だったはずだ。だとすれば吉良が生き残っているのはおかしいし、それを正さなければならない。
また、これは吉良だけでなく、吉良を後押しする上杉との戦いでもある。 (上杉は吉良の息子が養子になった大名家。)
善:浅野家復活
大石は長矩の弟を当主とする浅野家を再興するよう幕府に請願した。
美:武士の面目
個人としてサムライの面目を守る。
これが大石の最初の目的であった。そして、江戸城の事件から約1年4ヶ月後、幕府より長矩の弟を江戸から退去させ広島の浅野家にお預けとする命令がでた。そしてその時、家を再興することは不可能であることが明らかになった。
これは年末までに吉良の屋敷を襲撃し吉良を倒す必要があることを意味した. (新たな目標)
江戸は幕府の本拠地であり、幕府による厳重な警備が行われている、江戸には武士の人口も非常に多い。ここでの吉良との戦いはリスクが大きい。とてつもないリスクを冒しても、成功するかどうかは未知数である。そして、吉良を殺すという目標が達成されたとしても、その後襲撃メンバーは生き続けることはできない(襲撃の成功後、大石と他の45人のメンバーは切腹した).
ビジネスとしてみてみると、このベンチャーの投資戦略は、人、物、金、すべてを一つのものに投資するという選択的成長である。
このプロデュースの管理戦略は、すべてを秘密裏に準備するという差別化である。すべてを考えられる最高の品質で準備するのだ。
年内に吉良邸を襲撃するという目標を達成するためには、この襲撃を迅速に組織し、取り残しのないようにする必要がある。準備が完璧でないと、惨劇を引き起こす可能性がある。
この実行計画を考え、論理的かつ十分な方法で行動戦略を構築する必要がある。
この行動戦略を作成する1つの方法は、現在の目的と目標を実現するについての組織の強みと弱みを分析し、また、外部環境の機会と脅威を分析することだ。
これらSWOTについては、プロデューサーは、コネクトプロセスの時点ですでにこれらを検討している可能性もあるが、より詳細かつ深く考慮する必要がある。
大石は次のように考えた。
<強み>
評判: 「生類憐みの令」は元禄時代将軍・徳川綱吉によって発布され、悪法と評された。人より犬を重んじる法律…狂犬を蹴った者は死刑など。…これは江戸の人々に支持されなかった。浅野と吉良の間の松の廊下刃傷事件に関しては、浅野に対する幕府の切腹の命令も不公平で、赤穂藩は可哀そうという噂を引き起こした。人々はこの時期尚早な命令を批判し、これが綱吉を不人気にした。
目的: 私たちには大義名分がある。討ち入りは侍のロマンも駆り立てる。
目的を達成するためのファンクショナル チーム: 戦闘に参加する準備ができており、命を捨てることを厭わない数十人のメンバー を確保できる。
<弱点>
百人くらいいた 大石の当初の決断(浅野家の再興を嘆願し、叶わなければ吉良を討つ)に従った赤穂武士たちだが、この100人には次の3つの<考え方>があることが明らかになっている。
浅野家の復興が叶わなかった時だけ、敵討ちを正当化して行動しようという大石の考えに全面的に賛同する人物。
なんとしてでも一刻も早くリベンジしたい個人。吉良の首を上げたい過激派。
浅野家の再興を信じ、再仕官を第一優先に考え大石のアイデアに賛同する個人。命がけの仇討ちは本音ではしたくない。
浅野家の復興の道が閉ざされた今、相当な人数(約50人!)が敵討ちから脱落するかもしれない(第3グループの人々から)。
約50人が残った。信頼できて、心から仇討ちに参加したいパートナーの中には、50歳以上の高齢者や20歳未満の未熟な者もいる。この事実から、約30人はどこか頼みの綱にならないという可能性。
吉良家とその後ろにいる上杉家に比べて浅野家の残党、浪人は資金が少なく、武器の調達も難しい。 (武器に関しては、江戸に持ち込むことさえ困難だ。)
<好機>
吉良側ではなく大石側から攻撃を開始するため、仮定や仮説に基づいて吉良側から動くことはできない。私たちは戦いの主導権を握ることができる。
吉良側は心理的に不安定。長矩の殺意・その動機は、最初の事件では明らかではなかった。 (赤穂浪士による吉良邸への襲撃は避けられないという噂もある。その上、吉良は弱い浅野をいじめる悪者であるというイメージは定着している。)
吉良の屋敷替え
呉服橋は江戸の中心に位置するため討ち入りしにくい場所であったが、幕府は吉良に江戸郊外の本所への移転を命じた。本所では治安面がかなり不安定で、白金にある上杉家から離れているため支援が受けにくい。この幕府からの屋敷移転命令は、幕府が吉良を諦めたサインではないかと考えられた。
<脅威>
チームメンバーの分裂; 特に吉良を自分たちだけで打ち取ろうとするかもしれない急進派
10,000平米近い吉良邸の詳細不明。
吉良の家の中には、吉良を守る約100人のサムライがいる。屋敷の東西南側の門長屋に配置されており、腕の立つ武士が多く、上杉家出身の者もいる。
討ち入りの時点で、吉良が家にいることを保証する方法は実際にはない。白金の上杉邸に滞在することもある。
これらの SWOT リストから、実行戦略のアクションプランを作成する。それは、それぞれの強みと弱みを好機と脅威に組み合わせ考えることによって作られる。これらを一つ一つ結び付けて、その組み合わせが起こることは必然だとして何を準備すべきかを予見しながら考えると、何らかの行動の手がかりが現れる。現在の実際の強みと弱みを分析すると同時に、好機と脅威は将来の予見であり将来について考えることであるため、特定のアクションプランが思い浮かぶ。
この忠臣蔵の場合、強みを3つ、弱みを3つ、好機を3つ、脅威を4つ挙げたので、これらの組み合わせは次のようになる。
(強さ 3 x 好機 3) + (強さ 3 x 脅威 4) + (弱さ 3 x 好機 3) + (弱さ 3 x 脅威 4) = 9+12+9+12 = 42
大石が推測する必要がある組み合わせは 42 通りある。
また、組み合わせごとに、
「強み」と「好機」を対にして考え出す行動計画は、<積極的実行戦略>に分類される。
「強み」と「脅威」を対比して考えるアクションプランは、
<レバレッジ実行戦略>に分類される。「弱み」と「好機」を考慮して考えたアクションプランを
<改善実行戦略>とする。「弱点」と「脅威」のペアリングからの行動計画は、
<ダメージ回避実行戦略>に分類される。
上記の42通りのペアリングの中には、複数の実行戦略が考えられるペアリングもあれば、明確な行動戦略が一つも考えつかないペアリングもあるだろう。
忠臣蔵の場合、次に示すような行動戦略がリストアップされていった。
<積極的実行戦略>
積極的に噂を発信し・世論を利用する
赤穂浪人の攻撃は避けられないと幕府官僚に考えさせる。これは吉良のサムライの闘志を弱めるはずだ。【心理戦】詳細な計画を立て、大石はそれを大石なりのやり方で指揮する. 【誰が、何を、いつまでに、どのように担当するか】
必ず吉良が家にいると思われるときに討ち入りを実行する。彼が別の場所に逃げる前に実行する。 【実施日時を確認・確定する】
リーダーとして武術にたけたコアメンバーを選出。彼をリーダーとし、1チーム3人ひと組とする。 【戦闘チームの編成と戦術作成】
<レバレッジ実行戦略>
吉良邸の概要。内部調査。 【地理調査】
上杉家と幕府の意向を知る。 【敵対調査】
浪人の分裂を防ぐための会議を設定し、復讐の目的についての合意を形成する。 【目的の浸透】
吉良の日常調査。彼の行動の詳細を理解する。 【在宅予定日の確認】
3 人のチームを訓練し、それぞれ約10 人の敵を倒す準備・訓練をする。 【戦闘訓練】
<改善実行戦略>
脱落者は、深追いせずに放置する。誠実なメンバーの意思は、大石と執行メンバーが大切に守る。 【チームのモチベーション】
資金計画【長矩の未亡人瑤泉院の寄付を確定づける】
赤穂の塩を商う商人に武具を江戸に持ってきてもらうよう要請する。 【商人からの支援、パートナーシップ形成】
若年者への武芸訓練。高齢者には戦闘の詳細な知識を身につけさせ、100%のコミットメントを決意させる. 【戦闘準備】
<ダメージ回避実行作戦>
討ち入りまでの浪人の生計の面倒を見、事件後に家族が困ることがないようにする。 【浪人生活・家族対策】
鎖入りの帷子、鎖股引、肘までの長籠手、膝までの長臑当、などの戦闘用の衣装を準備し、簡単に損傷を受けない鎧を活用する。 (鉄の鉢巻など)
討ち入りも、吉良の屋敷が眠りにつく時間を選ぶ。 (敵は寝間着で存分には戦うことができない。【武器防具の確保と討ち入り時間】
ここにアクションの例をいくつか示す。ここでは、 15 の実行戦略をまとめてリストアップしている。
各アクション プランはまだ抽象的であるため、より具体的にする必要がある。各計画は、それが成功裏に達成されたかどうかを測定できるように、具体的かつ明確にする必要がある。
アクションプランの進捗は測定されるべきであり、その測定方法は明確にされるべきだ。各アクション プランの期限も明確にする必要がある。
例えば、討ち入りのための吉良の屋敷の概要調査は、
⇒吉良の家での実際の戦闘では、混乱があってはならないので、情報は私たちが吉良邸の中を自信を持って効果的に動くのに十分でなければならない。そのためのタスクは次のとおり。
吉良邸内部の図面を入手
吉良邸の活動に関する情報を入手する(生活リズム、パターン、物的状況、障害物等)
⇒討ち入りのための兵站の準備と、討ち入り前に最終的な会議を開くための場所の選択。
など。
そして、プロデューサーはこれらのタスクのそれぞれに、責任を負うことができる特定のメンバーを割り当てる必要があり、活動の成果の報告を受ける必要がある。
これらの方法、各計画、詳細な作業内容において、測定方法、担当者を明確にする。プロデューサーは、この段階ではこれらのリストを準備することに重点を置く。それが計画だ。
大石はこれらすべてを準備し、リストのそれぞれを段階的にチェックした。
ところで、実際のビジネスプロデュースでは、この方法において非常に多くのアクションプランがリストアップ(考え)され、プロデューサーを圧倒することがある。
その場合、多くの計画の中から効果的かつ効率的な計画を選択する必要がある。これは、最初に管理戦略に適合しない計画を排除することによって行われる。
また、その場合プロデューサーは下記の条件に沿ったプランを選択する必要がある。
利害関係者を考慮した上で設定した目標の達成に強い影響を与えるもの。
必要な利益確保に貢献するもの。
時間、お金、マンパワーなどのさまざまな資産を無駄にする大きなリスクがないこと。
である。