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Dhamani ダーマニ

Dhamani ダーマニ概要


スシュルタ・サンヒターでは、ダーマニとは血液とリンパ液を体内に運ぶ、壁が厚く脈動する管を指す用語です。 
血液とリンパ液を体内に運ぶ管状の血管関数血液とリンパ液を運び、臍より上の体の部分を支え、維持します。
アーユルヴェーダでは、ダーマニはシラ(s)やスロータ(s)のように管を示しますが、それぞれ異なる働きをします。

スロータスについてはこちらの記事

管の種類には以下のようなものがあります。


・ ダーマニ: 血液とリンパ液を運ぶ厚い壁の管
・シラ: 血液を運ぶ薄壁の管
・スナヴァ: 毛細管に似たさらに細い管 
・Mutravahidhamani: 尿が生成される器官に血液を供給する動脈 
・スクラヴァヒダマニ: 精子生成器官に血液を供給する動脈 
・Sukra-visharjinidhamani: 精巣上体、精管、および前立腺に血液を供給する動脈

チャラカでは


全部で10のダーマニがあり心臓につながっていて、ラサを運ぶ経路の根でオージャスを体の様々な部分に送っていると説いています。

スシュルタが


9章 Dhamani Vyakarana-Shariraでshariraの中で説いている部分を少し抜粋します。
「シャリラ(体)には24のダマニ(管)があり24 のダマニは、もともとは臍の領域 (Nabhi) に根を下ろしており、そのうち 10 本は上向きに流れ、10 本は下向きに流れ、4 本は横向きまたは横断方向に流れている、、、、」
※シャリラは朽ちていくものという意味です。

Dhamani vyakarana adhyaya ダマニ・ヴィヤカラナ・アディヤヤ


スシュルタ・サンヒター ダーマニ・ヴィヤカラナ・シャリーラム・アディヤヤ第9章
ヴィヤカラナはサンスクリット語で直訳すると説明や分析という意味で、アディヤヤは章という意味です。

Dhamani vyakarana ダマニ・ヴィヤカラナは、Shabdaシャブダ、Sparshaスパルシャ、 Rupaルーパ、Rasaラサ、Gandhaガンダの経絡を含むダーマニについて記されている章です。

※シャブダ(音)、スパルシャ(触覚)、ルーパ(視覚)、ラサ(味覚)、ガンダ(嗅覚)
これら 5 つの要素は液体ではなく、液体に溶けたり、液体で運ばれたりもしません。
ダーマニはいわゆるアーユルヴェーダの解剖学用語で、心臓から始まり体中に血液とリンパ液を運ぶ管状の経絡を指しますが、それだけではなく外界の刺激が5つの感覚器官から脳へと伝わる経路を表しています。
ダーマニは現代医学の動脈や毛細血管に似ています。

スシュルタではダーマ二はへそから始まり、24個のダーマ二があると説いています。

24のダーマ二は以下に分類されます。


名前/働き/数
Urdhwaga Dhamani ウルドワガ ダーマニ
上昇する
10
Adhoga Dhamani アドーガ ダーマニ
下降する
10
Triryagga Dhamani トリリヤガ ダーマニ
横方向に移動する
4

ウルドワガ ダーマニの機能

上向きに動くダーマ二は10個あり、心臓に達すると3つの枝に分岐し、合計で30の枝に分割されます。
これらのうち10 個は次の目的に役立ちます。
2 つは身体のヴァーユ、2 つはピッタ、2 つはカパ、2 つは血液、そして 2 つはラサ (リンパ乳び) の経路として機能します。
残りの 8 個 (20 個) は次の機能を果たします。
2 つは音、2 つは視覚または色、2 つは嗅覚、2 つは味覚を伝達します。
2 つのダーマニ (管) が運ぶ涙液のうちの 2 本 (管) が女性の胸に取り付けられ、乳房から乳を運び、同じ 2 本が男性の胸を流れる精液を運びます。
シャリラは別の対(つがい)の助けを借りて話し、別の対の助けを借りて音を出し、別の対の働きによって眠り、別の対の働きによって目覚めます。

例えば、話すためには特定の神経や筋肉がペアになって働く必要があるという意味です。

ウルドワガダーマニは腹、脇、背中、胸、首、肩、腕など、臍より上の(手足や身体の各部位の)を維持し、支えます。 

働き
・音、触覚、視覚、味覚、嗅覚(感覚機能)を運ぶ
・吸気と呼気を運ぶ
・空腹を運ぶ
・笑い、微笑み、あくび、会話、泣き声、涙を運ぶ

名前と機能


名前/機能/数
Vatavaha  ヴァータを運ぶ
2

Pittavaha ピッタを運ぶ
2

Kaphavaha カッファを運ぶ
2

Rakutavaha 血を運ぶ
2

Rasavaha リンパ/ 血漿を運ぶ
2

Shabdavaha 音を運ぶ
2

Rupavaha 視覚を運ぶ
2

Rasavaha 味を運ぶ
2

Gandhavaha 匂いを運ぶ
2

Bhashyavaha 話すことを運ぶ
2

Ghoshavaha 微かな音 / ささやき声を運ぶ
2

Svapiti / Svapnavaha 眠りを運ぶ
2

Pratibudhyati / Prabodhavaha 目覚めを運ぶ
2

Ashruvahini 涙を運ぶ
2

Stanyavaha 女性ー乳房にあり、母乳を運ぶ
Shukravaha in men  男性ー乳房にあり射精の際、精液を運ぶ
それぞれ2

Adhoga Dhamani アドーガ ダーマニ


アドーガ ダーマニは下行する経脈、あるいは下半身に分布する経脈を指します。
Adhoga は「下の」や「下向きの」という意味を持ちます。
アドーガ ダーマニは、心臓から離れて体の下部へと向かう経脈を指していると考えられます。
体の上部から下部へとプラーナ(生命エネルギー)を運搬し、血液やリンパ液の循環を促す役割や消化や排泄、生殖など、下半身で行われる様々な機能を支える役割を担っています。
具体的にはおなら、尿、便、精液、月経血を下方へ運びます。
働きが滞ると、消化不良、便秘、下痢、泌尿器系のトラブル、冷え性生殖機能の低下などが挙げられます。
アドーガ ダーマニはpittashaya(ピッタの住処、ピッタを作り運ぶ内臓)に到達すると消化の火の作用とその熱によって適切に形成された食物のエッセンスを他の水液から分離して、栄養液を運んで、体(結腸、腰、骨盤、尿、便、肛門、直腸、肛門、膀胱、陰茎、太もも)を養います。
その栄養液で上向きと横向きに動くダーマ二を養い、ラサの座を栄養液で満たします。
※ここでのラサは心臓や循環器を意味します。
また尿、汗、便を区別し分離します。

Adhoga Dhamaniが、下向きに流れる経脈でありながら、上向きや横向きの部分に栄養を与えるのはなぜ?


アーユルヴェーダにおける経脈の概念が、単なる物理的なパイプラインではなく、エネルギーの流れを表しているためです。
アーユルヴェーダでは、経脈は単に身体を流れる液体や気体を通す管路ではなく、プラーナ(生命エネルギー)が流れる道と捉えられています。
このプラーナは、身体のあらゆる機能を維持するために不可欠なエネルギーであり、経脈を通じて全身に運ばれます。
Adhoga Dhamaniは下向きの流れを持つ経脈ですが、この「下向き」は必ずしも物理的な方向性を指しているわけではありません。
主に消化器官や排泄器官に関連する経脈であり、これらの器官にプラーナを供給します。
消化された栄養素はこれらの器官で吸収され、その後他の経脈を通じて全身に運ばれます。
Adhoga Dhamaniは消化吸収というプロセスにおいて、栄養素が身体の他の部分へと向かうための最初のステップを担っていると考えられます。
経脈は身体全体に張り巡らされた複雑なネットワークを形成しています。
Adhoga Dhamaniもこのネットワークの一部であり、他の経脈と相互に作用しながら身体全体のバランスを保っています。
経脈は、身体の様々な部分で交錯し、互いに影響を与え合います。
Adhoga Dhamaniから分岐した小さな経脈が、上向きや横向きの部分へと伸びていき、栄養を供給していると考えられます。

アドーガ ダーマニは胃と結腸の間で3つの部分に分かれ、30の枝を形成します。

アドーガダーマニは以下のようなグループに分けて考えることができます。


①上部消化管のAdhoga Dhamani:
経路: 胃から十二指腸、空腸、回腸へと続く部分。
機能: 消化を助け、栄養素の吸収を促進します。
特徴: この部分の経脈は、消化酵素の分泌を促し、消化管の蠕動運動を活発にする働きがあります。
大腸のAdhoga Dhamani:
経路: 上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸へと続く部分。
機能: 水分の吸収を行い、老廃物を排出します。
特徴: この部分の経脈は、大腸の蠕動運動を促し、便の形成を助けます。
小骨盤のAdhoga Dhamani:
経路: S状結腸から直腸、肛門へと続く部分。
機能: 排泄を司ります。
特徴: この部分の経脈は、排便反射を促し、排泄をスムーズに行う働きがあります。

胃、小腸、大腸の消化吸収に関わる
大腸、直腸、肛門の排泄に関わる
生殖器系に関わる

③ヴァータ(風)に関連するAdhoga Dhamani: 運動を司る
ピッタ(火)に関連するAdhoga Dhamani: 消化を司る
カパ(水)に関連するAdhoga Dhamani: 結合を司る

アドーガダーマニ 名前 機能 数


Vatavaha-Vata carring ヴァータを運ぶ
2

Pittavaha-Pitta carrying ピッタを運ぶ
2

Kaphavaha-Kapha carrying カパを運ぶ
2

Raktavaha-Blood carrying 血を運ぶ
2

Rasavaha-Lymph / Plasma carrying 
リンパや血漿を運ぶ
2

Annavahini- Food carrying / carry food being in the intestines
腸内にある食物を運ぶ
2

Toyavaha-water carrying 水を運ぶ
2

Mutravaha-Urine carrying 膀胱にある尿を運び、排出する
2

Shukravaha-精液を運ぶ、精液の製造を助ける
Artava vaha -月経血を運ぶ、月経血の製造に関与
2

Shukra visarga-精液を運ぶ、精液を体外に運ぶ、射精
Artava visarga-月経を体外に運ぶ、月経
それぞれ2

Varchovaha-便を運ぶ、結腸に繋がっており排便を助ける
2

Svedamarpayanti-横向きのダーマ二に汗を与える
8

呼吸に関連するダーマ二


横隔膜動脈や肋間動脈など、いくつかのダマニは呼吸や特定の運動機能に関連しています。
ゴサカルダマニ(喉頭動脈)、バサンダマニ(舌下動脈)、アシュルヴァヒダマニ(涙動脈)など、特定の機能と関連付けられています。

Tiryagga Dhamaniトリリヤガ ダーマニ

斜め方向に動くダマニです。
 4 つあります。それぞれのダマニは、前進するにつれて、何千、何十万ものダマニに分かれ、さらに無数に分かれていきます。
体の隅々まで精巧に広がり網状に構成していきます。
トリリヤガダーマニの開口部は汗腺につながっており、汗は開口部から表面に排出されラサを通じて体の内側と外側を養います。
蓮の茎には自然に水が浸透する気孔があるのと同じように、ダマニにもその構造に多くの気孔/開口部があります。

体の表面に塗布される外用薬剤、湿布、薬用オイルマッサージなどの療法はこの開口部を通じて身体に入ります。

ダーマ二と五大元素

ダーマには五大元素によって発生し、五大元素はダーマ二の形成に寄与します。

ダマニは5つの微細感覚から成る人間の感覚器官に5回浸透して接続されます。

ダーマニは人が生きている限り5つの微細感覚を五大元素に結び付けます。

人が死に、創造した5つの基本要素に再び混ざり合うとダマニは分解されて再び五大元素に混ざり合います。
したがってダマニは人間の身体を創り、死後に身体とともに破壊される五大元素によって創り出されます。
したがってダマニは、身体のあらゆる部分と元素的かつ感覚的な関係を持ち、誕生から死まで人間とその人生に結びついています。

ダーマ二は動脈系

現代の視点から見ると、チャラカによって説明されたダーマニは動脈とみなすこともできます。
心臓から始まるダシャ・ダマニ(10本のダマニ)は心臓につながる10本の大きな血管で、心臓の構造を見ると動脈とは別に大静脈も心臓に繋がっている大きな構造ですが、静脈には脈動がありません。
ダマニには脈動があり主に大動脈とその枝が心臓の解剖学的構造の周囲に見られ、心臓につながっている大きな動脈がダマニとみなされ、中が空洞になっています。

ダーマ二は体の各部位を生存、機能させるために栄養素、血液や酸素を運ぶ空洞の輸送管の役割を果たしているとも考えられますが、脈動があるという定義においては動脈系(動脈とその枝)であるとも考えられています。

胎児とダーマ二

スシュルタが24 の主要なダマニがへそから始まると説明したしたことについて、胎児はへその緒から出入りする母親の血液と栄養に依存しているため、ダーマ二は胎児に生命の兆しを与えるための動脈循環系の役割をしている可能性があると考えられています。

またダーマニの最小の枝は毛細血管網の可能性があると考えられています。
神経には脈動はなく、解剖学的説明では脈動があるためダーマ二を神経とみなすことは困難です。

ダーマ二と外用薬

トリリヤガ ダーマニでも触れましたが、アーユルヴェーダーでは太古の昔から経皮経路の形での薬の使用について、アビヤンガやレパなどのすべてのバヒルパリマルジャナ・チキツァのヴィールヤは、ブラジャカ・アグニによって皮膚で変換された後、これらのダーマニを通じてのみ体内に入ると言及しています。
ダーマニはマルマとつながっており感覚機能と体液の流れにとって重要です。

つまりレパムなどの外用薬はシャリラの中の組織の中のひとつダーマ二から入っていく薬剤療法のひとつです。


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