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帆足-ミルマンの定理


帆足-ミルマンの定理

帆足-ミルマンの定理は図1に示す直流回路において、端子間電圧$${V_{\rm{ab}}}$$を求める方法である。
この法則は1927年に帆足竹治が発見したが、その13年後の1940年にJacob Millmanが同様の内容を発見し、アメリカで発表を行ったため、帆足-ミルマンの定理と呼ばれるようになった。
帆足氏の論文の中では、インピーダンスで考えており、交流回路にも適用できるようにしている。しかし、ここでは簡単のために抵抗のみの直流回路で考える。

図1 直流回路

帆足-ミルマンの定理より図1の端子間電圧$${V_{\rm{ab}}}$$は、

$$
\begin{align}
V_{\rm{ab}} &= \frac{\frac{E_{1}}{R_{1}}+\frac{E_{2}}{R_{2}}+\frac{E_{3}}{R_{3}}}{\frac{1}{R_{1}}+\frac{1}{R_{2}}+\frac{1}{R_{3}}}\notag\\
\end{align}
$$

で求めることができる。

より一般形にするために、図2に示すように$${n}$$個が並列であるとする。

図2 帆足-ミルマンの定理の一般形

この場合は、

$$
\begin{align}
V_{\rm{ab}} &= \frac{\frac{E_{1}}{R_{1}}+\frac{E_{2}}{R_{2}}+\cdots+\frac{E_{n}}{R_{n}}}{\frac{1}{R_{1}}+\frac{1}{R_{2}}+\cdots+\frac{1}{R_{n}}}\notag\\
\end{align}
$$

となる。

証明

帆足-ミルマンの定理の証明はネット上に多くありますが、その多くは正しくないです。
ここでは、帆足氏が実際に論文の中で行った証明方法をご紹介します。(ミルマン氏の論文は無料では見れなかったため)
論文をご覧になりたい方は、

にアクセスして、フリーワード検索欄に帆足と打ち、検索を行う。
帆足氏の色んな論文が出てくるが、その中の「回路網結合の法則と其應用」をクリックすると見れます。
以下はその論文です。


図3 回路図

図3の回路において、まずは電流$${I_{1}}$$を考える。
ここで重ね合わせの理を使う。
電源$${E_{1}}$$のみを考えると、図4の回路となる。

図4 回路その1

この回路における電流$${I_{11}}$$を抵抗$${R}$$ではなく、コンダクタンス$${G}$$を用いて表す。

$$
I_{11}=G_{11}E_{1}\tag{1}
$$

合成コンダクタンス$${G_{11}}$$は、

$$
G_{11} = \frac{1}{\frac{1}{G_{1}}+\frac{1}{G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n}}}\tag{2}
$$

となるので、式(1)に代入すると、

$$
\begin{align}
I_{11}&=G_{11}E_{1}\notag\\
&= \frac{E_{1}}{\frac{1}{G_{1}}+\frac{1}{G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n}}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{1}G_{1}(G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n}+G_{1}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{1}G_{1}(G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{G_{1}+G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n}}\tag{3}\\
\end{align}
$$

となるが、式(3)の分母は、コンダクタンスを全て足し合わせたものなので、

$$
G_{1}+G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n} = \sum_{i=1}^{n} G_{i}
$$

となる。よって、

$$
\begin{align}
I_{11}&= \frac{E_{1}G_{1}(G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{G_{1}+G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{1}G_{1}(G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\tag{4}\\
\end{align}
$$

となる。

次に、電源$${E_{2}}$$のみの時を考える。回路図は図5のようになる。

図5 回路その2

図5では、1と2の場所を入れ替えている。この操作自体は並列回路なので問題ない。
この回路で電流$${I_{12}}$$を求める。$${I_{12}}$$は、分流の式を用いると、

$$
I_{12}=\frac{G_{1}}{G}I_{22}\tag{5}
$$

となる。(分からない方は関連記事を参照ください。)

並列回路となっているものの合成コンダクタンス$${G}$$は、

$$
G = G_{1}+G_{3}+\cdots + G_{n}\tag{6}
$$

となる。ここで注意すべきは、式(6)において、コンダクタンス$${G_{2}}$$は、他のコンダクタンスと直列になっており、分流には関係がない。

全電流$${I_{22}}$$は、図4で添字$${1}$$と$${2}$$が入れ替わっただけなので、$${I_{11}}$$の式において、添字$${1}$$と$${2}$$を入れ替えれば良い。そのため、

$$
\begin{align}
I_{22}&= \frac{E_{2}G_{2}(G_{1}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{G_{1}+G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{2}G_{2}(G_{1}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \tag{7}\\
\end{align}
$$

となる。

よって、電流$${I_{12}}$$は、式(5)に式(6)と(7)の結果を代入して、

$$
\begin{align}
&\notag\\
I_{12}&=\frac{G_{1}}{G}I_{22}\notag\\
&= \frac{G_{1}}{G_{1}+G_{3}+\cdots + G_{n}}\times \frac{E_{2}G_{2}(G_{1}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{2}G_{1}G_{2}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\tag{8}
\end{align}
$$

となる。

他の電源のみの時も同様に考えれば良い。図5の添字が$${3,4,5,\cdots,n}$$となっていくだけなので、式(8)の添字$${2}$$を変えるだけで良い。

よって、

$$
\begin{align}
&\notag\\
I_{13}&=\frac{G_{1}}{G}I_{33}\notag\\
&= \frac{E_{3}G_{1}G_{3}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\notag\\
&\notag\\
I_{14}&=\frac{G_{1}}{G}I_{44}\notag\\
&= \frac{E_{4}G_{1}G_{4}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\notag\\
&\notag\\
&\vdots\notag\\
&\notag\\
I_{1n}&=\frac{G_{1}}{G}I_{nn}\notag\\
&= \frac{E_{n}G_{1}G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\notag\\
\end{align}
$$

となる。

最後に電流の向きに注意して重ね合わせる。
図3において、電流$${I_{1}}$$は、上向きなので、これを正として扱う。
図4の電流$${I_{11}}$$は、上向きなので、正となる。
図5の電流$${I_{12}}$$は、下向きなので、負となる。
以降、添字$${3,4,5,\cdots,n}$$も下向きなので、負となる。
よって、電流$${I_{1}}$$は、

$$
\begin{align}
I_{1} &= I_{11}-I_{12}-I_{13}-\cdots-I_{1n}\notag\\
&= I_{11}-(I_{12}+I_{13}+\cdots +I_{1n})\tag{9}
\end{align}
$$

となる。
それぞれ代入すると、

$$
\begin{align}
I_{1} &= \frac{E_{1}G_{1}(G_{2}+G_{3}+\cdots +G_{n})}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} -\left(\frac{E_{2}G_{1}G_{2}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\right) \notag\\
&\notag\\
&\qquad \qquad \qquad -\left(\frac{E_{3}G_{1}G_{3}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\right)-\cdots-\left(\frac{E_{n}G_{1}G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\right)\notag\\
&\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{1}G_{1}(G_{2}+\cdots +G_{n})-E_{2}G_{1}G_{2}-\cdots -E_{n}G_{1}G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{1}G_{1}G_{2}+\cdots +E_{1}G_{1}G_{n}-E_{2}G_{1}G_{2}-\cdots -E_{n}G_{1}G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \notag\\
&\notag\\
&= \frac{(E_{1}-E_{2})G_{1}G_{2}+(E_{1}-E_{3})G_{1}G_{3}+\cdots +(E_{1}-E_{n})G_{1}G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \tag{10}
\end{align}
$$

となる。
よって、図3の端子間電圧$${V_{\rm{ab}}}$$は、

$$
\begin{align}
V_{\rm{ab}} &= E_{1} - \frac{I_{1}}{G_{1}}\notag\\
&\notag\\
&= E_{1}- \left(\frac{1}{G_{1}}\times  \frac{(E_{1}-E_{2})G_{1}G_{2}+\cdots +(E_{1}-E_{n})G_{1}G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \right)\notag\\
&\notag\\
&= E_{1}- \left( \frac{(E_{1}-E_{2})G_{2}+(E_{1}-E_{3})G_{3}+\cdots +(E_{1}-E_{n})G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \right)\tag{11}\\
\end{align}
$$

となる。
式(11)を通分すると分子は、

$$
\begin{align}
&E_{1}(G_{1}+G_{2}+\cdots G_{n})\notag\\
&\quad -((E_{1}-E_{2})G_{2}+(E_{1}-E_{3})G_{3}+\cdots +(E_{1}-E_{n})G_{n}) \notag\\
&\notag\\
&= E_{1}G_{1}+E_{1}G_{2}+\cdots + E_{1}G_{n} \notag\\
&\quad -E_{1}G_{2}+E_{2}G_{2} -E_{1}G_{3}+E_{3}G_{3}- \cdots- E_{1}G_{n}+E_{n}G_{n} \notag\\
&\notag\\
&= E_{1}G_{1}+E_{2}G_{2}+E_{3}G_{3}+\cdots+E_{n}G_{n} \tag{12}
\end{align}
$$

となるので、式(11)は、

$$
\begin{align}
V_{\rm{ab}} &= E_{1}- \left( \frac{(E_{1}-E_{2})G_{2}+(E_{1}-E_{3})G_{3}+\cdots +(E_{1}-E_{n})G_{n}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}} \right)\notag\\
&\notag\\
&= \frac{E_{1}G_{1}+E_{2}G_{2}+E_{3}G_{3}+\cdots+E_{n}G_{n} }{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{\sum_{i=1}^{n} E_{i}G_{i}}{\sum_{i=1}^{n} G_{i}}\tag{13}
\end{align}
$$

となる。

式(13)を抵抗の書き方に戻すと、

$$
\begin{align}
V_{\rm{ab}} &= \frac{\frac{E_{1}}{R_{1}}+\frac{E_{2}}{R_{2}}+\frac{E_{3}}{R_{3}}+\cdots+\frac{E_{n}}{R_{n}}}{\sum_{i=1}^{n} \frac{1}{R_{i}}}\notag\\
&\notag\\
&= \frac{\sum_{i=1}^{n} \frac{E_{i}}{R_{i}}}{\sum_{i=1}^{n} \frac{1}{R_{i}}}\tag{14}
\end{align}
$$

となり、よく見る形になる。

関連記事

分圧と分流 直流回路
https://note.com/elemag/n/n4f62d31ecd0a?sub_rt=share_pw

重ね合わせの理 直流回路
https://note.com/elemag/n/n2f2abf222990?sub_rt=share_pw

サイト

https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

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