d-q-0座標系の必要性 同期機
a-b-c座標での解析における問題点
$${\rm{a}}$$、$${\rm{b}}$$、$${\rm{c}}$$各相の自己インダクタンスおよび相互インダクタンスは、関連記事のインダクタンス(制動巻線考慮なし) 同期機で考えたように、
自己インダクタンス
$$
\begin{align}
L_{\rm{aa}} &= L_{1}+L_{2}\cos \left(2\theta \right)\notag\\
L_{\rm{bb}} &= L_{1}+L_{2}\cos \left(2\theta + \frac{2}{3}\pi \right)\notag\\
L_{\rm{cc}} &= L_{1}+L_{2}\cos \left(2\theta - \frac{2}{3}\pi \right)\notag\\
L_{\rm{ff}} &= 一定\notag\\
\end{align}
$$
相互インダクタンス
$$
\begin{align}
L_{\rm{ab}}&= L_{\rm{ba}}= -L_{3} +L_{2}\cos\left(2\theta - \frac{2}{3}\pi \right)\notag\\
L_{\rm{bc}}&= L_{\rm{cb}}= -L_{3}+L_{2}\cos \left(2\theta \right)\notag\\
L_{\rm{ca}}&= L_{\rm{ac}}= -L_{3} +L_{2}\cos\left(2\theta + \frac{2}{3}\pi \right)\notag\\
L_{\rm{af}} &= L_{\rm{afm}}\cos(\theta)\notag\\
L_{\rm{bf}} &= L_{\rm{afm}}\cos(\theta-\frac{2}{3}\pi)\notag\\
L_{\rm{cf}} &= L_{\rm{afm}}\cos(\theta+\frac{2}{3}\pi)\notag\\
\end{align}
$$
で表される。
各相固定子巻線および励磁巻線に電流が流れると、磁束鎖交数$${\phi}$$は、
$$
\phi = Li
$$
より、
$$
\begin{align}
\phi_{\rm{a}} &= L_{\rm{aa}}i_{\rm{a}}+L_{\rm{ab}}i_{\rm{b}}+L_{\rm{ac}}i_{\rm{c}}+L_{\rm{af}}i_{\rm{f}}\notag\\
\phi_{\rm{b}} &= L_{\rm{ba}}i_{\rm{a}}+L_{\rm{bb}}i_{\rm{b}}+L_{\rm{bc}}i_{\rm{c}}+L_{\rm{bf}}i_{\rm{f}}\notag\\
\phi_{\rm{c}} &= L_{\rm{ca}}i_{\rm{a}}+L_{\rm{cb}}i_{\rm{b}}+L_{\rm{cc}}i_{\rm{c}}+L_{\rm{cf}}i_{\rm{f}}\notag\\
\phi_{\rm{f}} &= L_{\rm{af}}i_{\rm{a}}+L_{\rm{bf}}i_{\rm{b}}+L_{\rm{cf}}i_{\rm{c}}+L_{\rm{ff}}i_{\rm{f}}\notag\\
\end{align}
$$
となる。
この磁束により固定子には誘導起電力が生じる。
$${\rm{a}}$$相の誘導起電力$${v_{\rm{a}}}$$は、
$$
\begin{align}
v_{\rm{a}} &= -\frac{{\rm{d}}\phi_{\rm{a}}}{{\rm{d}}t}\notag\\
&= -\frac{\rm{d}}{{\rm{d}}t}\left(L_{\rm{aa}}i_{\rm{a}}+L_{\rm{ab}}i_{\rm{b}}+L_{\rm{ac}}i_{\rm{c}}+L_{\rm{af}}i_{\rm{f}}\right)\notag\\
\end{align}
$$
となる。
ここで、インダクタンス$${L}$$は、$${\theta}$$の関数であり、$${\theta}$$は、 $${\theta = \omega t}$$で時間$${t}$$に依存している。また、各電流も時間に依存するので、
$$
\begin{align}
v_{\rm{a}} &= -\frac{{\rm{d}}}{{\rm{d}}t}\left(L_{\rm{aa}}i_{\rm{a}}+L_{\rm{ab}}i_{\rm{b}}+L_{\rm{ac}}i_{\rm{c}}+L_{\rm{af}}i_{\rm{f}}\right)\notag\\
&= -L_{\rm{aa}}\frac{{\rm{d}}i_{\rm{a}}}{{\rm{d}}t} -i_{\rm{a}}\frac{{\rm{d}}L_{\rm{aa}}}{{\rm{d}}t}-L_{\rm{ab}}\frac{{\rm{d}}i_{\rm{b}}}{{\rm{d}}t} -i_{\rm{b}}\frac{{\rm{d}}L_{\rm{ab}}}{{\rm{d}}t}\notag\\
&\qquad \qquad -L_{\rm{ac}}\frac{{\rm{d}}i_{\rm{c}}}{{\rm{d}}t} -i_{\rm{c}}\frac{{\rm{d}}L_{\rm{ac}}}{{\rm{d}}t}-L_{\rm{af}}\frac{{\rm{d}}i_{\rm{f}}}{{\rm{d}}t} -i_{\rm{f}}\frac{{\rm{d}}L_{\rm{af}}}{{\rm{d}}t}\notag\\
\end{align}
$$
となる。
次に各相の巻線抵抗を$${R}$$とすると、中性点に対する端子電圧$${V_{{\rm{a}}}}$$は、
$$
\begin{align}
V_{{\rm{a}}} &= v_{\rm{a}}-Ri_{\rm{a}}\notag\\
\end{align}
$$
となる。
すなわち、同期機がある負荷で運転している時の状態を解析するには、負荷によって、定まる端子電圧($${V_{{\rm{a}}},V_{{\rm{b}}},V_{{\rm{c}}}}$$)と電流($${i_{\rm{a}},i_{{\rm{b}}},i_{{\rm{c}}}}$$)の間の関係式を連立して解けば良い。
しかし、このままでは、他の相の状態やその時間変化の割合、励磁回路の状態、回転子の位置とその速度などを把握する必要があり、解析が難しい。
そこで、d-q-0法によって変数変換を行う。
回転子軸上をd軸、d軸から$${\frac{\pi}{2}}$$進みでd軸と直交する軸をq軸とし、これに零相分を加えたものをd-q-0法という。
d-q-0座標において、各巻線の磁束鎖交数と電流の関係は、
$$
\begin{align}
\phi_{\rm{a}} &= L_{\rm{d}}i_{\rm{d}}+L_{\rm{af}}i_{\rm{f}}\notag\\
&\notag\\
\phi_{\rm{q}} &= L_{\rm{q}}i_{\rm{q}}\notag\\
&\notag\\
\phi_{\rm{0}} &= L_{\rm{0}}i_{\rm{0}}\notag\\
&\notag\\
\phi_{\rm{f}} &= \frac{3}{2}L_{\rm{af}}i_{\rm{d}}+L_{\rm{ff}}i_{\rm{f}}\notag\\
\end{align}
$$
となる。
また、インダクタンス行列は関連記事のインダクタンス行列のd-q-0変換より、
$$
\begin{align}
L_{\rm{dq0}}&=AL_{\rm{abc}}A^{-1}\notag\\
&\notag\\
&=\left (
\begin{matrix}
L_{1}+\frac{3}{2}L_{2}+L_{3}& 0&0 \\
& &\\
0& L_{1}-\frac{3}{2}L_{2}+L_{3}&0\\
& & \\
0&0& L_{1}-2L_{3}\\
\end{matrix} \right )\notag\\
\end{align}
$$
となる。
したがって、d-q-0法によって、
d, q, 0巻線には自己インダクタンスのみが存在する。
自己インダクタンスが回転子の位置$${\theta}$$に無関係になっており、大きさ一定となっている。
磁束鎖交数と電流の関係は、a-b-c法では他の相が影響していたのに対し、d-q-0法では、他の相の影響がなくなっている。
d-q-0法を用いることでa-b-c法よりも解析がしやすくなる。
関連記事
インダクタンス(制動巻線考慮なし) 同期機
https://note.com/elemag/n/n4684e5792c54?sub_rt=share_pw
インダクタンス行列のd-q-0変換
https://note.com/elemag/n/n8f4dd998dac7?sub_rt=share_pw
サイト
https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
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