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日本語で読めるARG入門・書籍編

ARGだけを取り上げた日本語の本は同人誌「ARGガイド2024」しか今のところありませんが、いくつかの書籍では一部でARGについて取り上げているので、ここではそういった書籍を紹介したいと思います。
(ARGを取り上げた本が新たに見つかったら随時追加していきます)

※本記事はもともと「日本語で読めるARG入門」の一部として書かれていたものですが、該当する書籍も増えてきたので独立した記事とし、最新の情報に更新しました。オリジナルの方は「日本語で読めるARG入門・ネット編」としました。


■ARGガイド2024

まずはこの本!書籍ではなく同人誌ですし、石川編集のものなので手前味噌もいいところなのですが、今のところ日本語で書かれたARGについてこれ以上に詳しい本はないと断言できる自信作です。
ネット通販で印刷版、PDF版ともに入手できますので、下記記事を参照ください。

■デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド

デジタルゲームの産業、カルチャー、そしてテクノロジーにまつわる24テーマを、各分野のオーソリティが執筆した本。第20章はARGについてSIG-ARGの元正世話人だった八重尾昌輝氏が説明しています。
2010年初版のため事例などはかなり古いですが、今以上にARGが一般的でない時代に書かれたため、ARGの説明や要素、構造などを丁寧に説明しているのと、日本人が書いた文章のため、いま読んでもとても分かりやすい内容となっています。
また、電子書籍版もあるので今でも入手しやすいのも良い点です。

■あなたも脱出できる 脱出ゲームのすべて

タイトルだけ見ると脱出ゲームについて書かれた本のように見えますが、前半は広く体験型エンターテインメントの歴史をカバーしており、その意味でもお勧めの1冊。
ARGについては「第8章 1990年代~2000年代:ドットコム時代とその先」で、登場する背景も含め解説しています。
著者のL・E・ホールさんは古くからの体験型エンタメの研究者・制作者です。ARG『Perplex City』に残された謎を14年ぶりに解決した人としても有名です。

■コンバージェンス・カルチャー

複数のメディアを横断して物語を伝える「トランスメディアストーリーテリング」を提唱したヘンリー・ジェンキンスの名著。
原版が2006年出版とやや古いため最近の事例が反映されてない欠点があるのと、ARGについては『The Beast』がコラム的に紹介されている部分がほとんどで、さほど記述は多くはありません。
ただ、本書がカバーするトランスメディアと参加するファンの関係性についての視点はARGを考える上でも一読の価値があります。

■のめりこませる技術 ー誰が物語を操るのか

デジタル時代におけるストーリーテリングの方法をテーマに書かれた本です。
第1章「字が読めない語り部」で、ARGを中心としたストーリーテリングについて解説しています。
特に初期のARGである『The beast』や『I Love Bees』がどのような経緯で実現に至ったかの説明は、おそらく日本語で読める本の中では一番詳しいのではないかと思います。

■危険だからこそ知っておくべきカルトマーケティング

カルトの危険性をマーケティング手法やブランディング手法の方面から紹介している本。
セオリー4「覚醒の物語を現実世界とリンクさせ、信者を没入させるスイッチを埋め込む」で、ARGと陰謀論の似ている点と違う点について論考しており、ARGの説明として『I Love Bees』、ARG的な内容だったのに陰謀論になってしまった例としてARGの始祖的作品の1つ『Ong's Hat』を取り上げています。
『Ong's Hat』について日本語でまとまった形で紹介しているのはこの本だけではないでしょうか。

■幸せな未来は「ゲーム」が創る

ARG初期からのゲームデザイナーとして『I Love Bees』や『The Lost Ring』なども手掛けたジェイン・マクゴニガルの本。
ARG的な手法を使って現実の生活をどう豊かにできるかの考察と提言が主眼の本なので、ある意味ARGに特化した本とも言えますし、逆に娯楽としてのARGについての内容を期待するとやや肩透かしを食らってしまうかもしれません。

■ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン

日本でレベルデザインの本が出るのも珍しいですが、その第11章が「現実世界を舞台にしたレベルデザイン」という内容で、ARGなど現実空間を舞台にしたゲームの考察を行っています。
レベルデザインの視点からのかなり専門的な分析なので、初心者が即ARGに活かすのは難しい内容ですが、その分歯ごたえのある考察になっています。
長らく絶版でとんでもない中古価格がついていましたが、2025年3月に第2版が翻訳されることになりました。めでたい!
第2版でARGがどの程度扱われているかは不明ですが、期待して待ちたいと思います。

■中ヒットに導くゲームデザイン

ゲームデザインを総合的に網羅した書籍ですが、「デザイナーの視点」いうコラムがあり、その中にARGのゲームデザイナーであるジェイン・マクゴニガルとエラン・リーがどのようにゲームデザインを考えているかの記事が掲載されています。
コラムは各2ページと決して多くはないですが(あと翻訳が今一つこなれていない感がありますが)、特にエラン・リーが『I Love Bees』の3週目の失敗について書いた内容は興味深いです。
こちらも海外では最新の第5版が出ているので新たな日本語版を期待したいところ。


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