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恐怖の家主との対決
こんにちは!ツアーガイドのFujikoです✨
13年前に書いたスペイン留学ブログ「不惑のハポネサ」を、25回のシリーズで別バージョンでお届けします。映画業界で働いていた頃の体験をお楽しみください!
■重い腰をようやく上げた女家主
ピソの玄関を開けると、残り香ならぬ怒りの雰囲気が残っていた💢
リビングルームに行くと、このピソの家主がコーヒーを飲みながら電話をしている📞
グレーのパンツスーツを身にまとい、背の高い彼女にはとても似合っていた👗
「ようやく、就活するのね」と思う🤔
彼女は、私がこのピソに引っ越してから3日後に仕事をクビになっていた😞
彼女曰く、女性であること、独身、そして40歳過ぎという年齢に対する差別的な見方から、スペインではこのような雇用整理が珍しくないらしい⚖️
私がちょうどスペインへ来た頃の失業率は25%。そのうちの50%が20代の若者だとニュースは頻繁に報じていた📉
EU内ではGDP第4位を誇るスペインだが、こんなにも経済が脆弱だとは…。私はそんな現実を目の当たりにしていた👀
彼女は、私の家賃収入を当てにしていたのか、失業してからも一日中家でゴロゴロとテレビを見ていた📺
その姿に、「早く仕事を探せばいいのに。働かざる者食うべからず」と心の中でつぶやく💭
ちなみに、彼女はパイロットの男性と昨夏に離婚していた✈️💔
職無し、不惑の年を過ぎた43歳、バツイチ。そして、収入源である私が「ピソを出る」と言い出す始末🧳
「この人は厄年かしら?」と思うほど、不運が続いているように見えた🤷♀️
それでも、私がピソを出ると告げた途端に就活を始めるとは、何ともわかりやすい人だ😂
電話の長話は終わりそうもない。しょうがないのでメモを渡した📝
今日出て行くこと、スーツケースを物置から部屋に持ってきてほしい旨を書いて渡す。入居時にスーツケースを物置に預けたのは失策だった。「人質」を取られているようで、ずっと気がかりだったからだ🧳
■ペドロ・アルモドバル映画に匹敵する狂女
彼女は電話を終え、私のスーツケースを持って部屋に入ってきた。ひとまず「人質」は解放された🛅
その代わり、新たな不安の種を残していった✋
それは手書きの書類📄
そこには、「今回の退去に関する一切の責任は私にあり、退去費用として400ユーロを払え」と書いてある💸
スペイン語がおぼつかない私でも、その不当さは直感で読み取れた⚡️
私は台所にいる彼女に冷静に言った。
「契約書も交わしていないのだから、この書類にサインはできない」🖋️
彼女は眉をつり上げ、顔つきを変えた😡
「スペインでは、退去1ヶ月前に申告して出て行くのが普通。それを怠ったのだから、1ヶ月分は払って当然よ!」と。
私の中で何かが発火し、頭が沸騰しはじめた💥
スペイン語で反論できないもどかしさから、反射的に英語でまくし立てた😤
彼女は英語がほとんどわからない。今思えば、関西弁でまくし立てた方が迫力があったかもしれない😂
「契約書がないんだから400ユーロは払わない!私の世話人もそう言ってる!」と。
彼女はキョトンとし、次の瞬間、10倍の勢いでスペイン語の早口言葉を返してきた🌀
私は何を言っているのかわからなかったが、彼女の顔を見ながら分析していた🧐
(この人、ペドロ・アルモドバルの映画に出てくる狂女みたいだな…)
"Qué cara tienes!"(何て図々しいの!)というフレーズだけが聞き取れた💥
スペイン人はジェスチャーが大げさで、彼女も自分の頬を軽く叩いていた✋
ホアン先生の授業で「自分の頬を叩くジェスチャーは『図々しい』という意味」と習ったばかりだった。まさかこんなに早く役立つとは…😂
「私はサインもしないし、400ユーロも払わない。私の世話人に確認する必要がある!」と私は言い切り、自分の部屋へ戻った🏃♀️💨
■自由剥奪
頼りにしていた人たちに今の状況をメールしようとしたら、突然インターネットが使えなくなった📵
もしかしたら、家主が無線LANを切ったのでは?と疑心暗鬼でリビングをのぞくと、案の定、彼女がルーター付近でケーブルをいじっていた⚡️
そう、私が外部と連絡を取れないようにするため、回線を切っていたのだ📶❌
さらに、彼女はノックもせずに私の部屋に踏み込み、机の上にあった家の鍵を奪っていった🔑
ここまでやるなんて…。書類にサインして400ユーロを払わないと、この家から一歩も出さないつもり?
怒りを超えて、恐怖が湧き上がってきた😱
「落ち着け、私…」と自分に言い聞かせながら、この状況からどう脱出するかを考えた🤔
1. 部屋の窓から飛び降りる(3階)🪟
2. 窓から叫んで助けを求める📢
3. サインして400ユーロを払って出る💸
結局、私は「3」を選んだ。命が大事だと思ったからだ🤷♀️
全ての支度を終え、2つのスーツケースを引きずり、書名した書類と400ユーロを無言で渡した🧳💼
"Abre la puerta!"(玄関を開けて!)と言うと、彼女は一瞬驚いた顔をしたが、くわえタバコのまま無言で開けた🚪
エレベーターに乗り込んだ瞬間、「バタン!」と戸を閉める音が響いた🔊
■マドリードの寒空の下で
エレベーターの中で、私は安堵し、自由の感覚に包まれた😌
闘いは終わったのだ…でも、その安堵も長くは続かなかった😔
外に出るとすでに夜の7時を過ぎ、辺りは真っ暗🌃
地下鉄で移動しようと考えたが、メトロ近くに駐車している車のタイヤが毎日盗まれているのを思い出した🚇❌
ここは少しお金をかけても、安全を優先してタクシーを使うことにした🚕
マドリードの寒空の中、私は2つのスーツケースを引きずりながらホステルへ向かった🧳🌬️