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コネ社会でスペイン映画研究

こんにちは!ツアーガイドのFujikoです✨
13年前に書いたスペイン留学ブログ「不惑のハポネサ」を、25回のシリーズで別バージョンでお届けします。映画業界で働いていた頃の体験をお楽しみください!


■ スペイン映画の勉強で参りました…🎬

2012年1月に渡西して、3月に国際交流基金マドリード事務所の震災映画特集のお手伝いが終了。
日常生活や大学での授業にもリズムをつかみ始め、私の生活はスペイン映画一色に転じつつあった✨

そもそもスペイン映画の「研究」という名目でスペインに滞在しようと企み、40歳を過ぎて運よく実現することができた。
そんな稀有な機会に恵まれたが、生かすも殺すも自分次第。
監視する他者はおらず、堕落の道に転がり込もうとする自分を制止できるのは自分のみ😌
「こっちにおいで」と手招きする雰囲気のいいレストランやバルにはフラフラと立ち寄らないように自重した。


■ スペイン社会はコネ社会💼

公的な機関に出入りするには、身分や理由も明確であることは重要だが、スペインにおいてはもっと重要なことがある。
それは、「コネ」である。
キーパーソンを見極め、ボタンの押しどころを間違えない、そしてその人を何らかの形で知っていることが、道を分けるのだ🔑
今回のスペイン滞在で研究をするにあたり、不可欠な機関があった。
それは国営のフィルムセンターである「Filmoteca(フィルムモテカ)」📽️
スペイン国内の映画を保管・保存する、言わばこれまでのスペイン映画の上映プリントや書籍の収集・修復・保管・保存を担っている国の機関である。
多くのスペイン映画研究者や映画・メディア関係者が出入りし、そこで作品を観たり、書籍を読んだりして活用している。

私の場合、観たい作品の多くは1950~70年代の作品であったため、町の図書館やレンタルビデオ店には鑑賞できる作品が少ない。
それ故、この機関へのアクセスは今回の留学の成果を左右するものと言っても過言ではなかった🎞️


■「Filmoteca」にお邪魔しマース🎥

この連載の「スペインと映画の出会い」で紹介した国営の映画館「Cine Doré(シネ・ドレ)」から徒歩5分のところに「Filmoteca」はあった。
東京・京橋にある「東京国立近代美術館 フィルムセンター」のようなガラス張りの近代的な建物をイメージしていたので、古い石造建築のシンプルな門構えにちょっと戸惑う🏛️
敷地面積は広そうだ。

戸口を開けると、空港の保安検査所のような光景が目に入った。
検査員と金属探知機、X線検査装置だ。
「ほー、お国が違うと、ここまで徹底するんだ」と感心。

Filmoteca はこんな感じの重厚感のある建物


でも、私が通った5か月間、実際にそれらを使って検査されたことが一度もなく、誰かを検査している様子も見たことはなかった。
受付のおじさんにアポがあることを伝え、身分証明書の提示を求められる。
ネームカードを渡され、3階へ行けとそっけなく伝えられた。
なだらかな螺旋階段を上ると、昔のスペイン映画のポスターが壁一面に整然と貼られている。
映画好きにはたまらない、至福の空間だ✨
担当者の部屋はその奥にあった。

Tさんというスペイン人女性が笑顔で迎えてくれた。
事前に観たい映画のリストを送っていたので、彼女のデスクの上には用意周到にビデオが積まれていた📺
そのビデオを持って、10ほどある鑑賞専用のブースの1つへ案内される。
電話ボックス2つ分ほどのスペース。
ビデオプレイヤーとモニターが設置され、映画を集中的に観ることができる場所である。

VHS、ベータ、DVD、U-matic、オンデマンドと、時代の流れを反映したすべての再生方式で鑑賞できるようになっている。
公的な施設なので当たり前なのかもしれないが、1つひとつのブースにそれらを備えた充実ぶりに深く感動してしまう。



じっくり作品を鑑賞できるブースが並んだフロア


Tさんと仲良くなってもらったFilmotecaのカレンダー


Tさんの勤務時間が朝9時から昼2時までの5時間であるため、ブースの使用もその時間内に限られている。
その後を引き継ぐ人員がいないのは、経済状況が悪いスペインらしい事情だが…。
その5時間をフルに活用するため、どんなに二日酔いがつらい日であろうが必死に通った。
通い慣れると受付のおじさんやTさんとも仲良くなっていた。
ハイキングに行くような気分で水やお菓子をバッグに常備するようにもなった🍪
こう言うと驚かれるかもしれないが、「観る」という作業は結構な重労働である。
健康状態や精神状態を毎日均一に保ち、水を補給し、たまに甘い物を食べて疲れた頭の緊張をほぐしつつ集中し続けることが大切だ💪

大学の授業がない日や学期間の休みを利用して、2012年の3月から7月に帰国するギリギリまで「Filmoteca」に通いつめた。
観た映画数は54本。
スペイン滞在中に観た134本のうちの40%を占めている🎬
ここで観た作品の記憶が、2年後の今、私のキャリアとしてようやく活き始めたという気がしている。

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