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ささいで永遠な、回りくどくて軽薄な。
「ツーショ撮ろうよ」
この言葉があまり好きではない。
自分の顔が恵まれていると思えなくて、笑うのが下手な私にとって、撮られることは大抵気分の良いものではない。
撮ろう撮ろう、と笑いながら、その実、嫌だなあなんて思っている。
人の顔なんて記録しておいて何になるんだろう、と。
ツーショットなんて、ささいで永遠な独占欲だ。
この空間にいたのは私とあなただという、二人だけ知っていれば良いような、別に世界は二人の邪魔をしないのに、二人分の視界をわざわざ3:4に押し込めて笑う。
仲が良いほどに息吸う軽さで、そうでもなければ告白よりは軽い一歩で、人は他人を誘ってシャッターを切る。
そうして顔を隠して写真を不自然に飾ってでもSNSに載っけたり、夜中にフォルダを眺めてにやにやしたり、ぎゅっと四角い画面だけを抱きしめて何も言わずにいたりする。
簡単に得られて、忘れても引っ張り出せる、便利で鮮明な記録媒体。
それは忘れたくなった時に尚一層の鮮やかさで迫ってきて直視なんかできなくて。
もう要らないなとゴミ箱マークを押す指の動きでやっと時が過ぎたのを知るような。
軽薄で、回りくどい独占欲。
ツーショットは嫌いだ。
その一フレームに収まるのが異性だろうと同性だろうと、年下だろうと年上だろうと、可愛かろうとそうじゃなかろうと、好きだろうと嫌いだろうと、必ず相手の方が良い笑顔をしていて、その横でひきつった顔の私が並んでいるのは苦痛だ。
だけど。
あの空間にいたのは私とあなただ。他の誰でもない。
私とあなただけ、この事を知っていればそれで十分なはずだ。他の人に知らしめる必要もない。
どうやら、それでは不十分らしい。
勝手な顔して、他の誰も知らないのを良いことに、あなたと、違う誰かの空間を装おうとする奴がいるらしい。
それなら、
証拠が欲しい。
私とあなたで確かめるためでなく、あなたと他の誰かでないことを突きつける為の証拠。あなたといたのは紛れもなく、他の誰でもなく私なんだと
────世界に知らしめる為の。
これが独占欲でなくて、なんだろうか。
ねえ。
ツーショ撮ろうよ。