スタジアムとLGBTs
再開のあの丘からこんにちは。丘江梨奈と申します。この度はEsteemChant発足おめでとうございます。私は普段某Jリーグチームのサポーターをしている同性愛者です。同性愛は私にとっては普通のことなので、特に公表はしていませんでしたが、この、スタジアムというたくさんの人が集まる現場で、何かひとりでも、すこしだけでもわたしの言葉で勇気を持ってもらったり、救える事ができたらと思い、今はじめて文章で公表をし、参加をさせていただきました。おおやけにカミングアウトをしたのがはじめてなので、わたしも緊張しています(笑)。何卒暖かい目で見守っていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
さて、私が今から何を書いていくかというと、最近よく耳にする『LGBTs』についてです。
Jリーグの村井チェアマンも、ソーシャルフェアプレイ、すべての差別の根絶を掲げておりますし、実際にスタジアムで流れる映像でも差別を許さないというメッセージを見聞きすることが多いと思います。すべての差別というところに、当然、人種、性別、同和問題などに加えてLGBTsももちろん含まれています。
しかし、実際にスタジアムにいる限りは誰がそうなのかわかりません。ですから、実際にスタジアムに存在しているLGBTsとして声をあげ、私達のことを少しでも知ってもらい、みなさんと一緒にJリーグの掲げる差別の根絶という理念をすこしでも実現するお手伝いができればと思います。
LGBTsとは
最近最も見聞きする言葉かと思います。
媒体によってはLGBTだったり(おそらく皆さんが一番見るのがこれ)LGBTQだったり、LGBT+だったり。この言葉、どうやら最近一人歩きしていて明確な定義が人によって違く、「LGBTトイレ」という言葉が一人歩きしたように、性同一性障害のことかと思っている方も多いと思うので、一度解説をさせていただきます。私はLGBTsという表現が一番私たちを表すことができているなあと思っていますので、この表現で進めていこうかと思います。
LGBTsとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、の略で、sはそれ以外の異性愛以外の性愛を表現しています。(無性愛、ポリアモリーなど)シンボルは6色の虹で、これはよくご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。レインボープライドなど、さまざまなイベントもやっているので、うっすらと見たことがある方は多いかもしれません。
よく、小児性愛もこの中に入るじゃないかというのを耳にしますが、小児性愛は、セクシャリティではなく性癖で、男性が小さいとはいえ女性を好きなわけですのでLGBTsにはカテゴライズされません。性的嗜好(専門的には小児性愛=ペドフィリア、嘔吐性愛=エメトフィリアなどの~~フィリアと付くもの)と性的指向(LGBTs、へテロセクシャル=ストレート=異性愛)は全くもって別物です。
LGBTsは、日本人口の7.6%といわれています。サッカーでわかりやすく説明すると、埼玉スタジアムさんのスタジアムが満員で六万人収容ですから、これの7.6%ですと4,500人ほどはLGBTsに該当します。Jリーグでわかりやすく言うと、スタジアムのうちアウェイサポーターは全員LGBTsくらいの感覚です。それほど多く存在しているので、思ったより沢山のLGBTsの方が生活していて、意外と身近なところに存在しているのです。
まず、レズビアンから解説していきます。よく耳にすると思いますが、性自認が女性の方が女性しか好きになれないセクシャリティのことです。みんな、宝塚やセーラームーンのウラヌスとネプチューン、プリキュアのマカロンとショコラのようなマスキュリンな女性とフェミニンな女性のカップルのイメージを持ちがちですが、実際にそのようなカップルもいますし、女性らしい見た目同士のカップルもいれば、ボーイッシュな見た目同士のカップルもいます。また、必ずいかなるときにも男性役、女性役にわかれると思っている方もいらっしゃいますが、そうではないです。(家事とか、仕事とか、夜とか)スタジアムでどの選手がタイプ?とか聞かれると結構困惑します。これに関してはあとで記述します。
次にゲイです。こちらが一番知名度が高いのではないでしょうか。男性が好きな男性のことです。
こちらも男役と女役があるのが当たり前と思っている方は数多くいらっしゃると思いますが、そんなことはありません。また、ゲイといえば二丁目!と思うかたも多いと思いますが、そういう賑やかな場所が苦手な方もいらっしゃいます。そして、オネエタレントさんたちのように、ゲイの方はみんな●●よー!キャー!みたいなノリをイメージする方も多いと思いますが、全員が女性言葉を話すわけではないし、異性愛者の男性が新垣結衣さんかわいいよな…結婚したいと思うのと同じ感覚で瀬戸康史さんかわいい…斎藤工さんかっこいい…っていう気持ちを持つって思うのが一番ちかいでしょうか。とにかく、オネエタレントの姿がゲイのスタンダードな姿なわけではありません。サポーターは割とへテロセクシャル(一般的な男女恋愛観を持つ方々の名称)男性の意見が強い場であるため、例えば愛恵里ちゃんかわええよな!お前もそう思うやろ?っていう質問に「俺は曜一朗のが好きやで…」って形見の狭い思いをしている人もいるかもしれませんね。(セレッソをピックアップしてすみません。私が愛恵里さんが綺麗で一生懸命で大好きなので、素敵な女性として推したかった…)愛恵里ちゃんも曜一朗もそれぞれええなー!っていう世界になれればいいと思います。
次はバイセクシャルです。こちらは男女両方を恋愛対象にできる方々です。バイという風に呼ばれる事が多いです。バイセクシャルの方は、メジャーな恋愛観を持つ方々からも、またレズビアン、ゲイからも嫌な目で見られることが多いということも知っていただきたいとおもいます。メジャーな恋愛観を持つ方々からは男も女もイケるなんて、節操がないとか、レズビアン、ゲイからは「結局は普通の男女結婚に逃げられるなんてずるい」と言われてしまうことが多いと言われています。本人たちは、決してそういうつもりではなく、ただ魅力を感じる対象が男も女もどちらも…というだけなのに、どうしたことか性的に積極的でふしだらだ!という非難を投げかけられたりと、どちらの性も好きになることができて、なおかつ人を好きになるという自然な感情を、貶されることが多いようです。人を好きになることは、こうしようと思って、選んで好きになるのではなく、好きになってしまっただけなのに、それを節操がないとか、ふしだらとか、性的なタブーのように扱われることが私は少し疑問です。どちらの性も自然に魅力を感じるというのは、素敵だと思います。
次にトランスジェンダー。大きく分けてMtF、FtM、MtX、FtXの四つかと思います。初めて見る方が多いと思います。特にX。これは定義が大変難しいので、もし間違っていると思ったら教えていただきたいです。
大雑把にいうと自分の性別に違和感がある方々で、ホルモン治療をしたり心の性を取り戻す手術をしたりする方々がこちらの皆さんです。体と心の性別が合致しない場合や、そもそも男でも女でもどちらの性別にも違和感がある方々が分類されます。定義が難しいので、あくまでも一概にという気持ちで捉えてください。見た目ではわからない可能性がありますので、近くの人が女扱いしないでとか、男扱いしないでとか、そういうサインをだしていたら、それ以上無理にいじるのはやめてあげてほしいと思います。ただ単に男女平等でいたい方かもしれませんが、性別のことで他人をいじったり、あなたは女なんだから、あなたは男なんだからと色々当てはめてしまうのは、今後ダイバーシティ化するなかでタブーとして自粛する傾向がでてくると思うので、あらかじめ、性別の押し付けをするのをやめるのは、のちに恨まれたり問題に巻き込まれないために自分自身を守ってくれると思うほうが今後生きやすいかとおもいます。女性がスカートをはいているときに男がスカートはいてる~!って言われたり、男性が重いものを持っているときに持とうか?って言われたらちょっといやだなと思うと思いますが、それの積み重ねでトランスジェンダーのみなさんは傷ついていると思うのです。ただ、日本の学校や家庭では女性はこう、男性はこうと教えてきたので、それが当たり前だと思ってきた方にあなたの考えは悪いものだ!と急に突きつけるのは、その生き方を突然否定するような事だと私は思っています。だから、いけないことだよ!と急に言うのではなく、こういう人たちもいるから、男らしさ、女らしさを教えられてきた方々は、そういう男はこうあるべき、女はこうあるべき、と決めつけられると困るひとがいるんだな、また、伝統的な男女間に疑問を持つひとは、そうやって教育されてきたんだから、急に考えを改めるのは難しいけど、少しずつ理解を深めていける社会になるといいな、という互いに歩み寄り、おたがいの人生を尊重できるような環境になるといいとおもいます。
私の大好きな、俺の嫁ちゃん元男というブログにとてもわかりやすく可愛らしい漫画で書いてありますので(その他LGBTsについてもとても易しく親しみやすく書いてあるので、関心がある方は是非ご覧になってください!)
https://ameblo.jp/infection1985/
長くなってしまいましたが、最後にsの部分です。このsはLGBTに当てはまらない性の形を指します。
具体的にいうと、アセクシャル、ノンセクシャルや、パンセクシャル、ポリアモリー、インターセクシャル、その他もろもろの性などです。
アセクシャルとは、恋愛感情を持たない方々、ノンセクシャルは恋愛感情はあれど、そこに性的な感覚が付随しない方々を指します。またさらに、そこにデミロマンティック(性的感情は抱くが恋愛感情を抱きづらい)デミセクシャル(深い信頼感系がないと恋愛感情を抱かない)リスロマンティック(両想いではなく、片想いだけなら恋愛感情が存在する方々)等の細かい性の形があります。わー!これ自分も該当するかも?!という人、いると思います。ただ自分の感情に特に名前をつけずに、人の数だけセクシャリティがあるので、あなただけのセクシャリティがあるかもしれません。
このあたりは、paletteさんという団体様がとても分かりやすい例をあげていらっしゃいますので、興味のある方はぜひご覧になってくれるといいとおもいます。
https://note.mu/palette_lgbtq
(とても思いやりのある、素敵なアカウントさんです!)先ほどご紹介したちぃ様のブログ「俺の嫁ちゃん、元男」にもわかりやすく記載されています。
次にパンセクシャル。これはバイセクシャルと一見似ていると言われていますが、少々違います。というのも「誰とでも恋愛ができる」人たちだからです。バイセクシャルは男女両方ですが、パンセクシャルは男女の2つの性のどちらかではなく「誰でも」です。バイセクシャルが男性的な魅力も女性的な魅力もどちらもいいな、という存在で、パンセクシャルが恋愛に性別は関係ない、という区別になります。こちらもバイセクシャルの方々が苦しむことで苦しんでいらっしゃるかと思います。どんな人でも愛することができるのは素晴らしいと思います。
ポリアモリーに関しても少し記述をしますが、これは複数人のあいだで恋愛をする方々です。わたしの回りにはおらず、実例をあげることが困難なため、こんな記事を紹介します。浮気ではなく、全員に許可をとったうえで、複数人と恋愛関係をすすめる関係性をいいます。最初聞いたときはびっくりするかと思いますが、よくよく知っていくと、納得のいくことが多い説得力のある関係性だと思っていただけるとおもいます。
https://www.google.com/amp/s/m.huffingtonpost.jp/amp/2018/11/08/polyamory_a_23584296/
ほかにインターセクシャル(両性具有、ISとも表現される)などもありますが、とても医学的に専門的で、もし間違った認識を持っていたらインターセクシャルのみなさんに大変失礼なため、私にはうまく説明することが難しいです。六花チヨ先生の漫画が一番有名です。
インターセクシャルについても紹介リンクを貼っておきます。
https://sp.fnn.jp/posts/00338240HDK
これらは、LGBTsというくくりのなかで複雑に絡んでおり、レズビアンでリスロマンティックとか、ゲイのポリアモリーとか、色々な性があります。クエスチョニングという、自分の性に名前をつけられないという選択肢もあります。学会などでよく言われている「性はグラデーション」という表現があるのですが、まさにそのとおりで、人のぶんだけ性があり、性はアイデンティティーなのです。
さきほどトランスジェンダーの記述に書いたように、こんなひとがいるのかという知識として心に留めていただいて、もし目の前のひとが上記のような方で勇気を出してそんなことをいっても「恋愛感情がないなんてかわいそう」「そのうち好きなひとができるよ」などの否定をしないであげてほしいと思います。この方々はそんなことを何度も飽きるほど言われてきてそのたびに「この人も結局はわかってくれなかったな」と絶望を深めているかもしれません。ただ恋愛が幸せだと思う気持ちも本物ですし、いろんな人がいるからね、という風にみんながみんなの価値観をひとまず受け止める社会になればいいと思います。沢山の人がいて、それぞれにバックボーンがあるわけですから完全に目の前の人を理解しろというのは難しい話です。ただ、いわゆる社会的一番メジャーな恋愛観を持つ人も、そうでもない人も少しだけ相手の立場になって、お互いのことを理解とまで深いところまでいって受け入れなくてもいいから、なんとなく「否定しない」「そうなんだー」「色々な人がいるからね」程度にふわっと受けとめることができる社会になればいいと思います。
小さな当たり前の押し付けが私たちを透明な存在にする
●よく思っていること
~どうせわたしはここに存在しない~
世の中には異性愛を前提とした作品や常識でいっぱいで、センチメンタルなときは、男女のラブソングやら、男女の恋愛映画の広告でも疎外感を積み上げることがあります。カップルシートやら、そういった世の中の常識で感じるのは「ああ、わたしはこの中の一員ではないのだな」とまるで透明人間になったかのような気持ちです。ただ、大多数の日本人は男女で恋愛することが多いし、特にそのような作品やら教育で育ってきたのだから、それをやめろ、LGBTsを主役にした作品を沢山つくるべきなんて思っている人はほとんどいません。プロサッカークラブもどんどん支援表明しろ!ふじこ!だなんて思っている人だってほとんどいません。(ですが寄り添ってくれているJリーグクラブや海外クラブもあるので後ほどご紹介いたします)そうなるには難しい問題が山積みで、ヘテロセクシャルのみなさんの自由まで奪いたいわけではないのです。ただ、そういう当たり前が当たり前じゃなく、孤独を感じている人が世の中に確かに存在して、透明人間のような感覚に押し潰されながら息をしている事を知ってほしいのです。
●彼女、彼氏、旦那、嫁はいるのかという質問について
彼女ならいますとか、彼氏ならいますとか、恋愛感情がありませんとか、結婚していないけど事実婚ですとか、友情結婚ですとか、パートナーシップですとか、色々な答えがあると思います。異性と恋愛して、結婚して家庭を持つのが普通と教えられてきて、育った人にこんなことを言うのは酷だと思っています。ただ、これを聞かれると私たちはまたひとつ疎外感を積み上げているのです。また、パートナーがいるのが偉い(特にヘテロ男性の間では)とされる風潮がまかり通っているのもまたゲイ、バイ、その他の男性のことを苦しめています。もちろん女性の間でも。パートナーがいるのがステータスであるのではなく、一生懸命生きていている人はみんな尊いのです。どうか、LGBTsでも、ヘテロセクシャルでも、人間の価値にランクなどはなく、みんなが尊い存在であるということを知ってほしいと思います。ですから、彼女、彼氏いない歴●●年~wwと自虐したり、いじたれた事のある方は結構多いと思いますが、人とお付き合いする人だけが魅力的ですばらしいのではなく、みんながみんな素晴らしいのですとお伝えしたいと思います。あなたの価値は他人の物差しでは計れないのです。
また、一つ声を大にして言いたいのが嫌がっているひとに「彼氏、彼女いないなら紹介してあげるよ!」と無理にカップルを作ろうとするのは本当にやめてほしいです。恋愛の素晴らしさ、楽しさを知っているからみんなにも知ってほしくて、親切心なのはわかっていますが、大丈夫です、いらないです、などの拒否をされた場合には、それ以上無理に勧めるのはやめて欲しいと思います。また、断ったからといって、あいつゲイだ、とかレズだとか、色々ねじまげて解釈したり、噂を流すのもやめていただけると助かります。これが原因でスタジアムに来づらくなったケースだってあります。
話がそれてしまいましたが、この質問をする人が、あなたを傷つけたくて聞いているのではないという事も書いておきたいです。例えば遠征にいくのに家庭があったら行きにくいのではとか、自分の家庭観を通して交流がしたいとか、あなたに興味があるだけなのです。ただ、今の世の中は変わりつつあるので、もし興味があったらパートナーはいますか?とか、そういう多様性がバックボーンにある聞き方ができるのが自然であるご時世になれば傷つく人が減っていいなと思います。
透明な存在の私たちはそこにいるだけで存在が無視され、傷だらけになっている
私だって、みんながしているみたいな恋愛がしたかった。好きで気持ち悪いと言われたり、百合娘ハアハア…おかりなちゃんの百合にまじりたい(ほんとに何度も言われたことある)と言われているわけじゃない。私だって普通に生まれかったし、男の人にときめいたり、普通のラブソングで涙を流したりしたかった。時に私が同性愛ということに気づかず、(言わないタイプなので当たり前ですが)オネエタレントと呼ばれている人たちが嘲笑の的になるところや、同性愛気持ち悪いという意見をたくさん投げつけられて、無理して笑って同調して、もうこれ以上傷つきたくはないと思って、恋愛感情に蓋をして(ポルノグラフィティさんのサウダージを思い浮かべてください)さよなら私の恋心よ~♪といっているうちに、ときめきの心を無くしてしまった。そんな積み重なった絶望に押し潰されて、時には本当に大学のビルから身を投げようとしながらも、元気があればなんでもできる!と懸命に生きてきました。なんだか元気の押し売りみたいですし、別にLGBTsのみなさんに元気に生きろ!って言いたいわけじゃなくて、アホに見えて色々悩んでいるんですよというだけなんですけど笑、別にその悲しみをヘテロセクシャルのみなさんに押し付けたいわけではありません。ただ、LGBTsの人間のなかには、こうやって孤独を感じて、どうしてこんな風に生まれてしまったんだろうと自分の命を嘆く人がいます。だからどうか、もし私たちをいつか普通の恋愛ができるよ!そのうち治るよ!と思っている人がいたら、少しだけでいいので、みんな好きでこうしているわけじゃないという真実を心のすみに置いておいてくれるととても嬉しいです。
私たちを受け入れて!という主張をしたいわけではないのです。ただ、確かに私たちは社会のどこかに生きているのです。シュートが決まったときにハイタッチしたあの人も、降格して泣いていたあの人も、実はLGBTsかもしれない。そんなことを頭のどこかにおきながら、生活してくれたら、それだけでいいのです。ただ、こうあるべき!という社会の常識をすこしだけ心のすみに置いて、色々な人がいるんだな程度に思っていただけるとうれしいです。
●受け入れないのもそれも自由だけど、傷つけていいわけではない
同性愛、両性愛、トランスジェンダーに嫌悪感を持つ人を~フォビアといいます。(ゲイフォビア、バイフォビア、トランスフォビア)また、同じくLGBTs該当者が異性愛者のことを嫌悪することをへテロフォビアといいます。お互いに、受け入れることが難しいことを理解して同調するのは難しい話ですし、嫌悪感を持つことは悪だ!とは思いません。ただ、それは心のなかの話です。LGBTsは人口の7.6%と言われており、見たことがない!という人はおそらくいままで当事者は確かにいたとしても、自分から名乗っていない可能性が高いです。何故なら、差別や否定の眼を向けられることが多いからです。目の前の人がLGBTsだと知らずに、LGBTって気持ち悪いよね、そう思わない?と聞いてみたとしましょう。彼らはごまかすか、庇おうとするか、自分が当事者だというのを隠すために、心を鬼にして「そうだよね!気持ち悪い!」と答えると思います。決して、自分はLGBTsですと名乗っていないからといって、その人が100%LGBTsではないと言い切れないのです。自分の事を笑顔で否定しないといけないことのどれだけ辛いことか。どんなに心で思うことは自由でも、口に出したり、沢山の人の見る場所で発信するのはおすすめしません。
ヤジでも同じです。サッカー選手に男らしさを求める人が多いあまり、それでも男かー!というヤジや、時には●玉ついてんのか!というヤジも耳にしますが、(女子サッカーもスタジアムで見たことがありますが、ヤジを耳にしなかったので、どんなヤジがあるかわかりませんが、女性選手にも性別を理由にしたヤジがあるとしたら)選手に対して性に関する侮辱をするのはやめて欲しいと思います。サポーターの中にも潜んでいるLGBTsが、選手にも潜んでいる可能性があり、そんな性差別を平気で行うようなサポーターに自分が受け入れられるわけがないと思ってしまいます。サポーターにとって大切な選手を、人生や人格の面で傷つけるのはサポーターのすることではないと思います。アビー・ワンバック選手や、日本では下山田選手の活躍により、女子サッカー界はそういったカミングアウトは風通しのよい環境化が進んでいますが、男子サッカー選手ではまだまだ理解が深まっておらず、現役中にLGBTsをカミングアウトした選手はほとんどいません。同性愛をばかにするようなヤジが多いためと言われています。それに、そういった攻撃的な言動を行うと当事者に恨まれたりするリスクもありますし、この多様性を推進する社会で、争いを避けて自分を守ることにもつながるのです。
何かしてあげたいと思ってくれた優しいあなたへ
●特別なことをしなくてもいい
ただ、私たちのようなひとが隣人かもしれないという知識を持っていてくれるだけで十分うれしいです。それでも応援したいと思ってくれていたら、アライとしての主張をしてみるといいとおもいます。
アライとはAllyと書き、LGBTsを支援するへテロセクシャル(異性愛者)の方々のことです。探してみるとシンボルマークなど色々なグッズがあります。もし、困っている人の力になりたい!と強く望むようであれば、キーホルダーをつけたり、職場のデスクに張ってみたり、色々なことができると思います。また、そのような主張をさりげなくしている人がいたら、私たちは少し救われた気持ちになるのです。
みんな人それぞれだからねという言葉が私たちを安心させるのです。
言われて困ることも書いておこうと思います。
「襲わないでね」
別に私達は見境なく人を襲ったりする訳じゃないですし、性犯罪者じゃないですよ!また、LGBTsに告白されたら受け入れなければ差別になるというのも間違いです。みなさんの恋愛感情が同性に向いたり両性に向いたりするだけで、みなさんも性犯罪はしないと思います。それと一緒ですし、私も男性からの告白をあなたのことをどうしても恋愛対象として見れないと断ったこともあるので、むしろそれで異性愛者差別だ!と言われたら腹を据えて話し合いたいです。
「どういう風にセックスするの」
これは、ヘテロセクシャルの人に逆に質問したいのですが、いきなり「好きな体位は?」って聞かれてどう感じますか?そんな事急に聞くのは、ちょっと変質者さんかな?って思いますよね。そんな感じです。興味を持ってくれているのはわかるんですが、気になるようであればこっそりググってみてほしいと思います。
ただ、興味を持ってくれることはありがたいことだと思うので、折角の機会なのでここで少しおはなしさせてもらうと、男同士だからといって必ずアナルセックスをするわけではありませんし、女同士でもかならず何か道具を使って合体するわけではありません。かならず男役女役がいて、長いものを体のなかにいれるというわけではないです。逆に、私が投げ掛けたいのは、男女のセックスでも必ず保健体育の教科書どおりにしなくてもいいということです。女性も痛かったり怖かったりでできないとか、男性も童貞を呪いのように思ったりとか、そんなことはないと思います。両者の合意があり、教科書どおりでなくてもお互いがセックスと思っていればそれはセックスなのです(偉そう)
「どの選手がタイプ?付き合うとしたら?」
これはすごくよく聞かれてさーてどう切り抜けようかなーと毎回思います。別に恋愛したいとは思っていないので困る質問だったりします。サッカーしかり、アイドルしかり。自分に興味を持ってくれているのは嬉しいものだけれども、その場合どの選手を特に応援しているのかというみんなが持っている応援という感情を引き出してくれるとうれしいと思います。男の選手を応援しているからといって、女性みんなが男の選手に恋しているわけじゃないし(サッカー以外はアイドルや二次元キャラクターや、その他諸々)、ただ単に頑張っている人を応援しているだけなのです。同時に、男の子だって、それ以外だって、女の子だって選手にガチ恋するのだって何もおかしいことじゃない。もしかしたら片思いするのが好きなセクシャリティかもしれない。男の子だってXジェンダーだって枠にはまらない性別だって、誰だって選手の結婚報道に枕を濡らしていいのです。逆に、異性愛者の女の子だって全員選手に恋しているわけではない。この質問にはいろんな答えがあっていいのです。どうか、そういう目で見ていないという答えが帰ってきても?どうして?と追求せずに、そうなんだーと受け入れてあげる、そして、恋愛感情で応援していないという女性のことを同性愛者なのではないかと疑問に思うのはやめてあげてください。この質問をしたい方を怒りたいわけではないのです。興味を持ってくれてうれしいのですが、色々な人がいるんだなあということを少しでも知ってくれるとうれしいです。
●カミングアウトする自由、しない自由
隣のあの人もLGBTsかもしれない。なのに、一度も当事者に会ったことがなく、これを読んで誰にもカミングアウトされないから自分は信用されていないのではと思っている人が今いるかもしれませんが、それは心配のしすぎです。カミングアウトはかならずしないといけないわけではなく、もし近くにLGBTsがいたとして、あなたにカミングアウトをしない理由は、あなたのことを大切な存在(友達でも、恋愛対象としても家族としても)だと思っており、気を遣わせてしまうのが申し訳ないからあえて言わないのかもしれません。かえってあなたは、嫌われたくない大切な人間なのです。また、異性愛者が「自分は異性が好き」とカミングアウトする人が少ないように、自分がLGBTsでいることが自分のなかでは自然なことだから、特別なこととしていう必要がないと思っているという可能性があります。(筆者はこのタイプ)私はあえて異性愛者の方が異性愛者であることをカミングアウトするのも面白いと思うし、むしろアライであることをアピールするのも立派なカミングアウトだと思う。本当に、性というのはグラデーションで、いろんな形があっていいのです。
世界のサッカー界とのLGBTsの取り組み
最後に、サポーターらしく、サッカー界隈のLGBTsに関しての歩みよりを紹介しようと思います。
海外リーグの取り組み
ユニフォームにレインボーカラーを採用した事例
ザンクトパウリ(ドイツ2部)
ゲイのサッカー選手を主人公とした映画「マリオ」の上映をスタジアムで行いました。
http://www.thinktheearth.net/think/2018/10/034homophobia/
スタジアムにはレインボーフラッグが掲げられ、サッカーに性別は関係ないという理念を表現しているそうです。ほかにもキャプテンマークがレインボーカラーであるとか、アパレルにもたくさんレインボーカラーをあしらったものがあります。
https://news.livedoor.com/article/detail/15499247/
パーティック・シッスル(スコットランド2部)
https://www.soccer-king.jp/news/world/world_other/20190619/949811.html
オラトリナムFC(イングランド7部)
https://www.soccer-king.jp/news/world/world_other/20190619/949811.html
ユニフォームでの表現以外の取り組み
マインツ(ドイツ1部)
マインツの現役監督が、LGBTsパレードへの支援を表明しました。
現役の監督が支援という意味合いは非常に大きく、批判もあるようですが、著名な現役監督がこういった表明をすることは非常に影響力、発信力があり、多くの人を勇気づけ、LGBTsにとって自分達は差別される存在ではないのだ、ここにいていいのだと希望を抱かせたことでしょう。こうやって著名な現役監督や選手が発信することは、地位向上に非常に意味があります。
https://www.footballista.jp/news/70216
プレミアリーグ(イングランド)
レインボーシューレースキャンペーン
LGBTsへの偏見をなくすため、著名な選手に虹色のアイテム装着を推奨するキャンペーンがプレミアリーグでも行われました。いくつかのスタジアムでは、レインボーのコレオグラフィーが実施されました。
https://qoly.jp/2014/09/12/the-rainbow-laces-campaign-2014-15
Jリーグ、なでしこリーグでのLGBTsの取り組み
・FC琉球「全ての多様性 尊重」 袖に“レインボーライン”
2016年シーズン、FC琉球さんがJリーグで初のLGBTsに大してのアクションを行いました。ユニフォームの袖にLGBTsの象徴である、レインボーラインのデザインを採用したのです。これだけでなく、選手やスタッフに対して、LGBTsについての研修や、スタジアムでの啓発活動を行ったそうです。私は当時この記事を見てよくやってくださったとめちゃくちゃ泣きました。また、それだけでなく、LGBTs以外にもすべての国籍、障がいの有無、その他の差別すべての多様性を尊重すると宣言したところが素晴らしいです。
私もFC琉球さんと対戦することがありましたが、このユニフォームを着ているサポーターさんをお目見受けして、感極まるものがありました。ユニフォームにあしらわれているので、FC琉球さんのサポーターさんが着ているだけで、ホームの沖縄県のみならず、アウェイの地でも、アウェイのLGBTsサポーターや、またアウェイまでの移動時間に当事者に勇気を与えることができます。FC琉球サポーターさんも、2016年にこの虹のラインのデザインは何だろう、と興味を持ってくれた方も多いと思います。当時はLGBTsに関心が向き始めたばかりだったと思うので本当に勇気のある素晴らしい試みです。
http://fcryukyu.com/news/2785/
https://ryukyushimpo.jp/photo/entry-222183.html
・ノジマステラ神奈川のLGBTs啓発イベント
また、なでしこリーグでは相模原市とマルイの協賛のもと、LGBTs啓発のイベントが行われました。最終節の浦和レッズ戦という人の集まりやすい環境で、このような啓発活動を行ってくださることはとても素晴らしいことです。LGBTsのみならず、すべての差別について「人権」の問題として取り組むというのが、公平な目線で素敵だと思いました。
http://stellakanagawa.nojima.co.jp/news/pg1245553.html
まとめ
このように、LGBTsについて詳しくない、あまり馴染みのない方々も、意外と我々は身近なところに生活していて、思ったより近い存在なことがわかっていただけたかと思います。スタジアムにも、かなりの比率で存在しているかもしれません。
差別をやめようとか、かしこまった話ではなくただ一言の「そういう人もいるんだね」という、たとえ理解ができなくても否定はしないという言葉を持っていてくれるだけで、もうそれは差別をしない世界へにぐんと近づくことができるのです。勿論、LGBTsでないひとからLGBTsの人たちに対する投げ掛けだけではありません。LGBTsの人がLGBTsの人に対する、またLGBTsの人がLGBTsでない人に対する考えにも、LGBTsでない人からLGBTsでない人に対する否定が含まれていることが沢山あります。
犯罪的な考えや、絶対に人を傷つける考えではない限り、どうか「変なの」「やめなよ」などの言葉が口から出そうになっても、一回目の前の人がどんな気持ちになるかを、自分が逆のことを言われたらどんな気持ちになるかを考えて発言することが、多様性を尊重する社会の作り方だと私は考えます。
この、沢山の人が集まるスタジアムという場所は、多様性を理解するのにふさわしい環境だと思います。私も、目の前の人を尊重し、差別の起きないスタジアムづくりに、この記事を読んでくださった皆さんと一緒に1サポーターとして取り組んでいきたいと思います。