黄金のゴッドウィンの考察
陰謀の夜の前日譚
陰謀の夜。黄金のゴッドウィンが何者かによって暗殺された事件。デミゴット初の死とされ、主犯や実行者、その遺体のあり様に至るまで、謎の部分が多く、複雑で難解です。本作でも最大の謎の一つとされ、多くの考察者の間で未だに見解の一致を見ていません
それを解き明かす手がかりが必要となるわけですが、ただ、多くの陰謀がそうであるように、そこに至る経緯というものは必ずあります。そうなった理由があるのです
そこでまず落ちついて、陰謀の夜の前日譚を検証することにしましょう
前回はゴッドフレイ考察回の中でゴッドウィンの誕生について触れましたが、その後彼は
・いったいどのような幼少時代を過ごし、
・どのように大人になり、そして
・陰謀の夜前夜はどこで何をしていたか、
それを検証します。それらを細かく考察していけば、なぜ陰謀の夜で彼が死ななければならなかったのか、その事情が見えてくると思います。テキストが存在しない部分は、またいつものように、性格プロファイル・アプローチで考察します。
ゴッドウィンの幼年時代
ゴッドウィンは、ゴッドフレイ王が慌ただしく全土平定の戦に駆られている間に、王都で産まれました。黄金の一族の嫡男たるに相応しい、美しく輝く容姿、健全な肉体と強さ、明朗で優しい人格と、非の打ち所ない王子として産まれました。マリカ・ゴッドフレイ、そして姑ポジションの二本指までも、喜び、胸を撫で下ろしたでしょう(二本指に胸はありませんが)。王の遠征にも弾みがついたと思います
ところがです。次男三男として産まれたゴッドウィンの弟たち双子は、角の生えた忌み子でした。忌み子たちはただちに、人目につかぬよう地下に幽閉されました。母マリカの懐妊を知っていた幼いゴッドウィンでしたが、彼にはおそらく死産と告げられたのではないでしょうか。表向きは一人っ子として、いつも側にいる慈愛深い母と、ときおり遠征から戻って来る強く大らかな父に愛されて、幸せに過ごしたことでしょう
やがて、全土平定を果たした父でしたが、なぜでしょう、そのまま王都へ帰還することなく、どこかへ旅立ちました。理由は分かりません。幼いゴッドウィンは、それほどに国を治めることはおおごとなのだと感じたのではないでしょうか。それからはより一層、母マリカはゴッドウィンを大切にして育てました
ゴッドウィンの青年時代
そのようにして強くたくましく母に育てられたゴッドウィン。彼が青年となったある日、王不在の王都を、古竜たちが襲撃しました。
見事大古竜グランサクスを王都で打ち倒し、残りの竜も退ける勇戦を見せたゴッドウィン。彼はいつしか、幾度も剣を交えた古竜フォルサクスと親友になっていました
しかし、これに渋い顔を見せたのは、姑二本指です(顔はありませんが)。強いのは良いが、カエルの子はカエルか。この子もやはり、黄金律原理主義に背く、他の種族への寛容じゃないか。戦に敗れた竜など殺してしまえ
指巫女を通じて命じるも、母も子もいうことをきかぬ。そればかりか、古竜信仰などを許し、汚らわしい竜の化身たちを王都に跋扈させている始末
二本指にしてみればそれは黄金純血主義の軽視。このままでは父ゴッドフレイのような、反逆の芽になる。
傀儡の大逆に人一倍警戒するのは、指の母メーテールの伝える記憶のせいでしょうか。二本指はいよいよたまりかね、ラダゴンを解き放ちました
あの演説は素晴らしかった。あの男、ラダゴンだったら、古竜たちも最後まで討ち滅ぼしたに違いない。マリカもゴッドウィンも、異種族に寛容すぎるのだ。このままでは黄金の血が穢れてしまう
ラダゴンにもう一度チャンスを。そう考えた二本指は、マリカの意も無視して、ラダゴンを呼び覚まします。そして彼に任務を与えました
ラダゴンの再登板
それはかねがね考えていた計画でした。まずラダゴンに、マリカ以外の配偶者との間に子を作らせ、確かめること
メスメルの禁忌が、どちらの責だったか。もしラダゴンと別の配偶者との間に禁忌や忌み子がなければ、もはやマリカの責任以外の何ものでもない
そこでラダゴンには次のように命じました
レアルカリアを落とせ。学院ではない。カリアの女王、レナラを落とせ。そしてレナラの下で魔術を会得せよ。さらに、レナラとの間に子をなせ
影の地でのラダゴンの言い分は、
・メスメルの禁忌は私の血ではない。私の中には禁忌の邪悪は一欠片も残ってない。あるのは忌々しい赤の髪だけだ
・捻れた黄金樹の幹については申し開きできない。ひとえに私の未熟さゆえだ。学を治めたい。今の私は無学な罪人の寄せ集めにすぎない。魔術と祈祷を立派に収めることができれば、必ずや正しく伸びる立派な黄金樹を建てて見せる
これらの言い分を確かめるために、二本指はカーリア王妃との婚姻と、学院での修学を命じたのでした
これは一筋縄ではいかない特務でしたが、これをこなせば、汚名返上ばかりか、王たるの資質十分です
これを受けて、2回のリエーニエ戦役で首尾よくレナラに近づいたラダゴンは、見事に魔術を修めました。さらにレナラとの間に、何の忌み呪いもない子を3人も成しました
その功績が認められ、二本指はラダゴンを王都へと召喚します
ラダゴンの帰還と、ゴッドウィンの都落ち
さて、このようなラダゴンの立ち回りがあったということは、別人格であるマリカが、その間王都をまったく不在にしていたことを意味します
竜たちと親交のあるゴッドウィンは、大古竜グランサクスの遺骸が残る王都を守りながら、長期不在の母を待って過ごしたでしょう
ですが、帰ってきたのは母ではなく、ラダゴンという男。男は帰るなり、母マリカとの成婚を宣言し、王配となりました
その婚姻とともに、3人の婚外子を外戚にしました
やがてラダゴンはマリカとの間にミケラ・マレニアの双子を成します
マレニアは生まれつき宿痾を抱え、けれどそれと戦う健気な娘でした
ミケラは聡明で優しく、ゴッドウィンにも兄様兄様と懐きました
ラダゴンの大のお気に入りはミケラで、中庭で祈祷を教え合う様を目にしています
そしていつしかラダゴンが、祈祷の腕を十分に上げていることに気づきます
おそらくこの頃には姑二本指の采配のもと、マリカとラダゴンの地位は逆転していました。マリカから余す所なく祈祷の術を引き出すことは、この頃のラダゴンにとっては、造作もないことだったかも知れません
しかしそんなことは、ゴッドウィンの知る由もありません
そのようなラダゴンの姿は頻繁に目にしますが、いっこうに母の姿を、ゴッドウィンは見たことがありません。いつも閨に閉じこもったきり、ときおり頼りない言霊を聞かせるのみです
実際この頃のマリカは、肉体の主導権を持てる時期がほとんどなかったと思います。ラダゴンの子らは無謬で、自分の子らは改めて宿痾や幼きを抱える。過去の子らも含めて、自分のせいであることは証明されました。もはや何の発言権も持てなかったと思います。後は、象徴として存在することのみを許されている状態でした。ゴッドウィンの後見を万全に果たすこともできません
<ランサクスの役割>
マリカがいた頃は、祈祷の力でゴッドウィンを守っていました
マリカ不在の今、ランサクスが祈祷を使うことで、ゴッドウィンを
守っていたのとしたら
弟フォルサクスの心遣いで、姉を王都に派遣していた
フォルサクス本人はおそらく、ストームヴィルに居を構えています
「ストームヴィルに本当の嵐があった頃」というテキストがあって、
嵐といえばプラキドサクスが思い出されます
かつてストームヴィルがプラキドサクスの居城だったとすれば、
その子孫のフォルサクスが古竜戦役後移り住むのも自然かな、と
少なくとも当時ランサクスがゴッドウィンの支えとなっていたのは
確かだと思います
ラダゴンはますます尊大になり、ゴッドウィンに辛く当たります。
中庭に自分の立派な石像を建て、古竜信仰の連中を追い出せといいます
二本指は二本指で、ミケラ・マレニア、そして外戚のラニを神人候補と定めるも、ゴッドウィンには何の地位も与えませんでした
そんな中、黙りがちの母は、ついにゴッドウィンに王都を去るように告げます。それきり、何も言わなくなりました。ゴッドウィンが案じて閨に入るも、誰もいません
マリカが最後の力を振り絞って、ゴッドウィンを避難させたのでしょうか。あるいは、意地悪なラダゴンが、またマリカの言霊を騙ったのでしょうか
いずれにせよ、居場所をなくしたゴッドウィンは、諦めて配下に荷支度をさせます
幾人かの自分の子孫(ラダゴンの叱責も無視し、しぶとく王都に居座り、女遊びに耽る、放蕩三昧のゴドリックとか)を残し、古竜信仰の信徒や、自分についてくる騎士たちと共に、王都を後にします
辺境の地、リムグレイブのストームヴィルへ
そこに城を構える親友フォルサクスの元に、ゴッドウィンたちは身を寄せます
古竜信仰の信徒たちを退避させた親友を、フォルサクスは快く迎えたでしょう
古竜戦役を戦った一騎当千の騎士がストームヴィル城にいて、失地騎士の一員としてその名に甘んじているのは、このようなゴッドウィンの都落ちにも関係があるのではないでしょうか
その後、王族としての重責や二本指からの干渉を逃れたゴッドウィンは、奔放に羽を伸ばすことにします
彼がこの辺境の地で、その後も様々な女性との間に、たくさんの子をなしたのは、後に彼の子孫の遺体を運ぶ歩く霊廟の数の多さを見れば分かります※
<霊廟のデミゴッドは誰の子か>
この点、ラダーンやラニの子とか、ミケラ・マレニアの
子などは聞きませんし、ライカードはラーヤが居ますが、
それ以外のデミゴッドが子をなしたってあまり想像つ
かないんですよね
でも一方で、ヴァイクという褪せ人は、かつてデミ
ゴッドを複数体屠っているようですし、結構デミゴッ
ド自体はたくさんいるようです
一番説明しやすいのが、全員ゴッドウィンの子という
ゴッドウィンの子は弱いようなので、一般褪せ人にも
狩れなくはない
あるYouTube考察者さんは、ゴストークをゴドリッ
クの息子と看破していて凄いと思いました
でも、一般褪せ人レベルから見ると、やはりゴストーク
も弱い……
と、いろいろ辻褄が合います
なので自説は、ネームド以外のデミゴッドは皆ゴッド
ウィンの子、としておきます
ひょっとしたらラダゴンの王権のもと、父ゴッドフレイの血が絶えることを懸念したのかも知れません。自分は一人子なのだから。王位を与えられなくても、せめて子を残したい。いえ、ただ単にプレイボーイだっただけなのかも知れませんが
そしてゴッドウィンは、父譲りのおおらかな人柄と、母譲りの深い慈愛をもって、リムグレイブの民と接し、民からも愛されました。彼が黄金のゴッドウィンと名を残すのは、単に自称だけではなさそうです
また、民だけでなく、亜人やトロルなど異種・混種などにも、寛容に接しました。そのような黄金の精神は、彼亡き後も地方の領主らにしっかりと受け継がれています(ケネスハイトとか)
ここまでが、まさに、陰謀の夜の前夜譚です
心理プロファイル多めなので、必ずしもこの通りとは推せません
ただ、大事なのは、
①ゴッドウインの他種族へも寛容な精神は、二本指やラダゴンと反りが合わなかったろうこと
②ラダゴンがリエーニエで活動している期間は、マリカが王都に不在だったこと
③ラダゴン帰還後は、マリカと地位が逆転していただろうこと
④ゴッドウィンは、陰謀夜前夜、王都にはおらず、ストームヴィルに身を寄せているだろうこと
ここらへんはかなり確度があるのではと思います
今回は、「黄金のゴッドウィン」の陰謀の夜前夜までの姿に、思いをはせました
次回は、「陰謀の夜」を考察します
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