陰謀の夜の考察
はじめに
陰謀の夜で既に明らかにされている事柄については、皆さんもう御存じでしょう。なので、早速核心に迫っていきましょう。陰謀の夜を巡る謎はざっと次のような項目だと思います
①陰謀の夜の黒幕と実行犯は誰か
②いつ、どこで陰謀の夜は起こったか
③なぜ死王子の遺物はどれも異形の形をしてるのか
④グラング「おかしい、混ざっている」の意味
⑤ソール砦の幻影の真意
⑥「正しく死んでくださいな」ミケラの真意
⑦フィアは生きていれば死王子を産んだか?
⑧ロジェールの「私は嘘つき」の意味
以上を順番に考察していきます
①陰謀の夜の黒幕と実行犯は誰か
一般的に多く見られるのは
A. マリカ黒幕、黒き刃実行犯説
B.ラニ黒幕、ライカード共犯説
C. ミケラ黒幕、ラニ共犯説
などです。自説はこれらを採らないので、それらの問題点について触れておきます
A. マリカ黒幕、黒き刃実行犯説の根拠と、問題点
マリカ黒幕説は、黒き刃をマリカが管理しており、黒き刃の刺客がマリカの配下であることを理由とする説です
確かに自説からも黒き刃の刺客はマリカが連れてきた巫子たちを鍛え上げた集団と解しはします。しかし、実行犯はそれら巫子の集団ではありません。
<このロジェールのセリフに注意すべきこと>
黒き刃の刺客がやったかのようにミスリードさせられますが
一言も”黒き刃の刺客”だとは言っていないことに注意です
「永遠の都の末裔」
「女性ばかり」
「彼女たちの武器、黒き刃」
これらの発言が噂ではなく真実だとしても、永遠の都の末裔
の女性でそのようなコスプレをした者なら誰でも当てはまる
そして武器としての黒き刃は、手に入れさえすれば誰でも使
えるのです
まず第一に、黒き刃の刺客がなぜそう呼ばれるかというと、黒き刃を持っているからです
しかるに、既に持っているにも関わらずわざわざラニを使ってマリケスの元に盗みに行かせるでしょうか
それはリスキーなだけで、既に黒き刃を持っているマリカとしては全く意味のない準備です
わざわざ盗みに行ったのは、黒き刃を所持していない誰かが、デミゴッドを弑するため新たに手にいれる必要があるから
ならば首謀者はマリカ以外となります
また、前述のようなプロファイルから、マリカはゴッドウィンを唯一の心の拠り所といっていいほど溺愛しています。マリカが彼を殺める理由がないのです
さらに、マリカが黒幕なら、陰謀になりません。ただの殺人です。皆が思っていないような、陰に隠された者が糸を操っているから陰謀なのです
他にも実行者を巫子であるとすると数々の矛盾点や不都合が出てきますが、それらは、後に詳述します
そも、ロジェールの冒頭のセリフは彼自身まだ検証の進んでいない初期の伝聞です。信用性に乏しい
以上により、これは真実でなく、あくまで巷で考えられている俗説を示したもの程度に捉えるべきです。むしろ、陰謀の黒幕があえて流している噂である可能性さえ高いのです
B.ラニ黒幕、ライカード共犯説の根拠と、問題点
ラニ主犯、ライカード共犯説は、これらのテキストを根拠とするものです。確かに、ここに書かれているテキストは真実であり、少なくともラニの関与は否定できません
しかし、ここで注意すべきは、ラニは①マリケスから死のルーンの一部を奪ったこと、②そこから儀式で死の刃を作ったこと、までは認めていますが、実行については一切語っていません。全ては私がやったことだ、の「全て」は①②にのみ掛かっており、ミスリードを誘うセリフです(なお、ラニの言動はちょくちょくトリッキーなので本考察では今後も注意を払っていきます)
また、仮にライカードが共犯だとしても、陰謀の夜の実行犯は何らかの暗殺者集団であり、その手練をどう用意したのか不明です。考察の中にはその点を補うために、ラニとマリカの共犯とする説もあります。しかし、マリカが本件に関与していると矛盾が生じることは前述しました
これらの点から、ラニ主犯説は採用できません。実行にも関与しておらず、せいぜい幇助及び凶器準備集合罪どまりです
C. ミケラ黒幕、ラニ共犯説
DLCでミケラがデミゴッドの肉体を依り代として欲していたから浮上した説です。動機はできましたが、ミケラとラニの関係を示す根拠が薄い気がします
ミケラ主犯説は次のテキストを根拠にしているようです
DLCのティザーイラスト、影の地でトレントにまたがるミケラが公開されたことから、トレントの古い主がミケラであると解する説です
ミケラがラニにトレントを託したことから二人の関係を重視するのは理解しますが、トレントのやり取りからただちに陰謀の共犯は導けません
また、自説からはこのセリフにおける「古い主」とはミケラではなく、老いた雪魔女(宵眼の女王の再誕体)であると考えるので、そこでもこの説は根拠を失います(詳しくは宵眼の女王の本名が判明の考察回を参照ください)
さらに、聖樹にはゴッドウィンに懐きマレニアと共に別れを惜しむミケラの像があります。もしゴッドウィン暗殺に関わるようなミケラでしたら、マレニアに嫌われてしまいます。多分切り刻まれます。また、約束の王の魂はラダーン、依り代はモーグであることの積極的な理由があります(ゴッドウィンではだめな理由です)。詳しくは約束の王ラダーンの考察回を参照ください
さらに、ミケラはゴッドウィンが死王子になってしまうと世界に死が蔓延ってしまい、黄金樹の力がさらに弱まる、つまりマレニアの宿痾の治療が余計困難になるという立場にあります。さまざまな意味でゴッドウィンの死はミケラにとって不利益なのです
以上より、これらの説は採用しません
自説……黒幕(二本指指示 → ラダゴン) 実行犯(ザミェル一族) 幇助(ラニ・ライカード)説
前回までの考察で、二本指&ラダゴンの黄金律原理主義派と、ゴッドウィン&マリカの他種族寛容派(坩堝派)の対立は明らかでした。これらのことから、二本指はゴッドウィンを暗殺し、その濡れ衣をマリカに着せマリカを失脚させ、ラダゴンを王配ではなく王ないし新たな神人に立てる動機があります。黄金律の犬、二本指の従順な下僕としてラダゴンがこれに従うのも明らかです
<もう少し陰謀の夜当時の勢力図について検証しましょう>
以上、陰謀の夜前夜、各ゴッドの勢力図をまとめると、
ラダゴン派…… 二本指のみ
反ラダゴン…… ミケラ・マレニア、ラニ・ライカード
親ゴッドフレイ…… ゴッドウィン、ラダーン
マリカ…… ラダゴンに抑え込まれ沈黙、民衆の支持は依然マリカ
という状況だと思います
ラダゴンと、そしてマリカを排しラダゴンを推したい姑二本指の思惑は一致しています
彼らがゴッドウィンを暗殺する理由は、上記の当時の勢力図に照らすと、これだけたくさんあります
陰謀の夜の理由
ⅰ.マリカから全て奪う
ⅱ.マレミケの離反への備え
ⅲ.ゴッドウィンの人気と子孫が邪魔
ⅳ.マリカの失脚
ⅰ.マリカから全て奪う
マリカの祈祷は既に体得しました。 あとはマリカの管理する死のルーンも手中にしたいところです。思い出して下さい、マリカ・ゴッドフレイが国獲りのとき真っ先にやったことを。それは巨人の炎と死のルーンの封印なのです。マリカの影従マリケスを排して死のルーンを手に入れることが、陰謀の夜の一番の目的だったまであります。これ一つで、動機として十分かも知れません
ⅱ.マレミケの離反
ミケラ・マレニア。自分の子ながら恐ろしい実力を誇り、敵にしたくない相手。永遠に幼くとも、宿痾を持っていたとしても、です。陰謀の夜前夜において、彼らの離反を許してしまった。着々と自分たちの樹や軍を準備しており、もはや簡単に制圧できる勢力ではなくなっています。だからこそ、黒き刃を手に入れて、その謀反に備えて置きたいところでしょう。マレミケの動向は明らかでないので、あまり強く推せませんが、このような理由は時系的にもありうることです
ⅲ.ゴッドウィンの人気と子孫
これが一番大きいのではないでしょうか。彼が生きている限り、かつてのゴッドフレイの威勢は消えることはありません。その上、新興の王家を名乗り、古竜との関係を深め、虚弱とはいえ着々と子孫を増やしています。一方ラダゴンはマリカとの単為生殖ではこれ以上子は期待できない。考えうるのは、レナラを后に迎えて子を増やし対抗することです
しかし、これをするにはどうしてもマリカが邪魔になります。何の理由もなくマリカを棄てたとしたら、民衆の求心力はなくなります。今でもまだマリカは、建国の神であり人気が高いのです
<ラダゴン人気ない>
マリカに関しては最近姿を見せないので心配して、
待望論さえ上がっているでしょう
たまに姿を見せても、喋らないし、元気がない。代わりにラダゴンが
出ていっても、
「誰だお前、カーリアの嫁さんはどうしたこの浮気者」
「なんで一介の英雄が王配なんだ」
「赤髪じゃ説得力ないんだよ」(それでも染めないのは偉い)
と言われたかは分かりませんが、お呼びじゃない空気はおそらく
すごくあると思います
結びの司祭ミリエル(巨亀)でさえ
「そして、誰も知ってはいないのですよ
ラダゴン様が、なぜレナラ様を捨てたのか
いえそもそも、一介の英雄にすぎなかった彼が、
なぜエルデの王として選ばれたのか」
と訝る始末なので
自分が思うように子孫を残せない中、黄金の本流、要の輪の大ルーンを次々生み出すゴッドウィンは目の上の瘤です
手に入れた黒き刃の試し切りのチャンスでもある
ここはゴッドウィンと、彼の系譜のデミゴッドたちを一斉に処すことで、自分の地位の拡大と安定を図りたい。そういう狙いがあり、ターゲットとなったと考えられます
ⅳ.マリカの失脚
しかしそれは、あくまで秘密裏に行われなければなりません。秘密裏にことを運ぶのは、ラダゴンの十八番です
全てをマリカのせいにすればよい
ラダゴンはそう考えました。かつて、影の地での失敗を自分のせいにされた意趣返しです(うわあ……性格悪っる)。マリカがやったとなれば、民衆の信頼は失墜し、自分に注目が移るはずです。マリカがやったことにして、自分は手を汚さない。
具体的には、黒き刃の刺客たちを使うことです。そうすればマリカに疑いが向く。黒き刃は二本指にも操れます(ラニイベント終盤、二本指が黒き刃を動かしてラニの勢力を狙っている)。
ただ問題は、黒き刃程度の実力では、古竜戦争の英雄を屠るに心許ない、ということです。相手は強大なデミゴッド。暗殺能力に長けるとしても、実践経験の差から勝算に乏しい。それに、マリカが連れてきた稀人ですから、いかに二本指の指揮下においたとしても、マリカの子を弑すとなれば士気が鈍ります。造反もありうる。これらのことを考えると、彼女らは使えないし、彼女らから黒き刃を取り上げることも難しい
ではどうするか。
死のルーンの奪取ですが、それは従順(と思い込んでいる)なラニとライカードにやらせます。ラニはお供の獣人ブライヴを手なづけているので、獣人マリケスとも渡り合えそうです。何より、獣人マリケスの意思には二本指が干渉してくれるので、ことはスムーズに運ぶでしょう
<ラニはどうやってファルムアズラに行ったの?>
アギールに乗る方法があります
また四鐘楼にはファルムアズラへの直行ルートが
あります。
重力魔術も使えそうな魔術のエキスパートラニなら
ファルムでの移動も困難はなさそうです
ファルムの勢力で敵対しているのはマリケスくらい
で、竜族などはノクスの味方でしょうから、運んで
もらうこともできましょう
いずれにせよラニがマリケスのもとに辿り着くのは
容易だったでしょう
ラニやライカードには別の思惑があって、その思惑を隠しつつ陰謀に参加ことは前述しました。また、ラニは死のルーンの一部を奪い、黒き刃を作ったことまでしか認めていません。実行は次述のようにまた別なのです
このように、二本指・ラダゴン黒幕説によれば、動機が非常に強くなる上に、遂行現実性が非常に高まります
ラニ主犯説による「黒き刃が欲しいのは分かるけど、なんでゴッドフレイまで殺す必要があるの? やり過ぎじゃない?」という疑問も回避できます。まあ、加担はするし、見殺しにもするのですが……でも、自分で実行犯を指揮するのと、なりゆきに任せるのはずいぶん違います
以上でかなりの部分の説明がつきました
あとは実行犯の特定です
・陰謀の夜の実行犯の考察
それに関しては、決定的証拠となる現場画像があります
前述のように、黒き刃の刺客の平均的な体格は、元が巫子なので、それくらいの背の高さなのでしょう
一方、この画像の刺客は、ゴッドウィンと比べてもなかなかに大きい
一般にデミゴッドの体格はとても大きいです
ゴドリックでさえ、接ぎ木前でも主人公よりはるかに大きいことを考えると、ゴッドウィンも少なくともそれくらい大きかったはずです
でもそう考えると、暗殺者たちも長身過ぎるのです
この奥の個体なんて、遠近法で奥にいるのに、更にデカい。
女性にも大きい人はいるかも知れませんし、実際ドミヌラの老婆でさえなかなか高身長ですが、基本スペックが身軽な黒き刃の女性と考えると、明らかにこの体躯は巨大すぎるのです
また、銀色の髪をなびかせていますが、本物の黒き刃の刺客たちは本来、誰一人黒いフードから髪を出していません。それは、現場に髪などの手がかりを残さないことで暗殺の証拠を残さない、刺客としては基本の心得と思われます
然るにこちらの偽物は髪をばさばさ出している
また、マリカと同じ稀人なら金髪のはずです。ドミヌラの踊る稀人老婆でさえ、色の落ちた銀髪の中に金髪が混ざり残っている
なのに、若いはずの黒き刃の刺客が、完全に銀髪なのも不自然です。処されているゴッドフレイの金髪と比べても、少し青みがかった、冷たい銀髪。これは元からの髪色のようにも見えます。
そして何より、強い。寝首をかいたとしても、あの勇戦の王子ゴッドウィンを屠るなんて、よほど名のある勇者たちでないと難しいでしょう
以上より、これは黒き刃の刺客ではない
では、彼女……いえ、彼らは誰なのか?
答えは、今まで度々名を出してきました、ザミェル一族です
まず容姿。青銀の髪をなびかせた長身の長寿種。
髪色と質が陰謀の夜に残された画像と完全に一致します。これ以上ない動かぬ証拠です
巨人戦争を制した古き英雄。そして、封牢に囚われた古英雄のザミェル個体は、ラダゴンの刻印をドロップします。
ラダゴンとザミェル一族との古い因縁については、ゴッドフレイの考察回で前述しました
実戦経験豊富な彼らなら、束になればゴッドフレイを処せる実力を持っている可能性が高いです
また自説からは、彼らはトロルとしろがね人の混種です。ノクス系の子孫なら、対立するエルデの王族を処すにも抵抗ありません。なぜラダゴンに加担するか、彼もエルデの王ではないか、との新たな疑問が湧きますが、自説によるとラダゴンは最初のトロル王子の転生体なので特別です(詳しくは「種の保管庫に吊るされている巨人の正体」を参照下さい)
以上より、陰謀の夜実行犯も特定できました。ザミェル一族。メタ的にみても、これ以外ザミェル一族をわざわざ設定する積極的理由に乏しいのです(チェーホフの銃)。剣碑に残された「トロルの裏切り」という一文、この謎を解くと、ラダゴンとザミェル一族との繋がりが浮かぶ。そんな手の込んだことをして、その設定どこで活かすの?
ここでしょ!
そういうメタ的考察からも、陰謀の夜実行犯としてはこれ以上ない隠しキャラなのです
また、このように解すことでようやく、実行犯を黒き刃の刺客と解した場合の様々な不具合を回避できます
<アレクトーとティシーの話>
<アレクトーとティシーの話>
アレクトーは黒き刃の長、ティシーはその娘です
自説は実行犯がザミェル一族で確定しているので、このテキスト
の黒き刃は濡れ衣です
マリカが側に置いていた護衛であるアレクトーとティシーに、
ラダゴンが冤罪をかけたのです。
こんなに母を思いやる良い娘が、マリカの大切にするゴッドウィンを
暗殺するはずがありません。
また、ティシーやアレクトーが犯人なら、後述のように陰謀の夜に
暗殺者集団が森を馬で駆る映像が不自然になります。
王都にいるなら、馬は必要ないからです。
また、どこかで暗殺したのなら、そのまま消えます。わざわざ暗殺後
王都に戻ってきて、王都からの逃亡時にやられる、というのがおかしい
のです
なお、母アレクトーはリエーニエの封牢送りになっています。
まさに、死人に口なし状態です。
なお、ティシーの遺灰はよっぽどラダゴンに恨みがあるのか、
高火力でバリバリ主人公を助けてくれます。
あのやる気も、濡れ衣を着せられた無念からだと思います
以上より、
①陰謀の夜の黒幕と実行犯は誰か?
……黒幕は二本指とラダゴン。実行はザミェル一族。黒き刃の準備までは、ラニとライカード
これを自説と確定します
①陰謀の夜の黒幕と実行犯は誰か
②いつ、どこで陰謀の夜は起こったか
③なぜ死王子の遺物はどれも異形の形をしてるのか
④グラング「おかしい、混ざっている」の意味
⑤ソール砦の幻影の真意
⑥「正しく死んでくださいな」ミケラの真意
⑦フィアは生きていれば死王子を産んだか?
⑧ロジェールの「私は嘘つき」の意味
ようやく1つ目が終わりました。次です。本当に今回は長いです
②いつ、どこで陰謀の夜は起こったか
多くの方は、陰謀の夜がローデイルの王宮で起きたとお思いでしょう。しかし、そうなると説明がつかないことがいくつかあるのです
根拠1. トレーラーに映る、森を疾駆する馬
まずこのセカンドトレーラーの映像
上絵は、暗殺集団の、まさにこれから向かう姿だと思われます。右から左に森を走るのが気になります。もし暗殺者が王都住みのマリカの配下で、犯行現場が王都なら馬を駆る必要がない。もし暗殺者がザミェル一族で、王都が現場ならば、彼らの根城である巨人の山嶺昇降機の下から南に向かうはずです。しかし森を行っている。王都を超えて、そこよりかなり先の西を目指さないと、このような深い森はないでしょう。ストームヴィルはそこから遥か南西の地、リムグレイブにあり、リムグレイブは自然豊かな土地なので、城に向かうまでにはこのような森もあるでしょう。そこがまず、現場がストームヴィルであると考える根拠の一つです
根拠2. ストームヴィル城に空いた穴の痕跡
また、王都ではあまりに人目につきすぎます。警護も多く、また、ゴッドウィンに付き従う騎士も大勢います。なかなか全てを隠蔽することは難しいでしょう
自説からは、ゴッドウィンはすでに王都を離れストームヴィル城に都落ちしていたと考えています。辺境の城であれば、デミゴッドと共に騎士の数十名屠ったところで、全てを揉み消すことも難しくないでしょう
そのようにして、現在のストームヴィルを見ると、興味深い痕跡を見ることができます
城は損傷が激しく、破砕戦争やその後の混乱での崩壊の跡が見られます
しかし、やけに多いのが穴。この盾のテキストから、これらは黒斑と茨とわかります。黒斑は死、茨は死王子のルーンのトゲトゲと色も形も酷似しています
しかもここの穴は、何か目的を持って城の深部まで開けられている穴です
一般に城というのは、城主がいる本丸には容易に近づけないように迷路のように入り組み、途中には見張りの兵を置きます。のんびり入り口から侵入したらあちこちで気取られ、あっという間に警戒されてしまう。そうなったら暗殺どころではなくなります
そこでこの一直線の穴です。このように城の横腹から一気に風穴を開ければ、王の閨に直行、警戒より先に暗殺を達成できます。この不可解な穴は、陰謀の夜に刺客たちが暗殺目的で開けたとすれば、すんなり説明がつきます。ストームヴィルが現場と考える別の根拠は、この大きな穴です
根拠3. ロジェールと地下の巨大な瘡
ロジェールは死王子イベントでキーになるNPCです。彼とはストーリーの初めの方に、ストームヴィルで出会います。メタ読みすると、ストームヴィルが死王子イベントでキーになる場所だと考えられそうです。そのようなメタ読みはしないにしても、ロジェールの話ぶりでは、彼は明らかにストーヴィルに狙いを付けて、何か探しに来てるのですね。何故ストームヴィルか? ここが犯行現場だと聞きつけて、現場であれば何か手掛かりが残ってるかも知れないとの考えから、ここに来た。そう考えるのが素直です。
そして彼の狙い通り、ストームヴィルの地下には、こんな巨大なイカのような、死王子の顔の瘡が残っています。
彼の遺体(肉体は生きてる)は黄金樹の根本に埋められました。狭間の地全土の地下に黄金樹の根は広がっていますが、そこを伝って様々な場所に、死王子の肉体は死の根や業瘡を生み出しています
このような顔は、小さいものであればあちこちに見られるのですが、ストームヴィルの地下にあるこのスルメだけはやたらデカい。そうなるとこの城には何か意味があると考えるのが自然です
<石棺の大穴説>
なお、この城が、影の地の石棺の大穴に近いことから、
死が多く流れ着いてこの城の地下に吹き溜まった、
という見解があります。
なかなか興味深い視点ですが、ならば近くではなく
直裁に影の地の大穴にできるべきで、わざわざ城に
寄り道した理由がまた必要になります。
どの説に立っても、この城に何か意味があることは
変わりないのです
自説からは、ここが現在の彼の安住の場所であること、親友のフォルサクスもいること、被害者の怨念が現場に吹き溜まる地縛霊的現象と説明できることから、ここが陰謀の夜の犯行現場であると結論づけます
陰謀の夜の時期は?
自説からは時期的に、ミケラ・マレニアがローデイルを離れた後、ラニが死のルーンの一部を奪い、間もなくの夜だと思います
マレミケが離反することで、ラダゴン側に黒き刃の需要が高まること、ラニが死のルーンを奪って時間が経つと、流石にマリケスを通じてマリカに伝わり不都合だからです
以上より、②いつ、どこで陰謀の夜は起こったか
……マレミケが王都を離れ、ラニが死のルーンを奪って間も無く、場所はストームヴィル城で、が自説です
次に、
③なぜ死王子の遺物は異形の形をしてるか
実はファルムアズラにも、またカニの背にも、死王子の相貌は顕れるのですが、
例えばこの、黄金樹の根元に埋められて変容したゴッドウィンの遺体を見てください
顔の輪郭は貝ひもですし、下半身が鱗で埋められ魚の尾のようになっている
先ほど見たストームヴィル地下の死瘡も、巨大なイカのように見えますし、なぜこうもゴッドウィンの遺物は、イカだのカニだの鱗だの魚介っぽいのでしょうか
これはとても難しい問題ですが、あえて説明するならば、
これ、
先祖帰りの途中では?
以前、原初混沌の考察で、狭間の地の創世も地球の創世類似にデザインされていることを説明しました
地球でいえば、海が安定して存在できるようになったのが38億年前。飛来した隕石に含まれたアミノ酸等有機物が海水に溶け出し、その生命のスープから微生物が誕生。そこから10億年かけて魚類のような多細胞生物が誕生する、と
これを狭間の地に置き換えると
高温でドロドロが「混沌」
幾度の小惑星衝突が「メーテール」
生命のスープが「エルデの獣」
とも説明しました
しかるに、ゴッドウィンの肉体がイカだのカニだの鱗だの、やたらと海洋生物っぽくなるのは、進化を逆行しているからではないか、と
それに関連するテキストがあり、2つのアプローチを考察しています
<①回帰性原理による先祖返り説>
こちら、黄金律原理主義の祈祷のうち、因果と回帰のテキストです
非常に難解な文章ですが、
不易に収斂とは、不変の状態に戻る、という意味合いです。
何もなかった混沌の頃から、生命が生まれ魚介類が誕生し人になる、という流れを「因果」の連環とするなら、その逆の収斂を「回帰」と説明することになります
しかるに、死王子の修復ルーンは、黄金律から分たれ消された死の状態へ回帰することを意味します。まさに死王子は、死(原初混沌、不易としての無、46億年前のマグマオーシャン)への回帰の真っ最中だった、ということです。それを、親友フォルサクスが割って入って止めた
その止めたタイミングが、ちょうど生物が魚介類に進化した頃(約28億年前)だった、と
だから死王子の肉体の状態は、どれもその時の魚介の状態で止まっている、と考えられるのです
以上より、③なぜ死王子の遺物はどれも異形の形をしてるのか?
→ フォルサクスが、原初の死に向かって先祖帰りする死王子を、28億年前あたりの海洋生物のタイミングで止めたから
まあここは、かなりアクロバティックで、ちょっと推しにくい説ではあります。もっとマシな説明思いつく人、解説お待ちしてます
もう一つのアプローチが
<②坩堝の諸相による先祖返り説>
ゴッドウィンが埋葬されている根の近くの英雄墓にはこのようなアイテムもあります
ここでも「先祖帰り」という言葉が出てきます
自説からは、ゴッドウィンは古竜戦役で古竜に対抗するために竜餐をしていた。そこで坩堝の神性に侵され、さらにその後のリムグレイブでも南西の竜餐教会に通いそれを続けていたため、先祖帰りしやすい体質になっていた。故に死んだら鱗とか魚介のような先祖に戻ってしまった
というこれも苦しいですが、なくはない解釈だと思います
根拠①②は排斥するものではないので、どちらもが影響していると考えることが可能です
このように、「回帰性原理」や「坩堝の諸相」などが要因になって先祖返りが起き、魚介っぽくなっていたと考えます
④グラング「おかしい、混ざっている」の意味
死王子イベに関連して、死の根を喰らうグラングが、4個目で言うセリフがあります
なんですが、これはマリケスの考察回で既に触れました。フォルサクスの背にも死の根が生えていることから、死王子の死の根に侵食されたフォルサクスの死の根もいくらか地下に撒き散らかされており、集めてきた中にそれも含まれていた、ということだと思います
⑤ソール砦の幻影の真意
このセリフの主は、ミリセントの次のセリフから、ソール砦の領主と推察されます
「我らの祈りが弱い」と嘆く「祈り」とは、他の幻影が叫んでいる
という内容のものです
どうやらこの日蝕教会というのは、ミケラがこの地の領主に命じて管理させていたものらしく、その趣旨は
「ゴッドウィンを正しく死なせ、還樹で復活させる」
ことを目的とするもののようです
つまり、祈りはゴッドウィンに向け捧げられてますが、それはゴッドウィンの信仰者ではなく、ミケラの信奉者が、ミケラの目的に資するために活動している、ということなのです(だから領主は聖樹へ向かう割符の管理も任されている)
ミケラの目的は、ゴッドウィンの再誕にあります(あと他に、狭間の地にアンデットが増え続ける問題を解決する目的もあると思います)
でもみなさんはここで、こう疑問に思うのではないでしょうか
でもゴッドウィンって死の刃で運命の死を食らってるんだよね?
ならいくら祈っても、ゴッドウィンは再誕しなくない?
復活できてもそれは、IDを失う悠久の輪廻転生で、いつになるか分からないし、ID失ったら記憶もないし、もうデミゴッドでもいられないでしょう?
と
確かに私もこれまでそう考えていました
しかし、よく調べたら、
実は死の刃で魂を殺されても、再誕したデミゴッドがいるのです
再誕した者がいる
(その再誕したデミゴッドを今見かけないため、おそらくヴァイクあたりが倒したのでしょう)
それより、その再誕デミゴット、なんで死の刃で運命の死を迎えたのに再誕できたの?
実はその謎を解くヒントは、死王子の肉体と、各地に現れる業瘡に隠されていました
「蝕まれ色を失した太陽」、これは肉体だけ生きつづける死王子ゴッドウィンのことです
「魂なきデミゴッド」は、皆陰謀の夜に各地で暗殺されたゴッドウィンの子孫であるところのたくさんのデミゴッドたちです。歩く霊廟にゆられて、彷徨っています
このテキストは、ゴッドウィンは死してなお、子らを守っていることを示唆しています
死してなお、肉体だけ生きなから、彼らを運命の死から遠ざけている
これらを見て分かるように、歩く霊廟は、死王子の子らの遺体を守っていますが、子らは現在「魂なきデミゴッド」という特殊な状態なのですね
本来のデミゴッドの遺体であれば、黄金樹の下に埋めて還樹できましょう
しかし、「魂だけない」=「肉体は生きている」から、通常の還樹ができない
仕方なく遺体をこうして霊廟に入れて、外敵を寄せ付けないようにしてるわけです
でもおかしいですね
ゴッドウィンが黒き刃で屠られて魂だけ死んだのは、ラニが同時に肉体を殺したという、特殊な状況だったからです
それもデミゴッド最初の死だったから、という特別事例のはずではないでしょうか
なぜその後に、続々と各地で黒き刃により屠られたデミゴッドたちにも、「肉体だけ生きる」というこの特例が適用されてるのでしょうか?
その理由がつまり、蝕紋の大盾に記された
「魂無きデミゴッドの守護星」であり「彼らを、運命の死から遠ざける」という、死王子の功績なのです
彼は全土に、穢れた「顔の業瘡」を生み出していますよね
そして
「生臭く膿んだ人面の業瘡 抗死耐性を大きく高める」とあるように、彼の瘡や業瘡には強い抗死耐性があります
その目的が、「蝕まれた太陽が、魂なきデミゴッドたちを守護り、運命の死から遠ざけ」るためだとしたら?
その子らの肉体が死なずにかろうじて生き続けている理由がそれだとしたら、納得ができます。気合で各地に自分の瘡を産むことで、自分と同じような、肉体だけ生きている状態に彼らを保って(抗死耐性)、子らの再誕のチャンスを残しているわけです
私は常々、なんでゴッドウィンはアンデットを生み出してまで死の根を各地に増やし、その業瘡を増やしているのだろう、と思いました
その生き汚さを見ていると、後述のようにミケラが、「正しく死んでくださいな」とプチ切れする気持ちも分かります。肉体が生きてしまうのは、まあ仕方ないとして、大人しく黄金樹の下に収まっていればいいのに、無様にあちこちに死の災いの根を伸ばすんじゃないよ、と。不覚にも思っていました
しかし彼がそこまでして根を広げるのが、全土に散らばった彼の子を守るためだとしたら?
日蝕となってなお、空に踏みとどまり、子供たちにも肉体を活かす恩恵を与えてる、そんな太陽なのだとしたら
フォルサクスも親友として、そんなゴッドウィンの死に際の、土俵際の踏ん張りに、命懸けで助力している
そう解するなら、死王子が生き汚く業瘡を増やし続ける理由も納得がいきます。なんという堂々たる、強い父親でしょうか。ゴドリックの嗜虐性をみるにつけ、子孫の教育がなってないな、とか、子供たくさん作って作りっぱなしで、この女ったらし、とか思っててすみません。
また、母マリカが死の根をグラングに喰わせるのも、そのような息子の活動を補佐しているのではないでしょうか。各地に広げる業瘡は、魂なきデミゴッドらの守護星として、運命の死から彼らを遠ざける効果があります。が、同時に、死の根という災いの原因も増やしてしまう副作用もあり、この副作用だけを取り除く活動を、マリカはグラングにやらせているのではないでしょうか
さらに凄いのは、実際にそのようなゴッドウィンの祈りが届いてか、再誕に成功したデミゴッドの例がある、ということですね(首なし騎士、ルーテルの遺灰テキスト)
もしそんな例があるとしたら、日蝕教会の祈りにも、それなりの根拠があるということになります
ゴッドウィン自身の魂なき肉体も、再誕する可能性がある、という理屈です
その可能性にかけて祈祷するのが、
という祈りだと思います
「蝕まれ給え」というのは、後述のミケラの言うところの「正しく死んで下さい」と同義であり、恐らくそれは「かつて再誕した、魂なきデミゴッドが踏んだ手続きと同じように死ぬ」ということなのだと思います。それが何なのか、まさに偶然の奇跡だったでしょうから、未だに分からないので、とりあえず祈るしかないのでしょう
そのような理解から、もう一度屋上にいた領主の幻影の言葉を考察してみます
「…申し訳ありませぬ、ミケラ様」
……ごめんなさい、ミケラ様
「まだ、太陽は蝕まれませぬ。我らの祈りが弱いばかりに」
……まだ、死王子は正しく死ねてないようです。祈ってはいるんですが……いかんせん、気合いだけではどうにもならないようです
「貴方の友は、魂無きままなのです…」
……肉体はまだ生きてます……いったん正しく死なないと、再誕できないのに…
「…もう、見ることは叶わないでしょう 貴方の聖樹を」
……これは無理かも知れんです……あなたの目指す新王朝と新しい樹を、ゴッドウィン様が再誕して見ることは、無理のようです
こんなような意味あいになると考察します
⑥「正しく死んでくださいな」ミケラの真意
この剣を使ったときに出るのがミケラの無垢金の紋章であることから、これを捧げた少年が、ミケラであることはほぼ争いがないところです
「兄様、兄様、正しく死んで下さいな」という言葉が、ある種ショッキングなので、その真意が問題になっています
DLCの煽りを受けて、ミケラがゴッドウィンの怨念を鎮めてその肉体を利用したがっている、その願望の現れ、などの解釈も出ていますが、私の見解は違います
⑤で説明したように、ミケラはソール砦の領主に祈らせています。前述のように一応成功例に基づいた根拠があって、ゴッドウィンを正しく死なせて、再誕のチャンスを試みている、というのが実際のようです
つまり肉体をいったん死なせて再誕させようとしているので、肉体だけを利用したい、という願望とは、全く別のことをしているのですね
そこで改めて「正しく死んでくださいな」の意図ですが、ここで我々が誤解してはいけないのは、まず狭間の地において、正しく死ぬというのは一般的な概念で、よく使われる言葉だということです
リムグレイブの嵐の麓の地下墓にいる霊体がこの「正しい死」という言葉を使っています
還樹の名誉を受けた騎士の子らは、きっと父を見送るときに、「父さん正しく死んでね、、」とか普通にいう文化なのです。おそらく。だからことさらミケラが醒めてるわけでも残酷なわけでもないのです
さらにデミゴッドともなれば、いったん死ぬのは、特になんてことない、ということでしょう。運命の死は絶望的ですが、通常の死をの範囲であれば、すぐ復活するイージーゲームのはずです
「正しく死ぬ」というのは、再誕可能な死を意味してますので、デミゴッドであれば、深刻さの程度は「兄さん、ちゃんと病院行って変な病気治して下さいな」程度の意味になるはずです。デミゴッドたちの通常の死とは、風邪とかかすり傷みたいなものなので
このように、我々と感覚が異なるということです
黄金の墓碑 ≒ お見舞いのりんご
正しく死んでくださいな ≒ 風邪お大事に
くらいの意味
もっとも、この場合風邪が重篤で、もう助からぬ見込みが強いので、もっと絶望的ですが
あと一つ「正しく死んでくださいな」には、
「みなに風邪をうつさないで下さい」
という、少し切れ気味の意味もあると思います
業瘡を増やして子供たちを守護りたい気持ちも分かりますが、死の根も一緒に増やしてしまうので、それは金無垢のデミゴッドとしては承服できないでしょう
ミケラは優しい律を目指していますが、それは生者の幸せな世界であって、死者が蔓延る世界ではないのです
同じMの子としてマリカの意思を受け継ぐミケラも、メリナと同じ気持ちでしょう
そういう死者の世界は困りますので、死の根を蔓延させてくれるな、と種違いの兄を諌めているのですね
この黄金の墓標テキストからは、そんなニュアンスを感じます
⑦フィアは生きていれば死王子を産んだか?
死衾のフィアは死王子を産み直したいと言っていましたが、結局はDの双子の弟に殺されてしまい、その目的を達せませんでした
もし彼女が殺されなければ、死王子を正しく産んでいたでしょうか?
今ひとつフィアというNPCの能力が不明なので、考察してみます
死の修復ルーンルートは、魔術師ロジェールと、死衾の乙女フィアと、死を狩る者D、円卓にいるこの3人のNPCを巡って繰り広げられます
死衾の乙女という存在は、狭間の地とは別の地の文化です
死者、特に高貴な死者と同衾…つまり添い寝して、その死者を甦らせる。そのような儀式が「死衾」であり、それを執り行う女性が「死衾の乙女」であるようです
そして、これは私の考察ではなく、別の考察者様の見解で、それを拝聴してなるほどなと思い、自説に取り入れたものですが、
これらのテキストを読むと
・基本あまり褒められた職業ではないらしい
・同衾以前に、複数の男と寝て、彼らの精を受け入れる必要がある
・死者と添い寝する
・死者そのものが復活したり、死者のIDが保たれて再誕するのではなく、どうやら生まれてくるのは別の普通の子のようである
これはつまり、死者が復活したように見せかける、フェイクの儀式ではないか、ということです
その考察者さんがおっしゃるには、地位の高い人が亡くなって、相続とか跡目争いが生じて、どうにもならなくなったとき、それを収めるために、便宜上、死者が復活したようにしたい、と。そのために、父も母も分からないような子を持ってきて、儀式で死者が復活したのがこの子ですよ! だからみんなこの子に従って下さい! 領地も財産も、今までのままです! という体にして、事態を収拾したい、と。そういう大人の事情で需要がある、言ってしまえば”借り腹”の制度が、「同衾の乙女」なのだ、と
これを聞いて、なるほどなあ、と思いました。そういう制度は、文化によってはありそうです
だからフィアさんが何か特殊な能力を持っているわけではないという見解なんですね
確かに、冷静に考えると、いやらしい話ですが、フィアの能力とされる「帳の恩寵」で与えられる効果も、FPを消費して、一時的に強靭度を高める、というもの(FPはフォーカスポイント、つまり集中力とか魔術祈祷を高める思念力みたいなゲージです)。でもこれ、FPが減って強靭度が高まる、というのは、普通に、女性と楽しんで精力を使った男の状態としてあるんですよね。別に魔術的な意味でなくとも。どこかそういうお店に行ったあとの、「ちょっと気怠るいけど、スッキリして男としての元気が出た!」みたいな。ええ。きっとそう。
そういった欺瞞というか、後ろめたさも手伝って、「…卑しいと、お思いですか? けれど私の故郷では、これが聖なるやり方なのです」みたいな、少し卑下た言葉になってるような気がします
なので、フィアが最後まで生きていれば、死王子を産んで再誕させたか? というと私は否定的です
もちろんファンタジー世界なので、フィアが本当に死衾の能力を持っているという説も全然アリです。フィアは死王子を再誕させられなかったので、どの説に立っても結論は変わりませんし
仮にフィアの死衾能力が本当だとしても、フィアの英雄として駆けつけたのがロジェール、丸っこいパパ豪胆ライオネル、他一名という面子。彼らから得た温もりは死王子再誕に匹敵するか?を考えると……🧐。
ただ、母として権利を主張できない子を産み続ける職業というのは、相当な覚悟というか、よほどの事情があると思います。そういう生業に耐え続けるというのは、いくら報酬が良くても、よほど真摯に人の死に携わってないと、無理だと思います。フィアからは、暗い欺瞞のようなものも感じますが、同時に、人の生き死にに真っ直ぐ向き合い包み込む、誠実さのようなものも感じます。辛い死の現実を受け止め、前へ進むときには、そういう嘘も必要なのかな、というような。そんなフィアだったからこそ、死王子の復活は無理でしたが、死王子の修復ルーンは合成することができたのではないでしょうか。そんな気がします
⑧ロジェールの「私は嘘つき」の意味
最後にロジェールの話をします。大抵の味方NPCが、最後は狂って襲ってくる本作の中、彼は珍しく最後まで理知的にこの世を去ってゆきました(死後に傀儡化して襲ってきましたが)。なので、彼のことは好きな褪せ人も多いのではないでしょうか。私は好きです。何というか、その正直さと弱さが魅力です
彼は最後、死の根に蝕まれ、眠くなって死んで行くのですが、その際に
と少し含みのある言葉を主人公に残します
この言葉の意味が気になるので、最後に考察します
ロジェールとDは、共に褪せ人です。彼らは、世界中に死の根を生み出す原因となっている死王子の死についての謎を調査するべく、一時期、共に旅をする友人同士でした
しかし、Dは黄金律を信奉する者で、死王子のこのような死を悪いものと捉えていた。原因を取り除き問題を解決することだけを重視していたのですね。一方ロジェールは学者志望ということもあってか、問題を取り除くだけでなく、こうなった何か根本的な原因を探っていた
出会って間もない頃のロジェールのセリフですが、今になって読み返すと、この頃から既に、Dとは逆の、死の方向に惹かれ初めている感じがするセリフですね。輝石魔術はノクスの技術であり、ノクスは死と深い関わりのある文明です
そんなロジェールは、ストームヴィルの地下で死の根に蝕まれてしまい、志半ばで死にゆく運命に就きます
ロジェールは、幾度もフィアと夜を共にし、泣くという弱いところも見せるほど信頼していきました
その中でロジェールは
と、死者に共感するような考えを持つに至ります
そのような中で今一度、冒頭のセリフを考察してみます
「何を求めているか」
……ロジェールは、死に生きる者たちが幸せに生きられる死者の世界を求めている
「Dは激怒してくれる」
……黄金律原理主義者のDとは相容れない価値観なので諌めてくれる
「少しは悲しんでくれるでしょうか」
……かつての友がそのような価値観を持ったこと、そしてそのような価値に殉じて死んだことを、Dは悲しむだろうか
「まあでも、そんなことにはなりませんよ 私は噓つきですから」
……D曰く、ロジェールはかつて「聡明で、飄々と」した男だったという。ロジェールは、いつもDには、そんな嘘のイメージで接しているから、Dは気づかないだろう、と言っているのですね
以上が冒頭の意味ありげなセリフに関する、私の解釈です
ただ、一方のDは、そんなロジェールの変化にとっくに気づいていて
と全てお見通しです。このときのDの心に、幾ばくかの感傷的な揺らぎがあったかは読み取れません。ただ、隠しているつもりのロジェールの本心を、ちゃんとここまで見抜いているのは、やはり友なのだな、と感じます
出会った頃のロジェールがそう言っていたように、彼のフィールドワークは当初、狭間の地の混乱を糺すためにあった筈です
しかしフィアとの夜を重ねるうちに、彼はだんだんと死に取り込まれていきました
このように死王子ルートは、両極端のNPCであるDとフィア、その間でDからフィアに傾いてゆくロジェール、という三角関係で語られてゆくなかなか味わいのあるものでした
死王子関連では、かなり好きなイベントです
ところで、オープニングのフィアの姿を見ると、非常にマリカに似ているんですよね
死せずして、祝福の導きを得て狭間の地に来ていることも特殊です
ホーラ・ルーにしてもそうなのですが、彼女ら、二本指がピンポイントで果たして呼ぶでしょうか? この頃にはもちろん大いなる意志もいませんので、大いなる意志が呼んだのでもありません
思うに、このメンバーは、マリカが祝福を与えて直々に呼んでる可能性が高いです
これまでたくさんの褪せ人は二本指に呼ばれて来てるんだけど、オープニングの5人(ギデオン、フィア、金仮面卿、糞喰い、ホーラ・ルー)と主人公は、マリカ直々に選んで呼び寄せているんだと思います(詳しくは各エンドの回で詳説します)
そうやって見立てると、
・フィアはマリカ
・ロジェールはゴッドウィン
・Dは黄金の血の宿命
に準えて見ることができなくもない
ゴッドウィンは、当初のロジェールのような寛容な精神で王家を継ごうとしてたはずです
それが叶わずに、さらに殺されてなお、黄金の血族を絶やさぬために、死して死にきれず、子孫のデミゴッドを守ってきた
そこに母マリカが、死衾の乙女として現れる
まるで夜泣きする幼児をあやすように、添い寝して慰める
もう楽になって良い。ゴッドウィンには、死の王たる地位を用意してあげる。あなたの子らと共に、その世界で栄華を誇り、幸せに暮すがよい
マリカの律は寛容で優しい律ですから、死さえも受け入れるのですね。ここは、ミケラの律もまた及ばないところでしょう
また、子のためなら黄金樹の精神に反して死に生きる者さえ受け入れる母心が「視座の揺らぎ」として金仮面卿に非難されるところです
そうして、黄金の血を守ることに囚われて死にきれなかった死王子は、マリカの導きで、安らかな眠りに落ちる
そのような理解から、もう一度このロジェールのセリフを見てみましょう
これをゴッドウィンのセリフと読み替えると
「呪痕を求めるのは、彼らを救いたいからなのです」
……業瘡を作るのは、黄金の子供たちを救いたいからなのです
「陰謀の夜を調べる中で知ったのです」
……陰謀の夜の主犯が誰だか分かって知ったのです
「彼らは何も侵していない。ただ懸命に生き、それ故に、律の傷に触れてしまっただけなのだと」
……私の子孫たちは何も侵していない。ただ懸命に、黄金の精神を受け継ぎ、子孫を繁栄させ、それ故に、律の傷、つまり、危険で極端な黄金律原理主義者ラダゴンの反感に触れてしまっただけなのだと
それが、死王子エンドの本当です
死に生きる者、それはゴッドウィンの子孫たちデミゴッド
彼らは悪くないのに殺された、だからゴッドウィンは泣いていた
彼と彼らの子を救うために、マリカにできたことは何でしょうか
ティビアの呼び舟のように、彼らには、運命の死に導く船頭が必要だった、ということですね
だから、マリカは最初からゴッドウィンを蘇らせるつもりはなかったのでしょう。運命の死は避けがたく、マリカをしても、それはできることではなかった。ただ安らかに死なせてやるしかない。ロジェールを優しく抱いて看取ったフィアのように。それもまた一つ、フィアに死衾の能力は元から無かった、と考える理由です
まとめ
陰謀の夜から、死王子ルートの最後までは、以上のような構成になっていると考えます
これで死王子関連は全てでしょうか。また何かあったら加筆します
長文を読んで頂きありがとうございました
今回は「陰謀の夜」について考察しました
次回は「破砕戦争」について考察します
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