
破砕戦争の考察
前回は、陰謀の夜について考察しました。陰謀の夜をきっかけに、マリカがエルデンリングを破壊することになるので、時系列的にはそっちが先なのですが、思うところあって、今回は先に破砕戦争を考察します
破砕戦争もまた、テキストが断片的で、全体像が見えにくいテーマです。
ただ、本戦争では勝者がおらず、またネームドのデミゴッドが誰も死んでいないという結果に終わっているので、その争いに大きな意味があったかというと、少し疑問です(いたずらに多数の犠牲者を出し、狭間の地を荒廃させたという甚大な爪痕を残しただけでした)
極端な話、破砕戦争の独自解釈が大きく間違っていたとしても、そうやって争った結果誰も勝たず、すっかりエルデの地は崩壊してしまった、という結論さえ受け入れれば、先に進める
ただそれでも、数多の考察を拝見する限り、まだ誰も見つけていない、私だけがみつけた真実のようなものが語れるかも知れない、と思い、あえて考察します
とくに、最も明らかにしたい謎は、次のモーゴットの言葉の真意です
祝福なき褪せ人よ
王の座に、何の用がある
ああ…
黄金のゴドリック
天賦の双子、ミケラとマレニア
将軍ラダーン
法務官ライカード
月の王女、ラニ
まつろわぬ、裏切り者共
お前たちは、皆、同じ
野心の火に焼かれた、略奪者よ
…愚かな墓標に刻むがよい
最後の王、モーゴットの名を!
これはモーゴット戦前、閉ざされた黄金樹の麓で語られる彼のセリフです
なんとなく初見では
「みんなローデイルに歯向かって来て、好き勝手しおって、この裏切り者」
と怒っている意味に読めるのですが、
それにしては少し変です
まず、マレニアが裏切り者にされています。マレニアは、ラダーンと差違えあわや命を落とすところでした。そんな死闘の末ラダーンを圧えた彼女が、なぜ裏切り者なのでしょうか
また、デミゴッド全員を名指しで裏切り者と断ずる中、一人だけモーグを除外しています
それは何故か
この時モーグは自分の王国、モーグウィン王朝を興し、黄金樹の勢力と袂を分かってます。ならば、モーグがある意味一番の裏切り者では
双子だから特別に贔屓したのでしょうか?
そうではないはずです
このときのゴドリックの気持ちが良く分からず、それに触れてみたいと思い、そのためにも破砕戦争を考察します
1.開戦の狼煙、マリカの言霊
デミゴッド、我が愛し子たちよ
お前たちはもう、何者にもなれる。王であれ、神であれ
そして、何者にもなれぬ時、お前たちは見棄てられる
…そして贄となるのだ
エルデンリングが破壊された結果、分かたれたルーンが各デミゴットたちに配られました。既に肉体を捨てているラニを除き、忌み子、腐敗の宿痾、外戚、接ぎ木、何であろうと分け隔てなく公平に、一人一つづつ、王位争奪戦のチケットが配られました
そして、王または神になれなければ、贄になる、という残酷な運命もまた平等に、与えられました
<贄と犠牲者について>
ただ、贄(sacrifice)というのは、単なる犠牲者(victim)とは
異なります
竜餐や熊餐に近く、強い者の一部に取り込まれ、礎となって仕える
運命の者です
煎じ詰めると、
その死に意味があるのが贄で、
意味を与えて貰えないのが犠牲者。
ならば、マリカの「贄になる」は、まだ優しい方かも知れません
彼らのうちの誰かが王または神人になり、これから荒廃するであろうエルデの地を再興することを、マリカは望んでいます
そしてもし誰もそれを果たせなければ、蛮地なり他所の地なりから、黄金律修復請負人を呼び寄せ、彼らにそれをしてもらう
そこには主人公のような褪せ人も含まれるでしょう
そのときは、子供たちといえどその礎にされることを了承する
この言霊は、そのような意味のものだと思います
<不老と不死について>
なお、デミゴットたちは本来不死のはずでしたが、
エルデンリング(黄金律)が破壊されたことで、
(あるいはマリカが争えと宣言したことで)
以後不死属性は失っていると解されます
故に、通常武器や一般魔術でも運命の死を迎える
ステータスになっている
ただ、黄金樹は未だ存在し、エルデの獣も居るので、
殺されなければいつまでも死なない不老状態ではあると思います
不老ではあるが、不死ではない
何者かの排泄物。金色の大便
金色の大便は安定性が高い 乾かず、その熱と臭いを失わず それはずっと大便である
黄金のきらめきを宿した、獣の血液 アイテム製作に
用いる素材のひとつ
肉食の獣を狩ると、手に入ることがある
ずっと腐ることがない
2.開戦当時の勢力図
局面が多いので、まず各ゴッドたちのいた場所を確定します
不参加組
・マリカ エルデンリング破壊の罪で黄金樹下に幽閉
・ラダゴン マリカの巻き添えで同じく幽閉
・ゴッドウィン 死亡、還樹を試み中
・ラニ 行方をくらましてた(ロジェール談)
・ミケラ 自ら聖樹に接ぎ木して融合していたところを捌かれてモーグに拐われ(せ)ている。誘拐がいつか不明であるが、少なくとも戦闘できる状態にはなかった
参戦組
・ローデイル軍……モーグ、モーゴット、マレニア、その配下の軍勢
・君主同盟……ゴドフロア・ゴドリック他、ゴッドウィンの子孫のデミゴッドや諸侯・ライカード・ラダーン、その配下の軍勢
ローデイル軍の状況
まずローデイル軍は、王都の防衛にあたる騎士たちが主力です。
なお、王都ローデイル地下、忌み捨ての檻には、モーゴットとモーグが幽閉されていますが、少なくともモーゴットはマルギッドとして幽体だけ各地に飛ばして戦闘すらできるようです。
また、モーゴットとモーグ共に、その拘束具は魔力が薄れているため、自力で脱出できるものと思います。
二人は王都を守るため防衛の任にあたるので、ローデイル軍です。また彼らの配下の兵力も同じです(夜の騎兵など)
・当時マレニアは聖樹にいましたが、戦争終盤に僕を従えて南進を始めます。その思惑は当時不明でしたが、結果的に君主同盟のラダーンに一騎討ちを仕掛けているので、敵の敵は味方理論で、ローデイル軍に加えました
君主同盟の状況
・ゴドフロアはローデイル侵攻がテキストに明記されているので君主同盟側です。
・同じゴッドウィンの子孫であるゴドリック他、ゴッドウィンの子孫で陰謀の夜に殺されなかったデミゴッドたち、さらにそのファミリーツリーの諸侯も同盟側です。
なお、この中でゴドリックは、黄金のゴドリックと呼ばれ、後にモーゴットも彼の椅子を用意していることから、ゴドフロアと共に君主同盟の顔役だったと思われます。
・ライカードはラニから貰った冒瀆の爪を持って背律しているので同盟軍に参加します。弟を補佐するためラダーンも同盟軍に与する。それら配下の軍勢も同様です
<ゴドフロアとゴドリックについて>
「伝説の遺灰」のひとつ
古竜の騎士、クリストフの霊体を召喚する
王都ローデイルの名高き騎士にして
敬虔な古竜の信徒、クリストフの霊体
古竜の武器たる、落雷の戦技を駆使する
第一次ローデイル防衛戦において
接ぎ木のゴドフロアを捕らえた功により
英雄として還樹を賜っている
<ゴドフロアとゴドリックについて>
ゴドフロアについてはあまり記述はありませんが、
第一次戦役で捕らえられた後、接ぎ木のゴドフロアとして
アルター高原の封牢送りになっています
このゴドフロア、破砕戦争前夜どこに居たかというと、
私はゴッドウィン亡き後のストームヴィルの後釜に
ちゃっかり潜り込んだ、と思っています。
そこで接ぎ木のおぞましい悪習を始めたのも彼です
ゴドリックはというと、ゴッドウィンが前述のように都落ちした後も、
王都に居座りました
しかし、呆れたラダゴンに粛正されそうになり、慌てて王都を逃げ出します
そのときの様子は「擬態のヴェール」のテキストが伝えています
繊細な意匠が施された、金褐色のヴェール
FPを消費して、様々な物体に擬態する
ゴドリックが、王都ローデイルを追われた時 大量に持ち出した秘蔵品のひとつであり 「マリカの戯れ」としても知られる
逃げ延びた先が、ゴッドフロアが先に占拠してたストームヴィルです。
ラダゴンに恨みを持つゴドリックは、ゴッドフロアに手ほどきを受け、
接ぎ木による強化を始めます
また、ゴドリックに関しては次のような証言もあります
「そもそもゴドリックなど、君主の名に値せぬ余所者よ。王都から、女どもに紛れて敗走し…」
ここで注意したいのは、擬態のヴェールテキストの
「王都ローデイルを追われた時」と、ケネスの話す
「女どもに紛れて敗走し」の時期は、実は別だということです
確かに、多くの考察者さんはこれらのテキストをどちらも
第一次ローデイル防衛のときの話だと解しているようです
しかし「追われる」という言葉は、もともとそこに居る
権利があったのに、その権利がなくなり追い出されるような
場合に使います。
例えば城に乗り込んで戦った兵士が、返り討ちにあって退却する
ことを「城を追われる」とは普通言いません
これに対しケネスの言葉は「敗走」なので、ここでは明らかに
ローデイル戦役で逃げ帰ったときのことです
何故このように時期が異なると解すべきなのか
もともと、ゴドリックが陰謀の夜でデミゴッド一族暗殺を逃れた
理由が、擬態のヴェールにあると考えるからです。
彼は王都を追われるとき擬態のヴェールも持ち出しました。
陰謀の夜はたまたまこれで遊んでいたため、ザミェル一族に
ゴドリックであると気づかれずに、禍を逃れたのです
その後、接ぎ木で強化したゴドリックでしたが、後述のように
第一次戦役で敗走します。
その時、「女に紛れて」敗走できたのも、実は擬態のヴェールを
そこで使ったからだと解するのです
黄金のゴドリックというくらいですから大将首です。
ローデイル軍の誰も、彼を見間違えるはずがありません。
また、曲がりなりにもデミゴッドなのですから、仮に中性的な美男で
も巨体のはずです
女性に紛れることは無理です。接ぎ木してるのなら尚更
ただし、擬態のヴェールを使ったのなら別です。
女性になりすまし、紛れて逃げることは容易です。
なんなら、陰謀の夜に禍を逃れたのも、いつものように
擬態のヴェールで女装して遊んでいたからかも知れないのです
そんな意地悪な詮索はさておき、2度のローデイル逃亡の時期を
別と解する方が、あれこれすんなり説明できる、という考察でした
<古竜騎士、クリストフについて>
<古竜騎士、クリストフについて>
また、古竜の騎士、クリストフについてですが、
私の考察からは、彼はもともとゴッドウィンに仕えて共に
都落ちした失地騎士だった。
クリストフはゴッドウィンの死後に入城したゴドフロアに仕えて
第一次戦役に同行したんですが、モーグの撹乱にあい、
結局ゴドフロアを売り渡しました
第一ローデイル防衛戦
君主連合、内から瓦解し敗軍となる
血の陰謀、その痕跡あり
この「内側から瓦解」の一つがそれだと思います
次のテキストのように、モーゴットはストームヴィルの
失地騎士を第一次ローデイル防衛戦の中でスカウトして
ますから
失地騎士、オレグの霊体を召喚する
かつて、嵐の王の双翼として知られた一方
失地騎士となったオレグは、祝福王に見出され
百の裏切り者を狩り、英雄として還樹を賜った
これも「内から瓦解」の一例です
モーグが水面下で血の謀略を図り、モーゴットが現れて
引き抜くっていう兄弟プレイがありました
そうやって名誉を回復した後なので、クリストフも
「古竜の騎士、クリストフの霊体を召喚する
王都ローデイルの名高き騎士にして
敬虔な古竜の信徒」
みたいに持ち上げられ、失地騎士とは書かれないんです
そのように丁重に扱えば、失地騎士の地位に甘んじている
他の古竜の騎士も、離反したくなります
もともとゴッドウィンの人柄を信じてついてきたのに、
新たな王は接ぎ木なんかに耽ってるのだから
そういう駆け引きや思惑が、これらのテキストには見え隠れします
以上、当時の勢力図をまとめると、
君主同盟の中核は、ゴドフロアとゴドリックを筆頭にしたラダゴン王朝に不満を持っているゴッドウィンの子孫たちです。
そこに、ライカード、ラダーンなどが後述するそれぞれの思惑で加担しました。
これに対し泥縄で王都防衛したのがモーゴットとモーグ、加えてやはり独自の思惑で王都を援護し進軍したのがマレニアで、そちらはローデイル軍と呼ばれる勢力です
前置きが長くなりました。
破砕戦争を時系列で読み解きます
3.第一次ローデイル防衛戦
・君主同盟側から見た第一次防衛戦
そもそものきっかけは、エルデンリングが砕かれたとき、ゴッドウィンの子孫たるデミゴッドたちに一斉に大ルーンが与えられたこと(色は薄いですが)
要の輪という王家嫡男のみに与えられる立派な形をしている。おやおや、俺もワンチャン王になれるのか? と思ったことでしょう
ラダゴンに追い出され恨みを持っていたゴドリックなら尚更
ゴドリックは年長のゴドフロアを後ろ立てに、全国に散った血族たちに呼びかけます
我々こそが、城主不在の王都に棲むに相応しい
今こそ各地に散らばった
黄金の血を引く諸侯たち
嫡男の血統の我々こそが、誉れ高き王都に返り咲くときだ、と
これは確かに大義として十分筋が通りそうです
ラダゴンのような何処馬骨の一介英雄が幅を利かせていたのがおかしいという説です
全国に呼びかけると、ライカードが賛同しました
彼も母を捨てた父に反目しています。
ラダゴンはこのとき黄金樹内部に囚われていますが、その事実は外部に知らされていません。姿を見せないが今だに王都を支配している、くらいにしか思われてないでしょう
冒涜の爪を持ち、背律の機会を伺っていたライカードとしてはまたとないチャンスです
法務官という、国内随一の知性が味方についたのですから、君主同盟の士気も上がったでしょう
ただ、兄ラダーンとしては、あまり乗り気ではなかったと思います
反りが合わないとはいえ、父は父
また王都は、自身の憧れるゴッドフレイが築いた場所です。
そこに攻め込みたくはない
ケイリッドは辺境地ですので、まずは様子見をしたと思います
そうして始まったのが、このトレーラーの第一次ローデイル防衛戦です。防衛戦というからには、一応二本指支持の王族側の視点で切り取られるのですね
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この映像が第二次ではなく第一次という根拠は、君主軍の数の多さや、赤獅子の部隊の参加が見えないことです
・ローデイル軍側から見た第一次防衛戦
いきなり押し寄せてくる君主同盟の大軍に、ローデイルを警護する騎士たちは驚いたでしょう。しかも、かつて古竜戦役を生き抜いた一騎当千の猛者たちもやってくる
こちらは長年戦から遠ざかっている騎士たち。
その上指揮官たる王も王女も不在なのです
黄金樹の根の下でゴッドウィンの遺体を守っていた騎士シルリアは駆けつけたでしょう。彼女はゴッドフレイが全土制覇を果たしたときの坩堝騎士頭の一人で、古参です。ラダゴン王権下で坩堝騎士は冷遇されましたが。ローディルの英雄墓の墓守りをしていたオルドビスも同様です
ただ、ツリーガードや、かつて闘技場戦士で今は見張りなどの地位に甘んじている坩堝騎士たちを集めても、完全に他勢に無勢です
そんな王都の危機に立ち上がったのは、忌み捨ての牢獄に囚われていたモーゴットとモーグです
・モーゴットとモーグの動向
モーグは兄のように幽体離脱して各地を駆け回るようなアクティブさはありませんでしたが、代わりに地下で血と誘惑の神性を見出していました
彼は異次元から血を噴出させることが出来ましたし、自分の血を注入することでミケラのように対象を魅了することができました。一方モーゴットもそのような能力はありましたが黄金樹にそぐわないと判断したのかマリケス同様剣の中にその能力を封じ込めています
異様に変色した歪み刃の剣
忌み王、モーゴットの得物
その刃は、彼が忌避し封じ込めた
呪われた血の変容した様である
二人は拘束具に封じられているはずですが、当時は檻の管理が甘く、拘束具に魔力が充填されてない期間が長く続きました
黄金の魔力を帯びた呪物
忌み子と呼ばれる呪われた者たち
そのただ一人を、特に厳重に拘束するもの
僅かだが、その拘束の魔力は残っており
かつての幽囚、モーグを
一時的に地に縛るだろう
一時的に縛るとは、長期間は縛れないの意
二人のデミゴッドとしての力を持ってすれば、拘束具を解くことはさほど難しいことではなかったでしょう
兄モーゴットの幽体が斥候したのでおおよその戦況は分かっています
この大軍に武力で応じるのは不可能だと判断した二人は、モーグの血の謀略を用いることにしました
君主同盟軍の大軍勢ですが、特に強力なのが、ゴッドウィン(辺境では嵐鷹の王を名乗っています)の双翼とされるオレグとイングヴァルです。
糧食に血を混ぜたり、戦場に血の雨を降らせたりして、同盟軍の軍勢に魅了をばら撒く。
そこにモーゴットが近寄って、言葉巧みにオレグとイングヴァルをローデイル軍にヘッドハンティングする
恐らくオレグの方は、現城主のゴドフロアやゴドリックに不満だったのでしょう、モーゴットに寝返りました
失地騎士、イングヴァルの霊体を召喚する
かつて、嵐の王の双翼として知られた一方
失地騎士となったイングヴァルは、祝福王の誘いを断り
王なき城を、長きにわたり守り続けた
そして、辺境の英雄となったのだ
祝福王とは、王都防衛の功績で名誉回復したモーゴットの呼び名です
少し皮肉めいてますね
失地騎士、オレグの霊体を召喚する
かつて、嵐の王の双翼として知られた一方
失地騎士となったオレグは、祝福王に見出され
百の裏切り者を狩り、英雄として還樹を賜った
古竜騎士トップの1人、オレグを寝返らせました
こうなればしめたものです
少なくない数の古竜騎士が、オレグに従い造反したでしょう
さらにゴドフロアの側近だったであろうクリストフも寝返り、ローデイル軍に彼を引渡しました
古竜の騎士、クリストフの霊体を召喚する
王都ローデイルの名高き騎士にして
敬虔な古竜の信徒、クリストフの霊体
古竜の武器たる、落雷の戦技を駆使する
第一次ローデイル防衛戦において
接ぎ木のゴドフロアを捕らえた功により
英雄として還樹を賜っている
敬虔な古竜の信徒であるなら、ゴッドウィンやランサクスと共に王都を離れ、フォルサクスのいるストームヴィルに身を寄せていたはずです。なので、クリストフはローデイル軍にいた騎士ではなく、本来同盟軍側として攻めてきた騎士であると考えるのが自然です。さらに、ゴドフロアの側近だったため、虚を突いて、生かして捕まえることもできたのでは、と考えます
将の一人であるゴドフロアを失った君主同盟。その足並みは乱れに乱れます
ここは、ゴドリックが踏ん張って、ゴドフロアを救出すべき場面ですが、そこでまた血の謀略が働きます
君主同盟にあらぬ流言飛語が巡ります
「君主同盟の参謀、ライカードは、我々君主を焚き付けて、自身だけは火山館で高みの見物と洒落込んでいる」
「しかも奴は冒涜の爪という黒き刃を隠し持っている。我々がここで勝利を収め王権を獲ったとしても、いずれはその爪で屠られて、王座はライカードに奪われるだろう」
といった類のものです
ゴドリックは急に不安になります。確かにライカードは、我々が王になるべきだと強く焚き付けた中の一人だった。ゴドフロアを捕らえられ、ライカードも信用できない上に、オレグの部隊にも寝返えられている。何より俺の継ぎ木たちが大して役に立ってくれない
そこに、これまたモーグの血で操られた婦女子たちが徒党を組んでゴドリックに押し寄せます。
「ゴドリック様。かつてのように擬態のベールで身を隠して、私たちと一緒にお逃げ下さいませ。そして辺境の城へ私たちを避難させて下さいませ。その後の私たちは、ゴドリック様の思うがまま!」
…………。
ゴドリックはこっそり持ってきてた擬態のヴェールを被り、婦人になりすまし、彼女らに紛れて、真っ先に逃げます
その見事な逃げっぷりは、モーゴットによって同盟軍に報じられました
この瞬間、勝敗は決しました
阿吽の兄弟を前に、烏合の同盟は形無しでした
将の全てを失い、同盟軍は互いを疑う中、瓦解
領主たちはその後二度と、結束を固めることはなかったそうです
第一ローデイル防衛戦
君主連合、内から瓦解し敗軍となる
血の陰謀、その痕跡あり
剣碑に残るのはこれだけです
が、様々な状況、特に、失地騎士(古竜の騎士)たちの動向のテキストが、かなりいろいろなことを知らせてくれました。仔細はもちろん想像の域を超えませんが、少なくとも、モーグとモーゴットの知略と巧みな連携で圧倒的不利な戦力をひっくり返したことだけは確かです
<モーグについて>
霊体マルギッドになってあちこち飛び回るモーゴットと異なり、
モーグはずっと忌み地下で祈祷を続ける、内向的な性格だったのではないかと思います
血の君主モーグの、聖なる祈祷
姿なき母の身体に腕を差し込み
その血炎を前方に撒き、炎上させる
足を止めずに使用できる
地の底で、傷を望む真実の母に見えた時
モーグの呪われた血は炎となった
そして彼は、生まれついた穢れを愛したのだ
血鬼たちが用いる得物
骨を削った三本の刺で敵を刺し
出血を強いる
姿なき母に血を捧げる祭具でもあり
時に、自らを刺すこともあるという
<モーグについて>
血鬼関連のテキストを読む限り、彼は忌み棄ての地下で内省した末、
インスパ系血の神の神性を見出し、その能力に開眼しているようです。
なので、なんとなく、モーゴットは外交的でパパっ子、
モーグは内向的でママっ子な性格が本来のような気がします
モーグは地下牢で「姿なき母」を超えて「真実の母」を見ています
これは勝手な解釈ですが、「傷を望む真実の母」とは、歯の鞭で傷つけられ、
数々の禁忌罪人を取り込む母、マリカの姿だったのではないでしょうか。
マリカはかつて、凄惨な壺の中にあって、慈悲深き巫子として、
望んで罪人たちの血の禁忌や忌呪いを取り込み、その体内に
収めました
その姿を幻視して、モーグは、自分は母から棄てられてはいない、
忌み嫌われていない、ずっとちゃんと愛されて受容されている、
と確信したのではないでしょうか。
そうやって彼は、生まれついた穢れを愛した
自分自身を許し救うことができたのです
そうして立ち上がった彼の作る王朝は、弱い自己との相克の証であり、
全ての虐げられる者たちへの救済でもあるのでしょう
それにしても、血と誘惑と炎のインスパ神を降ろす才能があるなんて、モーゴットは弟の隠れた才能に驚いたのではないでしょうか
ともあれ、第一次ローデイル防衛戦は、モーゴットとモーグの活躍により、ローデイル軍の勝利に終わります
4.第二次ローデイル防衛戦
君主同盟軍改めゲルミア軍の動向
現在残っている兵たちの状況から、君主同盟のうち反旗を翻さなかった騎士たちは、火山館にみられ、そこで体制を立て直したと思います
事実上同盟は瓦解し、無様な敗走をしたゴドリックはケネスハイト曰く、
「ラダーンに怯えきって城に引き籠」
っていたそうです。ライカードに関する流言飛語を喧伝したかは分かりませんが、ゴドフロアを見捨てて真っ先に逃げおおせた将に対し、ラダーンがブチギレるのも想像に易いです
ゴッドウィンの子孫たちはこんなですから、残るはライカードしかありません
彼のゲルミア軍は、ワンチャン王座を狙った黄金の君主たちと違い、本気で背律を企んでいます。父親の王権に一度弓を引いた以上、最後までやるしかないのです
かつて、法務官ライカードに仕えた騎士たちの胴鎧
今はもう、誰も掲げない紋章が描かれている
覇王の雄心が、下卑きった貪欲に堕した時
彼らは、使えるべき主を失ったのだ
あの忌まわしいチャリオットの地下墓で手に入るゲルミア騎士シリーズ。そこに書かれているのは、蛇の冒涜に手を出す前の、覇王の雄心と呼ばれるくらいに尊敬されるべき人柄でした
なんとなく、最初は真面目に民を思い、部下たちを思っていたのが伝わります。最後まで愛妻家でしたしね。ラーヤもかわいいし
第二次ローデイル戦役では、そんな彼のゲルミア軍が、わずかに残った元同盟軍騎士たちと共に攻め込んだものと思われます
ローデイル軍の動向
一方ローデイル軍側でも、いくらか変化がありました
まずモーグが忌み地下を出て、聖別雪原地下にモーグウィン王朝を建てました
え、破砕戦争中に出ていったの?
とお思いかも知れませんが
はい。出ていきました
オープニングの破砕戦争紹介ムービー中に、ミケラを樹から拐うモーグが映っています。破砕戦争紹介ムービーの中にあるので、破砕戦争中です
また、ギデオンさえ実体を知らず、「血の君主と呼ばれる何者か」と評していることから、第二次でも姿を見せていないことになります
さらに、
第二次ローデイル防衛戦
忌み鬼、英雄の屍を築く
黄金樹に揺らぎなし
第一期と異なり、モーグを匂わす語句もありません
おもうに、モーグの卓越した祈祷とカリスマをいち早く見抜いた兄は、弟を忌み地下からも、祝福されない王家からも開放してやりたかったのではないでしょうか
さらに、瓦解した同盟軍などたかが知れています
寝返らせたオレグの古竜騎士たちもいますし、忌み王マルギッドとして暗躍していた頃に育てた夜の騎兵たちも呼び寄せました
黒髪をなびかせた、漆黒の兜
葬送の馬に跨った、夜の騎兵たちの装備
夜の街道をさまよう騎兵たちは
かつては、忌み鬼に率いられた
あらゆる戦士、騎士、そして英雄の死神である
自らも先の防衛戦での手腕を称えられ、民たちの呼び名も、忌み鬼から「祝福王」へと、名誉を回復しました。ラダゴンの姿なき今、王都防衛の指揮を採るのは名実共にモーゴットでした(もっとも自分では相変わらず忌み鬼マルギッドと呼んでいたようですが)
もはや弟の力を借りるまでもない、といった判断でしょう
そんなマルギッドあらため、モーゴットの、第二次ローデイル防衛戦における華々しい戦いぶりです
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<この画像の赤髪がラダーンか問題>
ここでマルギッドに押し込まれている赤髪がラダーンかについては
争いがあるようです
・マルギッドモードの木の杖を使うモーゴットに押されるのは
ラダーンにしては弱すぎること
・もし本人だとすると、この戦に負けて、ケイリッドに逃げて、
それからマレニアと戦っていることになり、なんだかチグハグなこと
・体も小さすぎること
等から、否定説も有力です
とくにここは拘るところではないので、否定説でもいいのですが
私は肯定したい
・まず、ラダーンではないなら、わざわざ名場面に出しません。
ミケラとモーグのように、デミゴッド同士のカードだから絵になる
わけです
ここもモーゴットとラダーンだから絵になる
ではなぜこんなにラダーンらしからぬ弱さなのでしょうか
ラダーンとしては、弟の窮地を見過ごせず、わざわざ自ら助っ人に馳せ
参じたのでしょう
ですが、マルギッドとやりあってみて、同じ武人として悟った
彼は本気ではない
彼の闘気には悲しみさえ感じさせる
故に、ラダーンも覇気を出せなかった(小さく見えるのは覇気がない
せいです)
弟への義理立てを果たして、一通りやり合った後、マルギッドに降伏し、
自身はケイリッドに敗走した、
ここはそういうことにしたいです
上の画像は、そんな本気じゃない二人の戦いでした
破砕戦争って兵士や市民が死んでめちゃ迷惑なのに、やりあってる
デミゴッド同士は、そんなに本気じゃない気がします
デミゴッドたちにしてみれば、ある日突然大ルーンを渡されて、マリカが
戦え、と言ったきり、ラダゴンからも二本指からも何のアナウンスもない
全員「?」マークでしょう。肝心のミケラもラニもマレニアも姿を見せないし
事情を知っている我々だけが、ことの深刻さを理解できるわけで
だから彼らが本気になれないのもある意味しかたないのでしょう
話が逸れました。そんな感じで、第二次の結果は
第二次ローデイル防衛戦
忌み鬼、英雄の屍を築く
黄金樹に揺らぎなし
なので、満場一致で、ローデイル軍の二連勝です
5.ゲルミア籠城とマレニアの南進
火山館攻略戦
穢れた者たち、疫病、冒涜
名誉なく、終わりもない惨戦
ゲルミア火山は、黄金樹の大地、アルター高原の西にある
破砕戦争で最も凄惨な戦いの舞台となった場所だ
…ライカードは、冒涜の罪を侵したのだよ。そして、許されざる敵となったのだ
二度の防衛戦に勝利したローデイル軍は反転攻勢にでます。
ゲルミアの火山館は、王都ローデイルのあるアルター高原からすぐ西。地勢的にここに敵勢力があるのは目障りで、冒涜の爪を持っているなら特に厄介です。早めに落城させたいところ。普通であれば兵力に物を言わせてわりとすぐに落とせたかも知れません
ですが、ここでライカードは最後の切り札をきります
後述しますが、ある蛇の使者と誓約し、蛇の冒涜を受け入れます
自身を巨大な蛇に呑ませて、恐るべき力を手に入れる、というものです
館に攻め込んだローデイル軍を、溶岩や丸呑みでどんどん屠ってゆきます
ローデイル軍もまた中世の籠城攻めでよくあるような、疫病を蔓延させる禁じ手を取ります
そのため、火山館は終わりなき泥沼の惨戦の舞台となりました
マレニア登場
マレニア南進の碑
ミケラの刃、貴腐の騎士
その翼を阻むものなし
そんな破砕戦争も終盤になって、ついに形(なり)を潜めていたマレニアが動き出します
ミケラの聖樹から、貴腐の騎士フェンレイらを従えて、堂々南進してきます
途中リムグレイブを通りがったとき
黄金のゴドリック、屈辱の戦
ミケラの刃に、散々と敗れ
ひれ伏し、許しを請う
ケネスハイト曰く
マレニアを侮り、敗れ、その足指を舐めて服従を誓う
そんな感じで、木端を蹴散らし、ラダーンの居を構えるケイリッド、エオニアの地に立ちます
そしてラダーンと一騎打ちの末
エオニアの戦い
ラダーン、マレニアと相討ち
朱い腐敗の花が咲き誇る
その結果は皆さんご存知です
花を咲かせる瞬間、耳元でかすかに口を動かし呟いていたことは、トレーラーを見返して驚きました
瀕死のマレニアは従者に抱えられながら、辛くも聖樹に帰還しました
貴腐の騎士、フィンレイの霊体を召喚する
フィンレイは、エオニアの戦いの生き残りであり
眠れるマレニアを聖樹に持ち帰った英雄である
彼女は、たった一人、あらゆる敵を退けながら
遥かな道を歩んだのだ
それとほぼときを同じくして、硬直状態を続けていた火山館の攻防もドローとなり、結局破砕戦争は、何の勝者も見いだせないまま、終結したのです
6.モーゴットの真意
さて、以上が破砕戦争の全容です
特に第一次ローデイル防衛戦のあたりは、オリジナルの解釈が織り込まれることで、従来解釈より解像度が高くなっているのではないでしょうか
このようにこの戦争を紐解いた後、改めて冒頭のモーゴットのセリフを読み返すと、彼の心情が理解できると思います
祝福なき褪せ人よ
王の座に、何の用がある
ああ…
黄金のゴドリック
天賦の双子、ミケラとマレニア
将軍ラダーン
法務官ライカード
月の王女、ラニ
まつろわぬ、裏切り者共
お前たちは、皆、同じ
野心の火に焼かれた、略奪者よ
…愚かな墓標に刻むがよい
最後の王、モーゴットの名を!
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確かに、マレニアはラダーンとやりあいました
しかし、それは戦も終盤になってからのことです
確かに、モーグは自分の王朝を開きました
しかし、それは王都を最大の危機から守った後です
モーゴットが怒っているのは、好き勝手にやりたいことをやっているからではありません
そんなのは、自分の好きにしたらいいのです
彼が怒っているのは、デミゴッドたちが、最大のピンチに、王都を、黄金樹を守りにこなかったことなのです
それぞれ親も立場も違えど、みな黄金樹の子です
いわば黄金樹は、一族の墓のようなもの
それが荒らされそうなときは、まず駆けつけ、守るのが黄金の一族だろう、と
その責任を果たさず知らんぷりしてたから、モーゴットにとって彼らは「まつろわぬ者」であり「裏切り者」だったのです
そして唯一、黄金樹を守ったモーグは、まつろう者であったのですね。だから、彼だけ除外した理由はちゃんとあって、別に双子だからえこひいきしたわけではないです
そうやって一族で団結して黄金樹を守りたいと願う思想は、神聖の角を持つ、祖霊信仰や土地神信仰の角人らしい感覚かな、と思います
こうしてモーゴットが並べている椅子は、彼ら「王」の候補者のための椅子です
そこには反旗の元となったゴドリックの席も用意されている
泥沼の交戦をしたライカードのものも
その意味は、「自分とモーグは忌み子だから王の候補者ではない。自分たちの分の席はない」
「でもあんたらは違う。あなたたちこそ、王後継候補者だ」
マリカもラダゴンも姿を隠した今、それは王候補者であるあなた達が話し合って決めるべきことだ。誰に呼ばれなくとも、あなた達は率先して集まり、この席に着くべきだ
そういう意味の椅子を、ずっと用意していたのだろうと思います
え、奥の椅子ですか?
そこにモーゴットは座りません
それは蛮地に旅立った王、
かつて産まれたとき、一度だけ会ったかもしれない王
ゴッドフレイのための椅子です
彼はずっと信じているんですね
この王家の危機に、きっと父は駆けつけてくれるはずだ、と
でもその前に主人公が来てしまった
「この王の座に何の用だ」、と
仕方ありません。誰も来ないうちに、主人公が来てしまったのなら
だから、仕方がない、誰も来ない以上、ここは自分が名乗るしかない
「最後の王、モーゴットの名を!」
ということですね
そんな彼が、最後、駆けつけたゴッドフレイの腕の中で看取られたのは、幸せなことだったと思います
また、こんな運命を予感していたから、弟は先に逃がしたのかも知れませんね
私にとっての破砕戦争は、そんなロマン溢れる男、モーゴットエンドの舞台なのかな、と思います
皆さんはどう感じたでしょうか
今回は「破砕戦争」について考察しました
次回は「エルデンリングの破壊」について考察します
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