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影の地の考察

こんにちは、考察界の日陰者、考える金仮面卿です
今回もエルデンリング考察、進めてまいります

<考察の指針>

なお、本考察は体系に矛盾なく、テキストにも
則する範囲で、比較的自由に物語を膨らませて
います

そういう解釈も有りなのか、と楽しみながら
読んでいただけると幸いです☺️


DLCで明らかにされた影の地。狭間の地の真ん中にありながら、見えないヴェールで隠されていたため、狭間の地の民からは「外の地」と呼ばれていました

用語として、広義の狭間の地は、影の地も含むのでしょうが、ここでは明確さを期すため、広義の狭間の地をエルデの地と呼ぶことにします

影の地 + 狭間の地(狭義) = エルデの地(広義の狭間の地)

狭間の地の狭義と広義

単に狭間の地といった場合は狭義のものを指します

今回は、影の地とは何なのかを考えますが、

影の地に関しては、特に謎の多い、

・影樹
・串刺し公メスメル
・ボニ村の陰惨な罪人と巫女の壺漬け事業

この3つは、後に独立して扱います




1.現在の景色



褪せ人を加えたミケラを追う者たちが、影の地に訪れた時には、あちこち焼かれた粛清の傷跡が今なお生々しく残る景色でした。透明の墓石が並ぶ墓地平原が広がり、そこから数々の黒く煤けた建物、城、塔、そして遠くに捻れた影樹が見えます

また、影の地中央にひときわ高く聳える「鎮めの塔」、その屋上には、

狭間の中心
あらゆる死が流れ着き
あらゆる死を鎮める

鎮めの塔屋上石碑テキスト

と書かれた石碑があります。影の地が、地上からも、地下の川を通じても、あらゆる死が吹き溜まる場所であることが伺えます

出会う人々はミミズの面をかぶり、角を生やし、黒い霊が多く、一様に暗い。
みな口を揃えて、領主メスメル公や、粛清を指示した神マリカを恨んでいます
彼らを追い詰める兵士でさえ、みな迷いや不安を口にします


…あたしには、分かるよ
あんたたちの恨みは、ずっと残ってる
そうして、あいつらを呪うのさ
メスメルを。マリカの子らをね…

火に焼かれた廃墟の幻影談

…痛い。体中が、痛い…うう、ううう……
なあ、俺はまだ、人間かい?
だから、こんなに苦しいのかい…?

病捨て村の幻影談

…そんなことは、あり得ない
俺たちは、見棄てられてなどいない
メスメル様は、マリカ様の息子
見棄てられるはずがない…

影の城の幻影談


あまりに辛く悲しい場所です

なぜこうなってしまったのか

それはマリカがメスメルに粛清の聖戦を命じたからなのですが

そこに至るまでに、いったいどのような経緯があったのか

それはとても長い話になります

まず、影の地の成り立ちから語らなければなりません

実は複雑な影の地にも、文化が広がった順番があります

下の地図をご覧ください

影の地 ざっくり地図


影の地は、狭間の地よりも高低差があり、マップ全体が迷路のようで全体像を把握しづらいです

そこで、ざっくりと把握できる地図を作りました
(色味のセンスがないのはご勘弁を)

時系列で並べると、次のような順番で、各地域が成り立っていきます

【エルデの飛来】
①黄色 「指遺跡」 → メーテールの落下
②深緑 「奈落の森」 → エルデの獣の落下 →  森の誕生
③白 「巫子村」 → エルデの民の誕生
--------------------------------------
【ノクスの飛来】
④青 「青海岸・石棺の大穴」 → ノクスの飛来
(「エラク川」) → ノクスの遡上
⑤黄緑 「ラウフの古遺跡」 → ノクスの民の誕生
⑥グレー 「墓地平原・鎮めの塔」 → 狭間の中心、死が流れ着く場所
--------------------------------------
【ファルム・アズラの統治】
⑦茶色 「ベルラート・螺旋塔」 → 角人の文化
⑧濃い赤 「ギザ山」 → 翼竜の誕生 (地下はシーフラ河)
--------------------------------------
【神マリカの誕生】
⑨黒 「影樹の麓・影の城・影のアルター・ボニ村ボニ牢獄」→ 二本指の勢力
⑩深緑 「奈落の森」 → ミドラーの館 → 三本指の勢力


なぜこのような順番で並べられるのでしょうか
順にみていきましょう



2.エルデの飛来


黄色と白の枠、それから
Dの下、深緑枠の地域の話です


①黄色 「指遺跡」 → メーテールの落下

黄色の箇所は、3つの指遺跡がある場所です

指の母、メーテールの追憶
(略)
全ての二本指、そしてユビムシの母は
大いなる意志の輝ける娘にして
狭間に落ちた、最初の流星であった

指の母の追憶テキスト

最初に落ちた流星は三箇所に大きなクレーターを作りました
そのうち、マヌス・メテル大聖堂の地下にメーテールはいます(✋マークのところ)
ここもクレーターだったものを、地表を塞いで上に教会を建て、指の母を守ったのでしょう

このあとエルデの獣もメーテールの近くに、黄金の流星とともに落ちてきたものと思われます それが


②深緑 「奈落の森」 → エルデの獣の落下 →  森の誕生


「かつて、大いなる意志は
黄金の流星と共に、一匹の獣を狭間に送り
それが、エルデンリングになったという」

エルデの流星テキスト

それが、エルデの獣です
これもメーテール同様流星として落ちてきました
ではどこに落ちてきたのでしょうか?

メーテールより巨体で質量も大きいでしょうから、より深い穴を開けたでしょう。そして、メーテールよりさほど遠くないところに落ちてきたはずです

それに該当するのが、奈落の森です。メーテールのクレーターは岩肌ですが、エルデの獣は生命の源なので、光の差さない奈落の底にも、豊かな自然の恵みを残しました。

自説はそう考え、ここが実はエルデの獣の落下地点だと考えました


③白 「巫子村」 → エルデの民の誕生

エルデの獣は、エルデの地にさまざまな生物を誕生させました
植物の他、魚介類、刺胞動物、昆虫や環形動物、両生類、甲殻類、爬虫類、鳥類、齧歯類、哺乳類、霊長類、そして人類が誕生、

人類は稀人が典型的ですが、他にも狩猟民族の高地の戦士などもいて、各地に散らばっていったのでしょう

そして今は角人と呼ばれる人々も、もとは角が生えておらず、そのようなエルデの民だったと考えられます

ただ、この頃のエルデの民には、特に祝福は与えられていないので、瞳の色は様々だったでしょう。瞳も肌の色も、環境に応じて地域差があったことでしょう




3.ノクスの飛来


下の青枠、エラク川を遡上し、
黄緑枠のラウフの古遺跡に至る話です
また、その間のグレー枠は墓地平原
白丸「鎮」は、エルデの中央鎮めの
柱のある場所です


④青 「青海岸・石棺の大穴」 → ノクスの飛来

エルデの勢力が宇宙から飛来、落下したように、ノクスの勢力も、石棺型宇宙船に乗って多数飛来しました
それらは青海岸の南端に集中して落下、地下に深い穴を開けました

石棺に入っていたのはノクステラ星間文明を支配する生物の体細胞が水に溶けたもの、すなわち「泥濘」と、彼らの核「雫の幼生」です

石棺型宇宙船の蓋が開いてどろりと流れ落ち、大穴の深奥に溜まりました

(「エラク川」) → ノクスの遡上

その泥濘は生物ですので、黒銀のスライムのように動き、流れ落ちるエラク川の滝を昇り、北へと遡上していきます

本作品には地表に川の表記は少なかったと思います(エインセルシーフラは地下でした)
しかし、エラク川だけは詳細で、川の始点と終点まで記載され、設定されています。わざわざそうしているということは、つまり、そこには何かあるのです(メタ読み)


⑤黄緑 「ラウフの古遺跡」 → ノクスの民の誕生

エラク川を登った先には、ラウフの古遺跡があります
おそらくここで初めて、ノクスの勢力は地上に現れたのでしょう

石棺の大穴の底からエラク川を上り、ラウフの古遺跡跡に出現した泥濘は、そのまま周辺の土壌となり環境を作り変えます
そのうちの一部は凝固して銀雫の殻となり、雫の幼生を包みます

変態生物、銀の雫となった泥濘は、エルデの民の似姿に擬態して密かに生活を始めます。彼らは肌の色が灰色で、その血が銀色である以外はエルデの民と変わりませんでした。名を「夜人」といいます

夜人は、改変した泥濘の土壌で白い木を育てます
その木には、人が果実のように”生り”ました


<地下墓の扉の意味>

この扉は一般に、還樹の概念を表した扉と考えられています

しかし自説は、ひょっとしたらこれは別の意味が含まれて
いるのではないか、と解しています

まず、地下墓や遺体、霊の処理というのは、ファルム時代から
の伝統として、ノクスの民が請け負うものでした
宵眼の女王が霊力を使い操る技術に長けていたからです

その関連で、還樹の作業も、遺体の運搬も、トロルや墓守
ゴーレムや死儀礼の鳥など、ノクスの関係の眷属に任せていた
と思われます

故に、この地下墓の扉を作って置いているのもエルデの民では
なく、ノクスの民だと思われるのです

ところでノクスは、ある文化の表層に擬態して、秘密裏に自分
たちの文化を紛れ込ませるのが上手でした

そう考えると、この扉もよく見ると不思議な点がいくつもあります

右下、立っているフードの老人は、ウルやウルドの王朝遺跡で
目にする老人像(自説はウル爺、ウル王と呼んでいます)に似ている

左下、立っている四角い頭の帽子の女性は、ラウフの古遺跡に
残っている石像の女性像(自説はラウ婦、ラウフ王女と読んでいます)
に似ている

そして上に生えている人たち、これしろがねのラティナなどの、
しろがね人に似てませんか

だとしたらこの根で光っているのは、泥濘に混ざった雫の幼生か
何かである可能性があります

還樹の様子に見せかけて、実はしろがね人誕生の種明かしをしている、
という可能性を考えています
人が果実のように”生って”いる……?

しろがね人とは、人に創造された生命である

しろがねの凝血テキスト

しろがね人第0世代の誕生です

しろがね人の血が白いのは、彼らは基本的に植物的な生物だからです(ゴムの木やパパイヤの木など樹液が白い植物はたくさんあります)

しろがね人(植物の人間)は、夜人(白銀の金属的変態生物)に創造された生命なのです

そうして夜人に創造されたしろがね人の中に、後のウル王朝国王ウル・カーリアと、その王妃ラウフ・カーリアがいました

二人の間に誕生した女王が、のちの宵眼の女王、本名をレナ・カーリアといいます


⑥グレー 「墓地平原・鎮めの塔」 → 狭間の中心、死が流れ着く場所

上の色分け地図、グレーの枠で囲ったあたりは、墓地平原とされ、鎮めの柱が立っているように、全ての死が流れ着く場所となっています

上記⑥でラウフの古遺跡の地に誕生したしろがね人の集落は、獣や小動物などとの異種交配を通じて、混血種を多数生み出しました(獣人や亜人)。また、しろがね人とエルデの民との混血種もあったでしょう。人にそっくりですが、白い肌を持ち、大人になるにつれて歩行ができなくなり、やがて足がなくなって死んでゆくという宿痾を持ちます
しかし、獣や小動物などの異種族との混血種は非常に強く運動能力
も高かったようです

亜人は、影の地の南、リムグレイブに多く移住し
しろがね人はやはり影の地の西、リエーニエの地に移住しました

リエーニエのしろがね人は、遺体を燃やした灰を石棺に入れてエインセル河に流し、それがエラク川に合流して大穴に流れ着く、という川葬をその後も長く続けました

影の地に広く分布する霊墓がより多く、このグレーの枠の地域に見られるのは、そのような、ノクスのエインセル河からエラク川に流す遺灰や泥濘に由来しているのです

また石棺の大穴には、西からもシーフラ河の水が流れ込みます
影の地に死が集まる理由は、そうした河川の流れに従った泥濘の移動に関連していると思われます

<その頃狭間の地では>

まだファルムアズラもなく、ただエルデの獣がメーテールの
指揮のもとで様々な種を生み出し、エルデの地に広めていた
頃です

エルデの神のように、直接種を送り込んではきませんが、
現住生物に降りて、取り憑いて、生物の形相を変化させる
「外なる神々」もまたエルデの地に降りて干渉してきました
(直接種を送る神を「直営系神」と呼ぶのに対し、もとから
いる生物にインスピレーションを通じて干渉してくる外なる
神を「インスパ系神」と呼んで次節は区別しています)

その中には、エルデの勢力に対抗して狭間の覇者たらんとする
外なる神性もあれば、なんとなくそこにあるだけの外なる神性
もありました

具体的には、次の地方、次のような種族です

・北の雪の山嶺 類人猿に対し → 炎の悪神 → 炎の巨人
・リエーニエの地底湖 虫に対し → 朱い腐敗の神性 → 腐敗の眷属
・リムグレイブ啜り泣き半島 犬や蛇や鳥などに対し
    → 坩堝の神性 → 混種
・ケイリッドの竜族(竜自体鳥と爬虫類の混種?)に対し
   → 重力の神性と、天候の神性 → 古竜
・各地墓所 → カラスなど鳥 → 死の双鳥の神性

また、眠りの神性や、誘惑の神性などに個別に取り憑かれた民もいたでしょう
あるいは、メスメルの聖戦後には、
・影の地西部 → 奴隷の一族 → 出血の神性 なども新たに生まれたと
解されます(外なる神の伝承テキスト参照)

「かつて、虐げられた奴隷の一族は
戦禍の傷痕に異形の神性を見出し、血鬼となった」
(血鬼の呪術師の遺灰テキスト)

このように、人が生まれ拡散していった当時、狭間の周辺はまた異なる神の干渉
により、魑魅魍魎の世界になっていったと思います




4.ファルム・アズラの統治


西の茶色枠と、
南東の赤枠の話です


⑦茶色 「ベルラート・螺旋塔」 → 角人の文化

影の地最大の、人間のコミュニティは茶色の枠で示された、角人たちの街、ベルラートです

彼らの街は、当時ファルム・アズラの神に選ばれた宵眼の女王の推奨する坩堝の思想のもと、独自の土地神信仰文化を発展させていました

また、その土地神信仰は、しろがね人と牛の混血種である祖霊の民の祖霊信仰をベースにしています

つまり、ベルラートの民は本来エルデの民ですが、その土地柄、ノクスの思想と成分の影響を非常に強く受けてしまう民だったのですね

特に彼らが作物を通じて土壌から取り込む成分、それは彼らの居住地、茶枠の位置を見れば分かるように、ノクスの細胞を含んだ泥濘で改造された土壌真っ只中なのです

さらに彼らのうちでも特に高位な修験者の霊薬とされるスピリットレーズンは、この一帯の霊墓のそばで生えるラダの実を乾燥させたものです

土壌としてはノクスの土壌で、霊性としては祖霊の霊力を宿すスピリットレーズンは、それを食した者の体組成を大きく変えます

体が強くなる一方で、混じり角が生え、また正気度が下がり、外なる神が取り憑きやすくなります
そして彼らはそうして育てた霊性と角に、神獣や神鳥を降ろし祭祀を執り行います
ある者は土地神化する過程で凶暴になり、牢に幽閉されていました(呪剣士。聖戦の戦を通じて解放され今に至ります)

「土地神」と呼ぶのも分かる気がします
土壌が彼らの「変態」「坩堝の諸相」にとって重要なのです

このような変異を「坩堝の諸相」と呼んで彼らは崇拝しましたが、一方で心身ともに健全でなくなっているのは冷静に見ても明らかです

(なお、ラダの実を食べた偶蹄目や奇蹄目も混じり角が生え巨大化して獰猛化します。黄金カバやガイウスの乗る猪など。温厚なトレントでさえラダの実を食べると敵を押し出すようになりちょっと凶暴化します)

このような無秩序さが、後の世の二本指や黄金律原理主義に疎まれ忌避された理由でしょう

そんな彼らの変化は、彼らの「足元の土壌」(soil ←英語版ラニの使った言葉 )の状態を色濃く反映しているのです


⑧濃い赤 「ギザ山」 → 翼竜 (地下はシーフラ川)

ファルムアズラ建国の経緯をここで考えます
メーテールとしては、黄金樹を燃やす巨人の炎と、宵眼の女王が生まれながらに宿した、神をも殺す死の幻視、この二つの神性が一番恐ろしく、封じたいところです

ところで、ボレリアスの氷霧テキストから、竜はかつて巨人山嶺から巨人に追われた、とあります

そこで、巨人に恨みをもつであろう古竜に巨人と対抗してもらい、また、宵眼の女王を外戚に加えることで、死のルーンを管理下に置こう、とメーテールは考えたのですね

そこで、隕石の神性を降ろすことで重力を操り、ファルム・アズラという宙に浮く都を作ったメーテールは、古竜の一人に天候の神性を降ろし、嵐や雷を操る力を授け、王にエルデの任命しました

ファルム・アズラの最寄りのロケーションが巨人の火の釜なのもそういった理由からでしょう

最終的に竜王は宵眼の女王の尻に敷かれたので仕掛けませんでしたが、本来このファルム・アズラの場所は、古竜による炎の巨人への反撃復讐を期待して、メーテールが用意したのだと思います

一方、宵眼の女王の死の幻視も、メーテールとしては封じたいところです
この点、宵眼の女王を神人に指名することでメーテール自ら彼女に干渉できるようになります。また、竜王の伴侶とすることで彼女の能力や技術をエルデに取り込めます。だから宵眼を外戚としたのですね。当時まだメーテールや大いなる意志は、宵眼の女王を御せる相手と見ていたようです

そうしてできたのが、ファルム・アズラ王国です

宵眼の女王は原初の黄金律と黄金律に基づいて、王配プラキドサクスに永遠の生命と、竜餐されにくい(食べると体質に合わなくて寿命が縮む)黄金の岩鱗の鎧を与えたのではないでしょうか

そして

原初の雷を宿したさざれ石の刺剣
追憶から得られた、竜王の力の片鱗
永遠なき、卑小な竜の末裔たちに
高い威力を発揮する

竜王の岩剣テキスト

古竜の末裔とされる翼竜(宵眼の女王とプラキドサクスとは別血統の古竜の子孫)に関しては、永遠の祝福も岩鱗も与えられていないことからそれを蔑んでいることが伝わります

しかしそれでもそんな竜王の子孫を喰らって心臓にさざれ石を生やした暴竜ベールは、古竜王に比肩するほどの力を持つに至りました
ベールは竜王との死闘の末破れはしましたが、かなりの深傷を負わせることに成功して、ギザ山で臥薪嘗胆しています

<竜の嚆矢>

「竜の大母、グレイオールは
おそるべき山であった」
(大老竜グレイオールの咆哮)

もともと山嶺は、巨大な竜の体からできた
とも読めるような竜の大母に関するテキスト
です
まあ、それは誇張で、それほど大きかったと
いうことでしょう
とにかく、北の雪山を根城とする氷竜が
竜の祖先らしいです

しかし、そんな竜もある時代に山嶺を
追われてしまいます

「太古、山嶺の主であった氷竜は
火の巨人たちに敗れ、頂を追われたという」
(ボレアリスの氷霧テキスト)

これは、巨人と竜の関係を表す貴重なテキスト
です
これがあれば例えば、

「大土竜、テオドリックスの力を振るう技
古いトロルの戦士、テオドリックスの名は
巨人戦争の英雄の一人として残っている」
(大土竜、テオドリックステキスト)

「竜餐を為した者は、いつか人ではなくなる
地を這う土竜は、その哀れな結末である」
(溶岩ブレステキスト)

この2つを併せ読むと、かつて竜餐をした
トロルがいたこと、それはもともと巨人山嶺が竜の
住処だったところ巨人がそれを追い出したときに
戦いその竜を喰った、とすれば関連が分かります

また、ケイリッドにはなぜか、巨人の巨大な頭蓋骨
が残っています
これも次のような巨人がかつていたと考えれば
筋が通ります

・氷竜を山嶺から追い出したとき、竜餐をした巨人
がいた
・その巨人は竜餐が忘れられず、ケイリッドに近い
ギザ山の暴竜ベールを喰いにやってきた
・しかし巨体をもってしても、それを上回る高さ
から攻撃してくるベールに太刀打ちできず、敗れた

ケイリッドに残る巨人の骸は、そうしてできたのでは
ないでしょうか

今もフローサクスが数々の猛者を至高の竜餐(ベール
の心臓)に誘うので、屍の増えるのが絶えません



ケイリッドに残る巨人の骸骨
同上




6.神マリカの誕生


黒枠のABCD、そして
再びDの下の緑枠の話です


⑨黒 「影樹の聖杯・影の城・影のアルター・ボニ村ボニ牢獄」→ 二本指の勢力

隆盛を極めたファルム・アズラでしたが、エルデの勢力と宵眼の女王の溝が深まり、宵眼がメーテールを指殺しの刃で傷つけたことで決裂が決定的となります

メーテールと大いなる意志を失ってなお、エルデの地奪還という困難な任務を受けた数体の二本指は、宵眼に変わる神の獲得に乗り出します

茶色枠、ベルラートの牢獄で行われていた、それと似た罪人壺事業を、
黒枠、Dの地域のボニ村・ボニ牢獄・モースの中継地点を拠点に行います

<ベルラートとボニ、二つの牢獄の遠さ>

私は重ねて、この二つの牢獄の壺事業は似て比なる
ものだと考えています

それはこうして地図上に表しても明らかで、
ベルラート牢獄に収める壺を作る場所としては、
ボニ村は遠すぎるのです

そのような割れ物を運び込む場所としてあえて、
のちにボニ牢獄を作っているのが分かります

また、作るにしてもベルラートに収めるのは本来
空の壺だけであった
ベルラートの牢獄ではその空の壺に、次々と捉え
られた罪人を詰め込んでいた

その証拠が、ベルラート牢獄の幻影です

「…嫌だ、壺や嫌だ 
 もうしない。二度としない  天に誓う。
善き人になる 
 だから、許してくれよ…」
(ベルラートの牢獄の幻影)

彼はなぜボニ村で解体されず、ここで壺に詰めら
れようとしているのでしょうか

また、凍りついた蛆虫もそうです
それは壺に詰められるのを待つ罪人が食べる食料

ここに罪人を収監して、ボニ村に送り、壺にして
またここに返すそれは迂遠です

本来ここは、ボニ村の巫子入りの中壺ではなく、
罪人だけを殺さずに詰めていく大坪が作られていた
のです

そのような壺はボニ村では作れません
運搬中に罪人が逃げてしまいます
詰めてすぐ宙に吊るすから逃げられなくなる

大坪の器はともかく、ベルラートの大坪の中身を
作っていたのは、やはりこのベルラート牢獄です

改めて地図で見ると、その遠さにこの確証がさらに
深まりました

二本指は、従来の罪人壺作りをハッキングして、特別な能力を持つ巫子マリカと、それに取り込まれた罪人肉のホムンクルス、ラダゴンを錬成することに成功しました

マリカ(=ラダゴン)に秘儀の巻物による神受任の儀式を、神の門で受けさせて、大いなる意志も、メーテールも関与しない、自前の神を作り出すことに成功しました

黄金の神マリカ(=影の王配ラダゴン)は

・黒枠Aに捩れた黄金樹(現影樹)を立て
・黒枠Bの険しい小山に最初の城を築城しました(最初は小さい城だったのを大きくしていったのでしょう)。そして
・黒枠C(影のアルター)にエンシスの城砦を建て、影の城を守りました
・黒枠Dでの陰惨な壺事業も中止に動きました

アステール落としの隕石に当たってファルムが崩壊しかかり、現王政が斜陽になる中で、マリカの勢力が影の地に乗り込んで捩れた黄金樹の布教を始めた。その拠点が黒枠のA〜Dなのでしょう

これらは二本指が捲土重来した起死回生の神人発掘事業です

<影の城の拡充と様々な守り>

影の城は、もともとはおそらく正門、教区と拝樹教会、
影を仰ぐ露台などの、基本的には布教活動のための
小規模な施設から始まったのでしょう

それを少しつづ現在の城に拡張し、また粛清の聖戦など
を通じてエンシスの城砦を構えるなどし、城塞化して
いったのでしょう

また、数少ない貴重な回復アイテム、マリカの祝福を
持たせていることから、巫子村を守るツリーガードを
置いたのはメスメルでしょう

「彼女は、メスメルのために、この霊薬を幾つか作った
その後、二度とそうすることはなかった」
(マリカの祝福テキスト)

影樹の衛護を親友のガイウスに任せているのもメスメルです



⑩深緑 「奈落の森」 → ミドラーの館 → 三本指の勢力

一方で三本指の焦土作戦待機事業も同時進行しました

こちらをご覧ください

ミドラーの館は「狂」の●の場所
鎮めの柱、つまり狭間の中心から
かなり近い


ミドラーの館は「狂」の●の場所

奈落の森は、エルデの獣の流星が落ちた時に開けた穴だということは前述しました
賢者ミドラーはおそらく、エルデの地の生態系がここから始まったのではないかと考えて生物学の研究をするためにあえてこの森に隠遁したのではないでしょうか

それはともかく、場所です
実は、奈落の森の中でもこのミドラーの館がある場所は、かなり鎮めの柱に近いのですね
いわばここはエルデの中心地です

私は他の考察回で、三本指の存在理由は、ノクスの民の全生物植物化、泥土化作戦を食い止めるための最終手段としてエルデの地を焼き払う、そのために混沌の王を確保することにある、と考えました(三本指とシャブリリの考察参照)

そして三本指がその身に降ろしている狂い火の外なる神性は、霊体さえも焼き払います(そのためトレントが恐れて奈落の森に出てきません)

あえてミドラーの館をその場所に選んだのは、おそらくここがエルデの地の中心であり、全ての霊体が集まってくるからです

確かに、ミドラーの弱い狂い火の王の力では、混沌の王エンドのようにエルデの全土を焼くに足りません

しかし、ノクスの勢力、特に宵眼の女王の力の源となる霊力の多くを焼き尽くすことならできます

二本指と三本指は、秘密裏に協力して、責問官たちを黄金の角貨で買収し、黄金で作った劫罰の大剣でミドラーの狂い火の進行を抑え、「絶えてください」とシャブリリ(の魂)に諭させ、いつでも宵眼の武器庫(霊庫)を焼き溶かせるように種火を用意していた

それがミドラーの館の真相だと思います


以上が影の地の考察のほとんどです

まだ

・蕾の聖女の教会と、腐れ湖の関係
・死王子の業瘡のある地下墓のこと
・鍛治遺跡について
・血鬼の眺望街
・影の地霧の谷とリムグレイブ霧の森の関係
・指の産所
・嘆きの牢獄
・懲罰砦
・アンテの廃墟
・影の城内部(教区・種の保管庫等)
・エニル・イリム

など、触れられていない箇所はあるのですが、おおまかな流れをまず把握できたかと思います

ここまで理解が深まれば、冒頭の問いに答えられるかと思います

それは

「なぜ影の地は現在こうなってしまったのか」

です


7.影の地の粛清の理由


まず前提として、粛清の聖戦が行われた時期について考察します

串刺し公、メスメルの直属となる 火の騎士たちの尖った兜
彼らは皆、黄金樹の貴族であったが メスメルに忠誠を誓ったが故に 疎まれ、故郷を追われたという

火の騎士の兜テキスト

黄金樹の貴族とあり、この追われた故郷は王都ローデイルと解されることから、粛清の聖戦はマリカとゴッドフレイがローデイルに王都を築いて以降、ということが分かります

また、現在影の地におけるメスメルの兵士たちの間では様々なゴッドフレイ王権時代の名残が見て取れます

串刺し公、メスメルに仕える兵たちの得物
使い込まれた鉄刃の両刃斧
王の戦に心酔した兵たちに好まれ
タメ攻撃が強力である

メスメル兵の斧

斧はゴッドフレイの好む得物であり「王の戦に心酔」とあることから、その当時のローデイル王権しか知らない兵士が影の地に派遣されたことが分かります

ローデイル建国後、ゴッドフレイが蛮地に追放される前
この内の期間だと思われます

さらに時期の特定を詰めましょう

この点、クウィラインのセリフが手掛かりになります

「私は違います。汚物などではない。決して貴方を穢さない

「マリカ様。我らの母よ
排除します。貴方ののすべてを、憂いのすべてを
黄金の祝福、その導きのままに
ああ!誰も、貴方を穢さぬように!」

火の騎士、クウィライン談

汚物に穢されること
それがマリカにとっての憂いであり、敵
それを排除すること
それが聖戦の目的

クウィライン曰く、ここがマリカが一番気にしているところのようです

だとしたら、過去の恨みで憎いというより、現在進行形で穢れているから除去したいという、何か衝動的な感情に駆られる理由

マリカをそうさせる出来事が突発的に起きた
その反動で粛清になった、と考えられます

その時期でもっとも考えられるのは、二人の忌み子

彼らに生まれながらに混じり角が生えていたことを、角人が存在し彼らが我々を敵視しているせいだ、とマリカは捉えたのではないでしょうか

忌み子が生まれた原因を、彼らの坩堝の文化と神性のせいにした

また、こう考えると、ゴッドフレイが蛮地への追放を受けた時期と重なります
ちょうど全土平定の締めくくりとしてモーン城の混種を滅し、第四マリカ教会を啜り泣き半島に建てた頃に、ゴッドフレイは忌み子出生の報を受けたのではないでしょうか。追放はそれからほどなくと考えられるからです

なぜ国獲りが終わって、これからというとき追放されるのか
仮に瞳が褪せたとしても、王としてやることはたくさんあるでしょう
何かそうされる事件があったはずなのです

おそらくゴッドフレイは二本指に、かつて行っていた熊餐のことを問い詰められたのではないでしょうか
つまり、赤熊は混じり角が生えているため、その血を浴び心臓を喰ってきたゴッドフレイの血が、混じり角として子に遺伝したのではないか、と

二本指よりもマリカよりも立場の低いゴッドフレイは、申開きできません
事実、その可能性もあるのです

これに対してマリカは、角人たちの呪いであって、夫は関係ない、という説を主張したのでしょう

さて、以上に対して2本指の考えはもっと狡猾で老獪なものです

全土平定したゴッドフレイの実力は、二本指に対してかなり驚異になるものでした
ゴッドフレイもマリカも、坩堝思想の寛容な面には共感的で、分け隔てなく民を扱おうとする傾向にあります
しかし二本指としては、坩堝思想は受け入れ難いのです

それは、土壌です

二本指は様々な調査を通じて、ノクスの勢力が土壌や異種交配を通じて細胞レベルでの侵略を仕掛けていることに気づいていました

だからこそ、たとえば影の地でたくさん自生していたラダの実を、狭間の地では廃し、その上近縁種のロアの実は、念のため人間の体で消化吸収できないように品種改良しています(ロア・レーズンテキスト参照)

もともと影の地の坩堝文化は、どこかで断ち切る必要があると考えていたのです

マリカが、子らを穢されたと感情的になっている今、それに乗じて影の地を、民族のみならず土壌ごと浄化する

同時に、今後坩堝を信奉して大逆を計りかねないゴッドフレイは追放する

全土平定を果たした今、そのような強い王はもう不要である

そのような冷淡な二本指の思惑が重なったのです

そのようにして、行われたメスメルの聖戦

その惨状を見ると

・墓地平原にある火に焼かれた廃墟が徹底して焼かれているのが分かります。墓地平原は、土壌としてももっとも泥濘の成分が濃い場所だと解されます
・神獣獅子舞など、神下ろしの文化も徹底して焼き払われました。それらの外なる神は、黄金樹政権に仇をなすものだからです

・聖戦が今なお終わらない理由もここまでくれば分かります

聖戦の勝利条件は、兵力として優勢を決定的にすることではないのです
土壌や細胞、文化、坩堝の諸相、全てを消滅させ、徹底的に浄化すること

つまり、マリカの憎い敵は角人ですが、二本指にとっての敵は、ノクスの細胞レベルでの侵略なのです

三本指も同様の敵に備えています。二本指の行う浄化作戦が失敗したら、より悍ましい火で影の地を焼き払おうというのです(もっとも破砕戦争後の荒廃によって、そのような焦土作戦は影の地のみならずエルデの地全体に必要なくらいに、ノクスの進行は拡大しています)

もちろんそれは間違っています
ただ、人であり母でるマリカの思惑と、神である二本指としての思惑が、それほどまでに違う、ということが言いたいのです

しかもマリカとメスメルに罪を着せて、自分は何も言われないのが狡い
そもそもマリカたち巫子をそんな酷い目に合わせたのは、ボニ村の大壺師や人攫い、牢獄の祈祷師たちを黄金の角貨で買収して本来の壺事業をハッキングした二本指なのです。本当に卑劣で許せません

しかし、そんな二本指が当時も今も、狭間の地を取り仕切っている
だから影の地は今、このような凄惨な状況になっている、ということです

いかがでしたでしょうか

影の地は、物語のラストを締めくくるに相応しい、

意外な事実が満載のステージだったと思います

それにしても

あまりに悲惨なので、そうでならなかった if のシナリオを考えたくなりますね

もしメスメルの粛清がなかったらエルデの地はどうなっていたか、
あるいは、マリカが生まれずにファルムの王権が大過なく続いていたらどうなっていたか、

いつかまた考察してみたいです

あと、ミケラの追跡者たちについても考察する機会を設けたいですね

今日はこのあたりで



以上、今回は「影の地」について考察しました
次回は「串刺し公メスメル」を考察します







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