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指の母メーテールの考察

前回は大いなる意思について考察しました。
今回はその娘、指の母メーテールについて考察します

<考察の指針>

なお、本考察は体系に矛盾なく、テキストにも
則する範囲で、比較的自由に物語を膨らませて
います

そういう解釈も有りなのか、と楽しみながら
読んでいただけると幸いです☺️

指の母メーテールについては、ユミル卿の伝え聞きがほとんどで、彼もまたなかなか信用していいか判断に困る人物であるためますますよく分からない印象です

なんとなく信用して良さそうな部分は、現在デミゴッドや褪せ人を指揮している二本指のさらに親玉であり、大昔に狭間の地の管理運営を取り仕切っていたが、何らかの理由で壊れてしまった、ということです

そこで知りたいのは、メーテールは何をしていたの? ということと、いつ、どうして壊れたの? ということです
また、本当にユミル卿の言うように、メーテールが壊れたから狭間の地がめちゃくちゃになったの? ということも考えていきます



1.一般的性格


まずはテキストから、メーテールの性質をいくつかピックアップしてみましょう

影樹に刻まれた
指の母、メーテールの追憶
(中略)
全ての二本指、そしてユビムシの母は
大いなる意志の輝ける娘にして
狭間に落ちた、最初の流星であった

指の母の追憶テキスト

・全ての二本指とユビムシの母
・大いなる意志の娘
・それも輝ける娘
・狭間に落ちた最初の流星

さらに

指の母、メーテールの尾指
その指の捧げ持つ小宇宙を杖としたもの
魔術と祈祷、両方の触媒となる
母は、大いなる意志の波動を受信していた
壊れ、棄てられた後も、ずっとそれを待ち続けた

大いなる彼方の杖テキスト

・尾指というものがあり、姿を見るとたしかに二本の指が螺旋状に巻いている
・この尾指はおそらく大いなる意志の波動を受信していたものらしい
・メーテールは壊れ、大いなる意志に棄てられたらしい
・指が捧げ持っていることから、大いなる意志は、小宇宙そのものである可能性がある

さらに

指の母、メーテールの頭指を
そのまま武器としたもの
その先端の指腹、指紋の皺の中心には
ほんの小さなイボのごとき瞳が
虚ろに彼方を見つめている

見つめる指テキスト

・尾指の他に頭指もあって、そこには目がついているらしい
・虚ろに見つめているのは、壊れているからかも知れない

さらに、大司教ユミル卿の言から

「…真に壊れていたのは、狂っていたのは、母なのです
指たちは、その落とし子にすぎません。あれらもまた、哀れな被害者なのです」

「黄金樹の世の欺瞞、矛盾…人の愚かしさと、塗炭の苦しみを
何故、これほどに救いがないのでしょうか?
…悲しいかな、その答えは明らかです
最初から、壊れていたのですよ。狂っていたのですよ
マリカが。彼女を導いた指たち
私は、それをこそ憂います
人々が如何にもがこうとも、その根本が壊れていては
…何が、できようはずもありません」

大司教ユミル卿談

やはり指はみな壊れていたらしいことが伺えます

このユミル卿の言を額面通り受け取るならば、メーテールや二本指やマリカの意志を真面目に考察しても甲斐がないかも知れません。合理的な考察を寄せ付けないほど狂っている可能性があるからです

しかし、果たしてそうでしょうか
一番狂っているのは、このユミル卿かも知れません

確かに、メーテールは戦闘前からかなり傷を負っており、かつて何者かによって傷つけられ完治していないのは、その体についた傷跡から確かなようです

しかし、本編の考察を一通り終えた上で観察してみると、メーテールは壊れながらも、ある一つの合理的意志をもって指たちに発令し沈黙したことが分かります

そして指たちもその発令を遂行するために(その人道的妥当性はひとまず置くとして)それぞれ合理的な行動を取っていることが明らかになりました

その発令を受けた二本指と三本指
それぞれの思惑と行動は各考察で詳述します

→ 二本指の考察回はこちら
→ 三本指とシャブリリの考察回はこちら

以下では

・メーテールが壊れる前の役割

・なぜメーテールは壊れたのか

・壊れた後の役割

を考察します



2.メーテールが壊れる前の役割


それは、大いなる意志の眷獣であり
律たる概念の具現であった

エルデの追憶

本作には、黄金律 と エルデンリング という概念がでてきます
2つは非常に似ていますが、「律たる概念」とあることから、律というのは形而上の概念なんですね

例えば、律に似た言葉で、法律、というものがありますが、これ自体は規則、概念であり、法律という物体がどこかにあるものではありません

これに対して、エルデンリングとは、実際の物体であると考えます。それは、「エルデンリングが槌で破壊」されたり、破砕して分かれた「大ルーン」を神授塔の上で拾って手に入れたり、その欠片が各地にあったり、という事実から、形而下の物体であるといえます(ビジュアル的にはラダゴンやマリカの壊れた体の中に埋まっているのが、終盤にみれます)

律を法律で例えたことに対応させるなら、エルデンリングは「六法全書」なのですね。六法全書を割いて破ると、「民法典」や「刑法典」などの小冊子に分解できるように、それは大ルーンやルーンの欠片に細分化できる

とはいえ、依然として法律、という概念は目に見えず触れられないものとして存在している

これが律(法律)と、エルデンリング(六法全書)の違い、関係ということになります

そして、この律、という形而上の概念をエルデンリングに具現化するのが、「エルデの獣」の役割なのだと考えます

しかるに「指の母メーテール」の役割とは、この律そのものを、律者(マリカなどの神人)から聞き届けて制定する

つまり、律を法律と捉えるなら、その法律をつくる人、立法者、すなわち国会が、メーテールの役割なのですね(マリカのような神人は二本指の干渉を受けて逆らえないので、律を作るにしても思いのまま作れるのではないと解されます)

メーテールが規則を作り、エルデの獣がそれを具体化する

生命や生物の誕生についてもそうです

エルデの獣は生命のタンクとしてその身に黄金の生命力を宿している
メーテールは生命をどのように誕生させ、どのように進化させ枝分かれするかを決定する
その指の「指示」に従って、エルデの獣は生命のタンクを開放して、生物を誕生させ、進化・多様化させていく

「メーテール」が決める
「エルデの獣」が具現化する

それが、メーテールと、エルデの獣の関係です
そして、国民が代議士を選んで間接統治するように、大いなる意志が、メーテールに波動を出して、大枠の指示を出す、律する

「大いなる意志」
↓ 大枠の指揮
「メーテール」
↓ 具体的な決定と司令
「エルデの獣」
その実行

という指揮系統になっている

「意志」

「魂」

「肉体」

という関係と見てもいいかも知れません

しかるに、マリカのような神人のポジションは

「大いなる意志」

「メーテール」→(授権)→ 二本指 →(指揮・授権)→ 神人

「エルデの獣」

という、メーテールの下請け、下部機関のような関係になるでしょう

だいたいメーテールの役割が分かりました


<四つ輪のモデル論>

メーテールの役割に触れましたので、ここで本作品に
おける「大いなる意志」「メーテール」「エルデの獣」
「神人(ないし主人公)」の関係を端的に表す図に
ついて説明します

これは黄金樹内部に至る扉です
現黄金樹の扉


中央の四つ輪
中央のあたりに四つの輪のレリーフがあります。重なり順にも
意味があるのですが、これは基本の律の形です

まだエルデの獣がエルデンリングとして実体化させる前の律
ですね

この四つの輪にはそれぞれ次のような意味と順序があると
解されます
赤 → 青 → 黄 → 白 の順で位が高い

この「意志」と「魂」と「肉体」の三位一体(トリニティ)と
律者たる神人の要の輪、これが黄金律の基本の形になります

この4つ輪は、マリカのエルデンリングにも、ファルムの
エルデンリングにもどちらにもあります


上、マリカのエルデンリングのトリニティ(と中央の要の輪)
下、ファルム原初黄金樹紋章のトリニティ(と中央の要の輪)
どちらもエルデの獣が宿り具体化・複雑化したもの


この四つ輪の考え方は、他の様々な場面でも不変で用いられる
ようです

例えば「主人公はデミゴッドを2体倒し大ルーンを2つ集めれば、
エルデの王として神マリカの伴侶となる資格を得る」という設定
は、次の通りの四つ輪を想定しています


大ルーンを最低限2つ手に入れること
お前たちは贄になる、とのマリカの言霊の意味


さらに、DLC、秘技の巻物が要求している「神」「王の魂」
「王の依り代」というのも上記の三位一体と対応しています


秘儀の巻物で要求される素体


この4つの関係は、おそらくR・R・マーティンさんの意志、
魂、肉体の三位一体の思想からきているのでしょう

今回の考察、「指の母メーテール」という観点からは、
常にこの青のポジションがメーテールの役割、ということ
になります

以上が、律(最低限の四つの輪)の考え方です
また、律と同じく生命の創造と発展の計画もメーテールの大事な役割であるところ、そもそもメーテールと大いなる獣以前に狭間の地には一切生物はなかったと私は考えます

<エルデの獣以前に生物はいたか>

メーテールに続いて、黄金の流星とともに狭間の地に
エルデの獣が落ちてきました

それ以前にこの地に生物や生命はあったかというと、
私は否定的です

メーテールが行っていたのは、大いなる意志の決定の
もと、狭間の地に生物を創造する計画であり、生命の
タンクであるエルデの獣に指示して、メーテールは
様々な生物を誕生させ、進化させ、多様化させる

つまり、生命樹を創造し律する
それがメーテールの役割だったと考えるからです

また、そのように全てを創造した経緯があるからこそ、
三本指をして全てを原初に戻し焼き溶かす、つまり
生命の破滅を引き起こすという傲慢も許される、
と指たちが考える根拠になるからです

そして、実際は壊れているから不可能ですが、
理論上メーテールと大いなる獣が無事ならば、
混沌の王に焼き溶かされた後に再び一から生命を
創造し発展させることも不可能ではないはずです


次に、メーテールは五本指だったのか、つまり三本指の母でもあるのか、という点を考えます

全ての二本指、そしてユビムシの母
大いなる意思の輝ける娘にして狭間に落ちた、最初の流星であった」

指の母の追憶テキスト

このテキストで、三本指が記されていないことから、三本指の母はメーテールではない、とする見解も有力です

しかし自説では、後述のように三本指は二本指の計画が失敗したときに発動する補充的な任務を負っていると考えられること、また、隠密的に行動して二本指のサポートに当たらせていることから、公的には秘密の存在である、そのため名が上がっていないに過ぎず、変わらず三本指の母もメーテールである、と考えます

ビジュアル的にも、人差し指と薬指が二本指、残りの三指が三本指のデザインなので、合わせて五本指だったと考えるのが自然です

そして五本指のテキストもチンクエディアに記載されていることから、十分採りうる見解だと思います


<チンクエディアと五本指について>

「ファルム・アズラにおいて
高位の司祭に与えられる短剣
獣の祈祷の威力を高める
かつて獣たちに贈られた知性
その象徴たる、五指が象られている」
(チンクエディアテキスト)

これはテキスト中で数少ない五本指に関する記載です

これとファルム・アズラのプラキドサクスの5本指の
手が強調されていることで、この時代の指、つまり
メーテールが五本指としての性格を有していたと考える
のが自説です

また、ユミル卿の近衛であるヨラーンとアンナの背中
おしりのあたりの鎧の意匠は五本指のデザインです
細かいですがこれもメーテール(に成り変わりたい
ユミルの好む)デザインと考えれば、指の母が五本
指だった有力な証拠と考えられます


なお、メーテールは五本指であると同時に、螺旋の意匠の源でもあると考えられる設定があります

<ファルム時代にみられる螺旋の意匠>

角人の信奉する螺旋塔に代表されるように、
ファルム時代には螺旋のデザインが各所に見られます

これはおそらくメーテールの尾指のスパイラルが縁由
であり、そこに大いなる意志の波動を降ろすアンテナ
のような役割を果たすことから、転じて、神に通じる
螺旋の清流と考えられるようになったのだと考えます

そもそもファルム時代の支配系統は、

大いなる意思 → メーテール → 宵眼と竜王の王家
 → 角人などの民 

です

つまり神人たる宵眼の女王より立場が上のメーテールが
最も神に近い存在であって、そのメーテールの特徴的な
デザインが螺旋であり、かつ、実際に大いなる意思の
波動を受信していた構造が螺旋であれば、それが崇拝
されるのは不思議なことではありません

この螺旋は例えばラダゴンの遺剣である「神の遺剣」
や「ミケラの針」など、さまざまなもののデザインに
取り入れられていますがそれも不思議なことではなく

これらの螺旋を見たら、一次的には「メーテール的
(指的)なもの」と考えてよいと思います
螺旋の大元はエルデの勢力由来であり、角人や
宵眼はそれに肖っていた、ということです
(だから宵眼の女王の律や原初黄金樹の紋章にも
螺旋が混ざっている)

ただ、それは同時に五本指的な時代の名残でもあり
坩堝とも関連してしまうから、二本指の時代には
螺旋の意匠は好まれなかったと考えられます
ただ、本来五本指のマークなので異端ともいえない
と考えられます


3.なぜメーテールは壊れたのか


上述のように、狭間の地で生物のあり方を律し、その指揮監督権を持ち、さらにファルム王権の宵眼の女王と古竜王プラキドサクスにその権限を委託していたのもメーテールでした
指というのは、まさに「指示」「指揮」の指、と考えてよいと思います
宵眼の女王もまたマリカ同様、指たるメーテールの干渉を受けながら狭間の地の統治にあたっていたと思われます

ただ、宵眼の女王は同時に、メーテールの干渉の及ばない秘密裏に、ノクステラ文明の侵略(エルデの王権のハッキング)を遂行していました(後の回で詳述)

そのことに気づいた大いなる意志が脅威を感じ、メーテールをして宵眼の女王の娘(永遠の都の巨大な双子の女王)を暗殺させたのがそもそもの混乱の原因と考えるのが自説です

これに宵眼の女王は怒り、娘を失った復讐として、指殺しの刃をもってメーテールを切りつけました
(この辺りの経緯は「永遠の都滅亡の考察」回で詳述しています)

その結果メーテールは壊れることとなります

<壊れる瞬間の防衛プログラム>

メーテールはただ壊れたわけではないと解する
のが自説です

彼女は壊れる瞬間防衛プログラムとして、二本指
と三本指を生み出し、それぞれに別の使命を与え
ました

二本指の使命 
…対ノクステラプランAとして、
ノクスの種の根絶、及び、エルデの黄金の民の
純血の保護

三本指の使命 
…対ノクスプランBとして、プランA
が失敗したときの焦土作戦、及び、その破局を避け
るために二本指のサポート

プランAでは、二本指は神マリカと王配ラダゴン
を錬成、新たな王国建国に当たらせ、様々なノクス
殲滅作戦を遂行していきます

プランBの準備として、三本指は狂い火の神性を
使役して焦土作戦用の種火の確保、及び、エルデ
王家に仇をなす外なる神による加害を排除
その排除は主にシャブリリという人物を使役して
これに当たらせる、など

詳細は、二本指、三本指、それぞれの考察回を
お参照ください



4.壊れた後の役割


そのように防衛プログラムを発動して壊れた後は、ミアの指遺跡から転送される指の産所にあって、ユビムシを産み続け、また指たちや、ユビムシたちに、壊れた波動を出し続けたのは事実だと思います

その波動は怪電波のように、近づく者の心を惑わせる効果があるのかも知れません

大司教ユミル卿も、影の地に至る前はそれなりにまともな魔術教授であり、ノクスの貴族だったのだと思われます

しかし、長年指の研究をし、おそらく指擬きといった幻覚剤も用いたのでしょう、その状態でメーテールの壊れた電波を浴び続けたため、同様に壊れてしまったと解します
(ただ、ノクスの密使として、遺恨のあるメーテールの破壊および追放の秘密の任をもともと負っていたとも考えられます)

メーテールとのバトルでは、最後、屠られ霧散して消える通常のボスと異なり、小宇宙のワームホールのようなものに吸い込まれ消える、つまり逃亡したと思われるエフェクトでメーテールは討伐されます

恋しかった母の元にようやく帰還することを許されたのかも知れません

様々な意味でメーテールもまた、DLCで屈指の印象深い強いボスだったと思います


以上今回は、「指の母メーテール」について考察しました

次回は、「エルデの獣」について考察します









他の考察はこちら↓






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