超大型巨人はなぜ滅んだか
上半身の骸、あるいは頭骸だけ残る超大型巨人
巨人山嶺とケイリッドなどで見られます
隣に横たわる一般巨人の骸と比べてもその巨大さは桁外れ
我々が戦える火守りの巨人と比べると、頭蓋だけで彼の2倍以上はあります
おそらく火の巨人の特大サイズと思われる彼らは、見る限り誰も太刀打ちできないほど大きな体躯を有していたはず
しかし現在の狭間で生きた彼らを確認できないことから滅んだと考えて良いでしょう
①彼らはいつ、なぜ滅んだのか
今回はこの大きな謎に迫りたいと思います
同時に本考察では
②裸体の古英雄はなぜ英雄だったのか
③氷結湖にある魔術師塔の魔術師はどのような存在だったか
④ボレアリスはどのような存在か
⑤なぜファルムは空を彷徨っているのか
⑥カーリア王家はいつからリエーニエにあるのか
⑦トロルの腹の中にある石碑は何か
などの謎もこれまで宙に浮いていたのですが、
一緒に解き明かしますのでお楽しみに
<考察の指針>
なお、本考察は体系に矛盾なく、テキストにも
則する範囲で、比較的自由に物語を膨らませています
そういう解釈も有りなのか、と楽しみながら
読んでいただけると幸いです☺️
超大型巨人はいつ、なぜ滅んだか
まず時代を特定します
これまで狭間の歴史のピースを埋めてきた自説ですが、どうも空白の部分がありました
それは、永遠の都が崩壊し、メーテールが傷つけられた後から、マリカが神として誕生するまでの間です
より詳しく言うと
・永遠の都にアステールが落とされて滅亡した
・その隕石はファルムにも当たり崩壊が始まった
・宵眼の女王は娘たちが都ごと滅ぼされ憔悴している
・メーテールは宵眼に傷つけられ回復不能
・大いなる意志は娘と狭間を見捨てて交信を絶った
・まだ神マリカは誕生していない
・二本指や三本指は水面下で動いている
このような時期です(詳しくは「永遠の都滅亡の考察」や「二本指の考察」回等をご照覧ください)
この期間に自説では
「全ての坩堝の諸相を宿した混じり角の持ち主」
「角人の戦士のモデルとなった裸体の古英雄」
「種の保管庫に吊るされている巨人」
「宵眼の女王の隠し子であり最初のトロル」
「ラダゴンの魂に転生した王の魂の持ち主」
「カーリア家の初代王」
など、多くの属性を持つラダが死んでいるはずなのですが、その理由が不明のままでした(ラダについては「種の保管庫に吊るされている巨人の正体」を参照ください)
しかし、ある一つの伝説の魔術を介するとその謎が、いえ、冒頭の7つの欠けていたピースが全て埋まるのです
なので時代は「永遠の都滅亡後マリカ誕生前の政治的空白期間」
その時期に超巨大巨人は滅亡したと推定します
<巨人戦争のときにフレイ軍が倒したのでは?>
その可能性ももちろんありますが、だとすると
トロルの寝返りくらいであの超大型を滅ぼせた絵が
浮かばないのですよね
なので、フレイたちが戦ったのは通常の火の巨人たち
超大型は別の理由でそれ以前に滅んでいたと考えます
創星雨
私は、この星の源流魔術が、あの超大型巨人たちを滅ぼしたと考えています
そうすることで、時代や理由などがうまく説明できます
一般に恐竜など、大型の生物が絶滅するときは、捕食などではなく、隕石の衝突や火山の噴火等による天変地異を原因とすることが多いです
彼らは武器であるはずのその巨大な体格ゆえ、環境の変化に対応できず滅ぶのです
山嶺の超大型巨人たちも、その意味で例外ではなかったかも知れません
彼らが滅んだプロセスをまずざっくりと考察します
前提として、勢力を考察すると
ファルムアズラ派 ……宵眼の女王率いるノクスの勢力(獣人や混種、しろがね含む) 黄金の鱗を持つ古竜、火の巨人たち(超大型巨人含む)、角人
エルデ派 ……各指たち 飛竜、アステールとその残した輝石に操られる源流派魔術師(結晶に触れ過ぎて原輝石化したしろがね人の星見含む)、稀人巫子たち
です
①アステールが襲来して永遠の都が崩壊。アステールと共に輝石がもたらされ、各地に結晶が埋まり、そこに坑道が作られる
②星見の里に近いのは聖別雪原のイエロアニスの坑道。ここを掘って輝石魔術に魅了されるうちに、しろがねの星見たちの中には原輝石化して源流魔術師になる者が現れる
③これら源流派はアステール、すなわちエルデの勢力に寝返るため、そこに対立が生じる
④一方、永遠の都を滅ぼされたしろがねや月の貴族たちは土地を追われる。ファルムは崩壊しかけて宵眼の女王は意気消沈しているので、彼らを保護する施策がおざなりになる。つまり、宵眼の治世ではあるが、事実上機能しておらず、さりとてメーテールも壊れていて指たちの足並みも乱れているので、支配者不在の状態
⑤飛竜は、例えばボレアリスは山嶺の氷結湖にいて、巨人への復讐を誓っている
また、暴竜ベールはギザ山で、空から見下してくる古竜王プラキドサクスを忌々しく思い下剋上を誓っている(ファルムはこの頃ケイリッド上空に停留していると思われる→「ファルムはもともと狭間の地のどこにあったか」の考察参照)
政治的空白の中、これらの飛竜勢力と、源流派魔術師たちが手を組んだらどうでしょうか
そこで武器となるのが、創星雨という前述の魔術です
通常の剣や魔術ではかの超大型巨人には太刀打ちできないでしょう
だが、この創星雨を開発した源流派魔術師(仮にソーセー師と呼びます)が、他の源流派魔術師に伝授し、彼らが飛竜に乗って空から創星雨を降らせたらどうでしょうか
先に恐竜などを滅ぼすのは天変地異と言いました
星の雨ではありますが、雨は雨
創星雨は実際に焼炉ゴーレムに対しても有効である旨確認されています
超大型巨人さえも届かない上空から、延々と降り続く雨
彼ら炎の巨人の弱点である雨を浴び続けたら、ひとたまりもありません
彼らは超大型ゆえ、他の巨人と異なり身を隠すこともできなかった
環境に対応できなかった。ゆえに超大型から先に滅んだ
ここにボレアリスは火の巨人にリベンジを達成したのです
けれど、彼らがそのまま勝っていたとしたら、なぜ氷結湖にボレアリスはそのままいるのでしょうか
また、ソーセー師は結局異端魔術師として現存するのは塔と彼の魔術だけです
なぜ彼らは主流派になれなかったか
おそらく誰かに敗れたのです
超大型巨人でない、創星雨も通じない誰かに
それが、先に述べたラダ
全てのトロルの祖であり、トロル軍を率いる初代カーリア王です
おそらく裸体の古英雄は、全ての諸相の角を宿した強靭な肉体で、ボレアリス他飛竜、そして源流派魔術師軍団に立ち向かいました
彼はカーリアの紋章の起源である剣と魔術を使えたのでしょう
他のトロル騎士たちと共に古竜に乗って、ソーセー師率いる飛竜源流魔術師軍団と戦いました
結果自分の命と引き換えに、この軍勢を倒したのでしょう
⑥そして残ったのは
・再び氷結湖に追いやられたボレアリス
・超大型でない普通サイズの火の巨人たち
・王を失ったトロルの王女。彼女はカーリア女王とその一族です
・火の巨人と同盟を組んだトロルたち
以上①から⑥が、かつてファルム崩壊が始まった頃に北の山嶺で起きた英雄ラダの戦争です
そう考えると、次のことが導けます
A . 王を失ったカーリア王家は、他の月の貴人たちと結集するためにリエーニエに下ります。その行程にはおそらく当時まだ若かったイジーなども付き添ったでしょう
B .戦死したラダの魂は遺灰にして宵眼の女王が管理しました。これは後にマリカが罪人肉巫子壺から復帰するとき、ラダゴンの魂として転生するために吹き込まれます(王の魂が導く)
C .ラダ戦争の見届け人であるイジーが、宵眼の女王の命により、夜と火の剣なる伝説の武器を打ちます
D .トロルたちの腹に入っている十字の彫られた石碑は、もしかしたらトロルを守った英雄ラダを祀る記念碑なのかも知れません
E .このように、飛竜とファルムは敵対していますから、その一環として、ベールと古竜王の戦いもあったのでしょう。おそらくこの時代に二体は戦った。ちょうどファルムが崩壊しかけ斜陽の時代です。これをチャンスとベールは戦いを挑んだのでしょう。彼の手の者の中には古竜餐をした内通者もいたようです。プラキドは辛勝しましたが深手を負いました。おそらく宵眼の判断でファルムはケイリッドから離れ、時計回りに狭間の地上空を回遊しはじめたのでしょう
<竜餐とエルデの勢力>
現在、エルデの勢力が竜餐するのは古竜ではなく飛竜です
これは古竜戦争を経てゴッドウィンが取り入れた文化です
それ以前、例えばゴッドフレイの時代などは、むしろ飛竜と
エルデの勢力とは仲が良かった
後に宵眼の策略によってその蜜月が引き裂かれたと考えるの
が自説です
まとめ
以上より、冒頭の謎が全て明らかになったのでまとめます
①超大型巨人はいつ、なぜ滅んだのか
→ 時期はアステール襲来後、マリカ神誕生前
飛竜に騎乗した源流派魔術師たちが降らせる「創星雨」に対して無力だったから
②裸体の古英雄はなぜ英雄だったのか
→ 源流派魔術師と飛竜の攻撃から、火の巨人たち・全トロル・妻子であるカーリア王家を命がけで守ったから
③氷結湖にある魔術師塔の魔術師はどのような存在だったか
・おそらく宵眼の世代と遠くない初期の星見の一人
・アステール襲来後、輝石結晶を掘り起こし源流派魔術を開発した
・そのままエルデの勢力に魂と肉体を乗っ取られ、炎の巨人やカーリアを根絶やしにしようとした。彼の活動はその後、源流派、カッコウなどのしろがね迫害勢力に受け継がれる。彼自身の軍団はラダによって滅ぼされる
④ボレアリスはどのような存在か
ソーセー師と手を組み火の巨人に復讐しようとするもラダに返り討ちに合う。けれど超大型巨人を滅ぼすなど、ある程度爪痕を残す
⑤なぜファルムは空を彷徨っているのか
→ 暴竜ベールに竜王が痛めつけられ、ケイリッド上空からの撤退を余儀なくされたから
⑥カーリア王家はいつからリエーニエにあるのか
→ 上記のラダ戦争の結果、王を失ったカーリア女王たちが、トロルの警護のもと山嶺を離れたとき。この時期以降、例えばマリカがローデイルに建国したら、山嶺からリエーニエへの通行は困難になる。ゆえにこの時期以前に引っ越したと考えられる
⑦トロルの腹の中にある石碑は何か
→ 裸の古英雄ラダを讃え、弔う記念碑。多分
根拠は少ないですが、数少ない残った謎たちがすっぽりと収まるので、仮説としてはありかな、と
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