影樹の考察
はい、こんにちは!
考察界の捻くれ者、考える金仮面卿です
今回もエルデンリング考察、進めてまいります
前回は串刺し公メスメルについて考察しました。引き続き影の地時代の大きな謎、影樹とはなにかについて考察します
影樹の見た目の理由
2024年2月に公開されたファミ通.comの宮崎英高氏独占インタビューによると、影樹について氏はこう語っています
https://www.famitsu.com/news/202402/22335199.html
影樹とは、黄金樹の影、ということです。
ただそれは文字通りの影、という意味でなく、象徴的な意味での影、でしょう。そしてそれは、影の地を象徴するもののようです
私の考察でも何度か触れた影樹の構造は、おそらく下記のように、2本の異なる幹が絡み合い、細い幹が太い幹に引っ張られる形で左にひしゃげている形をしているようです(影樹の化身テキスト参照)
さらにこの影樹を観察してみると、①2本の幹、②左に歪むの他にもいくつかの特徴があることが分かります
③黄色の方の幹の芯には黄金の光が通っており、それは途中で割れているのか、樹液のように垂れ落ちています
④全体的に黒く煤けていて、煤煙(すす)が幹や枝から落ちています
⑤黄色の樹のてっぺんから、おそらく巨大で透明なカーテンのようなものが広がり、影の地全体を覆っているように見えます
これら5つの要素をそれぞれ、
①赤幹と黄幹の双樹
②左歪み
③黄金の芯・黄金の垂れ
④黒煤
⑤樹の上のヴェール
と仮称します
これら①〜⑤の各要素を、これまでの考察と整合的に検証してみましょう
①赤幹と黄幹の双樹
これまでの考察から、黄幹はマリカの立てた黄金樹の幹、赤幹はラダゴンの立てた幹であると考えられます
本来黄金樹といえば、例えば狭間の(新)黄金樹を例に考えると、太く巨大な一本の樹が天に向かって大きく枝を広げているようなものを想像します
けれど、これは双樹
これはなぜでしょうか
例えば、現黄金樹は、まっすぐ太くて立派な幹が立って大きく枝葉を広げています
これは、エルデの獣が宿って生命力を注ぎ込んでいるから、というのもあるのですが、そもそもマリカとゴッドフレイの二人が相思相愛で息があっているからあのような好ましい樹が完成したと考えられます
一方で、マリカとラダゴンはというと、まずそもそもがお互いが半身で、同時に顕現できません
つまり、マリカとゴッドフレイは、ケーキ入刀のように、二人で共同して樹を立てられたのですが、
マリカとラダゴンはそれができないのです。だから、別々にお色直しして現れて、別々に入刀する、というおかしな状況になる
よって、おそらくまずマリカが一本黄金樹を立て、ついでラダゴンが隣に立てたんだと思います
まあ、だとしても、お互いの息が合っていれば、まっすぐな二本の樹が寄り添って立ったと思います
一方で、マリカとラダゴンはというと、身体こそ半身ですが、思想は似ても似つかず、マリカは真っ直ぐ優しい大母の律、ラダゴンはまた別の律を魂レベルで受け継いでしまっているのですね(詳しくは後述)
さらにラダゴンは壺から誕生してすぐのホムンクルスなので、信仰も知力もまだ乏しい。故に真っ直ぐな幹が立てられなかったのだと思います
<樹の姿勢と知力等>
後に見ますが、ラダゴンが魔術と祈祷をどちらも十分に
修めたのちに自ら立てたと解される小黄金樹があります
その姿は比較的真っ直ぐ立っていることから、知力等は
その者が立てる樹の姿勢に影響を与えると考えます
だから真っ直ぐ立たずに、このようにラダゴンの樹が捻れ、それにひっぱられて左に傾いてしまった、というちょっとお粗末な結果になってしまったのですね
ただ、一応それでも王配としてラダゴンはマリカを抱きしめているようです
いずれにしても、幹が二本なのは、マリカとラダゴンが同一人物であったため、二人同時に協力して立てるべき樹を、別々に立てるしかなかったから、というのがその理由だと考えられます
②左歪み
影樹を原初黄金樹と考える人もいますが、私は別だと思います
原初黄金樹は確かに本編で実物が登場していませんが、原初黄金律と共に、坩堝の思想や生と死の不可分という確たる律を備えているからです
「律とは呼べぬ暗い思い」で「ねじくれ」るというのは、壺に入れられ生き地獄を味わったマリカと禁忌肉の寄せ集めラダゴンの、生還した後の想いを反映していると見るべきです
神になりたてのマリカと、生まれたて王配になりたてのラダゴン
まだ二人とも未熟だから脆く、律も不完全だったと考えます
ただ、マリカの幹は細いながらも真っ直ぐ立とうとしているように見えます
冒頭も述べたように、赤幹が黄幹に絡んで引き倒さなければ黄幹は真っ直ぐ伸びていたでしょう形をしていることから、この左歪みはひとえに赤幹を建てたラダゴン側に問題があります
ただ、よく見るとラダゴンの幹は、いったん右に曲がってから捻れて左にカーブしています
こちらの絵の方がわかりやすいかと思います
あるいは
これらはいずれもラダゴンが残したものだと思われます(ラダゴンが残した拒絶の刺たちの考察参照)
これを見ると螺旋の形になろうとして、それが止まっているように見えます
なぜ螺旋の形になろうとするのか
それには幾つかの理由が考えられます
・影の地の土壌に何か問題があり、意識せずに樹を育てると螺旋を描いてしまう
・ラダゴンの魂に坩堝的な諸相が宿っており、それが影響している
・心理的・精神的な負の要因による捩れが樹に反映している
・先に少し触れたように知力や信仰が足りない
これらは排斥しあう要因ではないので、これらが複合してこのようなスパイラルを産んでいると思われます
③黄金の芯・黄金の垂れ
こちらの画像だとよくわかりますが、黄幹の方の芯は黄金の輝きが微かに残り、また傷つけた幹から垂れる樹液のように、その輝きが滴っています
この時代、まだファルムアズラにエルデの獣はいます。そのため、この黄金樹にはまだエルデンリングは宿っていません。この琥珀色の輝きは、マリカが神人になったとき、神の門で自身に宿った祝福を、樹に封じ込めているものだと思われます。
なので、樹木全体が輝くこともなく、また、祝福の光を降らせるほど強くもないのでしょう
(また、この頃の影樹の地下の水源はあまり黄金樹が育つに適した水質とはいえなかったと推察されます。詳しくは→こちらの3.)
ゆえに、あえて幹を切り裂き、その黄金の樹液を垂らして、雫を採取する必要がある
その雫の垂れる先には、このような器が構えています
この影樹の聖杯についても、特に説明がなく、DLCの謎の一つとされています
この場所の特徴は、3つです
1.ここにくるためには宿将ガイウスを倒す必要がある
2.この場所で、影樹の破片が5つ拾える
3.他に特に何もない
これ、一体何に使うものだと思いますか
聖杯といえば、本編にはこのようなアイテムがあります
このテキストを読む限り、マリカの黄金樹が栄えていた時代には、この聖杯にたっぷりの黄金樹の雫を満たして、布教に使っていたようです
この雫をマリカから直接賜った人物がいます
これは影の城中庭の小黄金樹の下に落ちているタリスマンです
マリカとゴッドフレイの婚礼時の儀式だと思われます
おそらくここに描かれている雫は、二人で建てた小さいながらも立派な小黄金樹から採取したものでしょう
これを受領することで、ゴッドフレイに祝福が与えられ、永遠の命を授かるのだと思われます
これと同様に、狭間の地に4つあるマリカ教会でも、おそらくマリカへの信仰を誓った者へこの聖杯で黄金樹の雫を与え、永遠の生命を授けるといった布教が行われていたのでしょう
もっとも、
雫の受領を受けた市民はこのような枷をつけなくてはならず、永遠の命の代償はなかなか重いようです。これはマリカの趣味というより、二本指の方針なのでしょう。マリカ自身も二本指との間で神人契約をするときは、両手を枷で自縛されていますから
このように、黄金樹の雫は、王国の民を隷従させるための布教活動に利用されました
マリカ時代の聖杯のデザインが、影樹の下の聖杯を模していることから、そのような雫による布教は、影の地の時代から行われていたことが伺えます
しかしおそらく、現黄金樹ほど雫は採取できなかったでしょう。絶対量の不足で
また、これはラダゴンの拒絶の刺を使って支えていると思われますが、聖別でありながらそのやっつけ仕事といいますか、雑な工作っぷりが見て取れます
「こんな歪んだみっともない樹だし、器もこれくらいでいいだろう」みたいな
実際この時代は、角人による土地神信仰が隆盛です。そこに割って入ろうとするマリカ・ラダゴンの黄金樹の布教(上記の自縛の枷付き)は、およそ好評とはいえなかったのではないでしょうか
そんな背景もあって、聖杯にもやる気が見られないのではないでしょうか
メスメルの友、宿将ガイウスがこの聖杯に至る道を守って久しいと思いますが、それでも溜まったのはやっと5個、マリカとラダゴンの建てた最初の黄金樹の貧欠っぷりが見て取れます
<アリタマヤのヨセフの聖杯>
聖書における聖杯の形について調べると、
それは、盃のようだったとも、皿のようだった
とも言われているようです
最後の晩餐でイエスから盃を賜ったアリタマヤ
のヨセフという弟子は、磔にされたイエスから
滴る血をその皿ですくったとされています
(旧約聖書)
この聖杯は、一説には万病を癒し不死を授ける
との言い伝えがあり、アーサー王の伝説におい
てはその聖杯を求めて円卓の騎士たちが各地で
冒険を繰り広げたりします
本作でもラダゴンの刺に支えられた聖杯はむし
ろ皿のようで、受け止めている雫は神マリカの
血の暗喩なのでしょうか
そんな亡骸を、影樹はイメージさせる気がします
④黒煤
黄金樹といいつつ真っ黒に焦げ、いまなお黒煤を降らせる影樹
影と呼ばれる1番の原因はこの黒さにあり、おそらくというか、間違いなく、メスメルによる炎の粛清のため焼け焦げたのでしょう
これを読む限り、確かに拒絶の刺は本来黒く、それをまとった影樹はまた生来的に黒いのは間違いありません
しかしポロポロと落ちている煤のようなものは拒絶の刺本来に生じるものではありませんので、やはり火に焼かれていると考えます
影というのはこの黒さのせいであり、また、粛清の聖戦という名の大虐殺を隠したいという思いから呼ばれる名なのだと思います
まさに、原黄金樹の栄光の背後に隠された影、ですね
⑤樹の上のヴェール
これは恐らく、マリカが影の地を、間の地から覆い隠すための祈祷なのでしょう
高い影樹のてっぺんから、蚊帳のように全土に張り巡らせて、すっぽりと影の地を覆っているようです
これはおそらく火の聖戦が行われる際に、それが狭間の地から観測され語り継がれないように覆い隠すためのものでしょう。故に、メスメルの粛清が行われるに先立ってマリカの祈祷により降ろされたものだと考えます
それにしても、マリカにはヴェールのイメージがありますね。女王の閨の帳、擬態のヴェール、黒き刃のフード、そしてこの天から覆うヴェール
ラダゴンもまた、拒絶の刺や秘匿の仮面で覆い隠すので、秘密主義は二人ともよく似ているようです
以上のように考えると、影樹の状態の順番としては、
①赤幹と黄幹の双樹
②左歪み
が先に来て、弱々しく黄幹が光っている以外は、普通の色の樹木だったのでしょう
そこから、
③黄金の芯・黄金の垂れ
聖杯の雫を採取するために黄幹が切り裂かれ、わずかずつ垂れる雫が、したに置かれた聖杯の皿に滴る。それを、ガイウスが守った
④黒煤
余り役に立たなかった黄金樹は、粛清の聖戦の中で焼け焦げ、いつまでも黒煤を降らせる影樹となり
⑤樹の上のヴェール
てっぺんに掛けられた天空のヴェールで、この土地ごと覆い隠された
こういう流れになると思います
ぱっと見、情報過多でさまざまな要素てんこ盛りのため、謎が多い影樹ですが、このように各要素を分解して時系に沿って並べると、なかなか布教が上手くいかない中、なんとか慣れない二人が頑張ろうとしていた姿が浮かび、解像度が上がりますよね
次に、影樹に関連して、かなり興味深いと思われる考察を投下します
メスメルの姿勢が歪曲している理由
それを恐らく解き明かしました
まずこちらを見てください
これは、エリル・イニムの封印の木です。
手前が封印の木、奥にはエリル・イニムを覆う拒絶の刺が見られます
<拒絶の刺>
拒絶の刺は影樹の化身が使う魔術でもあります
本編でも黄金樹を封印したりなど、様々な場面
で、密かにラダゴンが使っていました
興味深いのは、手前の封印の木の形です
影樹の赤幹と全く同じ形で、左にねじ曲がっている(正確には慣れないドライバーが左折するときのようにいったん右に膨らんでから左に大きく舵を切っている)
この頃のラダゴンが作る木は、こうやって左にねじ曲がるようです
そして気づきました
メスメルの姿勢の湾曲
彼も左に傾いています
これらを観察すると、メスメルの姿勢がこうなっているのは、きっとラダゴンのせいなのです
自説では、この頃のラダゴンは壺から出た罪人の寄せ集めのまま、知力も精神力も乏しくさまざまな昏い想いを抱えているので、携わるもの全てが歪んでしまい、直立しない
ならば、知恵を得た後のラダゴンが立てた黄金樹はどうでしょう
後に触れると前述しましたね
ラダゴンは後にレナラの元で魔術を、またマリカの王配として祈祷を学び直しています
そんなラダゴンならば、もしかしたら真っ直ぐな樹を立てられるのではないか
狭間の地の小黄金樹教会
ここに残るマリカの言霊は、マリカの声を借りたラダゴンの演説であることは、前に述べました
ゆえに、小黄金樹教会はラダゴンがマリカ教会に対抗して建てた謹製の教会である、というのが自説です
ならば、そこに立つ小黄金樹は、ラダゴンが魔術と祈祷を修めた後に立てたもののはずです
どうでしょう
真っ直ぐ立っているでしょうか
答えは
↓
↓
↓
正解は
「曲がりそうになりながら、真っ直ぐ伸びてる」
でした
昔のラダゴンだったら、赤幹のようにそこから曲がっていたはずです
それが、いったん曲がり掛けながらも、なんとか軌道修正して真っ直ぐにしてる
これがラダゴンの努力の成果なのです
ラダゴンは頑張って勉強して、ここまで真っ直ぐな黄金樹を立てられるようになりました
ラダゴン頑張ったよ
てか、こんなところまで作り込んでるんですね、フロムさん
現在の影樹
影樹の歪みとメスメルの禁忌
そのどちらもの責任を取らされてラダゴンは失脚
リエーニエ戦役までは存在しない者として扱われ
ラダゴンはマリカの中に封印されました
そんなラダゴン同様、影樹もまた捨てられ
マリカは新たな王配ゴッドフレイとアルター高原に現黄金樹を立てました
そんな捨てられたラダゴンと影樹の心情を表すようなテキストがあります
本編では、黄金樹を封印する障害として行く手を阻んだ拒絶の刺ですが、影樹の化身などの使う魔術としてDLCで登場しました
我らは見棄てられたのだ、と相当いじけていますね
「我ら」は、自分に自信がないばかりについつい主語が大きくなってしまうラダゴンがアジテーションでいつも使う口癖のような言葉なので、これもラダゴンの心情と影樹が重なっていると考えていいでしょう
ラダゴンは現黄金樹王権の華やかなりし頃に隠された影の英雄(秘密のマリカの半身)として、影樹と重なる存在でした
上のテキストにいう影は、黄金のマリカの影、ラダゴンの意味です
<影樹の化身が三体登場する意味>
「黄金樹の影でして、“影樹”とも呼ばれます」とは冒頭の
宮崎さんの言葉ですが、氏はここで単に黄金樹の影、と
仰っており、「どの」黄金樹の影かとは言っていません
そして影樹の化身の三体
1体目はあまり動かない
2体目はすごくよく動く
3体目は聖なる光の祈祷を使ってくる
これは
①原初黄金樹
②現黄金樹
③ミケラの聖樹
という三世代の黄金樹にそれぞれ対応しているの、お気づき
ですか
①は宵眼の女王がしろがね人であり、しろがねの宿痾で歩行
できないことに対応しています
②は逆に、マリカとラダゴンがすごく活発であることが反映
されている
③はミケラが来るべき次の時代に作るであろう、金無垢の
黄金樹をイメージしているのでしょう
自ら黄金樹に成れなかった影樹は、各世代の黄金樹を模倣
することで、少しでも黄金樹たらんと今ももがいている
そんな気持ちが化身となって影輪草に宿ったのだと思います
今回は、頑張ったのに認められなかった不憫な「影樹」を考察しました
次回は、「角人と祖霊」を考察します
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