英会話の習得に英文法学習は必要か?~後編~
みなさん、ごきげんよう。
今回は前回に続いて「英会話の習得に文法学習は必要か?」について考えてみます。
前回の記事では英文法不要論の主張について点検し、その主張が説得力に欠けると結論付けました。その上で「英文法は不必要ではないから必要」というのでは説明にならないとも書きました。
そこで今回は英会話の習得に文法学習が必要な積極的な理由について考えます。
演繹的学習法と帰納的学習法
学習には演繹(えんえき)的方法と帰納的方法があります。
演繹的方法とは「1つのルールを学び、それを個々の事例に当てはめる」やり方です。
帰納的方法とは「個々の事例から1つのルールを導き出す」やり方です。
それぞれのアプローチを現在進行形という文法項目を例にして考えてみましょう。
S + be + Ving「SはVしている」(現在の進行中の動作)
↓
I am studying English.「私は英語を勉強している」
He is cooking dinner.「彼は夕食を作っている」
They are discussing the project.「彼らはそのプロジェクトについて議論している」
上記のようにまずルールを学び、そのルールに従って個々の場面を表す英文を作っていくのが演繹的学習法によるアプローチです。一方で、
I am studying English.「私は英語を勉強している」
He is cooking dinner.「彼は夕食を作っている」
They are discussing the project.「彼らはそのプロジェクトについて議論している」
↓
S + be + Ving「SはVしている」(現在の進行中の動作)
このように1つ1つの具体例をまず学び、そこから1つのルールを導き出すのが帰納的学習法によるアプローチです。
演繹と帰納のどちらを選択すべきか?
演繹的学習法と帰納的学習法にはそれぞれのメリットがありますが、学習効率という観点からすれば演繹的学習法が優れていると言えるでしょう。
帰納的学習法的なアプローチをとると「習うより慣れろ」的な傾向に陥りがちです。
たしかに「慣れる」ことは英語の習得において非常に重要な要素です。しかし理論的な学習をすることなく、英語を充分に使いこなせるレベルまで「慣れる」ためには英語に触れる膨大な時間が必要です。
しかし英語を学んでいる人の多くが、英語の学習にのみ没入できる環境にはいないはずですから、「慣れる」ことで英語を習得するだけの時間を確保することができないと思います。
そこで「一を知って十に当てはめる」という演繹的学習法と採用する方が、限られた時間の中で英語を効率的に習得するためにはふさわしいと言えるでしょう。
演繹的学習にはルール=文法の習得が必須
演繹的学習法を採用するとなるとルールの習得が重要になります。そして、このルールに当たるものが英文法なのです。
英文法の学習が必要なのは英文を構成するための基本的なルールを学び、学習を効率化するためです。
私たちが母国語である日本語を習得する過程は、ある意味で帰納的学習法と言えるでしょう。大量の日本語のシャワーを浴びることで、知らず知らずのうちに「こういう時にはこういう表現を使う」というルールを習得しているのです。しかも母国語においては習得したルールを「ルール」であると意識することすらありません。
このようなやり方で「自然と」ルールを習得するには膨大な時間がかかります。私たちが、たとえばビジネスミーティングやプレゼンテーションなどの場で発信するに足る、ある程度高度な日本語を駆使できるようになるのは何歳くらいでしょうか?10歳やそこらではとても無理なことです。
短期間で効率的にある程度のレベルまで英語を習得しようとするとルールを「意識的」に学習する必要があります。その意識的なルールの習得こそ英文法の学習なのです。英会話の習得のために文法学習が必要なのは短期間で効率的に英語を習得するためなのです。
学習の目的に応じて臨機応変に
「英語習得の効率を考えると演繹的学習法を選択すべき」
→「演繹的学習法を選択する以上は英文を作るルールの習得が必要」
→「英文のルールに当たるのが英文法」
→「英語の効率的習得には英文法学習が必要」
ここまではこのような論理で英文法学習が必要だという主張を進めてきました。
ここで立ち止まって考えてみたいのは「学習には目的がある」ということです。英語を何のために使いたいかという目的によっては英文法学習をしなくてもよい場合もあるでしょう。
たとえば海外旅行した時に、入国審査やホテル、レストランなどで最低限の会話だけできればよい、という人は無理に文法を勉強する必要はありません。よく使われる表現やフレーズを何回も練習し、口からすらすらと出てくるようにしておけば事足りるでしょう。
しかし多くの学習者がゴールとするところはもっと先だと思います。
「テレフォンカンファレンスで相手の意見を聞き取り自分の意見も主張する」とか「ネイティヴとの日常会話を不自由なく楽しみたい」とか、そのようなレベルにできる限り早く到達するためには、やはり文法学習は必要だと言えます。
大切なことは学習の目的、到達したいレベル、到達までの時間的制約など学習環境や条件に応じて学習に対するアプローチを臨機応変に変えていくということです。
いかがでしょうか?英語の習得において英文法学習が必要な理由にご納得いただけたでしょうか?
もちろん英文法の学習はただ文法書を読めばよい、問題を解けばよいというものではありません。
英語の実力を効率よく高めるための英文法学習法については、別の記事でご説明したいと思いますので、そちらも参照してみてください。
この記事のまとめ
1.学習には演繹的学習法と帰納的学習があります。
2.演繹的学習法はルールを学び、それを事例に当てはめる方法です。
3.英語を短時間で効率的に習得するには演繹的学習法を選択すべきです。
4.演繹的学習法で学ぶ英文構成のルールが英文法です。
5.よって短期間で効率的に英語・英会話を習得するには英文法学習が必要です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
それではまた。ごきげんよう。
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