拙作「花は、咲う。」について
私の主な生息地であるカクヨムで、私にしては人気の高い「花は、咲う。」という短編小説について書いていきたいと思います。
1万文字弱、売春婦の女の子が主役のフィクションです(エピソードを追加した改訂版は約1.2万文字になっています)。舞台は、1988~1989年の日本に本当にあった離島。昭和から平成に移り変わった頃です。この頃はバブル景気真っ只中で、ピンク産業もそれなりに繁盛していたようですね。その島では、コンパニオンとして宴会に呼ばれる女の子たちが売春をさせられていました。自ら希望して来た子もいたようですが、借金を作ってしまい、身売りという形で来る子が多かったようです。島には元締めもいただろうし、今でいう反社の方たちがうろうろしていたと思います。
今では売春なんてほとんど行われなくなり、島をリゾート地として隆盛させるために、自治体が力を入れて開発しているようです。そりゃそうですよね。当時は売春島と呼ばれて経済的にも潤っていたようですが、風営法もどんどん厳しくなって、反社勢力を追い出そうという動きが高まっていますから。あと十年もしたら、存在していたことさえ語られなくなってしまうかもしれません。
リゾート地としての開発が進むのはいいことだと、私は思います。でも過去にあったことをなかったことにしてほしくない。私はその島に行ったことはないし、知り合いが島で売春婦をしていたなんてこともありません。縁は全くなくて、ただテレビで見て知っただけです。それでも、忘れられるのは嫌。だから小説にしたんです。
私はネットで島についていろいろ調べました。そして、女の子たちは狭い島で借金のカタに売春をさせられるという過酷な環境でも、何か楽しみを見つけたり友達を作ったりしていたんじゃないかな、なんて想像しました。本当は体を売るなんて嫌だけど仕方ない、置屋では一応商品として大事にはしてくれる、同じくらいの年齢の子も多い、それなら仲間と楽しく過ごすほうがいいよね、と。(自分から希望して島に来た子はその限りではないようですが)
「楽しく」と書くと何だか語弊が生じそうですが、本作を読んでいただくとわかります。彼女たちの「楽しみ」なんて、すごく些細なことだったんじゃないかなって思うんです。精一杯生きるために「楽しみ」は必要だった。置屋からも黙認されていた。端から見たら些細なことでも、彼女たちにとっては大事なことだったんです。
というのをどうして突然書こうと思ったかというと、ぬりや是々さんが本作のファンアートを描いてくださったので、いい機会かなと思って。
「花」を描いてくださったことを知ったときにはすごくうれしくて、感動して泣きそうでした。本当に本当にありがとうございます。ぬりやさんは他にも魅力的なイラストや文章を作成されていますので、ぜひご覧いただきたいです。
余談ですが、本作は少々文字数を削ったうえで応募した第231回オレンジ文庫短編小説新人賞の「もう一歩」として選考結果のページに載りました。
残念ながら賞には届きませんでしたが、初めて応募した公募だったので、とてもうれしかったです。また、本作を修正・加筆したものでR-18文学賞にも応募しています。一次選考の結果は今月下旬にわかります。ああ、緊張する……。
そういうわけでとても思い入れのある作品なのです。よろしければどうぞ読んでみてください。
(激重シリアスなので苦手な方はご注意ください)
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。