ある日の19時

〜〜

19時あたりになると交代でお風呂に入る。小夜ちゃんは年頃なのか、一緒に入りたがらない。だから、この時間はスマホを構うか、テレビを見たりしている。案外学校の友達と通話したりとか、そんなことは無く、かといって友達がいないわけでもない。私が「家の手伝いが…」って言ってさっさと帰ってしまうのが原因だろう。
本当にこれで高校生を満喫できているのか、そんな事をフラフラ考えながらリビングでゴロゴロ動画を見ていると、突然風呂場から物音がした。

1,2秒経つと、風呂場のドアがガタガタッと開いた。

「り…六花ぁ………来てぇ……」

か弱い声。どうしたの〜?と言いながら脱衣所のドアを開けると、ヘロヘロになった小夜ちゃんがいた。

「さ…さよの…さよの足にご…ゴキブリが」
「え?ゴキブリ?」
「いま…お風呂の中に…」

風呂場を見るとたしかに、ゴキブリが壁に貼り付いている。でも風呂場なのでここは人間の方が有利だ。
すぐにシャワーで熱々のお湯をかけ、排水口の網に落としたら、ゴキブリの動きが止まるまでお湯をかけ続ける。そうしたらゴミ箱にポイ。案外冷静に対処できて自分でもびっくりしてる。そしてふと、こんな事を思った。

「ゴキブリ苦手?」
「あ、当たり前でしょ…六花は苦手じゃ無いの?」
「いや…苦手っちゃあ苦手だけど…小夜ちゃん猫なのにゴキブリ苦手なんだって思って。」
「…」

どうやら久々にぐうの音もでないらしい。オーバーキルだったようだ。

「うるさい…」

あ、ぐうの音でた。
そう言い残したので、私は「あとはごゆっくり〜」と言いながら脱衣所を閉めようとした。

脱衣所の扉が閉まらない。
かすれた声が聞こえた。

「また出てきたら心配だから、一緒に入って…」

あとは言うまでもないだろう。

〜〜

前々からNo.7が「小夜ちゃん…ちゃんとお風呂で髪とか体洗えてるのか心配…」と呟いていたのを思い出して、今日は念入りに洗った。「もういいって…」と文句を垂れるのを流し聞きして、10分くらいかけてきれいにしてあげた。

一緒に湯舟に入ると、珍しく小夜ちゃんから話しかけてきた。

「学校とか、楽しい?」
「楽しいよ〜。最近は文化祭でなにやるか決めてたんだよ〜。」
「文化祭ってなに?」
「学校でやるーお祭りみたいなものだよ。」
「そうなんだ。」
「小夜ちゃんも来てよ!」
「学校に入れるの?」
「文化祭の期間中だけね!」
「考えとく…」

そう言い残してまた静寂が生まれる。

体感2分くらいだろうか…小夜ちゃんがモゴモゴ何か言いたげだ。そういうときは決まって小夜ちゃんが掴んでる私の腕をにぎにぎし始める。

「な〜に、小夜ちゃんどーしたの?」
「あぅ…いや…」

なんだが今日は私のほうが主導権握れそうだ。
そう思って小夜ちゃんのほっぺをもちもち触っていじめてやった。

「ほ〜ら。言わないとわかんないなー。」
「早く言わないと〜、他の男に取られちゃうぞ?」

変な冗談。こんな事、クラスメイトのつむぎちゃんが言いそうだな〜。と、小夜ちゃんの方を見ると、とんでもなくほっぺが赤くなってる。え?まさか…え?

「じょ、じょーだんだって!ね!いないから!私彼氏できたこと1回も無いから!!ね!」

「うん…」

あまりにも変な会話すぎる…
時々見せる小夜ちゃんのこの姿。本当なのか嘘なのか。分からない…
イマドキの女の子(?)は難しーねぇ。
ってぇ!それは私もか!

「ただいまーー!あれ?誰もいない…」

そんな事を考えていたらNo.7が帰ってきた。

「おかえりー!」「おかえり…」


そんな事も、日常の一コマとして片が付く。


いいなと思ったら応援しよう!