極寒の長野に行った話。~其三~
極寒の長野最終日。
その日はいよいよ車を譲ってもらうために、まっちゃんと一緒に彼が会社に出向き、社長と会うことになっていた。
朝起きてキッチンに行ったら、すでにまっちゃんとコウちゃんは起きていて、朝ごはんを食べていた。ちゃんと煮干しで出汁をとった味噌汁と、土鍋で炊いたごはんだった。薪ストーブがやっぱり暖かかったけど、器に盛られた朝食の湯気がやたら真っ白に立ちのぼっていて気温の低さがわかり、その光景がとても情緒的だったのを覚えてる。
彼は前日のお酒が残っていたのか朝ごはんは遠慮して、外でタバコを吸っていた。
まっちゃんとコウちゃんとはその朝、またね!とお礼をいって、私はしばらくしんちゃんとまっちゃん宅でお留守番をしていた。しんちゃんの実家は静岡で、この後帰省すると言っていた。
彼が譲ってもらった車にのって戻ってきたのは10時くらいだった…。
社長がとてもいい人で、自分の相棒になったお古の車がとても気に入ったらしくご機嫌で戻ってきた。
前日にみんなが話していた「奏の森」。
里山を自分たちで切り開いて整備して、カフェや保育、イベントができる空間を本当にDIYでやってる。
鍵もかけずにまっちゃんの家を出て、しんちゃんの案内で奏の森の見学に行った。この日は前日と違って快晴で、山道を上がって大きな通りに出た瞬間、目の前に大きな山々の絶景が広がってとても感動したのだった。
奏の森は南アルプスが目の前に広がる場所にある。
そこに建てられた小さな小屋や、イベントスペースも全て自分たちで作ったそう。彼はその一つ一つを見て興奮していたし、楽しそうだった。
途中でまっちゃんとコウちゃんが仕事をこっそり抜け出してきてくれていろいろ話を聞かけてくれた。
私は正直いうとよくわからなかった。ただ、なんというか羨ましかった。大自然の中で、ゆっくりゆっくり、できる事とやりたい事、それが出来た先に生まれるたくさんの繋がりが何よりも大切でそれが喜びで…大変な事もうまくいかない事も自分たちで考えてそれすらも楽しんでいる。みんな笑顔に溢れていた。
奏の森を出ていよいよ相棒に乗って帰るときに、こうちゃんがミックスナッツの大きな缶を納車祝いにくれたんだけど、これがのちに彼の大好物になって、ストックがなくなると買い出し先で毎度ミックスナッツを探している。
この二日間で出会った人たちと最高の景色と空気、彼のいつになく楽しそうな姿はとてもいい思い出。まっちゃんの家は屋内でも極寒だったことや、初めて寝袋で寝たことも、コウちゃんに彼とはまだ遠距離だと話した時、「早く一緒に住んだ方がいい。彼は君がいないとダメみたいだよ。」と言われたことも、長野から名古屋までの道のりで何時間も彼といろんな話をして、いろんな景色を見て共有できたことも、全部新鮮だった。私一人では体験できない貴重な二日間だった。