【感想】『Steel Ball Run』(ジョジョ7部)を読んで


一番おもしれぇと思ってる

 ジョジョラーのみんな~!!こんにちは~!!突然だけど、みんなは第何部が一番面白いと思ってるかな~??お兄さんは~、7部ッ!!(ここで戦争が勃発する)。それはそうと、前に目に入った人気ランキングだと確か4部(…だっけ?)がナンバーワンだった気がします。やっぱ読者が日本人ということもあってか日本の話が好きな人が多いんですかね~。読者もそうだし荒木飛呂彦自身も4部が好きらしいしね。杜王町の話二回書いてるしね!人気もうなずけるというモノ。次に人気なのは3部だったっけな。今ではすっかりお馴染みの『スタンド』が出てきた部ですね。3部は僕も好きです!前作主人公のジョセフががっつり登場しつつ、ジョースター家とディオとの数奇な運命に終止符が打たれる、最高だぜ…!でもでも!?やっぱり!?一番面白いのは『Steel Ball Run』なんじゃあないのかッ!?理由は三つある。
 一つ目、圧倒的スケール感。これでしょ。一巻を手に取った時にすぐ入ってくる、アメリカ大陸を馬で横断するレースという情報。もうこれを見た段階で「あっおもしろそう!」って思いますよね~。それ正解です。実際面白い。かなりの大風呂敷でありながらチェックポイントや移り変わっていく地形や気候なんかがしっかりと描写されていてかなり現実感がある。いや、『スゴ味』があるッ!(言いたいだけ)スケールの大きいものを淡白に描いてしまうといまいち大きさが分からないけど、大きいものを緻密に描き上げることによってその大きさが十二分に味わえるということなんですねぇ。事実、7部には他部に比べて地図が多く出てきます。アメリカ大陸全体、ジョニィたちが今いる場所、次のチェックポイントの場所、チェックポイント直前の地形などがしっかりと描かれているからこその圧倒的スケール感というわけです。
 二つ目、キャラクターの魅力。もちろん他の部にも魅力的なキャラクターは数多く出てくるんですが7部にも魅力的なキャラクターはもりもりいます。特にブラックモアとリンゴォが好きなんですがまあそれは追々…。これはカバーの著者近影みたいな場所に荒木飛呂彦がチラッと書いてたことなんですが、作中のキャラクターたちはある場所に戻りたがっているらしいです。ジョニィはマイナスからゼロへ、ジャイロは恩赦を勝ち取って祖国へ、ホットパンツは罪のない自分へ…?ディオは…(??)このわずかに後ろ向きな精神性ってそれ以前のジョジョにはあまりなかったですよね。だからこそ7部のキャラクターはどこか親しみやすく感情移入しやすいのかも、なんて考えたり。
 三つ目、馬。馬いいですよね。ここまで最初から最後まで馬に乗ってる話なかなかないぞ!?サンドマンは走ってるけど。僕は馬に乗ったことないんですが一体どんな感じなんでしょうね。作中にはラインどりや地形による馬の疲労など様々な馬描写が出てきてめちゃくちゃ面白いです。あれ全部実在するんでしょうか?水中を馬で行くと馬に多大な疲労がかかる話とか結構印象に残ってますけども。ふれあい牧場とか行って乗馬体験してみたいです。もちろん鉄球を持って!

いろんな意味で戻ってきた

6部ストーンオーシャンの最後覚えてますか?プッチ神父が世界を一巡させてエンポリオです。6部までのジョジョは一部のジョナサン・ジョースターから続く血筋の物語でありメインタイトルは『ジョジョの奇妙な冒険』です。7部から先は別の世界の話になっているのです。そういえば一巡した世界では人々が未来を知り覚悟を持って生きることができるみたいな話だった気がするんですけどそれどうなったんでしたっけ?6部の最後をよく覚えていない…。それはともかく!世界が一巡したことによりジョナサン・ジョースターの時代に戻ってきたわけですな。大統領の乗る列車に乗り込む前の秘密を言いあう場面で言ってましたがジョニーの本名はジョナサンです。と言いつつその相棒はユリウス・カエサル、つまりジュリアス・シーザー・ツェペリなので不思議な感じがしますがそれはまあよいでしょう。そういえば他にもいろんな過去作のドッペルゲンガーみたいな人出てきましたね。アヴドゥルっぽい人とかシュトロハイムっぽい人とか。でも本質的な戻ってきた感ってそこじゃないですよね。今作の一大テーマとなっている鉄球の技術、これは1部2部で言うところの波紋に相当するものです。精神力がもたらす不思議な力ではなくあくまでワザ。その使い手は主にジャイロとウェカピポですが、実際のところジョニーも鉄球こそ投げないもののこの黄金の回転の技術を使って戦っていましたね。3部から6部までのジョジョはみな近距離パワー型のスタンドを持っていてそれを敵に叩き込んで決着というのが多かったですが7部ではオラオラを叩き込む場面はありません(実はありますがメインではない)。そういう意味で『戻ってきた』と感じるわけです。これだけ言うとなんだか懐古厨じみていますが僕が評価しているのは『戻ってきた』感と同時に新しさも存在しているところです。特にヴァレンタイン大統領はこれまでのボスキャラと比較すると少し違って見えますよね。これまでのボスキャラは言ってしまえばみな『悪』でしたがヴァレンタイン大統領はそうではない。じゃあ『正義』かと言われるとそうでもないです。これまで『正義』と『悪』との戦いだったものが『人間』と『人間』との戦いになっている。そういう『古き良き』『真新しさ』が7部の魅力なのかもしれません。

好きなキャラクターについて

 リンゴォとブラックモアがお気に入りです。まずリンゴォ。こいつは大統領からの刺客としてコース上の果樹園に送られてきたスタンド使いです。その能力は時間をきっかり6秒だけ巻き戻すというもの。この時点でジョジョラーの皆さんは「オッ!?」と思ったことでしょう。そう、こいつ時間操る系のスタンドじゃん、ってね。これまで時間を操作するスタンドはDIOに始まりそれぞれの部のボスキャラにだけ許されていましたが、なんと7部では序盤の敵が使ってきます。こいつがまあ強い。ジャイロを一目見て「お前は対応者に過ぎない」と戦いにおいての精神的な遅れを看破すると、ホットパンツを含めた三人の奇襲をしのいでジョニィとホットパンツを瞬殺します。一人残されるジャイロ、と「あれ?主人公死んだ…?」と困惑する読者。まあなんだかんだでジャイロが勝つんですが、戦いの描写がかっこいい。時間を6秒戻すときに入る時計の描写が最高にクールですよね。あと生い立ちもいい。もともと病弱だったってのも何か親近感がわいてよいですね。僕も人を殺そうと思います(冗談です)。それそうと一番大切なのはリンゴォからジャイロに受け継がれた『男の世界』についてでしょう。リンゴォが最期ジャイロに告げた「『男の価値』が必要」「レースを進んでそれを確認しろ」という言葉と直前のジャイロの父親(幻覚)が言った「お前には勝利など必要のないことだッ!」というのは真逆の言葉です。そもそも大陸横断に限らずレースというものは他者を蹴落として勝利を勝ち取るというものである以上、勝利を求めない対応者には勝つことができないものでしょう。たとえ乗馬の技術があっても鉄球の技術があっても。このリンゴォの言葉がジャイロに与えた影響は大きく直後の嵐の夜のシーンでディエゴを打ち負かすに至ります。これはでかい。まあ最後ジャイロは死にますが。
 次にブラックモア。リンゴォとは対照的にこいつは利害の一致というよりも大統領に忠誠を誓う部下で雨粒を空中に固定できるスタンド使い。口癖は「スイませェん」。雨粒を空中に固定して歩いたりなんだりできるんですが、能力だけみるとこいつ弱すぎないか?そもそも雨の日以外なんも能力ないのが弱すぎ!とあとあとになると思ってしまします。しかしこいつなかなかの強キャラです。結構短時間でルーシーを追い詰めたり雨粒で傷口をふさいで無敵状態になったりとわりとやりたい放題。ブチャラティの時にも思いましたがこんなよわよわ能力でも魅力的なキャラとしてしっかり描き上げられるのが荒木飛呂彦のすごいところですよね。

遺体の行方は?

これ気になっている人多いでしょう。明確に描写されていないので僕にはよくわかりませんでした。でも一応の推測はあります。まず事実確認から。Dioは遺体を所有していたが教会地下に格納する前に死んだ。スティール氏が教会に着いたとき既に教会の格納機は作動済みだった。ジョニィは何者かの遺体を船で持ち出した。考えるべきはこの三つでしょう。遺体の最終的な持ち主として考えられるのは三人、Dio、ルーシー、ジョニィです。まずDioの可能性。教会地下でスティール氏とルーシーが合流したときのスティール氏のセリフをそのまま読み取ると「遺体はDioの所有だけど死んだから最終的に所有者無しか~」なんて思っちゃいそうですがこの可能性は低そうです。Dioは遺体を格納する前に死んでますから。少なくとも格納したのはルーシーなのです。次に所有者がルーシーの可能性。これは結構高い。というか最有力じゃあないでしょうか。Dioを始末した後遺体の所有をルーシーが引継ぎそのまま格納したパターンですね。スティール氏が遺体の所有者としての資格について言及したときのルーシーの意味深な視線も自身の資格について考えているように見えます。ただ一点気になるのはその「資格」をルーシーが持っているのかということ。遺体を所有するにはスタンド使いである必要があるんじゃあないでしょうか。ブラックモアとの死闘のあとルーシーはジャイロから眼球部を渡されますが体内に保有することはできず持ち歩いていました。これはすなわち所有する資格がないということなのでは…?うーんムズカシイ。仮にそうだったとして紆余曲折あり所有する資格を持つようになったのかもしれないし…。最後の可能性、ジョニィが遺体を持っている可能性。最後にジョニィが船に乗るシーンで言った、積み荷は「『遺体』だ」というセリフ。これが聖なる遺体の可能性です。これはそこそこ。ルーシーが教会地下で遺体を手に入れてジョニィに渡したという流れですが、場面転換から遺体の最後の持ち主がこういう動きをしたと読み取ることもできますし何より最後ジョニィは自分の足で歩いて船に乗り込んでいます。これが遺体を手にしていることの何よりの証拠に見える。箱の中にはジャイロと聖なる遺体の二人分入っていてもおかしくはないでしょう。ただルーシーの動機が謎です。最後の場面でジョニィに遺体を渡すこととブラックモアから逃げ伸びてジョニィに遺体を渡すことは完全に別のことですからなにか特別な動機がないといけませんが…。
 いかがでしたか?遺体の行方について考えてみましたが分かりませんでした。まあでもルーシーと考えるのが自然かな。というかそれ以上に8部ジョジョリオンでなんか遺体の話が出てたような気もするからそれをまず確認するべきかも。このあと読みます。

やっぱり人間賛歌なんですわ

 この世に能力マンガ数あれどジョジョのようなマンガは異質だなと感じます。どうしても他のマンガだと能力の方に主軸を置いてしまいがちで、協力な能力に主軸を置いた能力賛歌になってしまいがちです。その中でここまで一貫して人間賛歌に重きを置いているマンガも珍しいでしょう。唯一無二です。こういうマンガだからこそ複雑で深い人間性を持つキャラクターをこれだけ描けるんでしょうね。連載中のジョジョランズも面白くなってきたし荒木飛呂彦のこれからがさらに楽しみです。

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