最初で最後の乾杯
うちのじいちゃんは、お酒が大好き。
よく飲みすぎでばあちゃんに怒られてるところをみてた。
夕方早い時間から飲みだし、ベロベロになるとちょっかいをかけてくる。近くに来ると酒くさいし、しつこいしで一時期じいちゃんが嫌いになっていた次期もあった。絶対じいちゃんみたいにお酒なんか飲まない。とおもっていた。
何年かたって、いつからか私もお酒を飲むようになっていた。普通の人より少し飲めるくらい。お酒の美味しさと、酔う楽しさを知った。そして…ちょっとですよ?ちょっとだとおもう。ちょっとだけ、お酒のクセが悪かった。人にちょっかいをだしにいき、でっかい声で話す。同じ話を何回もする。後輩に笑いながら往復ビンタをしたことも、あったそう。あまり記憶がないのですが…。
結局じいちゃんの孫なんだなと思った。
そして久々にじいちゃんの所に行くとわかってから、やると決めてたことがあった。それは、じいちゃんとお酒を飲むこと。なにかあったわけではないが、ふと飲んでみたくなったから。
じいちゃんの家につき、「お酒飲もう。」と言うと少しビックリした顔をしたけど、「のむか。」と笑顔で答えてくれた。
はじめて乾杯をした。じいちゃんはビックマン、私はビール。いつも飲んでるお酒なのになんだか特別な感じがした。母親が、私がお酒が好きなこと、酒グセが悪いこと、少しお酒に強いことを伝えると、じいちゃんは嬉しそうに、「そうか。じいちゃんの孫だもんな。そうかそうか。」と言いお酒を飲んで「じいちゃん。そろそろ寝るわ」と部屋へいってしまった。
自分もお酒を飲んでから、じいちゃんがなお大好きになった。
久々に会いに行っても日帰りだったので、それ以降じいちゃんとお酒を飲むことはなかった。
その数年後、じいちゃんはいなくなってしまった。
葬式に奮発してビックマンのゴールドとアセロラジュースを持っていった。じいちゃんの変わりに飲んであげるため。親戚のおじさんたちとアセロラジュースで割ったビックマンを飲んだ。美味しくなくて飲めなかった。ビックマンのあまりをじいちゃんの所に起き、私はビールで乾杯した。
また会ったら乾杯しようねって。