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新規個別指導のリアル —— 2025年最新レポート

開業したら避けられない——まさに "Death and Taxes"

「新規個別指導」は、クリニック・病院がルールを守って運営しているかをチェックする厚生局の指導です。

ネットを調べると、
「弁護士同席は必須」
「追い込まれた医師も…」
といった不安を煽る情報ばかり。
相談できる人もおらず、心細さを感じる開業医や管理医師の先生も多いのではないでしょうか?

本記事では、2025年1月時点の内科・小児科クリニックの実体験をもとに、新規個別指導の流れや準備すべきことをまとめました。
自院だけでなく、複数のクリニックにヒアリングした内容をまとめています。


⚠️ 重要なポイント
この記事では、特に重要な部分に絞って解説しています。
・東京と神奈川のクリニックのみの情報です。
エリアや診療科、クリニックの規模によって指導の内容は異なるため、あくまで全体像をつかむための参考としてご覧ください。


📌 突然届く「新規個別指導」の通知

開業して1年ほどが経過したある日、厚生局から届く通知(下記参照)。

新規個別指導の医療機関通知(ひな形)(令和4年1月現在)

一般的には開業1年以内に指導が入りますが、クリニックの多い地域や、コロナ禍に開業した場合は時期が遅れることもあります。

日々多くの郵送物が届く中、重要な通知を見落としていないかヒヤヒヤしますよね。

📍 通知内容の主なポイント

  • 指導日時・場所:1ヶ月後に指定される(診療日でも関係なし)

  • 出席者

    • 東京:開設者および管理者が原則(最大3名)。管理者(院長)必須

    • 神奈川:開設者・管理者など(2名まで)。管理者(院長)必須

  • 指導日の1週間前に、審査対象となる患者10名のリストが郵送される


📅 指導1ヶ月前 〜準備編①〜

📌 持参書類の準備がメイン

新規個別指導では、大量の書類を印刷して持参する必要があります。
書類の準備には時間がかかるため、余裕をもって進めることが重要です。

📋 主な持参書類(東京都の場合)

  • 対象患者10名分のカルテ一式(初診からすべて)
    診療情報提供書、検査結果、同意書、栄養指導記録、画像診断記録など

  • 日計表(指定月分)

  • 領収書および明細書(見本)

  • 「保険医療機関の概要」

  • 保険医の登録票(勤務中の医師すべて)

  • 個別指導出席者名簿

  • 当日持参する番号札

新規個別指導に際して準備する書類リスト(2024年時点、東京)

💡 エリアによって異なる書類もあり!
例えば神奈川では、以下の書類も求められることがあります。

📌 神奈川で追加提出が求められる書類

  • 指導日2週間前までに「保険医療機関の概要」を事前提出

  • 医療材料・薬剤の購入伝票(直近1年分)

  • 審査支払機関からの返戻・増減点通知(直近1年分)

  • 院内・院外掲示物(写真可)

  • 保険医の出勤簿(直近1年分、非常勤も含む)

  • 受付から会計までの業務フロー

  • レセプト作成から請求までの業務フロー

  • 自費診療のメニュー表

  • 業務委託先一覧表(検査会社など)

📌 「保険医療機関の概要」は重要!

「保険医療機関の概要」(下記参照)は、新規個別指導の中でも特に重要な書類の一つです。
記載ミスがあると指摘される可能性が高いため、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

保険医療機関の概要(2024年時点、東京)

✅ 医療法人の場合の基本ルール

開設者=理事長、管理者=管理医師(院長)

医療法人の場合、開設者と管理者を混同しやすいですが、厚生局に提出している情報とズレがないように記載しましょう。


✅ 記載内容のチェックポイント

標榜診療科・診療時間など
厚生局に提出している情報と齟齬がないように記載する。
保健所に提出した情報と一致しているか要確認。

記載例に迷ったら?
実態と照合しながら、記載例の通りに記入すれば問題ありません。


✅ 自家診療分(家族・従業員の診療)

「一部負担金を徴収していない」はNG。
スタッフや家族の診療についても、適切な負担金徴収が必要です。


✅ レセプト最終点検者の選択

「医師」を選ぶことが必須。
医師が責任を持って確認することを明確にするためです。


✅ 電子カルテ関連の記載

電子カルテの運用管理規定
電子カルテメーカーに問い合わせれば、必要なデータをもらえます。

電子カルテのパスワード設定
ガイドラインに従い、パスワードが13文字未満の場合は有効期限を「60日間(2ヶ月)」とする必要があります。

診療録のデータ保存方法
クラウド型電子カルテを使用している場合、「バックアップ(システムベンダー)」と記載するのが一般的です。


✅ 施設基準の届出

厚生局に提出している内容を、すべて正確に記載すること。
提出済みの施設基準とズレがないように要チェック。


✅ 保険医の勤務状況の記載

勤務している医師を非常勤も含めて全員記載する。
医師を多く雇っている場合、入退職の情報を厚生局に届け出る必要があります。
ここで記載する内容は厚生局に提出した情報と一致している必要があります。

「届け出の必要があることを知らなかった…」と気づくケースも。
不明な場合は、通知書に記載されている「厚生局の照会等連絡先」に問い合わせると、丁寧に教えてもらえます。


これらのポイントを押さえて、指摘を受けないように万全の準備をしておきましょう。

📅 指導1週間前 〜準備編②〜

1週間前になると、指導対象の10名のリストが届きます。
このタイミングで、いよいよカルテの細部までチェックする作業に入ります。

カルテ記載の確認
病名の適正チェック
算定の適正チェック
診療情報提供書・検査結果・画像診断記録・処方箋などの確認

💡 ポイント
📌 病名・算定はいじらない!
提出済みのレセプト情報をもとに審査員が指導を行うため、後から修正すると整合性が取れなくなります。

📌 カルテ記載の最重要ポイント

  • SOAPをしっかり書く

  • 特定疾患療養管理料や検査の判断料など、ドクターフィーに関わる算定をした場合は記載が必要

  • 生活習慣病患者には具体的な指導内容を記載(長文でなくてもOK)

指導直前に気づいても対応が難しいことが多いですが、もしカルテ準備についてご質問がある場合は、「医師本人に限り」 私のX(旧Twitter)アカウント へDMをいただければ回答いたします。
お問い合わせの際は、「noteを見た」と記載していただけるとスムーズです。

📅 指導前日まで 〜準備編③〜

指導されやすいポイントを事前に押さえておきましょう。

📌 病名についての指導ポイント

  • 症状名を病名として記載しない(×腹痛症 → ○急性腸炎)

  • 「急性・慢性」「左右」を適切に記載する("右"肩関節周囲炎、"慢性"蕁麻疹)

  • レセプト病名ではなく、実態に即した病名を記載

📌 検査項目についての指導ポイント

  • スクリーニング目的で不必要な検査を詰め込まない

  • BNP:心不全を疑う根拠がカルテ記載にあるか?

  • HbA1c:糖尿病を疑う問診や検査所見があるか?

  • Fe, TIBC, フェリチン:鉄欠乏性貧血を疑う根拠は何か?スクリーニング的な検査をせず、まずはHb, MCVなどをチェックして、それでも疑うなら段階的に検査するように。

📌 カルテ記載のポイント

初診料の記載について

予約システムで患者が入力した問診票のコピーのみでは不十分。
医師が実際に目を通し、自身の言葉で記述することが必要です。
また、アレルギー歴・嗜好歴などの記載漏れがないかも確認しましょう。

舌下免疫療法の継続患者について

転医による継続の場合でも、アレルギーリスクの説明と同意取得の記録をカルテに残すことが必須です。

外来管理加算・特定疾患療養管理料の記載

これらの管理料は、医師が詳細に問診・身体診察・アセスメントを行い、どのようにプランへつなげたかを記載することが求められます
書いていなければ、「実施していない」と判断される可能性があるため、SOAPをしっかり記録しましょう。

生活習慣病患者の指導内容も、要点を絞って簡潔に記載することが重要です。

採血・画像診断の記録

採血に付随する判断料や画像診断の算定は、医師が結果を判断し、治療にどのように役立てたかが明確になっていることが重要です。

  • 結果の要点をカルテに記載

  • どのように評価し、どのような治療や指示を行ったかを明記(例:1週間後に再診、薬剤の調整 など)

基本診療料の注意点

公費・自費の健康診断や予防接種と同日に保険診療を行う場合、初診料・再診料などの診察料は請求不可(二重請求となるため)。


📌 不適切な算定項目がある場合の対応

算定が適切でないと判断された場合、返還を求められることがあります。

例:
・初診料ではなく再診料を算定すべき
だった場合 → 差額を返還
・特定疾患療養管理料の要件を満たしていない
と判断された場合 → 全額返還

指摘を受けた際、意義を唱えることはおすすめしません。
指導の場では冷静に受け止めましょう。

📅 指導当日 〜大切なのは心構え〜

書類を完璧に準備し、すべてのチェックを終えたら、いよいよ厚生局へ。

しかし、指導当日に最も重要なのは…

"平身低頭" の姿勢 

新規個別指導では、こちらがどれだけ診療能力・経営力に自信を持っていても関係ありません。
大切なのは、審査員と対峙する際に謙虚な姿勢を貫くこと。

当日の指導風景のイメージ図を載せておきます。

当日の指導風景(奥:審査員、横:厚生局員)

📌 指導の流れ

  • 番号を呼ばれる → 厚生局の職員に持参書類を渡す → 指導開始

  • 審査員は既に10名分のレセプトを確認済み

  • 指導時間は45〜60分程度

  • 指導の間に厚生局の職員が書類に目を通し、指導後に書類内容について質疑応答

📩 指導の結果とその後

2ヶ月後に文書で結果が通知されます。

  • 概ね妥当

  • 経過観察(改善報告書を提出)

  • 再指導

  • 要監査

の措置があります。
私が聞いたクリニックはいずれも「経過観察」でした。
その場合、指摘事項を改善し、報告書を提出すれば完了です。

🔗 まとめ

「新規個別指導」は情報が不足し、不安が先行しがちですが、事前準備をしっかり行えば怖くありません。
何より、日頃から適切な運営をしていることが大切です。

いかがでしょうか?

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参考

  • 東京都医師会 [2] 新規個別指導、集団的個別指導、個別指導、監査等