Tracktown SHIBUYAからTracktown JPNへ。その3
「渋谷のラジオ」には金はないけど、熱意のあるボランティアが100人以上いる。それが前回までのお話。
ボランティア説明会をするにあたって、「こういうラジオ局です」というビジョンを説明する必要がありました。いまでも残っていますが、渋谷のラジオのホームページには、こういうことが書いてあります。
「ダイバーシティ、シブヤシティ。『渋谷のラジオ』は、地域密着 × 世界最先端の放送局です。」というテーマで書かれてはいるのだけれども、正直、よくわからない。これは、いったん頭の片隅においておくとして、これからこのラジオ局にかかわる人たちに、具体的にどういうビジョンで番組を作っていくのかという指針が必要になると思いました。とはいえ、コミュニティーFMってどういうものかはさっぱりしりませんから、まずはネットでいくつかのコミュニティーFMを聞いてみることにしました。車をぶらぶらと運転しながら3日間くらい聞いていると、どんな局でも、同じリスナーのメールやツイッターが読まれ続けていることに気づきました。ほとんどの番組がパーソナリティーと常連の2〜3人のリスナーとのやりとりで、時間が過ぎていくのです。そして、この常連がおもしろいかといえば、そうでもない。だけど、反応があるから、とりあげざるを得ない。製作者がどんなに頑張ったとしても、番組の色が「このつまらない常連色」となってしまってるいるのです。「面白くないこと」が死ぬほど嫌いな性格なので、ほんと苦痛でした笑
そして、もうひとつ大事な発見がありました。「ラジオ局のサイズが小さいことがバレている」と。ラジオとは自分が発したことが、どれくらいに届くかわからない。そこがブラックボックスになってるがゆえに魅力があるメディア。ところが、反応があるリスナーを大事にしすぎるがゆえに、延々と読まれ続ける常連メールの数から、そのラジオ局のサイズ感が想像できてしまうのです。インターネットでコンテンツを作り続ける会社に15年もいたこともあって、「ラジオはインターネットの使い方が下手だな」という印象をもちました。どうやらほとんどのラジオ局にとって、インターネットとは、ハガキがメールやツイッターに変わっただけで、大きくは変わっていない。ラジオ局がゆえに、ラジオを大事にしすぎて、インターネットをないがしろにしてる。ように見えたのです。
渋谷のラジオはインターネットが産まれた後にできたラジオ局なので、これまでのラジオ局が大事にしていたことをバッサリと捨てようと考えました。「それはリアルタイムで聞く人をアテにしない」ということ。リアルタイムよりも、アーカイブとしてより多く聴かれることを目的とした番組作りを目指すことを考えました。即時性をともなわない番組を作ることで、最終的にロングテールでリスナーが増えるような構造をイメージしました。それには番組終了後、すぐにアーカイブとしてアップされる仕組みが作る必要があるな。そこで音声配信を研究することにしました。
iTunesのポッドキャスト、Youtubeとさまざまなプラットフォームを見渡してみると、そのほとんどが再生回数によって広告が入るモデルとなっています。聞く人が多ければ多いほど、広告によって課金されるという仕組みです。これはラジオ局としてはやってはダメだと思いました、なぜなら、再生回数が表に見えることで、「ラジオ局のサイズが見えてしまう」からです。せっかく編集してYoutubeにあげても再生回数が10回のようなサイトは世の中に無数にあります。それらと同じように見えてしまうのです。渋谷のラジオのアーカイブはそうなってはならない。ラジオと同じように可能性を感じるような場所。そして、まだ価値が定まっていない、無色なプラットフォーム。そう考えている中で見つけたのが、このnoteでありました。ちょうど、cakeで書いてた人たちがnoteにシフトしはじめるタイミングでもあり、なにか新しい風がそこに吹きつつあるのを感じたのです。この風に乗ってみよう。そう思って、noteの母体、ピースオブケークスのことを調べると、当時、会社は道玄坂にあるじゃないですか。「同じ渋谷の会社じゃないか!」とうれしくなって、noteに連絡をいれ、加藤さんに会うことになりました。
おそらく、毎日10番組近くの音声コンテンツをアップし続けることになる。サーバーの負荷もかかるだろうし、断られるかなあと思い、おそるおそる「渋谷のラジオのアーカイブをすべてnoteにアップしたい」ということを伝えると「ぜひぜひ、どんどんあげてください」と2つ返事で受け入れてくれました。おかげで、どこに向かっていくのかさっぱり見当がつかなった、局と番組作りの方向性が「こっちのほうかも」という道筋がぼんやり見えてきたのです。
ロンドンでジョグ中に迷子になったときに出てきたトンネル。