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エントリーフィーを距離で割るランナー
オトナのタイムトライアル(OTT)という市民ランナー向けのトラックレースを立ち上げたころに、「5000mはコスパ悪い」と、結構、走歴の長い市民ランナーに言われたことがとても印象に残ってる。もともとマラソン大会やレースって割安だななと思っていたから、レースに「コスパ」など考えたことなどなかったからです。
その人は「エントリーフィーの3000円を5000mで割ると1km600円じゃん。フルマラソンだとエントリーフィーが1万円だとしても1kmあたり240円くらい。だからトラックレースは流行らないよ。そう考えるとウルトラマラソンが一番コスパがいい。エイドも充実してるし」と言います。その人のマラソン観に頭がクラクラする一方で、このことは忘れないでおこうと心に刻んでおくことにしました。
このずいぶん酒の席での話題にしてて、陸上部出身者は「ちょーウケる!」と爆笑するのだけれど、陸上を経験せずに、市民マラソン大会に出るために走りはじめた市民ランナーは笑いながらも、「その人の気持ち、わからないでもない。5000mと聞くと、楽しみがすぐに終わりそうな気がするんですよね」という人もいるのです。
そこで、竹澤健介さんと柏原竜二さんにトラックの5000mの走り方を聞くことにしました。どうやら、陸上選手と市民ランナーとの5000mの捉え方が違うように感じたからです。
近いうちに、ここで訊いたことを整理していくつもりなのだけど、興味深いことに、竹澤さんも柏原さんも「5000mは長い」というイメージをもって走るのだといいます。箱根駅伝に比べたら、へにもならない距離に思えますが、陸上選手にとって1000mから4000mまでは心を無にして走るような、とてつもなく長く感じる時間であるようなのです。つまりフルマラソンにおける10kmから35kmまでをギュッと凝縮したものが、トラックにおける1000mから4000mなのだと。つまり市民ランナーにとって「短い」と思われがちな5000mはフルマラソンでの入りの5kmと同じように走ってはいけないのだと。そこには綿密なレースマネージメントが必要なのであるということを知ったのです。
こりゃ、レースを走るだけでなく、観る側の視点としても大事だなあと感心しつつも、まだ「ついエントリーフィーを距離で割ってしまう人」のことが頭から離れない。ここに陸上競技と市民マラソンの断層があるように感じたのです。そこで12月19日 駒沢陸上競技場で開催するオトナのタイムトライアルでは、コロナ禍だからできるチャレンジングな実験を行うことにしてみました。「走れば走るほどエントリーフィーが割安になる」という制度。題して「おか割り」の導入です。
5000mのレースを1本、2本、3本と重ねるたびに、エントリーフィーが安くなっていきます。
1500mと5000mを組み合わせたミックス。5000mを2本走る「W(ダブル)」そして5000mを3本走る「トリプル」と、お好み焼きのようなメニューにしてみました。トリプルだと1kmあたり400円。だいぶコスパ良くなりました。
一本はゆっくりと友達と走って、2本目はタイムトライアル。という組み合わせもいいですし、ハーフマラソンがわりに3本くらいをビルドアップしていくのもいい。ついさきほど、日本陸連の企画戦略部のディレクターに就任したTWOLAPSの横田真人コーチは近々、フルマラソンを走る予定があるらしく、「今回はペースメーカーじゃなくて、お金を払うので、練習がわりに4本走らせてください。」と4杯おか割りするらしい。つまり、横田さんはトリプル+シングルということになりますね笑 レース中も横田さんをはじめとした「おか割りランナー」に注目してみたいと思います。
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