ICT担当者に必要な知識・技能の変遷
Windows10のサポート終了に向けて、校務用パソコンの入れ替えが行われています。
同時に、ネットワークの一元化やゼロトラスト環境構築のための設定もあり、各校のICT担当者の間では、
「授業の準備がさっぱりできない。」
「本業が何だかわからなくなる。」
などと、ぼやきが聞こえてきます。
今までもパソコンの更新や新しいサービスの導入などがあり、その都度翻弄されてきましたが、ふと、
「ICT担当者の仕事は確かに大変だが、成長しているのだろうか。」
と疑問が湧きました。
今までの経験を振り返ってみたいと思います。
必要な知識・技能の変遷
2001年(平成13年)に校内LANが導入されてから、端末更新時期を目安に期間を区切って、主だった必要な知識・技能を挙げてみます。
ちなみに、字消し線は現在使わなくなったものです。
採用のころ(2002年)
必要な知識・技能の例
・Word、Excel、PowerPoint(アニメーション)・WindowsXP、Meの基本
私物PCを軽くする方法(プリインストールソフトの削除、リカバリ)・一太郎
・ネットワークの基本(TCP/IP、DNS、プロキシサーバー)・WindowsServer2000(ファイルサーバー)
・Workgroup環境の運用・RealBasicで教材づくり
当時考えたこと
Office製品について質問される→MOTを取ろう。
これからはサーバー運用の技術が必要。アクセス権の設定が難しい→MCPを取ろう。
校務用パソコンが支給される(2009年頃)
必要な知識・技能の例
・WindowsXPの基本(ダウングレードでXPだった)
・NASの運用・WindowsServer2008R2の運用(ファイルサーバー、WSUS)
・バッチファイル作成・ISSの運用(WindowsXP Professional):イントラWebサーバー、ASP.net
・Webページ編集(ホームページビルダー、HTML)
・教科書システムの運用(VisualBasic Runtimeの導入、インポート・エクスポート)
・Adobe Flashで教材づくり(ActionScript)
当時考えたこと
WindowsServer2008が来るなら、WSUSを導入しよう。無料だし。サーバーの勉強をしていてよかった。
端末導入時のユーザー作成もバッチファイルを用意すればかなり作業が軽減される。
教科書システム、ひどいなぁ(今のExcelファイルでも文句を言う人がいますが、当時の苦労を知っていると大分ましになったと思います)。
Windows Vistaって何だったんだ?。
校務用パソコンの更新(2013年頃)
必要な知識・技能
・Windows7の基本
・Ubuntu、Apacheの運用(イントラ版Webサーバー)
・CMS(NetCommons2,3)の運用:学校Webページ、MySQL
・無線通信(携帯電話、Wi-Fi)
・iPadの基本、教育に使えるアプリ・テレビ会議システム、Skypeによるリモート配信
・Google Workspaceの活用(Gmail)
・ActiveDirectory環境でのデスクトップサポート・情報資産管理システムの運用
当時考えたこと
Google WorkspaceやActiveDirectoryなどは教育委員会が管理者になってくれて負担が減った。
情報資産管理システム、手間がかかるし邪魔だなぁ。
ソフトのインストール制限で、自由な挑戦がしにくくなったなぁ。
一太郎、使わなくなったなぁ。
校務用パソコンの更新(2017年頃)
必要な知識・技能
・Windows10の基本
・CentOS、Apacheの運用(イントラ版Webサーバー)
・校務支援システムの運用
・保護者一斉メール
当時考えたこと
校務支援システム、特別支援学校向けにカスタマイズするのは無茶だよなぁ。
Windows8って何だったんだ?。
PowerPointの凝ったアニメーション、最近見ないなぁ。
GIGAスクール構想(2020年頃)
必要な知識・技能
・MDMでのiPad管理
・ブラウザで使えるアプリ
・GoogleWorkspaceの活用(Classroom、Meet、Jamboard、ドライブ、サイト・・・)
・オンライン授業、リモート配信
・視線入力、入出力支援機器
・勤怠管理システム
・note
・Canva
・情報Ⅰ(情報デザイン、Python、統計、SQLなど)
・共有PCモード(プロビジョニングパッケージ)
・Microsoft Office365
当時考えたこと
オンライン授業、準備したのにやらなかったなぁ。
児童生徒用1人1台端末が来たからには、使わないとまずい。
校務用パソコンの更新、DXハイスクール(2024年)
必要な知識・技能
・情報Ⅱ(データサイエンス、機械学習、IoT、JavaScriptなど)
・デジタルものづくり(3Dプリンター、レーザーカッター、3Dモデリング)
・VR、AR(モーションキャプチャー、メタバース)
・Google Workspace for Education Plusの活用
・生成AI
振り返ってみて
アンラーニングの多さ
振り返ってみると、字消し線で消したものが多いなと感じます。
つまり、当時は必要でも今は必要ない知識・技能です。
ICT関係ではこの「アンラーニング」(学習棄却)が必要な機会がよく起こるなと感じます。
また、1つの製品に特化して知識・技能を高めるのは怖いなとも感じます(Windows Serverや一太郎に特化していたら・・・)。
次から次へと
そして、新しく必要になる知識・技能がどんどんやってきます。
新人でもベテランでも常に走り続けなくてはいけません。
経験年数を重ねれば楽になってくるということは無いです。
まあ、年を取ると若い時より文句を言われなくなったという気はしますが・・・。
リスキリング
これは自分が特殊なのかもしれませんが、情報Ⅰ、情報Ⅱを担当するために、理科の教員から情報の教員への学び直しが必要でした。
いや、まだ理科も教えていますが。
私が情報の免許を取ったのは情報A・B・Cの時代ですから、Pythonや機械学習は1から勉強する必要がありました。
学校現場のDXに向けてのリスキリングと重なっていました。
自分はどこに向かっているのだろうか。