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刺しゅうミシンに振り回される
今年度、ある事業で刺しゅうミシンを買いました。
今年度はいろいろな物品を購入していて、その過程でいろいろなドラマ(!?)がありましたが、この刺しゅうミシンには何だか翻弄されてきた気がしています。
購入まで
あるデジタルファブリケーション施設のWebページを見ていた時に、刺しゅうミシンというものがあることを知りました。
パソコンから画像や写真を取り込んで刺しゅうにできれば、縫製等の活動でデジタルものづくりができそうです。
本校には作業学習はありませんが、知的障がいを併せ持つ課程の「職業」の授業で縫製を担当する教師に話してみると乗り気でしたので、購入することにしました。
実際に購入したのはブラザーのPICNO KWです。
ポイントは無線LANでデータの転送ができるところです。
個人情報漏洩の原因とされていて、校内で名前を出すのも憚られる扱いになっているUSBメモリを使わなくて済みます。
ソフトは刺しゅうPRO11です。
ソフトを使うときには、刺しゅうPROをインストールしたパソコンにUSBドングルを挿さなくては使えません。
結局挿すのか・・・。
業者探し
学校にあるミシンをどこの業者で買ったのかを家庭科の教師に聞くと、
「そんな予算が来たことが無いから、学校でミシンを買った経験がない。」
「教材カタログに載っているミシンを教材屋さんで注文したから、特殊なミシンの学校での購入方法はわからない。」
と言われてしまいました。
業者を自分で探さなくてはいけません。
近隣のミシン店に問い合わせたところ、
「料金先払い。請求書払いはできない。」
と言われてしまいました。
また、ブラザーはプリンターやFAXを作っているからIT系の商社で扱えるのではないかと思って聞いてみましたが、
「ミシンは取り扱いができない。」
と言われてしまいました。
仕方がないのでブラザーに直接問い合わせて取扱業者を紹介してもらいました。
連絡すると、
「学校にミシンがあるなら、メンテナンスはどうしているんですか?。出入りの業者は無いんですか?。」
と言われてしまいました。
そんな予算は無いので使い潰しです。
また、
「刺しゅうミシンは購入しても使い方がわからないから教えてほしい、と言われることが非常に多い。講習会はどうですか?。」
と提案されましたが、提示額が県の規程で払える報償費と桁が違うので、検討するまでもなく断りました。
関連商品
ミシンは冬休みに入る直前に納品されました。
でも、ミシンは本体だけあっても使えません。
刺しゅうミシン用糸(上糸・下糸)、針、刺しゅう用不織布等も必要です。
ミシン本体と一緒に見積依頼して、業者もアドバイスをくれたのですが、納品は3学期が始まってからでした。
関連物品が多いので、たまたま何も乗っていなかったワゴンに乗せていたら、そのまま刺しゅうミシン用ワゴンになってしまいました。
別の用途で使おうと思っていたのですが・・・。
また、ミシンの説明書を読むと、刺しゅうのときは生地の裏に接着布をアイロンで接着する、と書いてありました。
アイロンとアイロン台も慌てて注文しました。
デジタル予算でアイロンを買って怒られないだろうか・・・。
試し縫い
もう3学期が始まっていたので、早く授業で使わなくては今年度の実績として報告ができません。
まず私が使い方を覚えました。
ちなみに私は、母が洋裁の専門学校を卒業して家で裁縫をしているのを見ていた影響か、自分でも下手の横好きで多少裁縫をやっていました。
就職してから自分のミシンを買い(ジャノメの安いものですが)、息子の保育園で使うものは自分で作っていました。
決してうまいとは言いませんが、ある程度のミシンの使い方はわかっているつもりです。
データ作成
ソフト「刺しゅうPRO11」については、「刺しゅうPRO 使い方」でググれば製品マニュアルが見つかります。
刺しゅうミシンが来たら、写真を刺しゅうしてみたいです。
でも、誰の写真を使おうか?。
試し縫いで特定の生徒の写真を使う訳にはいかないので、生成AIで作った女子高校生の写真を使いました(周囲には私の趣味だと思われているようですが・・・)。
単純に写真を取り込むだけならさほど困難は無かったです。
糸がもったいないので、大きく作るのは抵抗があります。
4cm四方に縮小し、画像は「オートパンチ」、写真は「フォトステッチ1」を選びました。
ミシンの準備
刺しゅう台を取り付け、生地を刺しゅう枠にはめます。
最初は付属の刺しゅう枠を使っていましたが、業者に勧められたマグネット付き刺しゅう枠を買っていたことを思い出し、使ってみると、生地と不織布のセットがはるかに楽でした。
ミシンの説明書には接着布を使うと書いてありますが、刺しゅう用不織布を重ねるだけで大丈夫でした(ぴんと張る必要がありますが)。
ミシンへデータ転送
データができたらミシンへ転送します。
転送も無事にできました。
ところが、最初は良かったのですが、次の日にやろうとするとネットワークエラーが出て転送できなくなりました。
「アプリケーションボタンメニュー」(左上の花のボタン)→オプション→ネットワーク設定」で一度登録したミシンを「削除」し、「追加」で再探索して再度登録するとデータを転送することができるようになりました。
この作業がミシンの電源を入れる度に毎回必要になっています。
あと、ミシンの電源を入れてからWi-Fiに接続するまで少し時間がかかるので、気の短い人にはストレスかもしれません。
ミシンのタッチパネルでの操作は、一度説明書を見ながらやれば覚えると思います。
初見で直感で操作するのは無理かなと思います。
刺しゅう開始
縫いが始まると、針と刺しゅう枠の動きに視線が釘付けになります。
刺しゅう枠が自動で動き、高速で縫っていく様子は感動ものです。
でも、針が折れることがあります。
私は1週間で3本折りました。
そのうち1回は折れた針が目に向かって飛んできました。
たまたまメガネをかけていた日だったので難を逃れましたが、
「縫っているときに針に顔を近づけるな!」
は、ミシンを使う人に警告していきたいと思います。
針が折れた原因は、
・上糸のガイド「2」で糸が引っ掛かった(2回)
・下糸がボビンボックス内で絡まった(1回)
でした。
折れる直前にガタガタと妙な音がするので兆候はあるのですが、正常性バイアスで様子を見てしまい、とっさに止めるのは難しいです。
自分以外の教師が使いだしたら、予備の針を買ったのに足りなくなりそうです。
今まで、生徒がミシンを使うときにはフットスイッチを手や足で使うことがあったようです。
でも、刺しゅう機能はフットスイッチをつないでいると使えません。
手指の巧緻性や可動域によっては、生徒がミシンの操作をどのように行うかを改めて考えないといけないと思います。
リモートスイッチを付けるか。
分かれる評価
試し縫いしたものを他の教師に見てもらうと、評価が分かれました。
「すごーい!。」
「校章をワンポイントに入れてみよう。」
「プレゼントに写真が刺しゅうしてあったら喜びそう。」
すごい技術が学校で使えるようになりました。
一方、
「こんなもんか。」
「ふーん。」
「・・・何これ?。」
写真が劣化した程度に見えたようです。
写真を刺しゅうしたら喜ぶだろうと思って作ったのに、渡しても喜ばれない、ということが起きるかもしれないなと思いました。
これから使っていくはずが・・・
遅れていた関連物品がようやく届きました。
「やっと揃った。これから高等部の先生に使い方を伝えるぞ。」
と思ったら、その日の夕方に他学部の教師から、
「学校で刺しゅうミシンを買ったと聞いたから貸してください。」
と声を掛けられました。
この事業は高等学校対象の事業なので、報告書を作る立場からすると、小中学部で実践されても意味が無いのです。
おまけに、導入するまでにこのような苦労があったので、ようやく使える状態になった絶妙なタイミングで他学部からかっさらっていくようなことを言われると、モヤモヤするものがあります。
高等部に先に使わせてほしいんですけど・・・。
そして、消耗品は針を含めて各学部で用意してほしいです。
特別支援学校ならではの悩みかなと思います。
刺しゅうミシンは普通のミシンとして使っても高性能なので、これからは校内で取り合いになるかもしれませんね。
来年度に追加購入?。
考えないでおきます。