正円
入社して数日が経った。
私より2週間早く入社した人がいるんだけど仕事出来すぎて入社3年目くらいに見える。
高クオリティのデザインが速く出来るだけでなく、運動部で先輩から人気がある後輩のような腰の低さと返事のキレの良さがあり、1日目で(仕事でき具合レーダーチャートがこんなに正円に近い人がいるんだ…)と思った。
スゴ社員は仕事の話を真面目に聞きつつも、程よい合いの手を入れて目上の人からけっこうウケも取っている。
入社すぐに相手のキレポイントもわからない状態で、失礼じゃなくイジるのってクソ難しくないですか?私はできません。
外見は派手めで、紫の髪にピンクのMA1、ツインテールで出社していて海原やすよっぽい雰囲気がある。
他部署の方からも「あの子カワイイ!」と言われるくらい既に人望があり、職歴が多いことを気にしている私にも「色んな事ができるんスね…尊敬ッス」と言ってくれて、歳下なのに偉いなぁと思っていた。
私はブランドのテイストや各商品の体裁がまだ把握できておらず、データ作成にものすごく時間がかかってしまい毎日コッソリ家で下書きだけやってきていて、
入社日はあまり変わらないのにバリバリできる彼女が輝かしい。
(絶対追い抜かしたる…)みたいな野心は無いけど、ここに居ることが許されるのだろうか?と負い目を感じていた。
その負い目が緊張に拍車をかけてさらに作業効率が悪くなり悪循環のスタート地点にいる。
引き出しが乏しくて、ネットで調べながらさまざまな要素を組み合わせなんとか捻り出しているノロノロコンピューターのような私をよそに、スゴ社員は踊るように仕事をこなしていく。
今までの会社で定時で帰りまくっていたから能力が上がらなかったのかもしれない…と家で洗濯物を干すときも考えていた。
そんなスゴ社員とたまたま2人で話す機会があった。
年齢を聞かれたので、私も聞き返すとぜんぜん歳下じゃなくて6歳も上だった!
動揺しすぎて、「お若いのにすごくしっかりされていると思っていました」と言おうとしたのを、
「お若いのにすごくお若いと思っていました」と小泉孝太郎構文で言い間違えてしまい妙な奴になってしまった。
私も6年後にはスゴ社くらい仕事出来るようになればいいか…と思うと気が楽になった。
スゴ社が歳上だからと言って私のノロさが許容されるわけではないけど、緊張感が減ったので良かったです。
とりあえず目の前のことに取り組んでいきます。