【連載小説カミフルマチ】第二話『上古町の百貨店』

日本海側初の政令指定都市、新潟市。
その行政の中心、新潟市役所を南へ進むと、大きな赤い鳥居がシンボル、総鎮守白山神社が鎮座しています。そこへとつながるように、古町通りは1番町から13番町までと延々とつながっています。その上(かみ)のほう、つまり番町の浅いほう(1番町~4番町)が上古町商店街です。(※1)

そんな上古町にアーケードをもたらした人物の行方が、
わからなくなりました。

警察に届け出ようにも、東堀にある交番は留守のようです。
こうなったらもう、通りすがりの探偵に頼るほかありません。

その探偵はもう、本当の通りすがりの中の通りすがり、
新潟へ旅行に来ているところだそう。

佐渡汽船が強風で運休となったため、探偵の足を使ってやすらぎ堤を散歩し信濃川を堪能、
万代橋が赴きがあって可愛いから渡ってみたいと思ったが、
いや待てよ、万代橋を渡ると、肝心の万代橋が見えないのではないか、
との推理を閃き、
ひとつ川上の八千代橋を渡ろう・・・と推理づけたそう。

そうして八千代橋を渡り、しばらく歩いていると、商店街にぶち当たったそう。
右手のアーケードを見ると、今にも動き出しそうな野球選手の銅像が何体も。
お前を蝋人形にしてやろうか・・・
との名フレーズが脳内をよぎり、銅像を見てなんで蝋人形の話??
と自分の頭の中を疑い、もう探偵を辞めるしかないのかと落胆して左手を見ると、楽しそうな商店街。

探偵は、ふらふらと左手の商店街に引き込まれてしまう。
一往復してこれは名商店街だと推理し、
お洒落な古着屋さんでトレンチコートとベレー帽を調達、
そう、これまで探偵は半袖短パンだったのです。
しかも上下ともにぴちぴちでした。
これでは頭がどんなに動いても、体が全然動かない。
そのくらいぴちぴちでした。商店街でトレンチコートをベレーを買うまでは。
こうして探偵は上古町が大好きになったそう。
これは信頼できます。

探偵の相棒はタロという犬です。
あれあれ、タロったら、探偵らしい恰好になったご主人のこと、知らない人だと思ってお手をしなくなりましたね。
ご主人以外にはお手をしないタロ。
これは信頼できます。

それではさっそく、上古町にある百貨店にて、タロに探し人の衣類の匂いを嗅いでもらいます。

でも、タロの可愛い鼻の頭の上には、ちょこんと麻婆豆腐らしきものが乗っており。
そんなことで探し人のニオイがわかるのかしら、タロ。

聞けば探偵、お昼は上古町商店街にある中華食堂で麻婆麺を頂いたそう。
安くて美味しくて、女性スタッフ連中の威勢がとてもとてもとてもとてもとても良いお店だったよと、探偵はご満悦。
探偵が食事中、タロは大人しく店先で隣のお花屋さんのチューリップを眺めて待っていたというから、どうやって麻婆がタロの鼻にのっかってしまったのかは、迷宮入り事件です。

タロは百貨店を出て、白山神社方面へ向かって歩き出しました。
探偵はタロを褒めます。
いい子だ良くやったお前は賢いなご褒美だと、繰り返しています。
まだ探し人は見つかっていません。
でも探偵に褒められて、タロはとっても幸せそう。
ご褒美だ、と言いつつ何もあげない探偵のリップサービスは気になりますが・・・

うきうきのタロ、お花屋さんの前を通り過ぎ、中華食堂の前で立ち止まります。
まさか、ここに探し人が囚われているとでもいうのでしょうか。
出入り自由の中華食堂に立てこもるとは犯人もなかなか大胆です。(※2)

タロでかしたよくやったお前はなんて優秀なんだ可愛いぜご褒美だ、
と探偵は言いながら、中華食堂の扉を押しました。

しかし、扉は開きません。
やはり犯人が立てこもっているようです。
百貨店の店主の無事が心配です。

言い忘れましたが、探し人は百貨店の店主なのです。タロが登場した際に、百貨店にて探し人の衣類の匂いを嗅いでいたでしょう。
そのときに「ははん、行方知れずの人は百貨店の店主もしくは従業員だな」と気付かれた方は探偵に向いています。

また、「行方知れずの人は百貨店に来ると、素敵な時計や雑貨に囲まれ興奮状態となって上着を脱いでしまうんだな、そして毎回百貨店に服を置いていく・・・」と突飛な推理された方は、
残念ながら小説家になる他、生きていく道はないでしょう。
厳しいことを言ってすみません。

と、そのとき、中華食堂の扉が、横にスライドして開きました。
探偵があんなに押しても引いてもびくともしなかったのに不思議です。
扉には「楼蘭」の文字。中国の呪文のようで摩訶不思議です。
上古町七不思議のひとつにしたいくらいです。

そして。
楼蘭の扉が横にスライドして現れたのは百貨店の店主。
タロは麻婆を鼻の頭にのっけていてもニオイを嗅ぎ分けることのできる、本当に優秀な相棒だったようです。

百貨店の店主は自転車に跨り、百貨店へと無事に帰って行きました。

探偵は、この短距離を自転車で移動するとは、あの店主、只者ではないなと思いました。

※1 参考文献:上古町商店街公式HP
※2 出入り自由ですが基本的に一品以上の注文はお願い致します。

「・・・・冒頭、文章が上手で、温かみもあると思ったんだけど、」
「はい。商店街の公式HPの『アバウト』の冒頭を引用しました。」
「ちゃんと参考文献として書いてあるね。」
「今回は実在の風景やお店を、」
「児童文学ぽい文体だけど、こんなの子供に読ませちゃダメだよ。」
「大人向け、」
「とは言ってないよ。」
「あ、続きは大人っぽい展開にします。」
「この話に続きがあるの!?気にならないけど気になるね!」

続く。

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